2010年6月7日に次世代iPhoneと呼ばれてきた「iPhone4」が発表され,同月24日から日本を含む5か国で先行発売されることになりました。
■iOS
フライング的に情報が流れていたことから,「iOS」への名称変更は予想されたことでしたが,開発者にはGM版と呼ばれる正式公開直前のバージョンが配布され,最終的な開発作業を進められるようになってきています。
Steve Jobs氏による基調講演で扱われた内容のみが公開され話題にできる情報ですが,その範囲でも,マルチタスクや新しいハードウェアに対応した追加機能など,Cocoaプログラミング(iOSプログラミング)的にも大変興味深いものがあります。
これまでのアプリはもちろん動きます。
私個人が開発したアプリも(だいぶ放って置いてありますが...)動作するようでしたから,複雑なことをしていなければ多くのアプリも問題なく動くはずです。
ただし,iOS4のマルチタスク機能をさらに活かしたい場合には,これまでのアプリも少し作業を施す必要はありそうです。まあ,アプリの動かし方を大きく変えたことになるわけですから,それはそれなりに対応するとメリットがあるということです。
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■iPhone4のデザイン
そして,「iPhone4」の内部進化にはじわじわと驚かされています。
盗難や情報流出などの話題があって,事前に筐体の雰囲気を見ることになった人々にとって,基調講演発表時の筐体デザインに対する新鮮味や驚きは大きく削がれたように思いますが,どうやらいつも通り,実物を手にすれば印象は変わるようです。
そうでなくても,Appleのサイトに掲載されている正式なPR写真に写っているiPhone4は,流出品の画像に比べると大変高級感があり,80年代っぽくて抵抗のあった音量ボタンさえ,プラス・マイナス記号が掘り込まれたゴージャスなものに見えます。
スリットのようなものの存在がアンテナ機能を持たせるためだとか,筐体にフラットな部分が増えたのが自立させたりするときに便利だからなど,その意味がわかり始めると,なるほどなかなか秀逸なデザインかも知れないと思えますから,すっかり現実歪曲フィールドにハマっています。^_^;
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■iPhone4の目玉は
今回のiPhone4で果たしたハードウェアにおける最大の技術チャレンジは,文句なく新しいディスプレイでしょう。
Retinaディスプレイと名付けられた高精細なディスプレイは,その名の由来である人間の「Retina(網膜)」に匹敵する解像度を持っていることが特徴です。
基調講演によれば,縦960x横640ピクセルの画面は1インチあたりのピクセルが326個(326ppi)と説明されており,これは人間の網膜が識別できる解像度である300ppi程度と同等か超えているというわけです。
ちなみにAndroid携帯で人気の「HTC Desire」が縦800x横480ピクセル(WVGA resolution)ですから,iPhone4の解像度はこれを余裕で上回っています。
このような網膜の限界に迫るディスプレイの採用によって,目に映る画面の鮮明さが変わってくるというわけです。
残念ながら,実物を見たわけではない以上,良いかどうかの判断をすることは出来ません。しかし,もしも画面の粗などが目に負担をかけていたと仮定すれば,その粗を認識することが困難になるというわけですから,逆にiPhone4の画面は自然に見やすいという仮説も成り立ちます。そして,実際そうだからこそのアピールなのでしょう。
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■時間差のせいでとどめを刺す機会を逃し続けるAndroid端末たち
iPhoneとAndroid端末を比較した場合,iPhoneはハードとソフトをApple社が完全にコントロールして開発している点が有利であると指摘されます。
そして実際,今回のように「iPhone4」は新しいディスプレイ技術をひっさげて登場しました。Appleの強みを生かした製品リリースといえるでしょう。(あ,ちなみにもちろんA4チップ搭載とか,FaceTimeという業界標準でつくったビデオチャット機能も興味深いですけどね)
もちろん台湾・中国勢もこれに追いつくことは出来ます。だとしても,時間差は生まれるでしょう。その時間差は,どんどん縮まってはいますが,それでもiPhoneが少しでも先行して新しい技術チャレンジを盛り込めば,またそこで少し引き離されます。
果たして,iPhoneを出し抜くAndroid端末が登場するのか否か。今回の基調講演は改めて,みんながiPhoneを追いかけているという構図を浮き彫りにした興味深いものだったと思います。