JR東海の「エクスプレス予約」(以下,EX予約)は東海道・山陽新幹線のための予約サービスです。
先日(3/19)サイトのリニューアルもされましたが,もともとは2001年から始まっており,すでに10年間の歴史を積み重ねています。
またサービスの目玉の一つである「チケットレス」サービスは,ICカードの導入によって券売や改札の手間を省いたところが利点です。
その他の事柄はJRのサイトやWikipediaに情報がありますので省略しましょう。もともとは法人利用を想定した流れのようですが,会費を払えば一般利用も可能です。
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EX予約を利用するには,1) JR東海の「エクスプレスカード」会員になる,2) JR西日本の「J-WESTカード」会員になる,3) JR東日本の「ビューカード」会員となってさらに「ビュー・エクスプレス会員」申込をする,などの道筋があります。
1と2で申し込むと,それぞれのクレジットカードとともに「EX-ICカード」が発行され,それを使うことによってチケットレス改札が可能になります。
3の場合は少し手間で,「モバイルSuica」サービスを申し込んで携帯電話のIC機能を使えるようにしてから「ビュー・エクスプレス会員」にも申し込んで初めてチケットレスが可能です。残念ながらビューカードのICは使用できません。
まあ,携帯電話で予約することが多いし,その携帯電話でそのまま改札を通ると考えれば,便利といえないこともない。1と2の場合,在来線用のICカードは別に必要ですから2枚重ねで改札をタッチしますが,3だと,モバイルSuica携帯電話一つでOKです。
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さて,そこで登場したのがiPhoneでした。
iPhoneにはIC機能が付いていません。つまりEX-ICサービスはもちろん,Suicaもおサイフケータイ機能も使えないという弱点がありました。登場当時は,そこをよくネガティブに突かれていました。
いまNFC機能と呼ばれるIC機能が次期モデルに搭載されるのかどうかといった話題がされていますが,だからといってSuicaやEX-ICとして使えるようになるわけではないので,iPhoneとEX予約の関係は,なかなか難しいということになっています。
けれども,iPhoneは爆発的に利用者を増やしましたし,特にビジネスマンにとってスマートフォンの多機能性は強い味方として受け入れられています。
となれば,どうしてもiPhoneなどスマートフォンでもEX予約をうまく利用したい。IC機能はダメでも,予約くらいは対応できないか。そういう願いが強くなります。
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単純素朴にEX予約サイトをiPhoneから利用できないか...。
そういう考えから,iPhoneのSafariブラウザでアクセスするも,多くの人達が頭を抱えることになりました。
「使いにくい...(あるいは,使えない...)」
PC用の予約サイトをiPhoneの小さな画面に表示させると,様々な問題があると分かってきたのです。
端的に言えば,EX予約サイトの画面は設計が特殊なため,表示させられないことはないが,操作が使い物にならない程度に複雑になってしまうのです。
ボタンの押し難さもさることながら,分割された画面の中に表示される情報をスクロールするのに苦労しなければならず,とてもiPhoneらしからぬ使い勝手になるのです。
そこで,もともとシンプルな携帯電話用ページを使えば問題を解決できるのではないかと考えた人もいました。
しかし,これはあっけなく失敗。
EX予約の携帯電話向けサイトは,携帯電話会社経由での接続かどうかをチェックしているため,スマートフォンのような一度インターネットの公開部分を経由してから接続する仕組みの機器では受け付けてくれないのです。
ということは,PC用のサイトを何とかするしかない。そう考えたある人が,当時ホームページを閲覧するのが便利になる「ブックマークレット」という裏技的(?)手法で少しでもiPhoneでサイトを見やすくする工夫を編み出しました。
普段使うSafariブラウザにセットすればよいのですが,初心者にはなかなか難しいかも知れないということで,これをアプリにしたものがリリースされたというわけです。
参考リンク→「エクスプレス予約をiPhoneで使う」(yoshimasa niwaさんのブログ)
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前置き大変長くなりましたが,いま公開されているアプリを探してみましょう。
○「Rapidy新幹線予約」(点スイッチ) 230円
○「EX予約ブラウザ」(Takuya Murakami) 115円
○「i新幹線予約」(taisuke fujita) 無料
ちなみにAndroid向けも覗いてみましょうか。
○「BooXpress」(yanzm) 無料
○「EX予約ブラウザ」(Takuya Murakami) 無料
最後のアプリは同名のiPhoneアプリのAndroid版という事になりますが,こちらは無料で提供されています。
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まず最初にひとまとめで説明すると,これらはすべて上記の「ブックマークレット」という技と同じようなアプローチ,つまりPC用サイトをiPhoneあるいはiPadにある程度整えて表示するという方法を採用したアプリです。
要するにEX予約専用のWebブラウザ。
それに会員番号やパスワードを入力する手間を省く「自動ログイン」をつけたり,空席や料金情報のページも切り替えて見せたり,操作を手助けする機能をつけたりしているものです。
【Rapidy新幹線予約】
ブックマークレットのアイデアを提供した方自身でつくったアプリ。デザインセンスがよく,自動ログイン機能,操作のアシスト機能,そしてiPad対応など,貫録も見せます。230円という値段もそれゆえといったところ。
アカウント登録は一つまで。ログイン画面のURLを設定可能。アプリ起動時のロック機能は無し。
【EX予約】
同じアイデアを使って先にリリースされたのがこちらのアプリ。自動ログインとパスコードロック(起動時のロック)機能があるシンプルなもの。
アンドロイド版は,パスコードロック機能はなく。単純に自動ログイン機能の追加だけとなっています。
アカウント登録は一つまで。iPhone版のみアプリ起動時のロック機能有り。
【i新幹線予約】
iPhoneでは唯一無料のアプリ。自動ログイン機能はもちろん,タブの画面切り替えで「空席照会」「運賃ナビ」という別のサイトの情報も確認できる。画面を横にすればタブが消えてくれるので,ちょっと見やすい。
アカウント登録は一つまで。パスワードだけは保存されないので毎回入力。起動時のロック機能は無し。
【BooXpress】
こちらはAndroidアプリ。こちらも自動ログイン機能がついたシンプルなもの。メニューを開くといつでもログイン画面に戻るためのHomeボタンがあったりはする。
アカウント登録は2つ可能。どちらでログインするかを選択しておく設定項目がある。接続切れ問題を防ぐための画面遷移待機時間を調整する設定項目もある。
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以上のことから,
- 自動ログイン機能
- 複数のアカウント登録
- 起動時のロック機能
といった機能が欲しいところ。
余裕があれば空席照会や運賃表など
も搭載する,というのが既存のアプリの形になりそうです。
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個々のアプリに対するユーザーレビューを見ると,良い評価ばかりではないことが分かります。
スマートフォン上でEX予約サイトを利用しやすくしている点は評価しつつも,動作が遅いであるとか,落ちて予約できなかっただとか,サイトのリニューアルなどあるとログインできなくなったとか,実に様々な指摘が過去に出ています。
個々のアプリの対応は異なります。素早く問題に対処したり,サイト側の変更でいつの間にか問題が解決していたり,複雑な予約をしなければよいといったユーザー側の対処でしのいだり...。なかなか大変そうです。
特にEX予約サイトの特殊性が開発者,ユーザー泣かせなところがあるようです。
BooXpressのレビューを見ると,予約サイトとのセッション切れという問題が起こるため,わざと各Webページ読み込み時に待機時間を数秒設けて遅くしているという苦渋の対処を余儀なくされていることが分かります。これがEX予約サイトの特殊性の一つとして指摘されている問題です。
興味深いことは,こうした紆余曲折の中,JRは昨年後半に一旦はスマートフォンは未対応とあらためて宣言すると同時に,Omni miniブラウザを「携帯表示」モードにすれば使えるかもねぇ...という情報をWebページに掲載しました。
というわけで,いまのところユーザーは,アプリを使える人はアプリを使って自動ログインなどの恩恵を受けたり,アプリが安定して使えない人はOmni miniブラウザを使うなどのように個別状況判断しているのが実態のようです。
そして,JRは利用者の声に押されたのか,2011年1月31日「スマートフォンによるエクスプレス予約ご利用について」というお知らせを掲載して,スマートフォンへの対応を予告したというわけです。
以上が,エクスプレス予約サービスと既存アプリのレビューです。