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 EX489をなんとかリリースしてバグフィックス等した後は、本業が慌ただしくなって開発作業は休憩中である。

 そしてMac OS X Lionが新しいMacと共に登場してかなり注目を集めた。MacBook Airは文句をつけるところがバッテリ持続時間くらいしかないほど完成の域に達して、夏の懐が暖かいうちに購入する人々続出である。

 私もいま使っているAirよりも格段に良くなったことを見て買い替えたくなったが、所有マシンの配置替えなどを検討した結果、iMacを買うことにした。現時点での最速デスクトップマシンの購入は10年ぶりかも知れない。

 Lionはデベロッパ・プレビューを使用していた。iOSに操作性を合わせ始めた点は、慣れの問題なので私は気にしていない。世間的にはもっとブーイングが出るのかなと想像していたのだが、意外と皆さん冷静で「スイッチ切ればいいでしょ」とか「コンテンツを操作する点ではこれもありかな」みたいな反応だった。

 互換性の問題はPowerPCコードの切り捨てと64ビット化の対応ということが言われているけれども、それ以外にもSnowLeopardとLoinでシステムをちょこちょこ変えているところがあって、何がダメなのか読みづらい。

 とはいえ、ほとんどのソフトは動作しているようだし、対応のアップデートをしてくれるので、いまのところ常用していたソフトでダメだったのはBiND4だけである。

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 そんなこんなでテレビのアナログ放送波がとうとう終わりを迎えた。

 今後テレビ番組を見たければ地上デジタル放送対応の機器を使わなければならない。もっとも見たいのはニュース番組くらい。最近はバラエティもドラマもたまたまぶつかったら見るくらいになっているので実害は少ない。

 一応、Mac用の地デジチューナーは確保してある。そうそう、こちらのソフトもLion対応はまだ少し先になるようだ。

 面白いことに、このタイミングでMac用の地デジチューナーは品薄になっているようで、2つのメーカーもあまり積極的には売り出していない感じ。

 まあ、地デジチューナーは著作権保護によるバリバリのロックがかかっており、普通に扱うにも面倒なことが多い。先日はハードディスクの容量が足りないので空きを作るためにファイルを移動させたらファイルが壊れて再生できなくなってしまった。

 むしろデジタル−アナログ変換器で従来のアナログテレビやアナログチューナーで視聴した方が一番よいのかも知れない。きっと売れているのも変換器だろう。

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 新幹線予約サービス「エクスプレス予約」の公式サイトがスマートフォン対応した。

 これで開発したEX489もお払い箱になるかな、どうなるのかなと気にしていた。

 事前にカスタマーサービスに電話をして、スマートフォン対応に際して、パソコン対応画面の操作には変化があるのか聞いたりした。幸い、特に変化はなく、単純にスマホ対応画面が追加されるだけと聞いて、ホッとしたりもした。

 EX489が継続して使用できる可能性は上がったものの、スマホ対応が始まって快適に新幹線予約できるようになれば誰も専用アプリを気にかけないだろう、EX489の使命もこれで終わりを迎えるかなと思っていた。

 ところが実際にスマホ対応画面を見てみると、確かに使えるのだが、使いやすいというところには届いてないように思えた。

 それでも公式サイト自身が対応したのだから、安心感が違うだろう、そう考えた。しかし、それもそう単純な話ではなかった。

 対応スマホに制限があるのだ。

 iPhoneの場合はiPhone 4の最新iOSのみ。つまりiPhone3Gや3GSは対応に難ありという感じなのだ(最新のiOSを導入するとダメみたいなことが書いてある)。

 というわけで、公式サイトのスマホ対応ではすべてが解決しなかった。

 サポート外のユーザーはOperaブラウザなどの他のブラウザで試すか、専用アプリを試すしかなくなっているのである。

 というわけで意外な形でニーズが生まれた。

 有り難いことにEX489はここ数日で注目を集めて旅行ジャンルの無料アプリの12位くらいにランクインした。

 今後も地道にアップデートできたらと思う。

 いやはや、アプリを使ってもらうというのは難しいことなのだと改めて感じた日々だった。

 苦労して公開までこぎ着けたEX489は、実利用のフィールドで苦い現実に直面したようだ。レビューには「落ちる」の報告だらけ。1件だけとはいえ「売るな」と手厳しいレビューもある。

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 基本的にエクスプレス予約関連のアプリについて、これまでの険悪な歴史があるだけに、新しくリリースされた非公式のアプリに対し、かなりの警戒感や抵抗感があるらしい。

 そのうえ、7月に予定されているJR側のスマートフォン正式対応が発表済みなので、いまさらアプリが登場することに醒めた感じもあるようだ。

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 もちろん、EX489はちゃんと機能する。

 私自身もちょうど新幹線を利用した出張で活用したばかりだし、幾人ものユーザーから実際に利用した報告もいただき、暖かい声援と身に余る賞賛を受けている。

 物事に完璧はないので、自分の開発成果ということもあって、EX489アプリに対して謙遜気味に表現しがちであるが、それなりに自信を持って公開した次第である。

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 ところが、ユーザーの実態は千差万別。

 思いも寄らないシチュエーションで利用されていることもあり、まだまだアプリを育てていかなくてはならない。

 育てていかなくてはならないのだけど、ユーザーにとっては「落ちる」ことだけで、もうそれ以上は関わってくれないことも多い。

 「どういう利用環境で落ちた」のかの説明をする義務がユーザーにはないのだから、親切心が働く余裕がない限り解決のための情報提供はなく、こちらの方で問題を再現することも、原因を特定することも難しい。

 案外、iPhoneを再起動すれば解決することでも、ユーザーにしてみれば「そんなわざわざ...」という行為なのだ。

 それに「落ちた」のは本当のことだから、レビューが取り消されるということもない。

 レビューしたユーザーが直面した現実を考えれば、汚い言葉を使いたくなることも分からないではないが、ついて出てくる第一声や言葉が汚い言葉だと知らないうちにクセになるからやめた方がよいと素朴に思う。これは本人の努力や忍耐の問題だけれど。

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 いくらかは問題と原因もわかったので、そのための作業をしようと思う。

 しかし、このままだとあまり良い結果をもたらさないようにも思えたので、一旦公開を中止することに決めた。(追記:そのあと考え直して様子見にした。)

 レビューを気にし過ぎているわけではないが、これは単にEX489アプリの問題ではなく、エクスプレス予約の利用という行為全体の問題にも関わることだから、慌てずにゆっくり行こうと考えた次第である。

 まあ、もともとEX489は技術チャレンジから出発しているし、7月のスマートフォン正式対応という流れがあるわけだから、むしろ独自の努力を続けていった方が良いだろうとも思える。

 というわけで、少しペースを変えて取組みを始めたい。

 いよいよWWDC開催日です。

 しばらくプログラミングに没頭していたので、今回の基調講演で何が発表されるのかは、流れてくる「iCloud」の名前から想像できることも少ないです。

 しかし、よりモバイルが重視されていることは確実ですし、それがワイヤレスの方向であることも明らかです。

 iOSがUSBケーブルによってOSXに従属していた時代がいよいよ終わり、対等な関係として自律的に存在するようになるかも知れません。それはそれでリスクやデメリットがあるとは思うのですが、iOSへの期待を考えるとそうならざるを得ないのでしょう。

 iOSとOSXが結婚するのではないかと以前書いたのですが、その前に、iOSとOSXがある程度対等な関係に渡り合う状態にならないといけないと考えれば、その両者を取り持つ存在としてのiCloudという捉え方も出来るように思います。

 Mobile Meは正直パフォーマンス的に十分な実力を発揮していたとは言えませんでした。iCloudがそうした反省の上にどのような展開を見せるのか興味深いです。

 とにかく、開発者の端くれとして、また純粋なアップルユーザーとして、今年のWWDCも動向が見逃せないですね。

 いつかは現地参加してみたいです。

 本日(5/23)、エクスプレス予約サイトのスマートフォン対応を7月23日からスタートするとJR東海から発表がありました。(→ニュースリリース

 新幹線エクスプレス予約ユーザーにとっては待ちに待った発表です。

 これでスマートフォンからの新幹線予約が使いやすくなります。

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 とはいえ、非公式のエクスプレス予約アプリを開発中の身としては「え?もう?」という気持ちがないわけではありません。多少モチベーションにも影響しますね ^_^; 。

 まあ、予想よりは早かったとはいえ、正式対応はすでに分かっていたことですし、アプリ開発自体は続ける予定です。

 問題は、スマートフォン対応によるシステム変更がどの程度なのかということ。

 PC向けのサイトまでがらりと変わられると、せっかく開発しても一気に使えなくなってしまいますので、それだけが心配です。

 発表によるとiPadなどタブレットへの対応は今回行なわないそうなので、将来的には開発中のアプリをiPad対応させるなどして、ネイティブアプリとしての威力を発揮させていきたいなと考えています。

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 発表資料を見て笑ってしまったのは、公開予定の公式スマートフォン対応画面と私が開発中のアプリのボタン配置の配置に似ているところがあったこと。

 スマートフォンの小さな画面に情報とボタンをどのように配置するのか考えるのは大変なんですが、その苦労を共有しているのかと思うと自然と笑ってしまいました。

 いずれにしても7月23日を前に、既存のアプリもスマートフォン用の画面に対応するように変更を加えてくるでしょう。いろいろ楽しみな夏です。

 WWDC2011が正式アナウンスされ,チケットが発売されました。

 おそらく数時間で完売されるだろうと予想がつきましたし,いつか参加してみたいなという思いも抱えていたので,何度も購入しようかどうしようかとボタンに手をかけていました。

 しかし,残念ながら資金無し。

 今回も見送ることになりました。あとで流れてくる噂だと10時間ぐらいでチケット完売したそうで,真夜中だった日本では,多くの開発者の皆さんが夢を見ている間に発売と完売が済んでしまい,購入を逃したようです。

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 すでにニュースメディアは,iPhone5の登場の有無や,新しいiOSの登場などを予想していたりします。

 消息筋からの情報という言葉を聞くと信じちゃいそうな雰囲気になりますが,Appleの行動パターンを考えると馬鹿馬鹿しいと思える情報もあり,いつもながらApple関係の話題は関心を集めるのに格好のネタのようです。

 WWDCでiOSとMac OS Xの未来を披露するとアナウンスしたとすれば,iPhone5の登場は秋以降という風に考えるのが自然でしょう。

 iPad3なんて書いている記事には笑ってしまいますが,サイレントアップデートはあるにしてもiPad3にあたるものが年内に出るとは到底考えられません。

 ハードウェアに関しては,慌ててもいいことが無いというのはApple自身,アンテナ問題であらためて骨身に感じているはずですので,納得のいくものが完成するまでは出てこないだろうと思います。

 iPhone4もiPad2もかなり完成度が高いモデルですからなおさらです。

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 WWDC2011の目玉はもちろん2つのOS。

 開催アナウンスメールのグラフィックからは,この2つのOSの力関係も見えてきます。まずは「iOS」と書いて次に「Mac OS X」という順なのですから,Apple社がいかにiOSに力を入れているのかが分かります。

 そのうえ,Mac OS X10.7 "Lion"ではiOSから持ち込まれた様々な様式が取り込まれていることは知られている通り。

 おそらく,この2つのOSは,WWDC2011を婚約の場に選ぶことになりそうです。

 これはまったくの予想で,消息筋よりもいい加減な妄想話です。しかし,おそらくこの2つのOSの垣根が,表面的なものから取り払われようとしていることは確かです。この流れが内部的なものへと進んでいくことを否定する理由はありません。

 確かにiOSのUIKit(Cocoa Touch)とOS XのAppKit(Cocoa)は,それぞれタッチパネル向け,マウス向けという異なるインターフェースを対象に構築されたもの。それらが単純に融合することはないと思われます。

 けれども,Appleとしては2つのOSを同時並行的に維持することをコストだと感じているはずです。なんとかして,これらを統合的に扱えるようにしたいと考えているはずです。

 そのための模索が本格的に始まろうとしていると思われます。結婚はまだ先だけれども,今回のWWDCで2つのOSが婚約することがはっきりと示されるのではないか,そう思うのです。

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 ユーザー側にとってはどういう世界になるのか。

 アプリストアで購入するアプリが,iPhone,iPad,Macという3つのハードウェアに対して対応しているかどうかだけを気にする形に移行するでしょう。

 あるアプリはiPhone専用かも知れませんが,別のアプリはiPhone,iPad,Macの3つに同時対応する形のユニバーサル・アプリかも知れない,という風になります。

 つまりユーザーは,欲しいアプリがアプリストアにあるかどうか,それが自分の持っているハードウェアのどれに対応したものであるのかを気にするだけでいいのです。

 おそらくAppleが目指すシンプルなユーザー体験はその辺じゃないかと思います。

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 ポストPCの時代到来において,Macは残るのか。

 私はクリエイティブな作業をするプラットフォームとして残るだろうと考えます。そのうち,ハードウェアも融合していくのかも知れませんが,少なくとも開発環境としてのMacに値するものが残っていくことは確実だと考えます。

 まあ,その時代にはもっと新しいコンピューティングの世界が開けているとは思います。新しいハードウェアの形もソフトウェアの形も,またその時代を踏まえて変わっていくことになるのでしょう。

 とにかくWWDC2011は記念碑的なイベントになると思います。参加できないけど...。

 近日中に4.1アップデートがリリースされるらしい。もうアプリのターゲットを4.0以上にしてもよいのかなぁ...と思う。3.0環境よ,さようなら。

 新しいiPod touchは,念願のカメラ付き。しかもFace Timeにも対応とくれば,iPhone4と合わせていろいろ面白いことができそうだ。もちろんポチッとした。

 Ride on Timeの動作が安定しない報告をいくつか受けている。動作環境を4.0に絞り,いくつか見直しをする必要がありそうだ。時間を確保して取り組まねば...。

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 11月にはiPadにも対応した4.2のリリースが予定されている。こちらは印刷機能が採用されるとのことで,いよいよパソコンの代わりとして使える条件が整い始めたことになる。

 これでひらがな入力と全角スペース(思ったのだが「スペース」をフリックしたら全角スペース入力ができるようにしてはどうだろう。なかなかいいアイデアだと思うのだが...)に対応してくれれば,学校でも導入しやすくなる。

 数年後にますます成熟していることを期待。

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 それにしてもAndroid陣営はもたもたし過ぎか。日本のメーカーが及び腰で,国内向けにバシッと開発してくれないのは,どうにかして欲しい。

 学校教育に本格的に導入するには,Android陣営が頑張ってくれないと...。

 本日6/15は午後5時からiPhone4の予約が始まりました。しかし,全国的に天気には恵まれなかったことや,平日午後5時の設定もあって,iPadの時ほど予約フィーバーが話題にはなっていません。

 むしろ,ソフトバンクの予約システムやオンラインショップのサーバーが高負荷のためにダウンするという,どこかで聞いたことのあるような障害に見舞われたため,あまり上手く事が運ばなかったようです。

 とにかく,最新機種にも関わらず,iPhone4の16GBモデルが実質0円扱いというお値打ち感が評判になれば,ますますiPhone4購入希望者は増えていくことでしょう。

 Retinaディスプレイはもちろん,処理プロセッサに「A4」という最新チップを積んでいるということがiPhone4の価値を押し上げています。iOSのポテンシャルを引き出すという意味でも,また一般ユーザーがスマートフォンを快適に操作するという点においても,ここにiPhoneの一つの完成形を得たのではないかと思います。

 そう考えると予約したい気持ちが強くなってしまいますが,さて,どうしましょう。流れに身を任せて,iPhone4と出会う機会を待ちますかね。

iOSとiPhone4

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 2010年6月7日に次世代iPhoneと呼ばれてきた「iPhone4」が発表され,同月24日から日本を含む5か国で先行発売されることになりました。

■iOS

 フライング的に情報が流れていたことから,「iOS」への名称変更は予想されたことでしたが,開発者にはGM版と呼ばれる正式公開直前のバージョンが配布され,最終的な開発作業を進められるようになってきています。

 Steve Jobs氏による基調講演で扱われた内容のみが公開され話題にできる情報ですが,その範囲でも,マルチタスクや新しいハードウェアに対応した追加機能など,Cocoaプログラミング(iOSプログラミング)的にも大変興味深いものがあります。

 これまでのアプリはもちろん動きます。

 私個人が開発したアプリも(だいぶ放って置いてありますが...)動作するようでしたから,複雑なことをしていなければ多くのアプリも問題なく動くはずです。

 ただし,iOS4のマルチタスク機能をさらに活かしたい場合には,これまでのアプリも少し作業を施す必要はありそうです。まあ,アプリの動かし方を大きく変えたことになるわけですから,それはそれなりに対応するとメリットがあるということです。

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■iPhone4のデザイン

 そして,「iPhone4」の内部進化にはじわじわと驚かされています。

 盗難や情報流出などの話題があって,事前に筐体の雰囲気を見ることになった人々にとって,基調講演発表時の筐体デザインに対する新鮮味や驚きは大きく削がれたように思いますが,どうやらいつも通り,実物を手にすれば印象は変わるようです。

 そうでなくても,Appleのサイトに掲載されている正式なPR写真に写っているiPhone4は,流出品の画像に比べると大変高級感があり,80年代っぽくて抵抗のあった音量ボタンさえ,プラス・マイナス記号が掘り込まれたゴージャスなものに見えます。

 スリットのようなものの存在がアンテナ機能を持たせるためだとか,筐体にフラットな部分が増えたのが自立させたりするときに便利だからなど,その意味がわかり始めると,なるほどなかなか秀逸なデザインかも知れないと思えますから,すっかり現実歪曲フィールドにハマっています。^_^;

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■iPhone4の目玉は

 今回のiPhone4で果たしたハードウェアにおける最大の技術チャレンジは,文句なく新しいディスプレイでしょう。

 Retinaディスプレイと名付けられた高精細なディスプレイは,その名の由来である人間の「Retina(網膜)」に匹敵する解像度を持っていることが特徴です。

 基調講演によれば,縦960x横640ピクセルの画面は1インチあたりのピクセルが326個(326ppi)と説明されており,これは人間の網膜が識別できる解像度である300ppi程度と同等か超えているというわけです。

 ちなみにAndroid携帯で人気の「HTC Desire」が縦800x横480ピクセル(WVGA resolution)ですから,iPhone4の解像度はこれを余裕で上回っています。

 このような網膜の限界に迫るディスプレイの採用によって,目に映る画面の鮮明さが変わってくるというわけです。

 残念ながら,実物を見たわけではない以上,良いかどうかの判断をすることは出来ません。しかし,もしも画面の粗などが目に負担をかけていたと仮定すれば,その粗を認識することが困難になるというわけですから,逆にiPhone4の画面は自然に見やすいという仮説も成り立ちます。そして,実際そうだからこそのアピールなのでしょう。

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■時間差のせいでとどめを刺す機会を逃し続けるAndroid端末たち

 iPhoneとAndroid端末を比較した場合,iPhoneはハードとソフトをApple社が完全にコントロールして開発している点が有利であると指摘されます。

 そして実際,今回のように「iPhone4」は新しいディスプレイ技術をひっさげて登場しました。Appleの強みを生かした製品リリースといえるでしょう。(あ,ちなみにもちろんA4チップ搭載とか,FaceTimeという業界標準でつくったビデオチャット機能も興味深いですけどね)

 もちろん台湾・中国勢もこれに追いつくことは出来ます。だとしても,時間差は生まれるでしょう。その時間差は,どんどん縮まってはいますが,それでもiPhoneが少しでも先行して新しい技術チャレンジを盛り込めば,またそこで少し引き離されます。

 果たして,iPhoneを出し抜くAndroid端末が登場するのか否か。今回の基調講演は改めて,みんながiPhoneを追いかけているという構図を浮き彫りにした興味深いものだったと思います。

 Apple CEOのSteve Jobs氏が「Thoughts on Flash」という声明を公開しました。

 iPhoneおよびiPadなどのiPhone OS搭載デバイスがFlash技術を採用しない理由について6点に整理した文書です。そこではFlash技術にまつわって次のような状況が描かれています。

 1) Flashはオープンではないプロプライエタリな技術である
 2) Flash技術に頼らずともWebのフル閲覧ができる環境にある
 3) Flashには脆弱性など残っており,採用して信頼性やセキュリティ,パフォーマンスを下げる必要はない
 4) Flash技術によるビデオ再生は,ハードを利用したH.264技術に比べてバッテリー電力を消耗してしまう
 5) マウスを前提に作られた多くのFlashコンテンツはタッチデバイスで使うのが困難で書き直しが必要である
 6) Flash技術はクロスプラットフォーム優先で,iPhone OSが提供する先進技術への追従が十分でなく,革新を遅らせる

 そして,Flash技術はマウスを使ったパソコン時代の産物であり,低消費電力とタッチ・インターフェイスとオープン・スタンダードを前提としたモバイルデバイス時代には適さないと指摘します。

 最後にはAdobe社に対して,標準化技術であるHTML5のためのツール開発に焦点化すべきであるとさえ言い放ちます。

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 この声明は,これまで展開してきた「Flash vs HTML5」議論におけるApple側見解の集大成であり,あらためて巷を賑わせました。立場によって賛否に分かれるのは当然ですが,ここまでFlashを遠ざけるAppleに対して「ビッグブラザー」の姿を見てため息をつくアップルファンを生むところまできました。

 Macというパソコンもつ考えや世界観に共鳴したユーザーや,Mac OS Xによって備えたUNIXの深みに安住の地を見出した技術者にとって,Apple社がiPhone OSにおいてとっている方針は従来とあまりに異なっており,落胆や失望を感じるのは当然でしょう。

 Webが社会基盤の一部へと発展してくる中で,Flash技術が果たした役割は大きく,昨今はそこを入口としてこの業界に参入してくる人たちも多くなっています。そうしたFlashを仕事の重要な基幹技術の一つとしている業界関係者はiPhoneとiPadの現状に頭を悩ませるどころか,食いぶちを奪われる危機さえ感じているかも知れません。

 「Thoughts on Flash」という声明が出された以上,数年単位で確実にFlashはiPhone/iPadには搭載されないでしょう。Flash技術に関わる人々は,現実解として,Android搭載デバイスなどの他のモバイル機器への対応を進めて,より多くのユーザーを惹きつけるしかないでしょう。他にも選択肢がある事は健全です。

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 AppleがiPhone OS搭載デバイスでとっている方針は賛否両論ですが,どちらかというと閉鎖的であることがマイナスの評判を呼び寄せているようです。

 しかし,Appleがどうしてそうしなければならないのか,自社が儲かるといったビジネス的な理由をさて置くとして,あえてプラットフォームの質を維持するという観点から考えると,私たちにも理解できないわけではないという点がこの問題を感情的にも難しくしている原因だと思われます。

 たとえば声明に書かれていることをなぞれば,「Adobe社はApple社が提供する新技術のサポートが不十分で,Adobe社のソフトがOS X(Cocoa)に完全対応できたのはつい最近出たCS5でようやくである」ことや,「Flashプラグインは頻繁にクラッシュを引き起こし,セキュリティやバッテリー持続時間も低くする」という問題は確かにユーザーにとっても悩ましく,長いことAbobe社に対する不信感を増幅させてきました。そういったAdobe社に対する不信がFlash技術不採用に少なからず影響を与えていることも理解できるのです。

 

 さらに,Flash技術を入口としてiPhone/iPadへの参入を許したとき,懸念されるのが「デザイン」水準の問題です。

 これはFlash技術不採用とはまた別の,iPhone/iPadアプリ開発言語を特定言語に限定した方針発表とも関係します。

 iPhone OSには「ヒューマンインターフェイスガイドライン」と呼ばれる技術文書があり,標準的なアプリの操作モデルを示しています。このガイドラインを尊重しながらアプリを開発することによって,ユーザーは異なるアプリをある程度共通した操作感覚で使用することができるようになっています。ユーザーが少ない学習コストで最大限の活用ができることを目指しているわけです。

 しかし,iPhoneアプリ開発に多くの人々が参入する中で,ガイドラインの存在を知らなかったり,その意義を理解せずに開発をする人も多く,操作に違和感や問題のあるアプリも多く登場しました。本来であればガイドラインから大幅に外れたアプリは審査で指摘されて修正を加えられるべきですが,ご存知のように,膨大なアプリの申請と承認のスピードアップ要求に応えるため,Appleはデザイン性までコントロールできなくなってしまったのでした。

 おそらく,Appleはこれを大きな失敗と考えています。オープンであることを尊重した引き換えに,玉石混交なアプリの品質状況を作り出してしまったのでした。

 Appleとしては「iPhone OS 4」でもう一度仕切り直しをしたいと考えているのかも知れません。

 もしAdobe Flash CS5などのソフトでアプリ開発を許してしまえば,ActionScriptやWindows周辺でプログラミングしていた人々も参入することになる。しかし,その人たちがAppleの提示する「ヒューマンインターフェイスガイドライン」を熟読して尊重してくれる可能性はさらに低い。プロ開発者ならまだしもアマチュアや素人は望むべくもない。

 申請されるアプリのデザイン水準が全体的に低下することが予想される上,新規参入者数が増えることで,アプリ審査のキャパシティを越えるアプリ申請が行なわれる懸念もある。

 Apple社がFlash技術を締め出したり,開発言語を限定してしまうのは,現実問題としてiPhoneやiPadのビジネスモデルを維持するために仕方のない選択であるともいえますし,アプリ開発全体の質を保つためにもそうすることが理にかなっているからです。

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 どうしてもFlash技術不採用や開発言語の限定問題の議論は,ある程度実力のある人々によって行なわれるため,フリーハンドを奪い取られる感覚で話が進んでしまいます。

 しかし,別の観点から考えると,アプリを中心としたiPhone OSの魅力を生み出している部分を守ろうと考えれば,どうしてもこうした方針をとらざる得ないことが少し見えてきます。それがAppleがずっと追いかけている「最高のものを提供する」ことの成果だともいえます。

 逆に言えば,Android陣営や他の会社に対しても同様に「あなた方が最高と思うものを提供する」努力を求めているのかも知れません。その努力の足りない相手には,Appleは相変わらず手厳しく接してくるようです。それが「ビッグブラザー」を思わせてしまうとすれば,それは新しい「改革者」を生み出す時期にきたことの証しかも知れません。

 面白いことにAppleは,自らそう仕向けているようにも見えます。

iPhonesとiPad

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iPhone OS4が披露されて、マルチタスク機能が備わることがわかるなど、相変わらずApple関係は賑やかである。何かちょっとやりすぎのような感もあるが、長年脇に追いやられていた歴史を考えると、この際だからやりたいようにやってみたらと思わないではない。

本当ならばOSの成熟や完成を待って、搭載した形で発表したり、リリースするのがApple流なのだが、今回はタイミングを逃せなかったのだろうし、iPhoneとiPadという二つのハードウェアとiPhone OSというソフトウェアを時間差で出して行くことでの話題性の持続効果が期待されたのだろうと推察される。

内田樹氏が以前の著作で取り上げていた「沓を落とす人」というエピソードは、師と弟子の関係についてのものであるが、兵法の奥義に関するお話でもある。内田氏の解説によれば、「私には知られていないゲームのルール」を知っていると想定された人間、それが「師」であるという。そして「気がついたら自分がそのルールを知らないゲームのプレイヤーになっている」人間、それが「弟子」であるという。

弟子が師に勝てないのは、人がこのような関係における弟子へと陥ってしまうためだと考えられる。そして、どうもAppleと他のメーカとの関係においても同じことが起こっているのではないか。

簡単にいえば、すっかりAppleに振り回されているということなのだが、兵法の奥義に照らせば、この状況を抜け出すためには自らが強力なルールを作り出す積み重ねと大胆さがなければならないのかも知れない。