アメリカ大統領の選択

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 すでに大統領選挙は結果が出たわけであるが,教育の文脈において両候補が何を語っていたのかを知っておくのも悪くない。アメリカの教育関連サイトには,選挙のためにまとめられたページがある。

 EDUCATION WEEKのVoter's Guideには,マケイン氏とオバマ氏の教育分野に関する発言がまとめて引用されている。

 「NO CHILD LEFT BEHIND (NCLB)」に対する態度の違いもそうだが,教育予算についてオバマ氏は出していく方向で考えていることがわかる。民主党らしいといえばらしい。まあ,教師教育を手厚くすることが魔法の杖というわけではないのだが。
 少なくともアメリカの教育関係者にとって,NCLBを何とかしてくれる大統領が期待されていたのだから,それについて何かしら手を打ってくれる大統領が決まって,ほっと胸をなで下ろしているのだろう。

 同ページからのリンクで,バラク・オバマ氏の教育政策に関するページを見ることもできる。

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 各国の反応に関する報道で気になったのは,マスコミが取り上げた部分の恣意性の問題もあるが,日本のコメントが「日米関係の維持」というものであったのに対し,世界各国のコメントは「より発展的な」とか「新しい関係を」といった言葉やニュアンスを発信していたこと。なんでこんなにやる気ない雰囲気の国になっちゃったのかいな。

 今日は小学校のお手伝いの日だったが,先生達が英語活動の本格開始に向けて研究会を行ない,様々なアイデアや授業を議論していた。ここに至るまでの道筋にはいろいろ論じるべきこともあるが,現場では変化に向けての努力が日々続けられているのだということを,今一度確認しておきたい。

 アメリカという国が変わろうとして新たな大統領を迎えた。日本の小学校現場も外国語活動への取り組みの中で,英語や様々な国の語学活動を取り入れ変わろうとしている。

 もちろん,人生において変化の時期はたくさんあれど,世界がある重要な転機を迎えているという歴史的な意味合いを持った時期というのは,おそらく人生でこれを逃せば立ち会うことができないだろう。そして否応なく,世界的な視野で行動することを求められていく。

 地方分権化によって地域に根ざした国づくりが進められてきた。それが日本の国の仕組みとして変わることは当分無いだろう。しかし,だからこそ,今一度,私たちが構成する日本という国の未来のビジョンをすり合わせる努力を,新しい回路を作って,その上で展開していかなければならないと思う。そこで解決可能な小さな問題からきちんと対処し積み上げていくことをしないと,47以上ものお山の大将が好き勝手に戯れている烏合の国にしかならない。

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 これもテレビで取り上げられていた言葉だが,オバマ氏は自伝の中で「empathy(共感,思いやり,感情移入)」というキーワードを取り上げていたのだという。彼がこの言葉によってグローバルな世界を歩もうとする時代において,私たち日本に暮らす者はムラ社会を越えたところで共感や思いやりを発揮できるのか。

 これは単に「優しく接する」とか「情けをかける」ということではない。empathyとなれば,立場の置き換えにも似た意味合いが入り込み,相手の状況に対する深い理解に基づいて,厳しい対応を取ることもあり得るということである。相手を想うからこその厳しさのようなものである。

 そういう意味で,今後,オバマ時代のアメリカが日本に対してどのような態度をとってくるのかは,むしろ,私たちがオバマ時代のアメリカ(や世界)に対してどういう態度をとっていくのかに関わっているのだろうと思う。場合によっては,ブッシュ時代よりもさらに手厳しい対応をされることにもなるだろうし,そうなったとき,私たちの国がちゃんと自立してものを考えられるのかどうなのかが試されることにもなると思う。

 日本にとって,変化のための材料は(幸いなことに)過去の蓄積の中にたくさんある。月並みな逆説だけれども,新しい未来のために,過去の財産との対話がこの日本という国に求められているのだろうと思う。

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