マストドンの投稿公開範囲を調べる

マストドンのインスタンスを開設した目的の一つは,投稿(トゥート)がどのように閲覧されるのか,投稿の到達範囲や閲覧可否の制御ができるのかどうかを確かめることでした。

すでに「Mastodonの投稿範囲「公開」「未収載」「非公開」「ダイレクト」とは」(gori.me)という記事がこの疑問に答えてくれようとしているのですが,外部向けプロフィール画面の投稿一覧(プロフィールTLと書きます)のことや,ローカルタイムラインの特性については触れていないので,まとめて整理しておきたいと思います。

まずは一覧表(ブログシステムの関係上,罫線表示がなくてすみません)。

プロフィールTL
非フォロワー
プロフィールTL
フォロワー
ホーム  ローカルTL  連合TL  フォロワー
ホーム
Public
(公開)
Unlisted
(未収載)
× ×
Followers-only
(非公開)
× × ×
非公開
アカウント
ダイレクト × ○(相手)
×(相手以外)
× × ○(相手には通知)
×(相手以外)

マストドンに登録すると,「ホーム」「通知」「ローカルTL」「連合TL」という投稿の流れを追う画面を操作していくことになります。なお,マストドンではローカルTLと連合TLのことを合わせて「公開TL」と称することがあります。投稿側からすると2つは同じ扱いです。

必要に応じて,他人のプロフィールを表示しますが,マストドン通常画面の右端列に表示されるプロフィール表示以外にも,外部向けに独立したプロフィール画面があります。どちらのプロフィールでもフォロー/フォロワー一覧や投稿一覧が表示できますが,ここでは外部向けに公開する画面の投稿一覧のことを「プロフィールTL」と名付けます。

ユーザー設定画面には,投稿の公開範囲を設定する箇所があり,デフォルト時の投稿公開範囲を決められます。選択肢には「公開」「未収載」「非公開」が用意されています。ただし,投稿を書き込む時に個別的な切り替えが可能で,その際は「ダイレクト」という項目が加わります。

プロフィール設定画面には,「非公開アカウントにする」という設定箇所があります。これを設定するとフォローは承認制になり,デフォルトの投稿公開範囲が「非公開」になります。ただし,プロフィール画面や過去の投稿は表示されたままなので,Twitterの非公開とは違うことに注意する必要があります。

ちなみにマストドンAPIでトゥートする場合,ユーザー設定(デフォルト)とは異なる公開範囲設定になる可能性があります。APIを使うサービス側の設計次第です。

まず重要なことは,マストドンは公開を基本としたオープンなシステムだということです。

他者に知られては困る情報をやりとりするための暗号化機能は備わっていませんし,インスタンス内のやりとりを非公開にする仕組みはほとんどありません。グループ内で秘匿的に使用するには,システム改変するか,存在を知られない運用の工夫が必要になります。

どれほどオープンなのでしょうか。

たとえば,インスタンス内の公開TLに投稿されたものは,インスタンス登録者以外(外部から)でもツールを利用することで閲覧が可能です。「Mastodon Timeline Peeping Tool Made by YUKIMOCHI」は,指定したインスタンスから公開TLの内容を取り出すツールの一つです。

また,プロフィール画面は外部に対して非公開にはできず,公開していた過去の投稿を遡って非公開にする機能はありません。プロフィール画面を閲覧するにはURLを指定する必要があるため,URLを知られなければよいとも言えますが,URL自体は「https://インスタンスURL/@ユーザ名」というシンプルなルールで構成されているため,推察して閲覧することは難しくありません。

一方,興味深いのは,投稿時に使う「CW」(Contents Warning)ボタンと画像に対して使う「NSFW」(Not Safe For Work)ボタンという投稿内容の目隠し機能が用意されていることです。オープンであるからこそ,配慮の必要な内容等は目隠ししておけるようにしてあるのはマストドン独特の機能です。

いずれにしても,クローズドなグループ利用(登録者以外には閲覧されたくない)というニーズにはピッタリと応えられないのがマストドンの現状です。Facebookグループのように登録者のみの閲覧で投稿を囲う使い方はできません。

オープンを前提としてグループで利用するとしても,現状のマストドンの仕様はインスタンス内の出会いや交流について十分な配慮が盛り込まれていません。

そもそも関心を一にしてインスタンスに集った登録者同士が,インスタンス内で出会うには,ローカルTLに投稿しなければなりません。マストドンには登録者一覧やリストはありません。Twitterと同じといえばそうですが,インスタンスという単位に集ったのに,誰が登録しているのか一覧で知れないのは少々不便も感じます。

ローカルTLがそれなりに賑やかであれば,そこから気になる人をフォローするということになるのでしょう。しかし,お互い様子見していたり,投稿控えめなグループであることも考えられます。そうなると,なかなか出会いや発見も難しくなります。

ならば,登録者にどんどん投稿してもらってローカルTLを賑やかにして欲しいところ。

ただし,投稿が控えめになる要因がいくつか考えられます。

一つの要因は,ローカルTLへの投稿がプロフィールTLに記録されて,外部に公開されてしまうこと。

インスタンス内での交流を目的に投稿をすると必然的に外部に投稿が公開されてしまうのです。これを防ぐには投稿公開範囲を「非公開」にすることですが,ところが上の表にあるように非公開にすればローカルTLへの投稿が行なわれず,フォロワーだけにしか届かないのです。

「新規のフォロワーと出会いたくてローカルTLに投稿したいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいので非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず新規のフォロワーと出会いようがなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

もう一つの要因は,ローカルTLへの投稿が連合TLにも必然的に流れて公開されてしまうこと。

すでに説明したように投稿者側からするとローカルTLと連合TLには投稿先としての区別がなく,公開される投稿は公開TLに投げ出されるという考え方になります。

逆に言えば,インスタンス外部に投稿を出したくなければ「非公開」で投稿する以外にありません。

ところが,そうするとフォロワー以外に投稿は届かなくなり,ローカルTL,つまりインスタンス内の非フォロワーには投稿が読まれないということになります。

「同じ関心を持っているインスタンス登録者全員に投稿を届けたいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいし関心が違うだろうから非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず他のインスタンス登録者に届けられなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

マストドンが,分散型システムによるソーシャルネットワークであり,独自にインスタンスを立ち上げられることやグループ単位で利用する点に注目が集まっているにもかかわらず,一方で一過性の技術的ブームでしかないと見なされてしまうのは,利用するためのデザインに不足があるからだと思います。

現在のマストドンは,他のSNSがあって始めて利用開始が成り立っている状態です。

そしてインスタンスを立ち上げて,登録を促してみても,上記のような矛盾にぶつかり,マストドン単体で解決できない以上は,まだ一般の人々を巻き込んで利用を拡大してもらうことは難しいと思います。

マストドンはオープンです。

そのことは揺るぎないし,何よりも優先すべきことではあります。

しかし,だからこそ,関心の異なる人たちが分散し,偏在できるためのオープンな間仕切りの仕組みも必要だと思います。

マストドンは開発進行中のプロジェクトでもあります。

上記の課題に対する解決策やアイデアを実際に提案したり実装することが可能な取り組みです。そのようなことができるようになる能力としてコンピュテーショナル・シンキングやプログラミング・スキルようなものが必要なのでしょう。

たとえ一利用者だとしても,要望を伝えて共有することから物事が変わり始めると思います。

おそらくマストドンは,もう数年したときには,より成熟したソーシャルネットワークプラットフォームとしての姿を見せるのではないかと思います。あるいはそう時間はかからないかも知れません。

ただし,いまはまだ進化の途上といったところです。 

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