平成二十五年霜月一日

 沖縄・宮古島や仙台,岡山への出張などが続き,ようやく3連休で一休み。出張の報告を書きたいと思っているのだけれど,宿題や名刺整理など片付けたい事柄があって,まだ書き出せずにいる。

 iPad Airも発売され,その他にも欲しいものがいろいろあるが,可処分所得は全部旅代として出ていくので,もうしばらく我慢しなければならない。

 今月は和歌山と北海道にお出かけ。そして29日には徳島県の足代小学校で最後の公開授業と研究会である。ちょうど足代小学校の取り組みを取り上げたWeb記事が公開された。有り難いことに私の名前も出てきたりする。

 十校十色,実証校は20校あるから「二十校二十色」といったところ。あちこちお邪魔し,実際にその土地を歩いて感じた雰囲気を重ねて見ると,似たように見える実践の場面にも異なる想いが込められていることも見えてくる。

 せっかく文部科学省でアルバイトしているのに,そういう学校の日常のひとつひとつをちゃんと拾って仕事に盛り込めてない自分の力の無さにうな垂れがちになるけれど,出来る範囲で頑張るしかない。

無線LANアクセスポイント考

 学校設置用の無線LANアクセスポイントはマインドシェア的にはCiscoの独占状態なので面白みがないですが,家庭用の無線LANアクセスポイントは地味に興味深いです。

 ネット依存問題も賑やかになってきたのでフィルタリング機能が再度スポットライトを浴びそうなのと,多くのメーカーでスマートフォン設定アプリが登場していることなどです。

 たとえばフィルタリング(悪質サイトブロック)については「ファミリースマイル」というネットスター社のサービスをIOデータとNECの無線LANアクセスポイントが搭載しています。

 フィルタリングに関しては必要性がある一方で,機能的に十分でないとか使いにくいとか,対処方法として無理筋なところも無くはないのですが,サービス自体は地道に改良改善されているので,ニーズがあれば積極的に使っていくことが大事と思います。

 有料サービスであるということが,なかなか利用されづらい大きな理由なのかも知れませんが,何か妙案はないものでしょうか。

 また最近はモバイルデバイスに設定アプリをリリースしているメーカーも多く,たとえばIOデータ社は「こどもフィルター」というアプリをリリースしていますし,よく似たものとしてエレコム社も「こどもネットタイマー」というアプリを出しています。

 アプリから「WiFi接続のオン/オフ」ができるという機能があるのは面白いなぁと思いました。Bluetoothと組み合わせてWiFiの電波発信も停止してくれる機能があると,嬉しいなと思いのですが,さすがにそれはコスト的にも難しいでしょうか。

 正直,こんなに電波を浴びている生活は,あまりよろしくないと思うので,必要がなければ電波発報をやめる機能(スマホの機内モードみたいなもの)をアクセスポイントにも付けて欲しいと思う次第です。

 昨今は,近所で無線LANアクセスポイントを使う家庭が増え,しかも遠くへ届かせるためのハイパワーな製品も増えて,電波が混信状態。家の中なのに,突然繋がらなくなる事態も増えています。

 それと似たような状況になっているのが,情報機器などの展示会場。それぞれのブースでたくさんのモバイル機器を展示するため無線LANを使うので,展示会にもかかわらずネットワーク接続が不調となり,デモンストレーションできない事態が当たり前になりつつあります。

 そして,私たちの関心が向いている学校という場も,これからデバイスが増えてくると同じような問題を抱えることになります。

 電波・電磁波が健康に及ぼす影響を懸念している方々は,そのようなデバイスの利用や無線LANアクセスポイントが設置されることに不安と疑問を感じています。これは私自身も考えなければならない問題と捉えているのですが,利便性と安全性をどうバランスさせるべきかを常に考える必要があると思います。

 そのためにも,先ほど書いたように,必要な時に電波発信をオンにして,不必要な時は電波発信を停止できるスイッチ機能を付けるべきだと考えています。そうした選択可能性があって初めて,バランスをどうするかの議論も可能になるからです。

 いまのところは教室設置で常時電源オン方式ではなく,ワゴンに端末と無線LANアクセスポイントをセットにして,必要に応じて各教室のコンセントにLANケーブルと電源ケーブルを挿して使うのが妥当かなと個人的には考えています。

 また,一度にたくさんの台数のモバイル機器が無線LANを利用する場合の問題は,すでにそうした課題に対応した製品を開発している企業もありますので,なんでもかんでもCiscoではなくて,たとえばメルー・ネットワークの製品を使うといった他の選択肢を考慮できるようになることが大事なのだろうと思います。

 無線LANは確かに便利です。それだけでなく私たちは携帯電話のような広範囲な電波通信を日常的に便利に利用しています。

 これらの利便性と,また一方で抱える問題をよく理解して,必要に応じた選択が出来るようにすることが大事と思います。

[FS沖縄] 20131016 宮古島市立下地中学校公開授業研究発表会

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 フューチャースクールをめぐる旅で全国あちこちへお邪魔していますが,今回は人生で初めて足を踏み入れる沖縄という土地です。

 宮古島には小学校が20校,中学校が16校あり,高校は4校とされています(沖縄県発表の学校基本調査速報)。とはいえ,宮古島では学校統廃合の問題がずっと議論されており,少子化もあってこの数字は年々減少傾向にあるようですが,統廃合に対する反対もあります。

 実証校である下地中学校は,生徒数105名の小規模校ですが,宮古島全体の中学生の数が1800名程度ですので,島内で極端に少ない学校というわけではないと思います。学校は下地小学校や幼稚園・保育所とも隣接しており,寂しいという感じではありません。

 前日に宮古島に到着し島内を散策したのですが,夕方はあちこちで下校する児童や生徒の姿を見かけられましたし,中心地近くは学校も散見されたので,意外と子ども達が多いと印象を抱いたほどです。

 ただ,島には島なりの悩みもあるようで,子ども達には高校以降の進学先が島内に無いため,ほとんどの子が島外や県外に出て行くことになるそうです。そうした島特有のライフコースに対して学校教育がどう貢献すべきなのか。そうした問題意識の中でこの地域の教育が展開していることは押さえておくべきだと思いました。

 

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 公開授業は全クラス(4つ)が公開してくださいました。1年生の理科と社会,2年生の保健体育,3年生の英語でした。

 理科では,大地の変化を読取る単元で,ポーリングによる調査方法をゼラチンでつくったミニ地層とストローを使って模擬的に体験し,その結果をタブレット端末を使って撮影したりまとめる活動をしました。

 社会では,アジアの国々を知る単元で,タイの工業化についてデジタル教科書やインターネットのリソースを使った調べ学習の取り組み。

 保健体育では,傷害の防止のために必要なことを各班が手分けして調べ学習を行ない,その成果をコラボノートなどを活用してまとめあげる活動とプレゼンを行ないました。

 英語では,ビデオチャットを活用して各グループが異なる拠点の相手と英語でインタビューを粉得活動を展開していました。アメリカやインド,台湾などの人々を相手に英語で会話をし,最後はコミュニケーションの内容をまとめていました。

 いずれの授業もタブレット端末とデジタルのコンテンツ,インターネット等を学習の道具として手に馴染ませた活用をしていました。ビデオチャットのスカイプでは,海外によっては回線速度が厳しく音声のみという相手がいましたが,学校側の回線には十分余裕があり接続問題はほぼありませんでした。

 宮古島での教育方針が交流事業に力を入れているということもあり,インターネットで外部と簡単につなげられる道具が入ることは,そうした取り組みにもプラスに働いていることが分かりました。

 遠く沖縄に飛んで,その地域の空気に触れながらフュチャースクール推進事業の取り組みを見ていると,当然のことではありますが,同じようなICT機器を導入していてもその浸透の仕方は地域によって異なることが見えてきます。

 それぞれの地域に生きる私たちが今後の日本でどう生きていくのか。そのために何を学び,その学びのためにどんな環境条件や学習機会を提供できるのか。

 今回の実証事業を踏まえて考えなければならない事が山ほどあり,それは今後ずっと引き受けていかなければならないのだろうと改めて思います。  

教育学習的デジタルツール考

 先日,Facebook上に次のような投稿をしました。

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 ノート系のコラボレーションツールについて、事あるごとに触れたり考えるのだけれど、私が古風すぎるのか、思い描く使い方にピッタリなツールに出会えてないように思う。  皆、何ゆえ、同じ模造紙やノートに複数同時に書き込む事から考え始めてしまうのだろう。  同じノートに書き込める事が「共有」だとか「協働」だとかいうのは、たぶん二番目なのだ。本当に欲しい「共有」は、自分のノートがきっちり作れて、そこから必要な部分を取って出しできることである。そういう設計思想を踏まずに、同じノート上で領域分けて自分の書き込みをすればいいと誤魔化してるものが多すぎるように思う。  だから使用過程でノート自体が混乱し破綻が生ずるものもある。それをユーザー側がカバーすることをそれとなく強いてしまうものもある。  とはいえコラボレーションツールの設計や実装は難しい。妥協もどこかで必要と思う。あともう少しで理想的なものがてきるのではないかと期待することはできても、実現するのは、また違う話なのだ。 https://www.facebook.com/kotatsurin/posts/10151903006468850

 

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 もちろん特定製品に向けたものではなく,書き込みする機能をもったコラボレーションツール全般に対しての考えを述べたものです(コラボレーションツールと一口に言っても大変多様なので,それも困ってしまいます)。

 でも,皆さんは思われるかも知れません。 「実際には,活用されている事例があるじゃないか」と。

 たとえば教育向け製品「コラボノート」(ジェイアール四国コミュニケーションウェア)は,様々な学校での導入事例があり,このジャンルでは有名なソフトです。

 コラボノート自体は,総合ツールとなっているため,ここで対象となるのは「電子模造紙」機能(for School部分)のことになります。これは「わいわいレコーダー」というソフトとしても別途開発されている機能です(細部は異なります)。

 コラボノートは,児童生徒が電子模造紙に同時に書き込むことができるようにつくられています。これによって協同学習を支援できるとされています。製品紹介サイトの画面例をみていると,地図づくりや壁新聞づくり,学校間交流で児童生徒の意見をずらっと並べて比較する例が見受けられます。

 類似のものには,SKY MENU Classの「デジタルもぞう紙」であるとか,その他にも昨今は,会議ミーティング向けの資料・アイデア共有アプリなどが協働作業に使えるとしていくつか注目されています。

 これらは,協働制作物を作り出す際に有効なツールというわけですが,問題は,個人のツールとして機能が弱いことです。個別の書き込みやまとめは,協働成果の一部分として残りはしますが,「私のノート」として個に返せないのです。

 もちろん多くの商品には,個別ユーザーがファイルやデータを書き出すなど保持して,後日参照することができる機能は付いています。

 しかし「自分用に書き出したりコピーを持つこと」と「私のノートとして自分に返すこと」はまったく異なる行為です。

 いま一度,考えていただきたいのですが,教育や学習を主目的とした活動は,最終的には個に返って決着する必要があります。その過程において,班や学級のパフォーマンスが問われることはありますし,総じて最後にはそのような括りで成果が現われることもありますが,児童生徒学生が個々に応じた発達をなし得なければ,これは教育・学習活動にはなり得ません。

 つまり,組織として最高のパフォーマンスが出せれば良い企業活動のようなものとは,その着地点が異なることを教育を語る上では念頭に置かなければなりません。

 よって,協働制作物がツールの支援も相まってより良いコラボレーション結果として完成し得ても,そのコラボレーション活動や成果物から個々の児童生徒学生が何かしらの前向きな変化を得られなければ,協働作業ではあっても協働学習ではないのです。

 そして,こうした活動においてデジタルツールが個の学習に役立つ一つのカテゴリが「ノート」であろうと思います。

 ご存知のように,昨今は「コンテンツ」のカテゴリを対象としたデジタル教科書あるいはデジタル教材といったデジタルツール(と呼ぶべきかどうか,異論あると思いますが,ここではとりあえずそうしておきます)が話題になっています。

 文部科学省も「デジタル教材等の標準化」の作業を進め,デジタル教科書・教材のイメージを練り上げている途中です(このページに掲げられているイメージ図は今後も変わり得ます)。

 その中では,デジタル教科書を「コンテンツ」と「ビューア」で構成したものと位置づけ,これと連携するアプリケーションとサーバーなどの組み合わせとしてデジタル教科書・教材の全体像を描いています。

 しかし,デジタル教科書はネーミングの悪さも手伝って,現時点での現状が正しく伝わっていない上に評判が悪く,デジタル教材にしても,そのイメージに引っ張られてか,ありとあらゆる学習場面に取り入れられるかのごとき受け止められ方をされています。

 昨今,多くの人が四六時中,スマートフォンやタブレットでネットのコンテンツを消費している風潮を,そのまま学校教育にも引っ張ってこれば,そのような理解もさもありなんです。

 まして,ここで重要だと訴えている「ノート」のカテゴリは,デジタル教科書・教材イメージ図の連携するアプリケーションの一つ「電子ノート」として書き込まれているだけです。

 本来であればデジタル教科書・教材と同程度,あるいはそれ以上に,電子ノートあるいはデジタルノートに注目すべきと思います。

 似たような考えをお持ちの方は,意外とたくさんいらっしゃるようです。

 

 しかし,実際にはデジタルノートに対する期待はたくさんあるにも関わらず,なかなかそれを満たしてくれるものが現われない現実に多くの人が困っているといった様子も垣間見られます。

 文具に様々な商品があるように,デジタルノートも何か特定の商品が良い悪いというのではなく,個別のニーズに応ずることが出来るよう様々なものが登場して,それらがストレスなく情報・データ交換できる仕組みが備わる,そういった環境に早く進化していって欲しいなと思います。

20131008 学びのイノベーション事業・指導方法等WT

 文部科学省でお仕事。学びのイノベーション事業の指導方法等ワーキングチームの会議でした。台風近づく中で夜行バスでの出張。貧乏研究者だからね,削減できるところは削減してます。^_^;

 実証校の皆さんから提出いただいた実践事例をもとに,モデル化に繋げるための分類などをディスカッションしていました。

 一応,文部科学省の正式な検討会なので,事務方担当者の皆さんも周りを固めて,議事の記録も行なわれているわけですが,気がつくと,考えたことや思いつきを呟いたり口走ったりと自由気ままに発言している自分がいて,終わってから大変申し訳ない気分になります。

 といっても,毎度直りませんけれど…。

 私たちの目標は,「教育の情報化ビジョン」パンフレットで示された学びの姿を学校の先生方に理解してもらい実践に繋げてもらえるようなガイドの作成になります。

 またガイドですか…とうんざりする皆さんの気持ちは分からないでもありませんが,私たちがお引き受けした仕事はそういうベタな部分の仕事なので,ベタはベタなりに積み上げなければなりません。

 もちろんイノベーションの名前を意識しながら議論を進めていますが,お察しの通り,国レベルで進めているものが破壊的な性格を持つことは極めて難しいわけで,その辺を少しでもイノベーションっぽく傾かせるにはどうするか,制約の中で作業しています。

 そういう意味では,イノベーションは地方からという誰かの言は当たっているのだと思います。皆さんに近いところに変革の糸口はあるということです。

 会議は延長戦に突入し,その日は3時間40分という長さに。  宿題もたくさんもらって,会議は終わりました。