〈デジタル教科書〉に関して学術研究と教育実践を取り結ぶための場として「日本デジタル教科書学会」が設立されたようです。
これまでの学術研究団体の系譜から派生したものではなく、〈デジタル教科書〉の可能性に期待を寄せる学校現場の先生方や研究者有志の方々によって構想され発足したものであることが特徴的です。
ネットによるソーシャルな活動が勢いづいたこの時代ならではの学会の誕生に、まずはお祝いの言葉を贈りたいと思います。おめでとうございます。
垣根を越えたところで研究活動を推進していくとの理念通り、広く会員を募集しているようですので、関心のある方はWebサイト(http://js-dt.jp/)をご覧になってはいかがでしょうか。
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「物好きなお前のことだから、この学会に一枚噛んでいるんじゃないの?」と思われた皆様もいるかも知れませんが、私はもちろんノータッチ。
そもそも〈デジタル教科書〉という語に対して懐疑的かつ慎重な態度をとっている私がその名を冠した学会の設立に参加しているわけもなく、暗躍していたんじゃないの?という推量は見当違い。
そんなわけで、祝辞を言ったそばから宣戦布告するのも無茶苦茶ですが、〈デジタル教科書〉という用語を解体していく姿勢で臨みますので覚悟しておいていただきたいと思います。^_^
投稿者: 林 向達
[FS岡山] 20120601 岡山県新見市立哲西中学校授業参観
2012年6月1日に岡山県新見市立哲西中学校で公開授業参観期間がありましたので午後から参観してきました。午前中は同じ新見市の高尾小学校が絆プロジェクトに参加していることを知ったので急遽表敬訪問しました。
20120531高知県高等学校放送・視聴覚教育研究会にて講演
高知県の高等学校放送・視聴覚教育研究会から講演の依頼をいただいたので、高知南高等学校にお邪魔してきました。
秋に研究大会があるので、それに向けた取り組みの参考にするためのお話をしなさいというのが今回のお題でした。
先進的にやっている中高の実践事例があれば紹介して欲しいというご注文でもあったのですが、中高の事例は小学校のそれに比べると少なく、まして私が持ち合わせているものはかなり乏しいので、直前まで内容は悩みました。
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講演というものには、既存の知見を紹介して理解を広く得るという役目があります。なので、基本的には講演内容に関しては決まった持ちネタがあって、それを違う場所で繰り返すというのがごく普通の活動になります。
ただ私は、講演内容のスライドなどがあれば公開するのが基本方針なので、それを方々で繰り返すのは自身の心理として後ろめたさがあるのです。そりゃまぁ、私も語れることは限られていますから、ネタが繰り返すことはありますが、プロットに何も変化を加えないでしゃべるのは、ボランティアならばともかく、ある程度の謝礼をもらう仕事だと申し訳ない気持ちになります。
それで、今回も直前まで、ご要望と持ちネタとを掛け合わせて、新しい講演のプロットを考え出すのに苦労したという次第です。
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今回は「コミュニケーションを育む情報技術と学校」という題目をつけて、もしも研究大会で何か提案されるのであれば、こうした点に着目してはどうですかというメッセージを込めてお話を構成しました。(後日、資料やレジュメは追加して公開します。)
先方の研究会の趣旨などを読んで、新しい時代について意識されていたので、「新しい時代」というのは何だろうところから話を始めました。
そして未来を考えるために、私たちが歩んできた過去の出来事を社会年表も見ながら皆さんと一緒に振り返り、メディアや機器の寿命などを意識することを通して、今あるもの、新しいものについて感じてみたわけです。
今回は、前々から使ってみたかった「ネオ・デジタルネイティブ」のお話を入れました。私たちが相手にしている児童生徒たちがどんな世代なのかを意識することも大事だし、その人たちに新しい時代を生きてもらうために何が必要なのかを考えてみたかったからです。
それから現在起こっていると思われる「コミュニケーションに関する困難」を三つご紹介し、こうした困難を乗り越えることもこれからは必要ですよねというお話もしました。今思うと、この部分は分量オーバーだったかなと思いますが、思考スキルの鍛錬が大事ということをお話しする中で取り上げた関西大学初等部の取り組みに関心を持った先生もいたので、まあ、無駄ではなかったなと思います。
そしてかなり未来にぶっ飛んだ話で終わるのも忍びなかったので、日常から取り組めることを三点示した感じで締めました。
途中う、簡単な実践事例の写真を見せて、ご紹介した知見がこんな形で関係しますよとお話したり、質疑応答の時に届いたばかりのフューチャースクール推進事業のDVD映像を見せたりして、まあ、テープレコーダー的な講演もしました。そちらの方が会場の関心度も高かったので、あらやっぱりという感じでしたが… ^_^;
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直前まで講演内容づくりにこだわるのは結構だけど、やっぱり盛りだくさん過ぎたし、ぶっ飛んだ話も多かったので、講演直後は会場「ポカ~ン」状態。またやっちゃったかなと直後は凹むのですが、それでも雑多な話の中からフィードバックを返してくださる方もいて、それほど酷いこともないかなとちょっと自分を慰めるという感じです。
その後、私を呼んでくださった先生のメールには「よい研修会になったと思います」と書かれていたので、刺激にはなったのかなと思います。まあ、たまには変わり種もよしということで。^_^
講演音声を自分で録音したつもりだったのですが、押したはずの録音ボタンの直後に停止ボタンに触れてしまったらしく、残念ながら録音ならず。まあ、残すほどの講演はしていないので、また次回の新作に向けて精進をしましょう。
というわけで、講演を終えて、次はその足で岡山を目指したのでした。
教育ITソリューションEXPO 2012
2012年5月16日から東京ビックサイトで「教育ITソリューションEXPO」を開催しています。せっかくなので教育ICTに関する最新動向の調査をするため参加してます。
かなり大規模な展示会で、主要企業が何らかの形で出展してることもあり、情報収集には良い機会。しかし、平日開催であることや、来場者も教育企業や自治体関係者、大学関係者が多いため、小中高校の先生方にとっては距離が遠い催事でもあります。
少しでも情報が伝わればと思って会場からのツイートをしてみたりしますが、前述したように客層が硬い人たちばかりなので、私以外のツイートはほとんどないといった状況ですし、大して反応もないのでちょっと寂しいところ。
まぁ、教育展示会としては老舗のNEW Education Expoが別にあり、そちらは教育現場との距離も近いので、うまく棲み分けていると考えればいいのかも知れません。
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さんざん教育のICTを追っかけているお前が展示ブースを見て回ることに意味があるのか、と思われてしまいそうですが、展示そのものよりもお客さんの反応を見に行っている部分も大きいのです。
私自身にとってはだいぶ見慣れた商品やサービスを、普通の来場者は喰いついてるのかどうなのか…。
今回、会場を回って感じたことは、目新しいものは多くないということです。
ハードウェアに関していえば、電子黒板ソリューションが目立っていましたが、液晶やプラズマによるディスプレイの大型化というわかりやすい進化を除けば、電子黒板としての機能は何年も前からすでに出来上がっている状態。大手電機メーカーの決算に関する昨今のニュースを思うと、価格の問題は簡単じゃないことも感じます。
また、情報端末に関しては、シャープの学習端末が目立って展示されている以外は、いずれも控えめな露出といった風で、学習者用情報端末に主役としての勢いはありません。タイミング的にWindows8待ちの中途半端な時期であることも原因でしょう。Androidに関してはフラグメンテーションやマシンパワー不足などがあともう一息で解消するという、これまた中途半端な時期だけに、本腰が入らないのも仕方ないのでしょう。
ソフトウェアは、様々な企業が趣向を凝らして開発していますが、部分的な目新しさを除くと、ジャンルとしてはタイプがほぼ出尽くしているので、見た目や使いやすさで差別化をしていくくらいしかないといったところです。
それでも教育の情報化市場の拡大を期待して、様々な企業がいまある商材を持ち寄って熱烈アピールをしているわけです。また、そうしたものに初めて接する来場者も少なくなかったりします。
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幸い、フューチャースクールや学びのイノベーション、絆プロジェクト、教育スクウェア×ICT、DiTT実証実験などの実践事例が充実してきたこともあり、単に商品が存在するのではなく、具体的な活用と共に示されていることは今までにない傾向です。
また、デジタル教科書に関しても、実際のデジタルコンテンツの充実と関係する団体や政府の動きの活発化もあって、盛り上がりが感じられるようです。
こうした雰囲気が良い方向へと展開していくことを願いつつ、一方で、道具を活かすカリキュラムや教育方法の蓄積がますます重視されなければならないのだと思います。
香港の電子教科書開発計画
5月7日に香港の教育局長が電子教科書開発計画について発表したそうです。
孫明揚:開拓電子教科書市場(香港政府ニュース)
2012〜2013年に試行して、2014〜2015年には全面的に導入するということだそうですが、一体これはどんな文脈で起こっているのでしょうか。
教育局長の発言を報道するニュースWeb記事を眺めると,どうも教科書価格の問題が背景にあることから決定された計画のようです。
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香港では、教科書検定制度をとっており、購入は保護者負担です。
教育局としては、保護者が過度の負担を負わないために、様々な策を講じているようですが,どうも満足する成果が上がっていないようなのです。
昨年は教科書会社に教科書から教材の分離を要求して、少しでも教科書価格を低下させようとしたようですが,これが思うようにうまくいかなかった。
そこで、非営利団体に対して電子教科書開発を補助する計画をスタートさせ,教科書会社が寡占している市場を破壊しようというのが教育局長の言い分のようです。
電子教科書を開発して教育局から無償提供すれば、これは従来の教科書会社にとって厄介な競争相手が登場することになりますから、価格への影響は不可避でしょう。
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もともと電子教材の開発などは推進していたようですので,昨日今日始まったということではないようですが,それにしても教育局長からの発表にネット上ではいろいろ反応が見られます。
国が電子教科書をつくることはよいことなのか。たとえば統制の問題や民業圧迫という話も出てくるでしょう。
電子教科書は情報の素早い更新にこそ意味があるのであって,それは検定制度とは相いれないのではないかという指摘もあります。
日本と違って学校単位で採択することが基本のようなので,どの電子教科書や教材を選ぶのかということに関して問題を言及する人はあまり見当たりません。教育の専門家である教員のすることに素人が口出さないのは当然といった感じが漂います。
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もう一つ面白いのは、この話題にiPadだとかタブレットPCだとか、デバイスの話がほとんど出てこないところです。
日本は(それと韓国なんか)どうしても情報端末と一緒にイメージする議論になりやすいですが,他の国の議論を眺めると、CD-ROMやWebとしてアクセスできる教育コンテンツなら全部電子教科書みたいに考える大らかさがあります。
それに対して、「正規教科書」とかいうヘンチクリンな用語を持ち出して法律を書き直そうとしている日本の動きを見ると、また複雑化して後始末が厄介な事態が生まれそうで不安になります。
とにかく、ここ数年は各国の動向が賑やかそうです。