201408 集中講義「カリキュラム論」

 2014年8月5日〜8日の4日間,椙山女学園大学で集中講義「カリキュラム論」を担当しました。毎年恒例の集中講義は12年目に突入。

 生活科学部や看護学部など,教員養成ではない学生達が受講する科目なので,教育課程に関する基本知識から始まって授業づくりの作業を一通り学び,評価規準表と授業指導案をつくろうという,ぎゅ〜っと詰まった4日間です。

 12年も積み重ねていれば,授業準備はさぞ楽だろうと思われがちですが,受講生達は毎年違うため,どのように講義を進めるのかは模索を繰り返しながら決めていきます。こまめにコメント用紙を書いてもらうのでフィードバックもかけながらやっています。

 今回は,学生達が全員スマホ所有者だったことと,紹介したShare Anytime(最近名称変わってMetaMoJi Shareになったようですが…)をやってみたいというので,受講生30数名にシェアノートを配布してみんなでコラボレーション機能を体験しました。

 受講生達にとっては初めて使うアプリなので,興奮気味に書き込みや消去が繰り広げられていくので,ノート上の結果は散々なものでしたが,ネットを介したシェア機能には可能性を感じてくれたようでした。

 ちなみに先に担当した大学院の集中講義では講義の内容を記録するツールとして利用したり,情報整理の作業を展開してもらったりと,もう少しまともに活用していました。あらためてツールが有効に活用できるかどうかは,学習規律が醸成されているかどうかにも深く関わることを実感しました。

 今回も4日間があっという間に終わりました。コメントに書かれた感想は,好意的なものが多かったのですが,12年もやっていると自分の方に不満が募るもので,そろそろこちらは大幅リニューアルしてみたいと思う今日この頃。

201407 集中講義「現代授業メディア論」

 7月31日〜8月2日の3日間,鳴門教育大学で「現代授業カリキュラム論」という集中講義を担当しました。

 授業で利用できるメディアがこれだけ進化した今日,アナログ/デジタル問わずメディアとしてのツールをどのように活用するのか,関連する理論にはどのようなものがあるのか,実践と理論の橋渡しができるよう学ぶ講義です。

 遠隔教育による大学院プログラムの授業科目の一つで,夏のスクーリングとして開講されました。受講生は現役の先生方が中心で,少人数でじっくりと議論できました。

 当初は視聴覚教育の文脈で学術知識を学ぼうかと考えていましたが,受講生の皆さんの興味関心や他の講義の内容を聞き出しているうちに,認知心理学と学習科学に関して学んだ方がよさそうであると判断して,ヴィゴツキーの文化的学習理論など扱いました。

 ヴィゴツキーの三項図式は,主体(A)と対象(B)の結合が媒介項(X)を介して行なわれるというものでしたが,それが「メディア」をテーマとする講義の内容に合致していたので,結果的にはよい流れとなりました。

 理論的な話だけでなく,様々なメディア/ツールについても概観していきました。特にICT関連ツールはアプリやWebサービスなどを仕組みも含めて解説しました。これだけでも授業回数分消化できそうですが,ほどほどにしながら理論と合わせて進めた次第です。

 もう少し体系立てて授業を構想すべきなのかも知れませんが,野球のピッチングにおける初球の面白さと同じで,生みの試行錯誤をそのまま出していった方が面白い授業になることも多く,今回はそれがうまくいった感じです。

 来年度も委嘱いただけるかどうかは分かりませんが,自分なりに蓄積していきたいと思っています。

egword Universal 2というワープロ

 最近は常用ワープロというものがなくなりました。 現在はテキスト情報はEvernoteに記録しておき,図形や画像系の情報はDropbox上のフォルダで管理して,必要に応じてそれらを取り出し組み合わせて使っています。

 原稿依頼の要望に応じて,Wordを使うことが多いですが,授業のハンドアウトはPagesにしてますし,結果がPDFでよければInDesignでやってしまいます。

 これまで長文作成の機会といえば2回の修士論文執筆ぐらいしかありませんが,その時に使ったワープロはNisus Writer 6.5とegword Universal 2でした。

 この2つが私にとっての常用ワープロでしたが,どちらも販売が終了し,サポートもされていません。 Nisus Writerは新しいバージョン(全く新たに作り直されたProというバージョン)に引き継がれているので,ワープロで何か書かなければならないのであればNisus Writer Proをチョイスするという感じですが,以前ほどではなくなっています。

egword Universal2.jpg

 egword Universalはグッドデザイン賞も受賞したMac用の日本語ワープロでした。 販売が終了してしまったのは,Macの売り上げが今ほど良くなかったためソフトウェア販売もとても難しい時期で,経営判断として会社が解散したためです。

 それにあの当時から日本語ワープロというのは商売にするには大変難しいジャンルでした。Microsoft Wordが絶対的な存在であり,その周辺を小さなソフトウェア達が取り囲んでいたため,ユーザーはそれぞれの選択に散らばってしまっていたからです。

 egwordはMac用の日本語ワープロとしては老舗のソフトで,歴史は長いし,技術力も十分で,常に前進していたソフトウェアでしたが,あなたも私もEGWORDという風にはシェアが拡がりませんでした。 MacがOS Xとなり,Intelプラットフォームに変わり,激変を続けても,egwordはそれにピタッと張り付き,最新技術を投入して進化していましたが,とうとう2008年に販売終了が決定されたのでした。

 egword Universal 2は最後のバージョンでした。 Mac用の日本語ワープロで,あそこまで機能や性能品質をバランスよく高めてデザインしたソフトは他にないと思います。

 幸い,Mac OS X Mavericksにegword Universal 2をインストールしてアップデータをかけると,正しく表示されない部分はあれど,まだ動作するようです。もうサポートもされていませんが,久し振りに引っ張り出して使い始めているところです。

20140705 教育と情報の歴史研究会01

 2014年7月5日,千葉県柏市にある「さわやかちば県民プラザ」の会議室をお借りして,「教育と情報の歴史研究会01」を開催しました。

20140705_editreki01.jpg 記念すべき第1回に30数名もの参加者を得ることができ,地域インターネットの取り組みとして有名な柏インターネットユニオン(NPO-KIU)の関係者の方々にご登壇いただいたことで,内容も大変充実したものとなりました。

 当日の様子は「教育と情報の歴史研究」サイトに動画とシェアノートを公開しています。昨今は佐賀県の方が先進的な取り組みをしているとばかり話題になりますが,千葉県が過去から積み重ねている努力についても是非この機会に触れていただければと思います。

 この研究会の成果は,後日ニューズレターも発行する予定でいますが,当日の参加者付箋などを収録したシェアノートについてもご注目いただきたいと思います。また,記念冊子として配布した年表についても同様にシェアノートとして公開しています。

 Share Anytimeというアプリを利用しています。インターネットを介して情報更新が共有できる仕組みを持っていますので,研究会当日の質問への回答を後から付け加えると皆さんの手元のシェアノートにも自動的に届きますし,皆さんが動画をご覧になって抱いた感想や質問を書き込むことで全員のシェアノートに反映されますので,時間を隔てながらも研究会に擬似参加することが可能です。

 シェアノート活用は皆さんとの関心共有活動をどのように維持していくかという模索の一環ですし,Share Anytimeもまだ進化していくシステムですが,しばらくはこの方法を使っていこうと考えています。

学習場面の類型化はバラバラに…

 

 2014年6月21日にNew Education Expo 2014 in 大阪の国際セッションに登壇させていただきました。

 当日は日本における教育情報化の施策についてご紹介する役目だったのですが,相変わらず語りまくり,韓国からのゲストに通訳する人にご苦労かけてしまいました。付き添っていた大学院生の方に「先生,すごく早口…」とチクリ言われてしまいました。>_<;

学びのイノベーション事業の実証研究報告書は,分厚くて読むのが大変とはいえ,その後あんまり話題にならないので,私なりに活用方法をご紹介しました。

 「教育の情報化ビジョン」で示された「一斉学習」「個別学習」「協働学習」のイラストをバージョンアップし,事業で実践された事例を踏まえた「学習場面の類型化」として報告書に提示しました。イラストの一覧は概要資料に掲載されています。

 このイラストを眺めているだけでは仕様もないので,雑誌の付録のようにチョキチョキとハサミで切って,バラバラのカードにしていただきたいのです。

 本来であれば,このカードの組み合わせパターンを分析した上で,パターンの法則のようなものをお示ししたかったというのが本音なのですが,それはまた今後の課題ということで,皆さん自身でカードをいろいろ並べながらパターンを生み出していただきたいと考えています。

 21世紀型スキルを踏まえた授業づくりは,「前向きアプローチ」と呼ばれる目標創造型の学習活動デザインがイメージされています。あらかじめ目標が決まっている目標到達型の学習活動をデザインする「後ろ向きアプローチ」(あるいは逆向きアプローチ)とは異なります。

 これまではどちらかというと(目標から学習活動を導き出す)後ろ向きアプローチが授業づくりになじみがあったわけですが,(個々の学習者の学習現在地点から望ましい目標を紡ぎ出す)前向きなアプローチも組み合わせていくことが求められています。

 その上で評価についても,知識が生み出され構築されていくことを評価できる「変容的な評価」というものを受け入れていく必要があります。

 この「変容」という言葉は難しいのですが,評価の物差しが人によって伸び縮みするという意味ではありません。むしろ,多種多様な物差しを駆使して,適切な評価が可能になるように組み合わせを変えていくことにイメージが近いと思います。

 学びのイノベーションの学習場面一つ一つや,状況に埋め込まれる変容的な評価の細かな一つ一つも,いままで見たこともない新たなものが持ち込まれるというわけではありません。それらを学習者中心にどう組み合わせて配置し,配置替えし続けていくのか,その基盤と営為を学校教育に持ち込むことこそ重要なのです。

 学びのイノベーション事業は,フューチャースクール推進事業と合わせて展開していたこともあり,教育の情報化やICT機器活用といった側面が強烈に目立っています。学習場面イラストもほとんどがICT機器の利用シーンを描いたものです。

 もうお分かりかと思いますが,学習場面でICTを活用するか否かも,また組み合わせの問題であり,紡ぎ出す目標に応じて要不要をデザインしていくことが求められています。

 学校教育が担うべき新たな教育学習活動を支える基盤や道具としてICTは有用ですし,変容的な評価を可能にするためにもテクノロジーは多いに活用すべきでしょう。教育におけるICT活用の推進は,その可能性に対する国の条件整備として行なわれれているものです。

 その上で,学校での教育と学習においてICTをどのように活用していくのか,目的目標等に応じて吟味していくことが望まれるのです。