豊福先生セレクト:学習者中心主義のICT文具的展開動画

国際大学GLOCOMご所属の豊福晋平先生は,教育ICTを当たり前とする学習や教育に関して積極的に情報発信・提言をなさっています。

Twitterアカウントでも多様な情報をキュレーションされていますが,「学習者中心主義のICT文具的展開のシリーズ動画」というツイートもされているので,勝手ながら参照しやすいようにツイートを集めてみました。

GIGAスクール構想関連情報

このブログ記事ではGIGAスクール構想関連情報を雑多に集めます。

20191223「GIGAスクール構想の実現について」(文部科学省)
20191223「GIGAスクール構想の実現」(文部科学省)[削除済み]
20191220「「学校における1人1台端末環境」公式プロモーション動画」(YouTube)
20191224「初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第373号」(文部科学省)
20200124「初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第376号」(文部科学省)
20191224「GIGAスクール構想(R1-2)」(りん研究室)
20191204「ICT環境を用立てる」(りん研究室)
20191202「学校教育におけるアカウントを考える」(りん研究室)
GIGAスクール構想関連エントリー (りん研究室)
 https://www.con3.com/rinlab/?tag=gigaスクール構想
20200205「小中学校PC保有率 佐賀は2人に1台、愛知は7.5人に1台という格差に政府が動いた 「1人1台PC」デジタル教育時代の課題」(FNN)
20200205「【1人1台】タブレットを個人貸与 愛知県岡崎市が方針」(教育新聞)
20200205「岡崎市教委、総合教育会議で「岡崎版GIGAスクール構想」を策定」(ICT教育ニュース)
20200202「GIGAスクール構想〜学びが変わるはず〜」(Dried98@note)
20200131「学力テストPC移行へ 出題・解答とも23年度から 文科省方針」(東京新聞)
20200131「パソコン方式移行に意欲 全国学力テストで文科相」(時事通信)
20200130「指定都市市長会が GIGAスクール構想 に関する要望書」(教育家庭新聞)
20200130「GIGAスクール始動 2318億円を投入、補正予算成立」(教育新聞)
20200129「静岡市立小中、1人1端末 21年度までに、小4から貸与」(静岡新聞)
20200129「20200228 文部科学省 「GIGAスクール相談会」開催」(JAPET&CEC)
20200128「1台27万円? 小中学校に「PCを1人1台」で膨れ上がる予算」(NEWSポストセブン)
20200127「GIGAスクールに向けた学びを 学芸大附属小で研究会」(教育新聞)
20200126「社説:1人1台PC 投資に見合う教育効果あるか」(読売新聞)
20200123「小中学校にパソコン1人1台 特需を喜べないメーカー」(日経新聞)
20200122「学校におけるオンライン調査等の実現性に関する実証研究の結果報告」(宮城教育大学)
20200116「すべての学校にローカル5Gが!?GIGAスクール構想とは?」(5Gチョイス)
20200114「2023年度 県教委が検討 1人1台コンピュータ端末整備」(チューリップテレビ)
20200114「GIGAスクール構想とは(1) 1人1台学習者用端末の標準仕様をチェックする」(ICT教育ニュース)
20200114「2つの「一人一台」環境」(takshinada@note)
20200113「GIGAスクールネットワーク構想についての雑感」(はてな匿名ダイアリー)
20200112「GIGAスクール構想(学校PC一人一台)成功に向け、SE時代に配慮していたことを公開してみる」(EverLearning!)
20200111「GIGAスクールについて中二の娘に聞いてみた」(稲田友 @NTT Com)
20200110「PC1人1台対応急ぐ 県や市町、国補正で小中学校配備へ」(静岡新聞)
20200110「みやぎのGIGAスクール構想推進」(宮城県)
20200110「GIGAスクール構想に乗り遅れるな!」(achiran@note)
20200110「「GIGAスクール構想」って何?Gigabyteのギガではなく…〜元資料をさっと把握できるまとめ」(ICT toolbox)
20200108「GIGAスクール構想:よく聞く課題の3つ」(田中康平@Facebook)
20200108「GIGAスクール構想を読み解く③」(のざたん@note)
20200107「GIGAスクール構想を読み解く②」(のざたん@note)
20200106「GIGAスクール構想を読み解く①」(のざたん@note)
20200105「さ、ひっくり返そう。」(稲田友 @NTT Com)
20200105「GIGAスクール構想でネットワーク・クラウド・端末を整備」(教育家庭新聞)
20200105「児童生徒も1人1台PC活用の時代~一歩進んだ協働学習へ【東京学芸大学 高橋純准教授】」(教育家庭新聞)
20200105「Chrome OSのユーザー補助機能」(Sam's e-AT Lab)
20200103「GIGAスクールの構想」(教育新時代SHOT)
20200103「本当にクラウド活用と一人一台はできるか」(学校ICT支援と活用促進に役立つかも知れない毎日の事例)
20200102「「1人1台」の変革元年 学習者中心の教育へ」(教育新聞)
20191231「教育データ活用新時代 ― 一人一台デバイス時代の教育 ―」(義一のページ)
20191231「文部科学省が提唱するGIGAスクールネットワーク構想」(Sam's e-AT Lab)
20191229「1人1台で勝手に妄想」(学校ICT支援と活用促進に役立つかも知れない毎日の事例)
20191229「学校で「一人1台」環境で1年以上学んだ児童生徒170名に実態を聞いてみた」(EverLearning!)
20191229「ぜんぶGIGAのせいだ」(のざたん@note)
20191228「GIGAスクール構想」(西川純のメモ)
20191228「GIGAスクール構想を1枚にまとめてみた」(稲田友 @NTT Com)
20191228「「教育の情報化に関する手引」(令和元年12月)を読んで9000字でまとめてみた」(教育ICTリサーチ ブログ)
20191228「奈良県域GIGAスクール構想の実現」(奈良県立教育研究所)
20191227「1人1台端末整備へ向けて「調達仕様案」を超教育協会が公表!」(超教育協会)
20191227「GIGAスクール構想のポイント」(教育家庭新聞)
20191226「1人1台タブレット 先進校の成果と課題は」(教育新聞)
20191226「令和元年度補正予算案でGIGAスクール構想の実現に向けた補助金が確定 これからの教育現場はどう変わっていくのか? 新たに見えてきた課題とは?」(EduTechnology)
20191226「ICTをマストアイテム化した教育改革:戸ヶ崎勤・戸田市教育長」(Facebook)
20191225「ネットワーク未来予想図2020」(月刊テレコミュニケーション)
20191225「NTTコミュニケーションズ株式会社による株式会社コードタクトの株式取得について」(NTTコミュニケーションズ)
20191225「教育用ネットワークをトータル提案 IPv6網活用でコスト削減・高速化」(RIC TELECOM)
20191225「【最速解説】教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改定」(稲田友 @NTT Com)
20191224「「未来の教室」をたずねる:前田康裕先生がたずねる未来への学び」(さくら社)
20191224「文部科学省「GIGAスクール構想の実現」」(kintaのブログ)
20191223「初等中等教育機関を対象としたSINETの接続について 説明会 2019/12/23」(KOJI@ロイロノートCEO)
20191223「NIIサービス説明・相談会2019」(国立情報学研究所)
20191223「文科省「教育の情報化」手引、GIGAスクール構想受け追補版も」(リセマム)
20191220「1人1台、経産・総務も予算化 EdTechや5Gを盛り込み」(教育新聞)
20191220「文部科学省「教育の情報化に関する手引」(令和元年12月)における特別支援教育」(kintaのブログ)
20191220「文部科学省 GIGAスクール構想の実現について」(スクールニュース)
20191220「GIGAスクール」(ロイロノート先生サポート)
20191219「政府補正予算案、就職氷河期世代の教員採用を後押し」(日本教育新聞)
20191219「【フラッグシップ大学】WGが最終報告案 来年度中に選定」(教育新聞)
20191219「GIGAスクール実現推進本部が初会合 施策パッケージを決定」(教育新聞)
20191218「プログラミング教育必修化目前、ネガティブ意見に経産省・浅野大介氏が答える(インタビュー)」(コエテコ)
20191217「萩生田光一文部科学大臣記者会見録ー予算ー」(文部科学省)
20191217「学校1人1台端末 導入支援プログラムを開始」(ロイロ)
20191215「文部科学省補正予算で令和元年度にGIGA スクール構想が始まるようです」(kintaのブログ)
20191213「今年度補正予算案を閣議決定 校内LANを全学校に整備」(教育新聞)
20191206「学校にICTを普及させる「1人1台」が経済対策にもりこまれたが、「支出ありき」の懸念も:前屋毅」(Yahoo!ニュース個人)
20191128「文科相の「1人1台の端末」発言に「宝の持ち腐れ」が再現される気配:前屋毅」(Yahoo!ニュース個人)
【GIGAスクールネットワーク構想段階のもの】
20191122「【萩生田光一文科相】学校のICT整備、補正予算に計上」(教育新聞)
20190830「文科省概算要求、学校の通信ネットワーク構想に375億円」(リセマム)
20190829「文科省概算要求 12%増の約6兆円 学校に高速ネットワーク」(産経新聞)
20190828「【独自】文科省が新構想 「GIGAスクールネットワーク」」(教育新聞)

GIGAスクール構想(R1-2)

先の「令和元年度一般会計補正予算」案の閣議決定と年明けに予定されている国会での成立見通しのもと,「GIGAスクール構想」の関連施策が急ピッチで進行中です。

政府関係者はもちろん,皆さんの住む自治体の教育委員会や情報施策を扱う自治体部局の関係者が,クリスマス前後に大わらわで対応をしています。あるいは,その担当者の方々さえ,前例のない事態に混乱困惑しています。

令和元年度補正予算関連は別にまとめています。GIGAスクール構想関連情報はこちらに。

今回は,文部科学省が当初用意した「GIGAスクール構想」の2つのWebページのうち,「GIGAスクール構想の実現」(削除済み)の方に掲載されている情報を少しずつ読み解いていこうと思います。
(情報がもう一つのWebページ「GIGAスクール構想の実現について」の方にまとめられたようです。)

「GIGAスクール構想の実現」

「GIGAスクール構想の実現」(1枚目)

全体概要をまとめたのが「GIGAスクール構想の実現」スライドです。
このスライドからは,構想関連の事業に「2,318億円」が補正予算で確保されたこと。どんな事業があるのかということ。補助の範囲や割合,この補助措置を受けるための条件(要件)がまとめられています。

ちなみに念頭に置いていただきたいことがあります。
GIGAスクール構想は文部科学省から発せられているので,文部科学省だけがやっていることだと受け止められがちです。しかし,実際には,総務省や経済産業省との連携にもとづいて行なわれることを理解する必要があります。何より重要なことは,全体予算を統括する財務省もOKを出した内容がこうして公表されていることです。

また,そもそも事業予算とは,各自治体に自動的に配られる「配当金」ではなく,自治体が能動的に申請して初めて付与される「申請枠」の捉え方に近いものです。担当の方々がしっかり対応しないと措置されません。

さて,あらためて上記スライドのGIGAスクール構想(文部科学省分)を見ると,構想には2つの事業が含まれていることが分かります。

(1)「GIGAスクール構想の実現」に向けた校内通信ネットワーク整備事業
(2)「GIGAスクール構想の実現」に向けた児童生徒1人1台端末の整備事業

以上2つです。

「ネットワーク整備」と「端末整備」の2つの事業は,組み合わせが求められていますが,基本は別物です。また,高等学校について,ネットワーク整備では対象となっていますが,端末整備では対象外になっている点は注意が必要です。

(1)ネットワーク整備

ネットワーク整備事業は,施設整備として考えるようですので,施設の一部として捉える「電源キャビネット」の整備もこちらの事業枠に加えられています(ただし(2)との兼ね合いもあって高等学校は対象外です)。

スライドにはありませんが,今回のネットワーク整備で求められているレベルは,校内ネットワークのLANケーブルは10Gbps対応であること,ネットワーク機器は1Gbps対応であることが望ましいとされています。

これは学校の教育学習活動に快適なネットワーク利用環境を提供するためであると同時に,今後,学校を会場として実施するコンピュータを利用した試験などに対応したり,災害等の緊急時に避難場所として利用される学校での通信手段提供インフラとしても必要とされるからです。

すでにネットワーク整備をして間もないとしても,全国水準を満たしていなければ,帯域強化をしなければなりませんが,単純な部品交換などは今回の整備事業対象外のため,帯域拡張等する際は1人1台環境にするための拡張工事とする必要があることに注意が必要です。

しかも,校内ネットワークが強化されれば,当然,学校外とのネットワーク接続も高速化しなければ,快適なネットワーク利用は叶いません。別に実証実験が始められる予定である学術ネットワークSINETへの接続は,こうした部分に取り組むものですが,すべての学校が実証実験に参加できるわけではありません。学校外との接続部分に関しては自治体負担で高速にする必要があります。

今回の補助はあくまでも「学校の校内ネットワークにおける工事を伴う整備」が対象です(そのため教育センター関係のネットワーク整備も補助対象外です。教育センターが通信のボトルネックになることもあるので改修の要不要を確認する必要があります)。

なお,校内LAN整備工事と一体としてならば,無線LANアクセスポイント整備は補助対象であるため,これは多くの自治体にとって関心が高いかも知れません。

「GIGAスクール構想の実現」(3枚目)

スライド(3枚目)のロードマップを見ると重大なことが分かります。

ネットワーク整備事業は「令和元年度補正予算限り」(または令和2年度への繰り越しのみ)となっていることです。

ごちゃごちゃ書かれた囲み枠が分かりにくくしていますが,赤い矢印が令和2年度に収まっていることに注目してください。これは今回の予算措置を逃すことは許されない,最終列車であることを表わしているともいえます。

「GIGAスクール構想の実現」(2枚目)

スライド(2枚目)を見ていただくと,今回の補助に関する措置イメージが描かれています。

素人なりにこの図を読み解くとこんな感じです。

「(1)令和元年度補正予算の場合」と「(2)文部科学省において令和元年度補正予算を繰り越し、令和2年度事業として実施する場合」と2つの場合があります。これは要望を出したタイミングや扱われ方によって変わるものです。

たとえば「令和元年度補正予算の場合」はこんな感じ。

大事なのは「補正予算債 100%」の方

私たちは,黄色の部分が補助対象で,白い部分(1/2の内の40% = 20%)は自治体が用意して負担しなければならないのか?と思いがちです。
ここでは「補正予算債」という形で100%付与されることの方を注目すべきで,つまり,ローンを組む(起債する)ことで,その年度に自治体で用意すべき負担額が「ゼロ」になるということが重要です。

もちろん白い部分は,自治体がローン返済(償還)する必要がありますが,今回のように自治体負担(頭金)なしに起債して事業に取り組めるのは滅多にないチャンスです。

〈補足〉
以下の記述が総務省文書「令和元年度補正予算(第1号)に伴う対応等」にありますが、GIGAスクール構想の場合,100%の地方債充当と内60%の後年度元利償還金が認められ,内残り40%(つまり全体の20%)の償還金は自治体負担となります。

(3) 追加の財政需要
今回の補正予算により令和元年度に追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、原則として、その100%まで地方債を充当できることとし、以下に掲げるものを除き、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置することとしている。
(中略)
 ③「GIGAスクール構想の実現」に向けた校内通信ネットワーク整備事業に係る補正予算債
「GIGAスクール構想の実現」に向けた校内通信ネットワーク整備事業に係る補正予算債の後年度における元利償還金については、その60%を公債費方式により基準財政需要額に算入すること。

つまり,この年末に大至急で計画を整え,細かいところはあとから頑張ろうと割り切って要望を申請すれば,令和元年度補正予算として扱われて自治体にとってまずは負担が生じないことになります。

一方,令和2年度事業として扱おうとなった場合…

一般財源として負担する部分が生ずる!

令和元年度補正予算から外れるので起債できる割合が100%でなくなります。そのため,令和2年度から始めるとあらかじめ自治体負担をする必要がでてきます。それが「一般財源」と書いてある部分です。

それでも,文部科学省の関係者の方々の尽力と各省庁関係者の理解で,1/2の内90%(75%+15%)までは起債が認められたので,残り1/2の内10%(つまり全体の5%)の一般財源負担でよいレベルとなっています。
また,後年度以降の償還金(交付税措置)の比率は,令和元年度と令和2年度とで変わらず60%(75%x0.7 + 15%x0.5)が国から措置されます。

これを関係者の人々が「破格の対応だ!」と評するのは,これほどの予算優遇措置は滅多にないことであり,今後期待できないレベルだからです。

〈補足〉
「補助」と「補助裏」という言葉があります。「補助」部分である国庫補助部分に対して,「補助裏」部分は差し引いて残った部分のことです。そして補助裏では自治体によるローン(起債)が組まれます。今回「○○債」とあるのがそれです。そのうち「交付税措置」とされている黄色部分はローン返済(償還)に国から償還金が付与されますが,白い部分は自治体自身が後年度以降に予算計上して償還しなくてはなりません。

「結局,ローン組むんじゃ,なんのメリットもないんじゃないの?」というのが一般的な考え方ですが,財務の世界では逆にローンを組む(起債する)のが許されることに大きな意味があります。今回のように起債の割合(充当率)が100%で認められることは,資金ゼロで物事が始められることであり,自治体にとって大きな意味があるのです。この起債充当率で財務省がOKしたのは,それほど政府や様々な方面から必要性が強く働きかけられた結果です。
というわけで,補助裏というと,残り半分を埋め合わせる他所からの予算措置があるものだと思いがちですが,そうではありません。そして,今回の補正予算で100%起債が認められたことのチャンスをぜひ活かすべきだということになります。

つまり,令和元年度補正予算事業で取り組めば「頭金ゼロ円」で,令和2年度事業で取り組めば「頭金は全体の5%」で,それ以降は「全額自己負担一括払い」を覚悟で…ということです。

財政の仕組みの面倒くささがありますが,このような仕組みの上で,関係者の人々は自治体の事情を勘案しながら取り組んでいます。

私たち国民は,このことを理解した上で,GIGAスクール構想が目指している理念に理解を示しつつ,一方で,これらの整備事業がGIGAスクール構想が目指す目的・目標に合致して適正に進められているのかを注視する必要があるということです。無責任な否定も,単なるお任せも,令和の時代には相応しくありませんから,この機会に次代の教育についてみんなで考えたいところです。

(2)端末整備

端末整備は,令和5年度までかけて,児童生徒1人1台の学習端末を配備する事業です。公立学校に関しては,対象となる児童生徒数に対して定額(4.5万円)の補助が出ることになっています。

 令和2年度は小学5,6年生と中学1年生が対象
 令和3年度は中学2,3年生が対象
 令和4年度は小学3,4年生が対象
 令和5年度は小学1,2年生が対象
以上の対象学年の児童生徒数(その2/3)が補助金額の算定基準となります。

児童生徒1人ひとりが1台以上の学習端末を利用できる環境を整備するのは,デジタル端末の利用シーンのほとんどが,従来は学校外の個人的・商業的文脈での消費的利用に奪われたままであるのを,今後は学校を中心とした協働的・教育学習的文脈での創造的利用に振って取り戻すためです。

教育の情報化がこれまで進展せず,デジタル端末の利用シーンを学校の中に生み出せていなかったツケは大きいため,向こう側に振り切れた針をこちら側に引き戻すのは大変ですが,少しずつ針を動かしていかなくてはなりません。

さて,今回の端末整備事業とは別に,もともと「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」が走っています。

「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」

GIGAスクール構想の端末整備事業予算(2/3)と5か年計画の端末整備事業予算(1/3)は,当然重複しないように設計されたため,児童生徒全員分(3/3)を整備するには,この2つを組み合わせて要望しなければなりません。

少なくともGIGAスクール構想の端末整備事業は,5か年計画の端末整備事業を「措置要件」としていますので,5か年計画で整備済みか,今回の機会に同時整備を計画することが条件となっています。

標準仕様書について「概要資料」

さて,整備される端末はどうなるだろうということです。

文部科学省からは「標準仕様書」なるものが公表されました。「学習者用コンピュータ」と「校内LAN」に関して標準仕様が記載されています。

文部科学省によると「ネーミングを失敗しちゃったかな」という感じらしく,あちこちでこれは「モデル例」であることが併記されています。つまり,この通りでなくてよいということです。

今回のGIGAスクール構想は,当然,全国の自治体に対して発せられていますが,実際には自治体によって整備状況がバラバラで,すでにネットワークも端末整備も済ませちゃったところもあれば,まだすべてこれからですという自治体もあり,その規模感もまるで違います。

また,自治体によって,統一的な端末(OS)導入をしているところもあれば,小学校と中学校で導入端末(OS)が異なっているところもあるわけです。

ところが,一番最初に示したスライド「GIGAスクール構想の実現」(1枚目)の措置要件には「効果的・効率的整備のため、国が提示する標準仕様書に基づく、都道府県単位を基本とした広域・大規模調達計画」と書かれていて,導入済み端末がバラバラな状況で,その取りまとめをどうするのか,大規模調達のメリットは出させるのかと疑問が噴出して,関係者はとても悩まれています。

同スライドで注目すべきは事業スキーム部分の「交付先:民間団体(執行団体)」という記載です。

これは学校や設置者である自治体に交付されるのではなく,取りまとめをしてくれる企業などに対して交付されることを意味しています。その企業や団体が様々な種類の端末(OS)を上手に取りまとめてサポートしてくれればよいのですが,現実的にそれができる企業はあるのか,各都道府県に対応してもらえるのか,それもいろいろ悩ましいところです。

ちなみに,今回のGIGAスクール構想は,「クラウド活用推進」がベースとなっているので,ネットワーク整備で快適な通信環境を構築し,クラウドサービスをストレスなく利用できるようにするかわりに,端末自体が装備する機能やソフトウェアなどを少なくすることが意図されています。4.5万円の金額も,そのような軽量クラウド端末を想定したものです。

クラウドサービスのアカウントを1人1つ整備することで,異なる端末(OS)を超えた活用に繋げることはできますが,そうした利用のためにもスキルを育んでいく学習環境の整備が必要になるでしょう。

セキュリティポリシー

教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和元年12月版)」も公開されました。

ガイドラインの改定について「概要資料」(3枚目)

従前のものが「一元管理」を指向した内容だったものを「クラウド・バイ・デフォルトの原則」にもとづいて見直したとされています。

つまり,このセキュリティポリシーガイドラインが,教育学習のための柔軟なネットワーク利用を可能とする環境の整備を妨げてきてしまったという反省にもとづいた改訂です。

自治体におけるセキュリティポリシー作成の際,このガイドラインをコピペしたものもいくつか見受けられたということもあってか,中身の構成を見直し,守るべき内容を記載したとのこと。そして,守る方法については有識者を招いた上で十分検討吟味し,分からなければ文部科学省に問い合わせることを推奨しているようです。

教育の情報化に関する手引き

教育の情報化に関する手引き(令和元年12月)」も公表されました。

教育の情報化に関する手引(令和元年12月)概要

合わせて360ページものボリュームとなり,これ一つで教育の情報化に関する取り組みの参考情報となるよう作られました。

正直言えば,専任の編集者を置いてスリム化して欲しかったと思いますが,これは利便性というよりも「手引きに書いてある」記述性を重視したものなので,ここからさらにブレークダウンした参考図書や解説の執筆や講演が関係者によってなされることになります。

なお,現在公開されているバージョンは,イラストなどの図版がまだ少ないため,年度内に図版の追加や情報更新した「追補版」が予定されているそうです。

GIGAスクール構想の実現パッケージ

すでに実現パッケージの中身には触れてきましたが,2番目に掲げられているのにまだ触れていなかった「GIGAスクール構想の実現パッケージ」というスライドを見てみましょう。

「GIGAスクール構想の実現パッケージ」(1枚目)

今回は,1.と2.と3.について触れてきました。

この他にも同スライドには,4.関係省庁の施策との連携について,経済産業省や総務省の取り組みが紹介されています。5.民間企業等からの支援協力募集については,今後様々な情報が出てくるのだと思います。

==

2019年12月23日に文部科学省で「学校の情報環境整備に関する説明会」が開催され,各都道府県・政令指定都市の教育委員会と各自治体の情報政策の関係者が出席し,GIGAスクール構想について説明がなされました。

すでにそれ以前から,つまり補正予算案件が決定しそうな前後から,各自治体には連絡が送られ続けて,次から次へと新しい情報や見直された情報が届いていたようです。そして,年明けに補正予算が成立するのを見計らう形で,年末年始に全国の自治体の要望確認をしているところのようです。

関係者の皆さんは,いまもずっと詳細を詰めるために検討作業や調整作業を続けています。ここでご紹介した情報も,細かいところは現在進行で見直される可能性もあります。

確かに,大きな金額が動く国家事業であり,そこに幾らでも怪しさが紛れ込む余地があるかも知れません。しかし,私たちが前向きな関心を抱き続けることで,指摘され得る懸念に対応する改善力が与えられますし,適度な緊張関係のもとで様々な手続きも適切に行なわれるようになるはずです。そのような関心の持ち方をしたいところです。

今回のGIGAスクール構想にあたって,担当課長さんは次のようなことを強調しておられます。

「何をするのかはあくまで手段 何のためにするのか(目的)が極めて重要!」

その目的は,文部科学大臣のメッセージをはじめ,各所で各様に述べられてきているものです。それらをいつでも気にしつつ,同時に私たちは「初めの問い」に戻る姿勢も合わせて持ち続けたいと思います。

令和元年度補正予算関連

2019年12月13日に臨時閣議案件として提出された「令和元年度一般会計補正予算」が決定されました。

これにより,令和2年度要求として「GIGAスクールネットワーク構想」となっていたものが,令和元年度補正予算の決定に伴って「GIGAスクール構想」と名称が変わっています。ネットワーク整備にフォーカスしていたものが,情報端末整備も含めたものになったせいだと考えられます。

関連情報をメモ。

20191213「令和元年12月13日(金)臨時閣議案件」(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2019/kakugi-2019121302.html
20191213「令和元年度補正予算(第1号)政府案が閣議決定されました」(財務省)
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/hosei1213.html
20191213「令和元年度文部科学省 補正予算案の概要」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h31/1408722.htm
20191213「令和元年度補正予算(第1号)に伴う対応等」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zaisei02_02000233.html

20191219「GIGAスクール構想の実現について」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm
20191219「GIGAスクール構想の実現」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_00127.html
20191219「「教育の情報化に関する手引」(令和元年12月)について」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_00117.html
〈参考〉 20191205「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(令和元年12月5日閣議決定) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1205/20191205_taisaku.pdf 20190911「令和2年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧(令和元年8月)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420668.htm

〈国民の安全・安心の確保、未来のへの投資等〉
◆GIGAスクール構想の実現 2,318億円

学校における高速大容量のネットワーク環境(校内LAN)と、義務教育段階における一人一台端末の整備について、令和5年度までの実現を目指し、まずは初年度として、整備を確実に実施する。

担当局課
初等中等教育局 情報教育・外国語教育課
【うち国立大学附属学校分】高等教育局国立大学法人支援課
【うち国立高等専門学校分】高等教育局専門教育課
【うち私立学校分】高等教育局私学部私学助成課

事業名
・「GIGAスクール構想の実現」に向けた校内通信ネットワーク整備事業
・「GIGAスクール構想の実現」に向けた児童生徒1人1台端末の整備事業

総務省「令和元年度補正予算(第 1 号)に伴う対応等
「補正予算に係る財政措置等」

「GIGAスクール構想の実現」に向けた校内通信ネットワーク整備事業に係る補正予算債

 「GIGAスクール構想の実現」に向けた校内通信ネットワーク整備事業に係る補正予算債の後年度における元利償還金については、その60%を公債費方式により基準財政需要額に算入すること。

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「GIGAスクール構想の実現 ロードマップ」

「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」(文部科学省)


「これからの学びを支える学校ICT環境整備の実現に向けたイメージ」

【QA】(ただし,現在の情報から推察される返答)

Q 今回から始まる措置は恒久的なものか?
A いいえ。

地財措置(地方財政措置)である「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」は,2002(令和4)年度までを期間としています。
今回の補正予算や令和2年度に措置される端末整備費は,上に掲げたイメージ図にあるように令和3年度と令和4年度と令和5年度まで継続が期待できるとしても,5か年計画が切れた令和5年度以降は各自治体が独自に予算を確保して持続させる必要があります。
3年後に,今回の導入スキームを継続するのか,あるいは児童生徒が個人で購入することを基本として補助する形にするのか,その他の可能性も合わせて検討して移行しなければなりません。

Q 「国が提示する標準仕様書」は一つだけなのか?
A いいえ

支援メニューによって,また,選択する基本ソフトによって,条件が変わり得るため,提示される標準仕様書は複数パターンが用意されます。

Q ICT支援員の経費は組み込めるのか?
A う〜ん

人的措置の必要性については,議論の中でも幾度と語られてきた論点であり,今回もそのような経費を含めることが想定されていたようですが,基本的にICT支援員は「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」の方で措置されるものとなっているので,補正予算では含まれないと考えられます。

Q すべての基礎自治体に等しく措置されるのか?
A いいえ

「措置要件」に明記されているように,今後を見据えた準備に取り掛かっていることが必要となっています。しかし,この補正予算の機会に全国すべての小中高等学校が余裕ある安定したネットワーク接続を実現することが望まれています。よって,各自治体は,国による補助が受けられるタイミングに学校ネットワークの整備をすることが妥当な選択といえます。

(随時更新)

【参考情報】

統合型校務支援システムの共同調達・共同利用のための手引き:平成30年度 統合型校務支援システム導入実証研究事業」(文部科学省)

令和元年度 美里町立励徳小学校 ICT導入事業仕様書」(熊本県美里町)

近江八幡市教育情報ネットワーク及び校務系システムに係るサービス提供仕様書」(滋賀県近江八幡市)

真岡市教育委員会学校ネットワーク構築業務基本仕様書」(栃木県真岡市)

鈴鹿市教育ICT環境等調達仕様書(共通編)」(三重県鈴鹿市)

箕面市教育ICT環境整備に係る学校情報ネットワーク再編工事仕様書」(大阪府箕面市)

学校ネットワークシステム再構築及び運用保守業務業務仕様書」(山梨県甲府市)

実践的な教育ネットワーク整備ガイド 〈設計・運用編〉」(全国地域情報化推進協会)

学校における情報セキュリティ及びICT環境整備等に関する研修教材」(文部科学省)

1人1台どれを選ぶか

学校における1人1台学習端末 GIGAスクール構想 は,経済対策の一環として閣議決定され,令和元年の補正予算から措置されます。学校における1人1台学習端末の予算も補正予算内に含まれているようです。

まずは,「学校のネットワーク環境」を整え,「教職員・児童生徒のアカウント付与」をすることが必須条件です。不出来なフィルタリング機器などを導入してしまって台無しにしないように気をつけなければなりません。

しかし,世間の関心が高いのは,学習端末としてどの機種選ばれるかということかも知れません。

政府の意向としては,一括入札による金額的なメリットを得るため都道府県単位で導入することを推奨しているようです。そうなれば,47都道府県と政令指定都市ごとに端末選択をする可能性があります。

文部科学省から「端末1台5万円程度」という目安が示されたこともあって,各メーカーによる5万円水準に抑えた端末の売り込みが早くもスタートしています。しかし一方で,5万円程度で得られるスペック性能が満足いくものなのか疑問を呈する声もネット上では散見されます。使途によるとはいえ,この見極めは難しいです。

下図は5万円周辺の端末に対するイメージ図ですが,これも一面に過ぎません。

とにかく,すでに商戦は始まっており,一般市民が注目すべきは国レベルの予算云々よりも,私たち自身が住む市町村や都道府県の教育委員会周辺で展開するビジネス政治の抗争です。

過去に私たちは,教科書採択の場で不公正な顧客勧誘活動が展開し事件になったことを経験しています。同じことが学習端末選定の場面で起らないよう,厳しく目を光らせておくことが重要です。

高性能

低性能

面倒

手軽