昨今の動き

次期学習指導要領にかかわる策定作業は進行中で、先日(8/22)もこれまでの審議のまとめが公表されました。

20160819 教育課程部会 教育課程企画特別部会(第20回)配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/1376199.htm

これに対する読解や解説も少しずつ見られるようになってきました。「学びの地図」といった言葉も登場し、某紙では次期学習指導要領がいかに新しい試みであるかを論じていました。

一方で、次期学習指導要領が射程に入れている時代のあるべき学校教育とは何なのか、別の角度から検討提言する動きもあります。例えば、国立情報学研究所は、あらためて読解力に関する現状を把握した上で、その向上策を模索しようとしています。

文章を正確に読む力を科学的に測るテストを開発/産学連携で「読解力」向上を目指す研究を加速
http://www.nii.ac.jp/news/2016/0726/

これからの世界と渡り合うために必要な資質・能力の育成のために学校教育の大胆な変革が求められているという認識が広まっている一方、その変革に必要な基盤そのものが瓦解していたという現実をも直視せざるを得なくなっているのが現状です。

これを学校におけるカリキュラム・マネジメントによって乗り越えることができるのか。もちろん乗り越えなければなりませんが、よりによってマネジメントレベルの話を武器に議論が展開さているのは、旧式のエンジンによる力業で押していこうとするように見えます。エンジンの喩えで表現するなら、今必要とされるのはもっと繊細な制御が可能なエンジンのはずです。

もちろん国家基準の策定作業における議論は大味にならざるを得ないことは仕方ありません。そう考えると、受け止める側、変わらなければならない側の学校とその成員がどれだけ踏ん張れるのかということが、そのための支援が重要になってするのだと思います。

夏のあれこれ

 滞っている研究室ブログの更新を再開していこうと思います。

 7月後半から8月初旬は、大学授業の前期締めくくりと、公立学校が夏休みに入るということもあり、いろんな催事とそのお手伝いをする仕事、および夏期の講習関係の担当など、盛りだくさんでした。

 その後、私的な米国渡米で不在をしていましたが、無事に帰国もできたので、少しずつ通常営業に戻しつつある日々です。

 様々なドタバタがあり、最新動向のキャッチアップもできていないので、しばらくは浦島太郎状態で、勉強のし直しです。

今年もICT活用教育アドバイザー

 昨年度(平成27)は,文部科学省「ICT活用教育アドバイザー派遣事業」に関わって,ICT活用教育アドバイザーとしてお仕事をしました。

 臨機応変に仕事をさせてもらえたので悪い印象もなく(逆に言えば好き勝手してご迷惑をおかけしたので私の悪評は増したと思いますが),断る理由がなかったので今年度もアドバイザーリストに名前を連ねることになると思います。(今年度の関連ページ

 とはいえ,昨年度の仕事について,事業全体の視野で考えをまとめることができていないのは残念だったので,今年度はもう少しその辺の考えを深めたいと思います。

 ちなみに,昨年度の仕事は,次のような報告書にまとめられています。 

「地方自治体の教育の情報化推進事例―ICT活用教育アドバイザー派遣―」報告書
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1370125.htm  

 この報告書は「自治体の持つ課題」を7つに類型化して掲載しています。

  1. ビジョンや目的が明確でない
  2. 推進計画が立てられない
  3. 推進体制ができていない
  4. 予算要求のための根拠が明確でない
  5. モデル事業の進め方に問題がある
  6. 調達のための知識が不足
  7. 活用推進の仕組みができていない

 この類型化は,自治体と,そこで一緒に議論した人間にとっては,少々取っ付き難いというか,何というか。自分たちのことを分析した時に「〜がない」とか「不足」とか言うのは納得できますが,初めからこう分類表現されてそこに自分たちを当てはめるとなると,心理的な抵抗感や違和感があるように思います。そのことを意見できなかったのは後悔しています。 

 一方,アドバイザーとしてのアプローチに関して,各人各様だったとはいえ,類型化のような整理が行なわれず,報告のみになってしまったことで課題として残りました。

 昨年度は事業自体に許された時間が短期間だったことも,未整理の原因でした。今年度がどうなるのかは見当もつきませんが,少しは前進するといいなと思います。

 ちなみに,ICT活用教育アドバイザーの中の一人として私が個人的に考える課題へのアプローチ項目は次のようなものです。すべての課題に対応するものではありませんが,こういう項目は確認しておきたいなと思うところです。

「現状認識の整理」
「技術的可能性の理解」
「地域としての願望整理」
「教室での利用場面を思考再現」
「鳥瞰的なシステム概略図の作成」
「国・都道府県と自治体の施策比較」
「教職員のICT環境の見直し」
「関係部局の協業体制の構築」
「関係者の継続的なコミュニケーション」

 今年度はどこかを担当するのか,しないで終わるのか分かりませんが,あれこれ心配されている教育システムに関する問題についても意識をしながら,このお仕事も考えてみたいと思います。

サーバー整理

 りん研究室の物理空間のお引っ越しは山場を越えて,あとは適当に詰め込んでしまった蔵書の整理をする作業が残っているところですが,年度は走り始めてしまい,日々の授業や職務などでなかなか手付かずです。

 一方,教育研究活動にとって重要な道具であるデジタル・ネットワーク関係も,繋ぎ合わせの累積でできた環境を見直して,もう少しシンプルに整理する必要がありました。

 たとえば,ドメインとサーバーです。

 この界隈では,研究室で独自ドメインを取得して,Webサイトを運用したり,メールアドレスを設定しているところもあります。インターネットにおける住所の基盤となるドメインは,社会活動する上では重要な情報です。

 そして,実際にWebページやメールを処理するのがサーバー・コンピュータということになります。このコンピュータをどう確保して運用するのかは悩ましいのですが,自分で設置して管理するよりは,ネットワーク上の有償レンタルで利用するのが一般的です。

 りん研究室も「rinlab」といったキーワードでドメインを取ろうかどうしようか,いつも悩むのですが,ユーザー名との組み合わせがあまり美しくないので,結局は目的に応じたドメインを取得する形にしています。

 このブログも「www.con3.com/rinlab/」というアドレスになっていますが,con3.comというのは私の父が命名したオフィスのネーミングに由来しています。

 問題はサーバーです。

 大学という職場はインターネット環境は整備されていてある程度は利用しやすいのですが,サーバーを自前で設置するとなると役所並に面倒なことになります。実験的なことがいろいろしたいなら外部に用意した方が手軽です。

 昨今はブログを開設すること自体は簡単になっていますし,あちこちクラウドストレージサービスも存在していますから,いろいろ試しているうちに,あちらにブログ,こちらにWebサイト,こちらに掲示板みたいなかんじで,自分の情報も散在してしまったりします。

 レンタルサーバーも競争ですから,契約していたものが閉鎖したり,サービス内容が変わったりして,最初はそこで頑張ろうと思っていたものも,だんだんまとまりがなくなってきてしまったりします。

 結局,安価なレンタルサーバーとクラウドサーバーにまとめることにしました。

 安価なレンタルサーバーは自由度が多少低くなるのですが,メンテナンスはお願いできるので,安定運用したい目的に利用するように。クラウドサーバーは,要するにAmazon Web Serviceで,クラウド上に自前のサーバーを構築するわけなので,セッティングやら何やら全部自己責任です。その分,自由に実験的なことも出来ます。

 というわけで,ここ数日はコンピュータの前でそれ関連のセッティングで格闘して,いろんなブログやWebサイトをお引っ越ししていました。その引っ越し作業もまだ途中ですが,集約されれば見通しがよくなって管理もしやすくなります。

iPad Proの導入と管理

 今日は新たに導入したiPad Pro 6台をようやく開封してセッティング作業をしました。

 Appleからは教育機関で使用するための導入プログラム(機器の登録やら管理のための一連のサービスやシステムのこと)が提供されており、それだとデバイス情報をあらかじめ登録してくれるなど特別です。本来ならばそういうものに則った導入計画を進めたいところですが、実際には一度に大量導入するのではなく少数台の追加を繰り返しながら揃えていくというのが現実で、この6台も一般市販品に相当するものです。
 それでも教育機関としてはデバイス管理を一括した形で扱いたいもので、最初の設定はともかく、通常管理の際は個別のiPadを一つひとつ操作するのは避けたいのが本音です。

 一般的にiPadの管理はApple Configurator2とよばれるMacアプリで、MacにUSBケーブルで接続したiPadをセッティングするというのが知られています。

 この組み合わせによる作業は最初必ず必要なのですが、この方法を通常管理でも続けるとなると、何か設定を変えたいときはいつもiPadを集めてUSBで接続して作業することになり、煩わしいことになります。

 そこでこうした設定作業をネットワーク越しに操作してできるようにするのがMDM(モバイルデバイスマネジメント)ソリューションです。外部のネットサービスだったり、自分の組織に置くサーバーに用意するシステムだったり、実現方法はいろいろです。

 しかし外部のMDMサービスを使うとなると有料であるのがほとんどで、小規模のスタートから試しながら使うには敷居が高かったというのが正直なところです。

 そもそもApple自身はMDMソリューションとやらを提供してないのでしょうか?

 実はApple自身はMacをサーバー利用するためのアプリ「Server」を2400円で販売していて、この中に「プロファイルマネージャ」と呼ぶMDMシステムを含めて以前から提供してきました。

 しかし、プロファイルマネージャは数年前までは大変非力な内容で、純正MDMでありながら設定できる項目が少なかったため、あまり見向きもされていませんでした。

 ところが、ここ最近はiOS自体の教育機関向け機能が強化されてきたこととも関連して、プロファイルマネージャも設定項目が充実してきており、共有iPad機能やクラスルーム機能などはOS X Serverアプリの導入が前提となりつつあります。

 というわけで、そろそろOS X Serverのプロファイルマネージャによるデバイス管理も手軽に始めたい時期に来ています。Apple Configurator2を使って数十台のiPadをUSB接続で一気に設定するのもいいんですが、やはりここは遠隔操作でスマートに管理したいものです。

 とはいえ、プロファイルマネージャによるデバイス管理は、そもそもサーバーとして常時運用できるMacを1台確保しておく必要があり、サーバーのセッティングも含めて事前の準備が大変なのが弱点。それにiPadを管理レベルの高い「監視対象デバイス」として登録するには、Apple Configurator2によって個別に復元からセッティングし直さなければなりません。

 そう考えると世間で紹介されている事例がApple Configurator2のものになるのは、作業時に1台のMacを用意してConfiguratorアプリだけで済むという手軽さ故かも知れません。

 とりあえず職場の6台はプロファイルマネージャで管理できるようになりました。あとはアプリの導入などでVolume Purchase Programというサービスを利用することができるように調べてみようと思います。これも教育機関を代表した登録が必要であるというのが、小規模導入には不似合いなので、うまくいかないと思います。それでも何か方法を探して遠隔でアプリを配信できるようにしようと思います。

 サーバーやMDMを利用したデバイスの管理についての詳細な手順は別にまとめようと思います。