20151112 りんゼミ

 りんゼミがスタートして6回目。それぞれが担当しているタンジブルな教材についての報告は続いています。

 まだ課題についてどのように調べていくのか,調べたものをどう整理してまとめるのか,同時並行する卒業研究とつながった調査作業との配分をどう考えるのか等,ゆっくりのペースで学んでいってます。

 今回はSpheroのプログラミングに関して実演をしようとしたところだったんですが,バッテリー切れでちょっと残念でした。

IMG 4781

 ゼミ生に貸し出しているiPadもそれぞれ日常的に使いこなしてくれているようです。

 発表にはGoogleのスライドを主に使っていますが,WordやPowerPointでの作成も促しているところです。というのも,Googleのオフィス関連アプリはまだiOS 9のマルチタスクへの最適化が行なわれていないため,現時点では2画面表示する「Split View」などに対応できていないからです。
 やはり片方でWebの調べものをしながら,片方の文書やスライドに入力できる方が便利なので,そういう使い方ができるアプリにも積極的にトライして欲しいと思っています。無理する必要はありませんが。

 また先週は,「Google Chrome」ブラウザを紹介しました。

 やはり調べものしていると,海外のWebサイトにしか情報がないことも出てくるので,そうしたWebページからも積極的に情報収集するためには翻訳機能を持ったChromeブラウザを利用するのが効果的です。翻訳が完璧ではないという弱点を理解した上で,少しでも有用な情報と出会う手がかりに使ってもらいたいと思います。

 ちなみに,ゼミ生のiPadには,次のようなアプリを入れてもらっています(主なもの)。

 Google社製「ドライブ」「Classroom」「ドキュメント」「スライド」「スプレッドシート」「Chrome」「翻訳」

 Microsoft社製「Word」「Excel」「PowerPoint」「Sunrise」「Office Lens」

 MetaMoJi社製「MetaMoJi Note」

 その他「Post-it Plus」

 まだいろいろあるはずなので,今後ゼミ生に紹介してもらえればと考えています。

 次回からは文献購読もスタートさせようと思っています。また違った角度の文献に触れてもらって,いろいろ視野を広げてもらえたらと考えています。とはいえ,欲張りすぎて疲れないように気をつけなくては。

 

20151030 島根県邑智郡美郷町ICT活用推進会議

 文部科学省「ICTを活用した教育推進自治体応援事業(ICTを活用した学びの推進プロジェクト)」の「ICT活用実践コース」に採択された自治体の一つ,島根県邑智郡美郷町のICT活用推進会議に外部識者として出席してきました。

 先日,岡山県新見市にお邪魔したのと同じ文部科学省の事業です。

 ちなみに応援事業には「指導力パワーアップコース」「ICT活用実践コース」という2つのコースで構成される(ICTを活用した学びの推進プロジェクト)と文部科学省から自治体へアドバイザーを派遣する(ICT活用教育アドバイザー派遣事業)があります。前者は個別に外部識者を呼びますが,後者はアドバイザーをマッチングの上で文科省が派遣します。今回は,美郷町教育委員会から直接ご依頼いただいたものです。

 徳島から岡山経由,やくも号に乗って出雲市駅へ。移動時間がかかることと,今回は初めての訪問ということもあったので,前泊と後泊をしてゆっくり滞在しながら訪問しました。

IMG 4411

 島根県邑智郡美郷町は「定住子育てライフ5つ星の町」を目指されていて,子育て家族に対する支援はとても厚い地域です。たとえば「若者定住住宅」というものがあって,小学生までの子どもをもつ保護者が40歳以下の世帯のために,新築木造平屋一戸建てが月額家賃3万円で提供され,20年住み続ければ住宅を,25年住み続ければ宅地を無償譲渡してくれます。そうした定住プランの上に充実した子育て教育支援プランが組まれていて,小中学校へのタブレット端末導入も地域の学校教育を充実させるプランとして取り組まれているのです。

 美郷町には小学校2校,中学校2校の計4校あり,今回はそのうちの一つ,大和小学校というところで公開授業が行なわれたので,それを参観しつつ,協議会の場でICT活用推進についてお話が持たれました。

 授業は小学6年生の算数。画用紙の枚数を数えるのではなく重さから計算して用意したいという問題設定のもと,比例の考え方を表と式に表して児童同士で交換しようという活動でした。そこで各児童がタブレット端末(iPad)を使い,MetaMoJi Note Liteを使って表と式を書き,Dropboxにアップロードした後,教室の電子黒板で提示をしながら考え方を交換共有するという感じです。

 iPadの操作自体は子どもたちは慣れているようなので,ICT機器操作の面では特に大きな課題があるわけではありませんでした。学級規模が小さいことや,事前に参観者には手持ちのスマートフォン等のWi-Fiは切っておくように念押しされたこともあってか,無線LAN等のネットワークも不安になる要素はありませんでした。

 あとは,授業に相応しいICT活用を引き出す準備や段取りの仕方,そもそもの授業の目標に立ち返ることなどがICT利活用に振り回されることなくできるかどうかといったところ。より望ましいアプリを探して用意するということを継続する必要があるし,一方で,実際の授業におけるファシリテートのスキルも探究していく必要もあります。

 従来は黒板ベースで長らく蓄積してきた授業技法などのノウハウ蓄積を,ICT機器を加えたところでリニューアルしていく長い道のりに足を踏み入れたと考えて,腰を据えて取り組んでいく必要があるのだろうと思います。

 私がもう少し上手にお話しできる人間だとよかったのですが,課題について単刀直入に語ってしまう癖があり,今回も暖かくフォローする部分が足りなかったかなと思います。ただ,単発でしか訪れない外部の人間ですから,その機会に言うべきことを言って考える材料にしてもらうことの方が大事と思って,今回もいろいろ指摘をしていました。

 その後は,美郷町の教育長先生や各校の校長先生の皆さんと情報交換をして,一日を終えました。

 翌日は徳島へと帰る移動日でした。

 当初は行きのときのように車で送ってもらって,出雲市駅から着た道を帰る予定でした。しかし,この美郷町にはJR三江線という有名なローカル線が通っており,広島経由で帰ることが出来るので,せっかくなのでローカル線の旅を堪能することにしました。

IMG 4570

IMG 4632

 紅葉の一歩手前という時期だったのですが,江の川沿いを走る汽車の車窓からの眺めはなかなか素敵でした。また違う季節の車窓も見てみたいと思いました。

 こうした地方の学校にとってのICT環境整備と,都市部のICT環境整備とでは,その意味合いが違ってくるところがあるとは思います。私自身はどこに住んでいても,根無し草のように宙ぶらりんな人間なので,その地域に住むということの世界観を理解することが上手ではないのですが,こうやって地域を取り巻く環境に触れながら,少しでもお役に立てればと思います。

 次回は2月にお邪魔する予定です。

20151017 日本教育メディア学会年次大会

 2015年10月17日と18日に日本大学文理学部キャンパスで「日本教育メディア学会年次大会」が開催されたので出席してきました。今回から学会理事の仕事を拝命したので,理事会出席も兼ねてでした。

IMG 3917

 日本教育メディア学会は,名前にカタカナが使われているので比較的新しい学会のように見えるかも知れませんが,実はこの分野では老舗中の老舗,長い歴史を持った学会です。

 というのも,もともとは「日本視聴覚教育学会」(1964年発足,前身の協議会は1954年発足)と「日本放送教育学会」(1955年発足)が1994年に統合してできた学会で,1998年から「日本教育メディア学会」と改称したからです。

 というわけで,日本教育メディア学会とは視聴覚教育と放送教育を主な研究領域とした歴史の長い学術団体ということになります。そしてメディアはICTと無縁ではありませんから,教育と情報に関心を持つ私も無縁ではなく,いろいろご縁をいただいたことで理事へのお呼びがかかったということになります。

 正直なところ,視聴覚教育も放送教育も,私個人としてはまだ十分深められていないので,歴史を追いかける作業の中でこれから学ぶということになります。そのような人間に理事が務まるのかはなはだ疑問ではあるのですが,せっかくの機会をむしろ利用していろいろ学べたらと思います。

 そうそう,今回の年次大会の基調講演は,国立情報学研究所の新井紀子先生でした。新井先生といえば,デジタル教科書懐疑派としていろいろなメディアにコメントを求められたり,問題提起の書を書いたりしていることは,この分野ではよく知られています。

 この日,私のサイフの資金が空っぽになってしまい,金策のためATMを探しに出かけて,基調講演には遅れて出席しました。その後の懇親会も,いつものように片隅で過ごしていたのですが,突然呼び出しがあって,連れて行かれた先が新井先生のもと。

 デジタル教科書問題提起本が出たときに,その出来に不満を抱いた私があちこちに書いたものをお読みになって,たぶん私が何か言いたいのだろうと気にしてくださっていたようで,直接呼び出しとなったそうな。こってり絞られました ^_^;。

 周りの皆さんも巻き込んで,いろいろ宿題をいただいた感じになりましたが,私たち学会関係者が取り組まなければならないことがあるというのも本当のことですので,可能なところから取り組みたいと思います。

 

20151015 文部科学省「ICT活用教育アドバイザー派遣事業」全体会

 2015年10月15日に文部科学省「ICT活用教育アドバイザー派遣事業」全体会が東京で開催されましたので出席しました。これはICT環境整備をしようとする自治体を応援するために文科省持ちでアドバイザーを派遣する事業です。そこで蓄積されたノウハウを全国の他の自治体とも共有することが目的です。

 先にお知らせしたように,私もアドバイザーの一員となっていますので,午前中の授業を終えてから飛行機に飛び乗って参加した次第です。

 

IMG 3842

 

 アドバイザリーボードには37名が登録しています。ご都合のつかなかった方を除いて,多くの人たちが全体会の場に集い,派遣された場合の段取りやアドバイス活動に利用する過去の記録や報告物の説明を受けたりしました。

 また,この日はワークショップも盛り込まれて,架空の自治体の資料を題材として,その分析やアドバイスに資料をどのように活用するのかといったことをグループに分かれて取り組みました。

 アドバイザーに就任した方々のバックグラウンドや現在の立場は様々なので,分析するときの枠組みや切り取り方も様々で,大変勉強になったワークショップでした。一般的に自治体や学校への助言活動というと個々人に依頼があって,それぞれの経験やノウハウで対応していました。つまり助言活動にも場数の違いで経験に差が出てしまいます。

 助言機会の富んでいる人はより富み,機会の乏しい人は乏しいままといった感じで,そこで経験が共有されることもほとんどありませんでした。従来であれば,教え子や弟子に経験を伝授していくといったこともあったのですが,教育の情報化分野は後継者問題(若い関係者不足問題)に直面していることもあり,なおさら経験が局所化してしまい,全体の展開につながらない懸念が生まれています。

 今回の全体会とワークショップは,助言者の立場の人間が一堂に会したという意味でも大変貴重な機会だったと思います。今回の事業は自治体における教育の情報化やICT環境整備を促進することが目的ではありますが,裏側では,この分野に関わる関係者同士のネットワーク形成や経験の共有が進むことに大きな意義があるように思います。それらがうまく次の世代の人々にも引き継がれる(あるいは踏まえてもらえる)ように残していくことが大事だなと感じた会でした。

 

タンジブルな教材

 りんゼミが始動して3週目。まだ専門ゼミナール自体の運営をどうしていくのか,共通理解を形成する段階です。私が持っているイメージを伝えた上で,これからゼミ生達と少しずつ積み上げてこうと思います。

 りんゼミでは「各個人の卒業研究テーマ」と「分担する調査報告課題」の2本と,「興味深い文献のゼミ講読」ができればと考えています。

 各個人の卒業研究テーマは,Googleスライドを共有しながら書き出してもらう形で,まずは関心を広げたり細かくしてもらい,その後絞り込んでいく予定で先週から始まっています。

 今回は,「分担する調査報告課題」を発表。卒業研究をまとめるためのウォーミングアップをしてもらうために,あるものをそれぞれ調べて毎週のゼミで継続報告してもらいます。そうすることで調査や分析の方法や整理して発表する段取りなど身に付けて欲しいと思っています。

 今回のゼミ分担課題は「タンジブルな教材」。

 具体的には,Tangible Play社の「Osmo」とOrbotix社の「Sphero 2.0」とタカラトミー社の「JOUJOU Cube touch」をそれぞれ分担して調べます。

 それぞれはタブレット端末(iPad)で使うことを前提としたゲームや玩具で,画面の中のものだけではなく「実在するもの(タンジブルなもの)」とを組み合わせて楽しむという点で共通しています。

 「タンジブル」(tangible)という言葉は聞きなれないかも知れません。辞書的には「明白な,疑う余地のない」「触知できる,触れられる」「有形で実在する」といった意味があるとされています。

 昨今は,電子工作のようなものがメーカームーブメントとして流行っているといわれるのも,タンジブルなものに対する関心が高まっているからだと思います。

 もちろんこれは,デジタルとアナログの雑な対比の中での,アナログ的なものがいいという意味合いでは決してありません。「見る」だけではない「触る」という身体的に感じられる知覚手段を合わせて使うことで,もっと経験に拡がりが生まれるだろうという期待だと思います。

 そんなことから,教育・学習的にもタンジブルなものに関心を寄せることができそうです。

 りん研究室でも,いくつかこうしたものを集めていましたので,ゼミ生達にこれらを貸し出して,しっかりとエキスパートになってもらおうと思っています。そして,このブログにもゼミ生達に,それぞれ担当したものの紹介や奥深さについて投稿してもらおうと思っています。