フューチャースクール推進事業の実証校めぐりは,山形県の高松小学校にお邪魔することに。東京経由で東北新幹線に乗って山形へ向かい,一泊してから高松小学校を訪れました。
高松小学校は児童数が130数名で,学年1クラスずつという規模の学校です。
当日は,2年生の国語と4年生の算数でした。
2年生の国語はカエル君とガマ君が登場する「お手紙」という題材。登場人物の気持ちを想像して,楽しんで音読することを目指します。
4年生の算数は「2桁でわるわり算の筆算」という単元で,硬貨を使った計算からわり算の性質を見つける活動でした。
いずれに授業もIWBを活用しTPCで作業する活動が含まれたものでした。そして,もはや当然ではありますが,どちらの授業もICT機器の活用云々といったことよりも授業や学習のねらいのために授業をどう組み立てていくのかといったことを中心課題に据えて取り組む中でICTも活用しようという姿勢が根付いていました。
ご好意で授業後の研究ワークショップも参観させていただいたのですが,先生方がそのようなスタンスで真剣に議論されていたのは印象深かったです。
帰りの電車のために中座することになりましたが,皆さんのご好意に甘えながら無事に訪問を終えることができました。
夕方の電車の中からの風景は,とても感じが良いものでした。
カテゴリー: 活動記録
20120704 学びのイノベーション事業 指導方法等の検討チーム会議
あちこちの実証校にお邪魔していろいろ伺っていたことが買われて、この度,文部科学省の検討チームに加わることになりました。
何事も一度は自分の目で確かめたいという性格もあって,文部科学省のお仕事を引き受ける経験をしてみることにした次第です。
そのお仕事の会議が7月4日にありました。
私が加わった検討チームは指導方法に関することを取りまとめるためのもの。将来的な指導方法について皆さんに周知するため,発信する情報を用意する仕事です。
急ピッチに進めなければならないとはいえ,始まったばかりでもあるので,委員の認識を調整共有する作業からスタートしました。
今回は何か決まったことがあるわけでもないので、書けることが何もありません。「始まりました」ということだけですね(基本的に検討チームは何も決めないので,これからも書けること何にもないんですけど…まあ,私の感想だけ)。
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初めてご一緒する委員の先生もいるので,多少気は使いましたが,相変わらずの調子で皆さんの発言をぼーっと聞いて、引っかかるところはざっくばらんに質問したり、マイペースに関わり始めました。
会議の進め方は検討チームとは銘打たれてはいるものの,ある程度準備がなされた結果としての文書を一言一句潰していくように踏まえながら,合意を形成していくという感じの作業で,ある意味新鮮でした。
なんとなくこれまで観察してきて推測していたことが直接眼前で展開している感じで、そうすると「事件は会議室で起こってるんじゃない,現場で起こってるんだ」みたいなことをちゃんと理解して対処しないといけないなぁとあらためて思います。
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「どうせまた下手な事例集とかのパンフレットつくって終わりじゃねぇ〜の?!」
みたいなことを,以前の私なら意地悪に行方を想像して書いたりするわけですが、作業の当事者になっちゃった以上はこの言葉を自分自身に向けなきゃいけなくなったわけで、下手な事例集つくるんじゃねぇぞ自分!と思うわけなのですが、さて,どんなものを発信したら良いのか,納得するものを生み出す苦労が始まってます。
私一人でやっている仕事ではないので,下っ端は下っ端なりのコミットを挑みつつ、多様な見解の調整が最適解にたどり着くことを念じて関わっていくのみです。
ちなみに,今回の検討会議はイノベーションに相応しい試みがなされたりと結構面白いスタートとなりました。時代は少しずつ変わっています。早く次の時代の人たちが政策に近いの場でもっとたくさん活躍するよう身軽を保ちながら頑張りたいと思います。
[FS事業] 20120702 ICTを活用した先導的な教育の実証研究に関する協議会
総務省と文部科学省の教育情報化に関する連携事業の両省有識者合同協議会の第2回会合が開かれました。
しばらく休憩していましたが,久し振りに傍聴に応募して,幸い傍聴が認められたので出席をしてきました。
おそらく総務省側の行政事業レビューにおける廃止判定が出てから初めての有識者会議なので,関心のある人には,そこで何が発言されたのか気になるところでしょう。
基本的には,総務省の担当者だけでなく、副大臣や政務官も事業の重要性を改めて認定し、今後も事業継続できるように努力することを明言しました。
同様に文部科学相側も総務省との連携には大きな意義があること,その上でソフト面である教育部分についてしっかりと事業を進めること,こちらも積極姿勢を示しました。
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一部の報道では,行政事業レビューも総務省自身が行なっているものだから、そこで出た「廃止判定」を捉えて総務相自身が事業廃止を決したと読める文言を書いているところもありますが、実際はまだ何も決していません。
よって,政務官が事業継続に努力すると明言したことも,場合によっては努力実らないこともあり得ます。とはいえ,おそらくは継続するのだと思います。
ただ,行政事業レビューも総務省の一事業ですので、そこで出された判定を無視することは難しい。そこで何かしらの見直しを施すことが条件となるのだろうと思います。
その辺は今回の協議会には出てきませんでしたが…
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両省の有識者会議における進捗を報告した後,自由討議でいろいろなコメントが交わされました。
事業に対する世間の関心もさることながら,事業に対する理解が十分でないことは大いに問題であり、もっと事業を分かりやすく、そしてもっと情報発信する必要があるのではないかとの発言がありました。
実際に努力されているのは各実証校の現場であるということも再確認され、そういった現場の先生たちが情報交換する場も必要なのではないかといった発言もありました。
文科相側のデジタル教科書の取り組みについても,開発におけるデバイスフリーを前提とした技術の採用やユニバーサルデザイン手法の導入なども指摘されました。
もっとも事業自体は来年度が最終年度となるため、何をするにしてもかなり急ぎで取り組まなければならず,さて,何がどこまでできるのかやってみないと分からないのが正直なところです。
[FS徳島] 20120629足代小学校公開授業
2012年6月29日金曜日に徳島県の足代小学校で公開授業と授業研究会,そしてフューチャースクール推進事業の担当研究者として私の講演がありました。
今回の授業は1年生,3年生,5年生が授業公開。
1年生 学級活動「はじめてのタブレットパソコン」
2年生 算数「一億までの数」
5年生 総合「アレンジ・チャレンジ・メッセージ 〜三好B級グルメ開発プロジェクト」
それぞれ見どころは,
1年生は,(本当に)初めてタブレットPCを使い始める機会
3年生は,各桁に対応した端末を駆使して友達と協力して問題に挑戦
5年生は,郷土料理について聞き取り調査した情報の整理と共有
といった活動を行ないました。足代小学校らしい情報機器活用のチャレンジも織り交ぜながら,もちろん様々な課題も見えてきた実践となりました。
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今年度は授業研究会に授業者の先生方が登壇してくださるので,授業を振り返っての学習に込めたねらいなどお話しいただくことができました。
会場からもオンライン付箋サービスの「linoit」を介して,様々な感想や質問をいただき,それに対して先生方からも真摯な回答をたくさんいただくことができました。それを見て,さらに質問や感想も増えたりと,よい循環も生まれました。
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そのまま講演を潰して質疑で盛り上がろうと思ったのですが,さすがに仕事を放棄すると怒られそうなので,最後は手短に私のお話をさせていただくことでお開きとなりました。
講演音声ダウンロード
相変わらず早口なのだなと,我ながら恥ずかしく思いつつ…。
「iPadに対抗」
先日,Twitter上で教育用情報端末の導入に関わる「iPad問題」をツイートしました。
今このタイミングは,教育用情報端末を選択するには,とても困難な状況が発生しているわけですが,その困難を象徴するのがiPadというデバイスとその導入にまつわる問題だという内容でした。
新しい道具を教育の現場に取り込む事に関しては,繰り返したきた歴史がありますので、今回もまたその変種と考えることができます。その話はいずれご披露しようと思います。
それよりもここ数日「iPad対抗」という文字の踊る記事が続いたことが印象的でした。
20120527「ウルトラブック、利幅も存在感も薄い? iPadに対抗」(朝日新聞)
20120618「「iPadに十分対抗できる」、NECが10.1型のタブレット端末」(日経新聞)
20120619「マイクロソフト:タブレット端末開発 iPadに対抗」(毎日jp)
これほどまでに業界は「iPad」を意識しなければならない事態になっている。
20120618「iPhone・iPad業務利用へ70社連携 日立やNEC アプリ開発、アップルに技術・情報提供求める」(日経新聞)
そして,こうした動きに動かざるを得ないというところまで来ているということでしょう。現時点の選択肢として,手に入る現実的なデバイスはiPadぐらいしかないということなのでしょう。ベストとは言いたくないとしても,ベターであると…。
もちろん時代とともにベストもベターも変わります。だからこそ,その時に選びたいものが選べるようになるといいなと思います。
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思い返すと今から4,5年前には,Windows XP Tablet PC Editionを搭載したタブレットPCが教育利用に期待を寄せられていました。
たとえば,東京大学で実験されていた教育環境の研究プロジェクトMEET(ニュース記事)や、マイクロソフトのNEXTプロジェクト,インテルと内田洋行の研究プロジェクトなどがタブレットPCの活用を一つの目玉として取り組まれていたのです。
そのような系譜の中で,フューチャースクールは構想されたため,総務省からの事業入札仕様は当然タブレットPCを想定したデザインでした。
しかし,仕様が固まる過程で起こった出来事は,ポストPC時代の幕開けを告げる出来事でした。iPadの発表です。
従来のタブレットPCの鍛練は始まったばかりでしたが,世間の関心は一気にスレート(一枚板)型のタブレットデバイスに向かってしまいました。何よりiPadの出来が初球にしてはあまりに良かったことも従来のタブレットPCを色褪せたものに見せました。
市場にiPadやウルトラブックのような軽量薄型のデバイスが並び始めた頃に,分厚くて重たいタブレットPCを未来と呼ぶ事業が進行したことは、フュチャースクール推進事業の意図せざる不幸だったと思います。
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従来のタブレットPCは,次世代PCを担うには認知度が低く、分厚いノートPCや昔のペン操作デバイスの悪夢から抜けきれていませんでした。
かつて,タブレットデバイスシステムのご先祖としてGO社のPenPoint OSというものがありました。90年代初期に登場したこのデバイスはiPad並に衝撃でしたが,PCのOS覇権を守ろうとしたマイクロソフトによって潰された歴史は知られたところです。
しかし,そのリベンジを代理で果たしたとも言われるiPadがペンではなく指タッチ操作のデバイスとして成功を収めたのは興味深い事実です。
確かに教育利用の場面では,ペンによる手書き入力の必要性も指摘されるところですが、かといって長らく模索されてきたペン操作デバイスがなかなか成功しなかったこと、iPadの爆発的な広がりなど見ると、デバイスの設計はなかなか難しいものだと感じます。
そういう意味ではマイクロソフトが発表した独自のタブレットPCがペン入力と指タッチの両方に対応するタイプのデバイスにしたのは,正しい選択なのだと思います。
個人的には,iPadでSu-PenやiPenを使うペンソリューションでも用途によっては問題ないかなと考えています。