フローチャートよ、もう一度?

せっかくの連休なので大学図書館で過ごしました。県内の他大学と自分の大学の2つ。短縮開館ですが,落ち着いた雰囲気で資料漁りができました。

1970年前後の頃の文献資料を拾い続けています。過去の言説を掘り続けていると,確かに歴史は繰り返しているという部分がないわけではありませんが,まったく放ったらかして引き受けもしないで今日に至っている事柄も少なくありません。そのようなものを整理して光を当てていければと思いますが,それはまたいずれ形にしたいと思います。

1970年代初頭の文献を眺めていて気づくのは「フローチャート」満載だということ。

フローチャートといえば,今日ではプログラミング体験・学習の文脈で学習活動に取り入れるかどうかという注目のされ方をしているものです。

10月に行なわれた日本教育メディア学会大会では,地元企画として教科学習におけるプログラミング教育の公開授業が催され,振り返りの議論が行なわれていました。小学6年生の算数「形が同じ図形」でしたが,そこで図形の拡大図・縮図・合同な図形を分類する手続きを表現する手段としてフローチャートが用いられていました。

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 この公開授業に噛みついたのは私ですが(毎度すみません…),それは算数という教科の見方・考え方とプログラミング的思考あるいはプログラミング体験要素の組み合わせ方やバランスについて,授業者の先生がどういう思慮・苦慮のもとで今回の授業の形に至ったのかを質問したものでした。

 この議論を中途半端にご紹介するのは誤解を招く可能性もありますので,また機会を改めて詳述するつもりです。ただ,(写真に表記されたような)フローチャートづくりが教科学習の中でのプログラミング体験であると短絡的に理解することは,現時点では問題が多く残されてしまうと感じます。

 そういう意味で,この夏に小学館から刊行された『プログラミング教育導入の前に知っておきたい思考のアイディア』も誤解を招くムックであると言わざるを得ません。

 基本的にこのムックが問題視される大きな原因は表紙と解説にあります。

 書名が表している通り,ムックの内容(特に実践アイデアパート)は「思考のアイデア」,つまり裏表紙に紹介されている「思考ツール」の系統に属する内容を扱ったものですが,表紙はプログラミング教育の関連の本であることを訴求し,研究者の解説パートはプログラミング的思考を論じています。

 解説パートと実践アイデアパートを接合するのは,「プログラミング的思考の要素」として紹介された「順序(順次)」「場合分け(分岐)」「繰り返し(反復)」であり,これを各教科の学習活動で行なえるようなアイデアを紹介しているという構造になっています。

 それらの要素をもっともよく見える化するものが「フローチャート」であり,このムックの実践アイデアにもたくさん用いられているというわけです。

 しかし,このムックにはフローチャートそのものをどう扱うべきかはほとんど論じられていません。もし短絡的な理解をする読者がいれば,フローチャートをつくることで教科の中でプログラミング的思考を扱ったことになるのだと読みとるかも知れません。

 このムックはそもそも「思考ツール」を扱ったシリーズの一冊ですから,フローチャートを始めとした思考ツールに関する議論は別のムックや書籍を参照してね…という割り切りの位置付けにあるのでしょう。表紙のデザインはともかく,これは論理的思考に関する実践の「ジャスト・アイデア」(たとえばのちょっとした提案)というムックなのです。

 フローチャートがプログラミング的思考と関係ないということではありません。とはいえ,そう単純な話ではないということを勘案してくれる読者がどれほどいるのか。そのことを思うと,このムックに関しては批判的な検討を加えながら広く議論されていくべきだと思われます。

1970年代の文献資料にフローチャートが満載であった理由ですが,当時は教育工学という学問が助走期を経て本格的に立ち上りつつあった時代であり,「授業のシステム化」「学習指導の最適化」といった考え方について大いに議論が盛り上がっていたのでした。

かつての授業研究や開発の分野はその手法においてプログラミングを強く意識していたのです。よい授業を図式化するということも真剣に議論され,フローチャートはその手段の一つだったわけです。その名残は,一部地域の授業指導案の書き方にも残っています。授業の流れをフローチャートで表現する地域や学校があるのです

学校全体の教育方針や研究方針を図化する中でもフローチャートの利用は珍しくはありませんが,今後カリキュラム・マネジメントの取り組みもますます議論されていくことを考えると,フローチャート満載時代が再びやって来る?のでしょうか。

マストドン v2.0.0アップデート(CentOSにて)

Twitterをモチーフにした分散型ソーシャルネットワーキングシステム「マストドン」(Mastodon)が2017年4月頃から日本でも話題になり,いくつものインスタンス(分散したサーバー)が運営を続けています。

独自にインスタンス(サーバー)を立てて運用するため,どちらかというと限定されたコミュニティ内で使うのに適しています。そのためTwitterを置き換えるというものではありませんが,決してコミュニティ内で閉じるのではなく,外部とも連携できるしくみが備わっているのがマストドンの興味深いところです。

教育学習とICT関係に関心のある皆さんに向けたマストドンとして「elict インスタンス」というものを立ち上げて運用しています。教育学習やICTのことを話題にするというだけでなく,その界隈の人々がマストドンを試す場所を提供するのも目的です。

Mastodon manager

それから,CentOS 7上で最新のマストドンシステムを構築して運用する実験をすることも目的としています。とはいえ,マストドンシステムのアップデートは一筋縄ではいかない難しさがあります。そもそもマストドン本家は同じLinuxでもUbuntuを推奨していて,CentOSでの運用は詳しく説明してくれていません。

先日(10/19),マストドンが v2.0.0へとメジャーバージョンアップしましたが,このアップデート作業もすんなりとはいきませんでした。

10月22日にv.2.0.0へのアップデートを試みたところ,エラーメッセージとともに作業は足止めされ,サイトはダウン状態となりました。それから暇を見つけては対処法を探り続けましたが,闇雲に作業すれば泥沼行き。かといって始めからやり直してみようと試みても,なぜか同じエラーの結果になるという幽閉状態。

参考情報を探そうとしても,同じ条件で構築している人は少ないし,ほとんどの人々がv2.0.0アップデートの難関さを前に躊躇っている状態か,難なくクリアしたかで,手がかりは極めて少なかったのです。英語のぶっきらぼうなエラーメッセージだけでは,何をどうしたらよいのか,万策尽きた感じさえしました。

しかし,端末から発せられるメッセージはエラーメッセージばかりではないのですね。それを丁寧に追っかけると,そもそも最初に出ていたエラーさえ適切に対応すれば良かったことがわかりました。

本当なら,自分が解決した道筋を,再検証して整理しながら解説すべきなのですが,なかなかそういう余裕もないので,とにかく手がかりになりそうなコマンドをここに書き記していこうと思います。

まずマストドンの基本的なインストール方法はこちらを参照してください。

Mastodon Production Guide

CentOSの場合,「apt」よりも「yum」を使うことが多いかなと思います。たとえばrootユーザーで

yum -y install ImageMagick libxml2-devel libxslt-devel git curl file g++ protobuf-compiler protobuf-devel gcc openssl-devel libyaml-devel zlib-devel ncurses-devel libffi-devel gdbm-devel readline-devel libicu-devel libidn-devel bzip2 

という感じです。また,CentOSのdevelopバージョンは-devではなく-develと表記することが多いです。

ちなみに,上の並びはnode.jsとYarnとffmpegとpostgresqlとnginxなどは別途作業したときのコマンド並びなので,構築されるサーバ環境によって追加したり減らしたりする必要があります。

「Dependencies That Need To Be Added As A Non-Root User」項目から以下はわりとそのままだと思います。

これらでなんとか構築完了して,運用を始めましょう。もし問題が発生したら下の方に書く対処を試みます。

定型的なアップデート作業は次の通りです。普通はマストドンユーザーでログインし…

cd live
git fetch
git checkout $(git tag -l | sort -V | tail -n 1)
bundle install
yarn install
RAILS_ENV=production bundle exec rails db:migrate
RAILS_ENV=production bundle exec rails assets:precompile

そして,rootユーザーに切り替えてから

systemctl restart mastodon-*.service

としてマストドンを再起動するとアップデートが反映されます。

アップデート作業などで問題が発生した場合に試みたこと。

export PKG_CONFIG_PATH=/usr/lib64/pkgconfig

bundle installでエラーが出た場合,パスが通ってなかった可能性があります。上はその一つ。

cd /home/mastodon/.rbenv/plugins/ruby-build && git pull && cd -
rbenv install 2.4.2
rbenv rehash
rbenv global 2.4.2
rbenv global

Ruby環境を最新にしないといけないアップデートもありました。上はマストドンユーザーでログインして2.4.2にするときのもの。ディレクトリ構成は自分の環境に合わせてください。

wget https://dl.yarnpkg.com/rpm/yarn.repo -O /etc/yum.repos.d/yarn.repo
yum install yarn

Yarnを最新にする必要があるときもありました。上はrootユーザーで入力したもの。

git checkout v1.6.1

gitから取ってくるmastodonバージョンを指定したいときに。マストドンユーザーで,liveディレクトリに移行後。ただし元に戻りたくても戻れないときもあります。

git reset --hard origin/master

ローカルをいじり過ぎておかしくなった場合,ローカルを上書きしてリモートに合わせてしまいたいときに使います。いわゆるリセット。

rm .bundle/config

オプションなしで「build install」すると以前の設定が引き継がれて処理されます。その履歴を消したいとき。

gem install lograge
bundle install --with production

v2.0.0アップデートで一番泣かされたのが「lograge」Gemファイル未インストール問題。インストールしたいと思って「gem install lograge」してみても一向に問題が解消されないとき,「bundle install –with production」と明示的に指定したら問題が解決しました。いやはや,回り道をしました。

この他に効果があったかどうかは分からないけれども試してはつまずくのを繰り返したコマンドは以下の通り。

gem cleanup
gem install bundler
gem install rails --no-document
gem update --no-document
bundle update
yarn cache clean

この他にもhttps通信を行なうための証明書取得など必要な手続きはありますが,それはまた別の機会に。

 

生涯デジタルデータをどうするか

先日,出張先の書店で手にしたのは『ここが知りたい! デジタル遺品 〜デジタルの遺品・資産を開く!託す!隠す!』(技術評論社 2017)でした。

残念ながら,私の世代にとってなじみの昭和を象徴する諸先輩方がこの世を去られる知らせを聞く機会が増えました。それ自体とても哀しいことですが,同時に遺品のこと,特にこのご時世的に残されたデジタル遺品(digital remains)について,考える必要性があると強く感じるようになりました。

情報教育の分野では,情報活用能力や情報リテラシーなどについて学ぶわけですが,これらは社会生活を営む上で必要な知識や技能等を学ぶことが大きな前提になっています。「生きる」ことを前提とした内容です。しかし,ここで話題にしたいことは人生の終活。つまり人生を「終える」ことを前提とした内容になります。

日本だと「終活」という言葉もまだ話題になって数年ですし,「デジタル遺品」もCiNiiという学術検索サービスで「デジタル遺品」を検索した結果は2017年10月29日現在で10件しかありません。まして,学校教育の中でこのような話題を扱うこと自体,ほとんど議論は深まっていません。

ちなみに英国ノッティンガム大学のサイトに「Digital Remains: The technological traces we leave behind」というe-ラーニング教材が見当たります。こうした学習教材が日本でも必要になると思います。

放っておいてもデジタルデータは増え続けています。そのほとんどが機械処理するためのデータであるとしても,人間の人生に関わる情報もどんどん入力・更新・蓄積されています。そういった生涯デジタルデータにはたくさんの未解決な問題がありますが,その一つとして,個人が管理するデジタルデータの管理権限が,管理する個人が逝去してデータがデジタル遺品となったときに,物理遺品とは違って自然に誰かに移管されることはないことです。

Facebookの場合「故人の近親者であることを証明できる方にかぎり、故人のFacebookアカウントの削除をリクエストできます。」とあります。この他に「追悼アカウント」という考え方を導入し,故人のアカウントに残されたデータを凍結したまま,メモリアルなデータとしてシェアできる仕組みを用意しています。

訪れる「死」がいつになるのか分からないという点で,死後の生涯デジタルデータの扱いをどうしておくのかという問題は年齢を問わない問題です。

個人のデジタルデータが収集され,ビッグデータとして分析対象として価値が見出されている時代においては,特に意識を高めておかなくてはならない問題の一つといえます。どこまでの生涯デジタルデータに権利を主張できるのか,すべきなのかといった問題は,そう簡単に結論が出る問題ではないものの,議論を重ね論点を見極めていく必要があります。

デジタル空間やデジタル環境という言葉に対して,物理空間や物理環境の写し鏡であるという捉え方があったとすれば,もはや地続きか,場合によっては取って代わるものであるという世界もあるのでしょう。ARやVRに対する関心の高まりも,その一つといえます。

デジタルというものの特性と私たちの生涯デジタルデータの行方について考えることは,昭和の人間にとっては想像以上に難しいことだなと思います。かといって平成の人たちにその先が見えているようにも思えませんから,こればかりは「私たちがどうしたいのか」ということを語り合って考えを紡いでいくしかないのかなと思います。

画面ミラーリングのソリューション

先日導入した「EZCast 4K」のレビュー続きと画面ミラーリングについてあれこれ記録。

EZCast 4Kに関しては,シンプルなAirPlayとMiracast受信機として使う分には順調に動作しています。4Kテレビに接続して使用したところ,ちゃんと2160pの解像度で接続してくれます。

ただし,画面ミラーリングの仕組み上,接続端末(画面送出)側の制限に縛られるので,ミラーリングされる画面が2160pの解像度というわけではありません。端末によってはブロックノイズが酷いものもあります。

EZCast 4Kは工場出荷時には1080pの解像度に設定されていますので,2160pを必要とする場合には設定変更をする必要があります。ただ,1080pと2160pの画面ミラーリングの差を素人目に判別する事は難しく,フレームレートの違いも分かるような分からないような感じです。

今のところは,4Kテレビあるいは4Kディスプレイで使用する場合と,1080p入力か2160p入力かの組み合わせで,違いが出てくる可能性もあるかも知れないといった推測をしています。つまりテレビとディスプレイ側にアップコンバート機能がある場合,その影響を受ける可能性です。

あとは専用アプリを利用してメディアを直接表示させる場合に,1080pと2160pの解像度の違いがハッキリ見えてくるかも知れません。私自身はまだ専用アプリをそれほど利用していないので何とも言えません。

AirPlay時にブラウザ中の動画を全画面再生した場合の挙動は,接続を引き受けて単独で再生する仕組みに対応していますが,どうしても再生開始位置が引き継がれず最初から再生になります。画面を元サイズに戻す場合の挙動は,多少もたつきますが画面ミラーリングに戻るようになっています。

ただ,iOS端末からYouTubeアプリで動画を全画面再生すると制御不能になってしまうバグがあるようです。ブラウザでアクセスした動画から全画面再生させても問題ないので,これはiOS版YouTubeアプリの問題かも知れません。どちらかがアップデートしてくれればいずれ解消すると思います。

Miracast時の使い込みが足りないので細かい挙動がどうなのか見定められていません。Windows10からの最初の接続が厄介のようです。相性がいいものは繋がりますが,相性が悪いとダメのようです。ただ一度繋がれば,基本的な動作に問題はなく,NHK for Schoolも普通に表示させる事ができます。

総じてEZCast 4Kは画面ミラーリングのツールとして合格点をあげられるのではないかと思います。AirPlay方式やMiracast方式への対応だけで,Chromecast方式への対応がない点は残念なところですが。

あと,EZCastシリーズには「Pro」がありますが,画面分割に強い必要性がない限りは,Proの購入は避けた方がよいと思います。どうしても必要ならば有線LAN対応の「Pro Lan」を購入した方がよいと思います。

Chromecast方式に対応するには「Chromecast」が一番手っ取り早いことになります。

Chromecast Ultraが4K/HDR対応のものになります。旧版と違って最初から有線LAN対応するコネクタが用意されているのが長所です。

YouTube動画を2160pの60フレームで再生したい場合には,いまのところChromecast Ultraを利用する他ありません。(4Kテレビに装備されているYouTubeアプリを利用するならば話は別ですが。)

パソコンの場合,Chromeブラウザを動作させておけば,ブラウザの内容だけでなく,デスクトップをミラーリング表示することも可能なので,案外これが一番便利なのかも知れません。

ただし,iOSデバイスからはChromeブラウザ内の動画とYouTubeアプリ内の動画のみ対応となります。画面ミラーリングを利用することができません。そのため,画面ミラーリングのツールとしては選択肢にあがり難くなっているのだと思います。

ところでAmazonが販売しているFire TVFire TV Stickといったデバイスはどうでしょうか。

中でもFire TVは4K対応ですから解像度としては期待できそうです。2017年10月発売予定のNewモデルはHDR対応もなされるそうです。

ただし,従来モデルに限って確認すると,4K対応はあくまでもAmazon提供の4K対応動画コンテンツか,他社が4K対応させたアプリでのみ2160pに切り替えるだけで,普段のメニュー画面や他の画面ミラーリングアプリを使用時には1080pに留まります。Fire TV用のYouTubeアプリで4K動画を再生しても,テレビ側のモードは1080pのままです。(Newモデルも同様と予想しますが,実際はわかりません。)

Miracast方式の画面ミラーリング機能を持っていますが,これもまた端末との相性のせいなのか,うちの研究室の端末で成功した試しがありません。仮に成功しても1080pレベルでしょう。

「AirPlay&UPnP」という有料アプリを利用するとFire TVでAirPlay方式とChromecast方式の画面ミラーリングが利用できます。こちらは解像度は低いのですが,快適そのものです。あまり鮮明さを必要としない場合には,この選択肢もありかとは思いますが,Amazonを楽しむのでなければFire TVのメイン画面がやかましくて,公的な場で使うのは躊躇われます。

Apple TVは,AirPlay方式の画面ミラーリングの定番であり,唯一の受信デバイスです。

利用している端末がmac OS/iOSマシンなら,これで十分と思います。画面分割はできませんが,シンプルに使うなら最も安定性が高いからです。

Apple TV 4KでAirPlayミラーリングをしたからといって,原理的にはEZCast 4Kと同様なので,特別鮮明であるということはないと思います。

EZCast 4KとApple TV 4Kを比較するのは,なかなか難しいですが,EZCast 4KがMiracast方式と専用アプリでAndroidやChromeOSをサポートする全部盛りであるのに対して,Apple TV 4Kは有線LAN対応で純正の安心感があること,そのどちらを取るかによって選択が変わると思います。

業務用であれば,内田洋行「wivia 5」とBLACK BOX社「COALESCE」があります。

マルチプラットフォーム対応でミラーリング画面を画面分割で複数表示したいといったニーズがあるならば,これくらいの価格水準のシステムを導入すべきと思います。

Miracast方式のものであればActiontec Electronics社の「スクリーンビームプロ・エデュケーション2」という製品もあります。

プリンストン社はEZCastシリーズから「EZPRO-LANB01」「EZPRO-BOXB03」を文教向けに提供しています。ちゃんとしたサポートとセットで導入するなら,こちらの選択肢もありかも知れません。

画面ミラーリングの受信をパソコンで実現するソフトウェアもあります。

Reflector」と「AirServer」はこのジャンルでは老舗のソフトウェアです。3方式に対応しているという点ではAirServerが優勢です。

その他にもメディアを伝送して表示させるためのソフトウェアがありますが,安定して動作するものは少ないのではないかと思います。

画面ミラーリングは,本来的にはHDMIケーブルで接続できることが理想ですが,端末側での簡単な操作で手軽に映し出せたり,複数の端末を軽快に切り替えられるのであれば,無線による画面ミラーリングができると有り難いわけです。

使用端末が同じプラットフォームであれば楽ですが,異なるプラットフォームだと,そのソリューションの選択はなかなか難しくなります。一つの商品で解決するか,組み合わせて使い分けるかなど。いつも安定して期待通りに動いてくれるかどうかも,正直なところ使い込んでみないと分からないことも多いです。

すべてを自分で試すことはできませんが,これからもあれこれ情報収集していこうと思います。

「EZCast 4K」ファーストインプレッション

10月に入りました。リん研究室も後期の専門ゼミナールが始まりました。

今回は研究室で新たに入手した画面ミラーリング商品「EZCast 4K」の使用を開始したので、ファーストインプレッションをお届けします。

パソコンやモバイル端末の画面を大型ディスプレイに映し出したい場合、端末と大画面の接続方法には有線と無線の2パターンがあります。

有線接続は堅実な方法ですが、用意したケーブルと端末のコネクタが適合しない場合もあれば、ケーブル長の過不足や取り回しの面倒さが問題になったりすることがあります。

無線接続は、物理的な煩わしさからは解放されますが、画面ミラーリングの方式が複数あるため、受信側機器との組み合わせによって実現できない場合があります。ちなみに主だった画面ミラーリング方式は3種類あります。「Miracast」「AirPlay」「Chrome Cast」です。

もしあらゆる端末に対応できる受信側機器があれば、とても便利なはずです。が、すべての端末に対応したものは、そう簡単には手に入らなかったのです。

この話は、それだけで長くなりますので、別の機会にたっぷりとご披露します。

EZCastは、HDMIプラグ端子を持ったドングル(小さなハードウェア機器)です。

類似商品としては「マイクロソフト Wireless Display Adapter」「Amazon Fire TV Stick」や「Google Chromecast」といったものがあります。テレビのHDMIコネクタ端子に差し込んで使うスタイルのものです。ちなみに形状がだいぶ異なりますが「Apple TV」もライバル商品です

EZCastには、いくつものモデルがあります。数年前から積極的に宣伝されていたのは「EZCast Pro」という商品で、Proモデルだけあって複数端末からの受信とマルチ画面表示に対応しています。今回入手したものは「EZCast 4K」で、Proモデルではないため一対一のシンプルな画面転送機能しか持ちませんが、4K解像度対応という珍しい商品です。この他にも有線LAN接続を可能にしたBOXタイプモデルが国内販売されています。

「EZCast 4K」のパッケージ内容はこんな感じ。

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これが小さな受信機としてパソコンやモバイル端末からの画面データを受け取り、大画面機器で表示させるのです。使途はいたってシンプル。

しかし、使いこなすまでの道のりは優しくないかも知れません。

結論から言えば、専用アプリを使ったセッティングさえ済ませれば、「AirPlay」と「Miracast」方式の受信機として機能してくれます。特別なアプリを使用する必要がありません。よって、Windows、Mac、iPhone/iPadの混在環境での利用に向いています。

残念ながら「Chrome Cast」方式には直接対応してないため、Android端末とChromeOS端末の場合、専用アプリをダウンロードし、それを使ってミラーリングを開始させる必要があります(Miracast方式に対応しているAndroidスマホというものがあれば話は別です)。専用アプリを起動することに納得できれば、使い勝手は悪くありません。

というわけで、一部の機種で専用アプリを利用する点とLinux端末への対応がないことを除けば、「EZCast 4K」は主要な端末の画面ミラーリングに対応した大変汎用性の高い周辺機器といえます。

高いポテンシャルを持っていることは事実ですが、使用環境に応じたセッティングをこなせるかどうかの問題と商品としての使い勝手にまだ粗削りなところも残っているため、初心者も含む万人に勧めるにはまだ少しハードルがあるといった感じです。

たとえばネットワーク接続のこと。

常設されたテレビの裏に同じく常設するのであれば、職場や家庭内のネットワークにEZCast 4Kを加える形で導入することとなり、初期設定のハードルさえ越えてしまえば日常操作に苦労はないはずです。

しかし、EZCast 4Kを持ち運び、出先の場所でその度使うとなると、インターネット接続との兼ね合いをどうするのかという問題が付きまといます。EZCastと端末間の通信はダイレクトに可能ですが、そうなったときにインターネットアクセスができるかどうかは条件次第です。(追記:専用アプリを使うとスマホのテザリング機能を使う手段が用意されていました。) 

また、EZCast 4Kを複数の端末間で切り替えて使うときも注意が必要。

端末を切り替える際は、接続を切断する操作をしてから、順序良く別の端末で繋ぎ直すといった使い方を心掛ける必要がまだあります。画面転送を乗っ取って強制的に端末を切り替える操作には、十分対応できていません。できなくはないけれども、よく失敗するからです。

一度接続がうまくいけば、かなり調子よく動いてくれるのですが、そうでないときは多少根気よく成功まで操作を繰り返すといったこともしなければなりません。

そうした粗削りなところと付き合う覚悟があれば、この商品は日々修正されてアップデートを繰り返しているようですから、いずれは満足のいく動作や安定性を確保できる商品に思います。

「EZCast Pro」と比較すると機能がシンプルかも知れませんが、逆に5GHz帯の無線LANをサポートしている点は優位点です。また、発熱量も1080pレベルで使っている分には温かい程度でおさまっているように思います。もともと4K利用を想定した商品なので、従来環境での利用ならば実力的にも余裕なのかも知れません。

現時点では4K対応テレビで使っていないので、4Kの場合だとどうなのか。近いうちにレポートしようと思います。

いずれにしても「EZCast 4K」はクセさえつかめば、なかなか便利に使える周辺機器と思えました。