政策コンテスト・パブリックコメントの手順 – ユーザー登録編

 2010年10月19日まで,国の予算編成について国民からのコメント(パブリックコメント)を募集しています。要するに,どんな事業にお金を使うべきか,国民に投票してもらおうという取組みです。「政策コンテスト」と銘打たれています。
 (ある条件を満たした上で)この政策コンテストに応募し,選ばれると,規模の大きい予算を獲得することが出来るようになっています。
 文部科学省が管轄する教育分野は,より多くの予算を必要としているため,大きな賭けに出ました。耐震化を含む学校施設の整備,ICT活用環境を整備する学校創造戦略,35人学級を実現するための経費などを,この政策コンテストの枠に出したのです。
 これが意味するところは,私たちがパブリックコメントで「この事業予算は大事です!必要です!」と投票しないと,事業予算を確保できず,大事な教育政策を実現することが困難になってしまうリスクが生まれたことです。
 こんな事態になったことは残念なことですが,事態は進行中です。10月19日までに多くのコメントを集めないと,限られた予算の中で教育分野への配分は劣勢に立たされてしまいます。
 ぜひ,コメントをしてください。以下,手順をご紹介します。
 1.「ユーザー登録編」(いまここ)
 2.「コメント提出編

(1) 政策コンテスト・パブリックコメントのWebサイトへ


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(2) 「文部科学省」をクリックすると「組み換え予算」の一覧が表示される
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(3) 「要望事業一覧を見る」をクリックするとコンテスト対象の事業一覧が表示される
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(4) 自分がコメントしたい事業名をクリックすると詳しい事業説明が表示される
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(5) 「この要望について意見を提出する」をクリックするとログイン画面になる
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(6) 登録をする必要があるので基本情報を入力する
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(7) 「送信内容確認」をクリックしてユーザー登録内容の確認画面を表示させる
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(8) 「この内容で送信する」をクリックすると完了画面表示とメールが送信される
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(9) 自分に届いたメールを確認して,メール内のリンクをクリックする
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(10) ユーザー登録手続が全て完了するので,「ログイン」する
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コメント提出編」へ

田原「デジタル教育批判」本を斜め読みして

 デジタル教科書に関心のある人々の間で話題になっていた田原総一朗さんの『緊急提言!デジタル教育は日本を滅ぼす』(ポプラ社/1400円+税)を読みました。
 近所の本屋さんに売っていたのは意外でした。ハードカバーであることも含めて,やはり田原総一朗さんの影響力は大きいのだなと感じました。
 多少駆け足で目を通す感じの斜め読みをした感想としては,「デジタル教育」というキーワードに触れつつも,基本的には田原総一朗さんの教育論をまとめた本だと分かりました。
 筆者自身の提案なのか,企画した出版社の提案なのかは定かではありませんが,もともと田原さんの教育論が支柱にあって,そこに昨今の教育の情報化やデジタル云々も絡ませようとした結果であることは明白です。
 そのことを理解して読むと,この本を「デジタル教育批判」として受け止めて,その部分の記述を細かく反論することに意味がないことは分かります。
 細かい反論を試みる行為自体が,何かしら正解を出さねばならぬという意識から出発しているのではないか。
 確かに,困ったイメージ(デジタルやその技術の活用が教育に害があるかのようなイメージ)の流布を放っておくわけにはいかないと考えている人も多いので,そのためのパフォーマンスは必要と思いますが,それと合わせて,この田原本の位置づけをできるだけ背景を踏まえて明確にする努力も必要です。
 

 ここ数ヶ月,田原さんがメディアに登場する際,教育の問題について語る機会が多くなっていました。おそらく,この本を執筆していた時期だったのではないかと思います。
 そして,戦争と戦争に負けた以降とで,学校の教師の言うことが変わってしまい,価値観が180度変わったエピソード(76頁前後)を語ることが多かったのです。こうしたことからも田原さんの言動は,この原体験に強い影響を受けていると思われます。
 こうした原体験を持った人から,戦後の教育行政や教育改革,あるいはマスコミにおける教育言説や現代社会における人々の行動様式を見たとき,目に見えない形ではびこる「無責任」体制が日本を滅ぼしつつあると考えるのは理解できなくはありません。(その無責任さをデジタルで象徴させようとした意図がチラッと見えますが,残念ながら失敗していると思います。)
 
 なぜ人々は,自らの範疇を超えてでも物事の懐疑に正面向かって対峙しようとせず,(定型的な落とし所で)完結してしまいがちなのか。
 「教育」でも「政治」でも「事業」でも「デジタル教科書」でも,どんな事柄においても,その範疇を超えたところに関係し得る重要問題があるやも知れないのに,それを掘り起こそうとしないのはなぜなのか。
 今回の場合は「デジタル教育」なる言葉で新しい教育の可能性が語られているけれども,それが結局は旧態依然の定型的な教育行政(あるいは政治・官僚手法)で進められていく変わらなさになぜ誰も疑問を呈さないのか。
 
 田原さんの問題意識は,こうした事柄に重心があると私は理解します。
 

 「♪だって〜,しようがな〜いじゃない」と思うかどうかは立場にも拠るでしょう。国の仕組みが変わっていない以上,現実を動かすには旧来手法を援用しなければならない事情もあります。
 
 ただ,田原さんがその可能性を認めているように,ネットの在るこの時代においては,新しいコミュニケーションの可能性も生み出し得るはずです。
 「そのことを真剣に取り組むつもりがあるなら,やってみろ!」
 この本は,長い年月,日本という国を見続けてきたジャーナリスト田原総一朗さんからの激励なのでしょう。そのためには,積み残している様々な課題に真正面から取り組むことが大事なのだとアドバイスが添えられている…そう受け止めておくことが大事なのかなと思います。
 そう理解するためには,かなり行間を補って読む必要がある点は,玉に瑕なのですが,それは緊急出版させた出版社にも責任がありますね。ポプラ社さん,もっと丁寧にね。

阿波踊りと引きこもり

 りんラボがある徳島は,12日から阿波踊りで街全体が祭り期間です。とはいえ,盛り上がりは夕方から始まりますし,日中は普通に出勤している人も多いので,会場に近づかなければ,平穏な日常でもあります。
 昨夜は,徳島駅周辺に出かけて,阿波踊りの人の賑わいを感じてきました。残念ながら見る阿呆に留まっていましたが,徳島に住んでいる以上,いつかは思いきり踊ってみたいものです。とにかく,ちょうど街中を流れる新町川の川沿いに軒を連ねる屋台を眺めながらぐるっと歩いて堪能してきました。

 りんラボは,教育と情報を扱っている研究室です。以前の私は「教育」にかなり重心があったので「りんゼミ」という風に名乗っていた時代がありましたが,最近は「情報」や技術系の話題を扱うことがグッと増えたので,「りんラボ」と称しています。
 いまはiPhone/iPadアプリの開発のために,いろいろなデータやプログラムの解析を行なっていたりします。Twitterのログを分析するツールにも興味があって,ログをパースするアルゴリズムのための解析もしたいですが,いまは別のWebアプリケーションの動作を解析する作業にかかりきりになっています。
 それから,教室向けiPadアプリのデザインに困っています。UIデザインも本当なら根本から再設計すべきですが,それは次の機会にするとしても,最も大事な「見た目」のデザインが手付かずなのです。最終兵器のPhotoshopを取り出して,ぐりぐりデザインするしかないみたいですが…,ああ猫の手も借りたい。

 9月18日18:00から,愛知県の金城学院大学で行なわれている日本教育工学会大会でワークショップ「タッチデバイスの教育利用」を開きます。
 このワークショップで目指したいことは,別にある教育関連ブログでも書いたのですが,「ミスディレクション」を減らす手だてを模索することです。
 新しい技術やデバイスを研究対象にしたり,積極的に推進していく過程で起こり得る様々な議論。その際に私たちは多くの「ミスディレクション」に出会います。それは意図的・無意図的に関わらず,私たちをある見方に追いやってしまったり,何かを見落とさせたりする可能性を孕むものです。
 私は,タッチデバイスという今まさに注目を集めている対象を一つの具体事例として,学術研究や世間一般の議論がどう噛み合っていくべきなのか,あるいは私たち個々人はどう振る舞っていくべきなのかを考えたいと思います。
 …というワークショップの高らかな目的に見合う準備もまだまだこれから。まあ,出たとこ勝負が大好きなので,多くの皆様に意見出ししてもらう会になればいいなと単純に考えています。可能であればUstream中継を入れます。

 つい最近,一つ失望したあとに,私はぼちぼち「りんラボ」から「りんゼミ」に戻そうかと考えていました。
 技術もロジックも扱い始めると面白いのですが,それに呑み込まれた人間の在り様に疑問がないわけではなかった。いつしか私も醜さを露にしているのではないか,そう思えたとき,もう一度,思索の世界に戻ることがよいのではないかと感じたのです。
 けれども,人生とは不思議なもので,そう簡単には引きこもらせてくれないようです。縁がないと思っていた事柄に,いつの間にやら巻き込まれていたりします。
 私自身も状況を把握してからご報告したいと思いますが,どうやら「いろいろ文句を言うつもりなら,お前自身がやってみろ」と神様からお鉢が回ってきたようです。
 なるほど,そう来ますか。面白いじゃないの。受けて立ちましょう。
 私はすでに,人生の中で阿波踊りを踊っているようです。

また東京出張

りんラボのブログ更新が滞っているうちに、また東京出張。今回は東京ビッグサイトで行なわれている教育ITソリューションEXPOと東京国際ブックフェアに行く。
とにかく大注目のテーマに関する展示会が開かれるので、これを見逃す訳にはいかないと思った次第である。
もっとも教育ITソリューションEXPOの方は前身の企画が行なわれていたとはいえ、大きな展示会企画に昇格して初の開催。まだ認知度も低いかもしれず、関係者の皆さんのご苦労や不安は何となくだが想像できる。
ま、何はともあれ、いろいろ見ておきたいと思う。

東京出張

 先週後半から東京出張に出ていました。
■学習ソフトウェアの審査
 今回は,学習ソフトウェア情報研究センター(学情研)が主催している学習ソフトウェアコンクールの審査会出席のためです。私も審査員の一人として名前を連ねています。
 今年も50数件の応募作品がありました。学習のためのソフトウェアからWebやDVDなどのコンテンツまで,多彩でした。そのため審査は大変なのですが,なるべく作者の意を汲みながら,創造活動を奨励できるように審査をしています。
 しかし,多様な応募作品を単純な出来の比較で審査することは難しくなっています。これまでも応募作品の種類に応じて開発目的や利用実践を考慮しながら審査していましたが,審査基準として応募要領に明記していなかったので,毎回,審査に時間を掛けていました。
 そこで,来年度は,審査のポイントを分散させて,作品の出来だけでなく,開発意図や実践事例に対しても賞を与えられるように応募要領を変更することが提案され,合意されました。
 近年,AndroidやiPhone/iPadといったデバイスも普及していますので,こうしたデバイス向けアプリの応募もあれば良いなと思います。学情研は学習ソフトウェアの普及を目的とした活動をしていますので,願わくは無料で公開しているアプリの応募が望ましいです。
 これは私個人のアイデアで認められていませんが,開発中アプリの応募を受け付け,その開発意図やアイデアを審査して,開発奨励をするという枠を作ってもいいのではないかと思いました。
 実は,「学習ソフトウェアコンクール」はこの手のコンクールとしては珍しく賞金が出ます。それだけ学習ソフトウェアの開発・普及・利用促進に力を入れているということです。今後ますます多くの方が参加できるよう,コンクールも進化するといいなと思います。

■古巣に寄ったり,本屋に寄ったり
 機会ある毎に,東京の出身研究室には寄るようにしています。たとえ,お土産ひとつを置くだけの行為や,ひと言ふた言の挨拶だけだとしても,覗くようにしようと思っています。
 私にとって,残っている出身研究室はそこしかないし,日常に流されていく私自身の「研究大事」の灯に油を注ぎ足してくれるからです。
 それから,東京に出たら書店を巡るのが定番。古巣に寄った影響のせいか,審査会でいただいた謝金のほとんどを文献資料の購入で使い果たします。あとから考えると,iPhoneとかiPadの購入の足しにすればよかったと気づき,ちょっぴり後悔しています。

■新しいお仕事の依頼
 東京出張の直前に,タイミングよくお仕事の依頼をいただきました。
 教育現場における情報化に関する現状について解説して欲しいという内容。私自身も知識の整理をしたかったので,お引き受けすることにしました。(先日の「エチカの鏡」で長男はお願い事を断れないと紹介されていた。確かに…)
 それで東京出張の空き時間に,さっそく依頼主と会って話をしました。霞が関のビル(といっても官公庁じゃないです)に訪れて,あれこれ情報交換。
 どんな切り口で現状を知りたいのか,だいたいのイメージもわいたので,事実と事実関係を伝えることを基本として,私の考えをご披露することにします。その成果はまた。