20140425 大阪市学校教育ICT活用事業推進会議

 事業に関わるアドバイザーとコーディネータ(どちらも研究者)が集まる推進会議が大阪市の教育センターで開催され,新任コーディネータとして初出席しました。

 アドバイザーの先生と他のコーディネーターの先生方,計8名の方とは面識はあるので,私の面倒くささも先刻承知。事務局の皆さんに慣れていただくのに多少時間はかかると思いますが,なるべく迷惑かけないように分け入ってみようと思います。

 今回は今年度初めての会議なので,取り組みの方針やスケジュール確認,そして来年度から全市展開するための「大阪市スタンダード」をつくるべく,授業づくりに関する枠組みのようなものを検討するといった内容でした。

 午後からの会議に出席する前に,午前中,自分が新たに担当する「むくのき学園」に訪問することが出来ました。

 以前訪問したのは「中島中学校」の校舎の方だけで,そちらから「啓発小学校」の敷地に中学校がお引っ越しした形なので,現在の敷地への訪問は完全に初めてでした。

 (ちなみに,中島中学校・旧校舎は特別支援学校として利用されるとのこと。ちょうど26日に中学校校舎お別れ大同窓会が開催されるとのことで,きっと地域で賑やかに集ったのではないかと思います。)

 1年生から9年生までが同じ敷地で学んでいるわけですが,もともと小学校校舎は規模が大きかったこともあり,建て増しすることなくすべての児童生徒が納まったようです。それなりに年季の入った校舎であり,建物や備品のそこかしこに歴史を感じさせる面影があります。

 道路一本挟んだ敷地に元は地域の施設だったものを転用した2つ目の体育館が用意され,各学年2クラスの間には学習室が用意されています。また,もともと小学校にはランチルームがあって利用していたようです。

 そして,各学級には70インチ相当の電子黒板が設置され,3年生から9年生まで1人1台のiPadを用意されているという環境となりました。もちろん電子黒板用パソコンとApple TVも用意されています。

 やはり70インチ程度あってようやく黒板と張り合う感じで設置できるので,「これは良い選択をした」と心の中で賞賛していました。しかし,面白いことに「70インチもいらんかったかな」という声も関係者からちらち聞くので,活用を進めてその声がどう変化するのかこれから興味深いです。

 歴史ある校舎で新たな小中一貫校としてスタートを切った「むくのき学園」における学校づくりは,私が想像するよりもはるかに大変なことだと思います。ゼロからではない分,2つの文化をどう折り合い付けて融合させるのかというより難しい問題があるからです。

 また校区外から新たに「むくのき学園」に入学転入してきた児童生徒たちもいます。その子たちや保護者にとっては,真新しい環境や文化への期待と不安がいろいろ混ざりあっている感じなのかなと思います。

 始まったばかりの学校の様子を一通り見せていただき,まずは1年生から9年生までが集う学校自体の雰囲気をどう作り上げていくのかが最優先なのだなと感じました。

 一方で,ICT活用や英語教育など教育事業モデル校としての役目を務めなければならない現実もあり,この数年間は先生方にとっても大変慌ただしく,場合によっては苦しい期間になるかなとも案じています。

 機会があれば,できるだけ覗きに行こうかなと思っているところです。

 すでに他のICT活用モデル校7校は1年目の取り組みから2年目に入り,授業づくりを刺激する枠組みの具体化にコマを進めるようです。

 教育センターとしては,さらに教員研修の機会を設けて,管理職や教員を対象にひろく普及させる計画も練っています。モデル校の公開授業も各校2人が出席するように方針が決められたそうなので,今年度で一気にICT活用を全教員共通課題に持ち込もうという意気込みが伝わってきます。

 それとはまったく別個に,この日(25日),大阪市の平成26年度補正予算案が提示され,ました。「平成26年度予算(当初+補正案)について~『大阪の再生』への確かな歩み~」と題し,再選した橋下市長が改めて様々な事業を打ち出してきたわけです。

 その中には,この事業についても「全小中学校へのタブレット端末の貸し出し(平成26年12月〜)

 補正 2億4,800万円」(フリップ10~16)とあり,スタンダードモデル作成と教員研修事業に合わせて,実際の機材についても提供する準備を示したのは,理屈として真っ当だと思います。ちなみに補正予算にはその他にも教育関係の項目がいろいろ含まれています。

 率直に書けば,こうした追い風のほとんどは政治の側から吹いているので,学校教育の側にとってみると思わぬ強風に髪が乱れ始めているといったところかなと思います(関西色に合わせると「乱れる髪の毛もないわ」と落とすべきところかも知れませんが…,もうちょっと受け入れてもらえるまでふざけは控えめにします)。

 渦中の人々にすれば変にハードル上げられても追いつかないというのが正直なところ。そこで,どうすれば前向きな歩み寄りへと踏み出せるのか,その一歩や次の二歩目を丁寧に考えないといけないなと思います。

 会議自体は,先行している物事をいろいろ学べたという点で大変興味深いものでした。まだ要領を飲み込めていないので,根掘り菜掘り聞いたりしてしまいましたが,とりあえず各学校での取り組みを今後も見守っていくという感じでスタートするようです。

大阪市 学校教育ICT活用事業

 本年度から大阪市の学校教育ICT活用事業に関わることになりました。新しい出来た小中一貫校である「むくのき学園」(大阪市立啓発小学校・大阪市立中島中学校)のコーディネータとしての仕事です。

 国が進めていた「フューチャースクール推進事業」「学びのイノベーション事業」の方向性を積極的に地域の学校教育で推進していこうという意欲的な取り組みです。事業自体はすでに昨年度から7校のモデル校によって開始され,ニュースにもなっていました。

 今回,新たなモデル校として開校したばかりの「むくのき学園」も参加することになり,そのコーディネータも新規に追加することになったわけです。関西に近くて,iPad大好き研究者を探したら私が居たみたいな感じだと思います(半分冗談です)。

 小中一貫教育に関しては,様々な議論が展開していることはご承知の通りです。法律上で「中等教育学校」が規定されている中高一貫教育とは異なり,小中一貫教育は法律による明確な定義がありません。

 小中一貫研究をされている西川信廣・牛瀧文宏らの定義として次のようなものがあります。 「小中一貫(連携)教育とは,小学校教育と中学校教育の独自性と連続性を踏まえた一貫性のある教育をいい,第一義的には小中9年間の教育課程の構造的理解を通した教師の指導力向上を目指す取り組みである。」 (『小中一貫(連携)教育の理論と方法』ナカニシヤ出版2011)

 この西川・牛瀧の見地からは,教師の変化に一貫教育の意義を着目しているということになります。実際,小学校と中学校という学校文化が異なる教育をつなげるのは,先生方の仕事を大きく変えざるを得ないわけで,挑戦的な試みといえます。

 一方,小中一貫に対しては批判的な立場も少なくありません。たとえば,9年間を通した教育の効果について,まだ十分な効果が示されていないともいわれます。また,学校統廃合の問題は,地域の学校が失われる立場にとって深刻な問題として受け止められています。

 小中一貫教育に対する様々な議論は,確かに有機的に繋がってはいますが,分けて考えていかないと建設的な未来を見通すことが難しくなることも肝に銘じておきたいところです。

 私が関わる「むくのき学園」は施設一体型の小中一貫校であり,同じ屋根の下で児童生徒が学ぶ形の学校です。これから学校を見学する予定なので,雰囲気については後日ご紹介するつもりですが,学校のWebサイトを除くとすでに様々な取り組みを重ねている様子が伝わってきます。

 モデル校には同じく施設一体型の小中一貫校である「やたなか小中一貫校」が参加して,先行して取り組んでいますので,そこの成果も教えていただきながら,コーディネータとして「むくのき学園」の取り組みを見守っていけたらと思います。

 従来の小学校・中学校の名前は残っているものの,一貫校として新しい学校が出発したばかりですので,学校の文化を作り出すことで一生懸命な時期だと思います。

 私の役目は,外部の人間としてその取り組みを言葉にして返したり,対話の相手としてICTに関しても何か気付いてもらったりすることだと思います。慌てずにじっくりと学校の成長を見せていただくつもりです。  

重版予定『デジタル社会の学びのかたち』

 翻訳に関わった書籍『デジタル社会の学びのかたち:教育とテクノロジの再考』に重版がかかりそうとのこと。

 訂正の問い合わせがあったので,誤字や訳の通りが変なところも含めて訂正情報を送りました。意識朦朧と翻訳していた自分を恨みたくなりますが(すみません>_<;),訂正が通ればだいぶマシになると思います。

[FS] 20140210 沖縄県宮古島市立下地中学校公開研究会

 2014年2月10日に宮古島市立下地中学校にお邪魔してきました。総務省・フューチャースクール推進事業と文部科学省・学びのイノベーション事業の実証校として,最後の公開研究会が行なわれたからです。

 大変光栄なことに講演者として依頼を受けましたので,私自身にとってもフューチャースクール推進事業に関わる最後のお仕事として,これまでの活動を踏まえて考えたことをお話した次第です。

「ICTのある学校で学びを深める」

(後日更新)

Macintosh 30th

 米国時間1月24日はMacintoshというパソコンが初めて発売された日です。今年で30周年になります。

 パーソナルコンピュータ自体はそれ以前から様々なものが登場していましたが,今日のパソコンシーンに大きな影響を与え続けてきたのはMacというパソコンです。

 私自身が初めて直接触れたのは大学に置いてあったMacでした。それまではNECのパソコンのユーザーでしたが,大学のMacでインターネットとQuarkXpressを体験してからずっとMacユーザーです。30年のうち20年ほどのつきあいとなります。初めて購入したMacはPowerBook Duo 280cでした。

 私も仕事の場面ではWindowsマシンを使う機会が多いので,基本的に両刀遣いといったところですが,愛着が湧くのはMacの方であることは隠しません。その分,酸いも甘いも分かりますので,道具の選択について特別頑固なつもりはありません。私はWindowsも楽しむし,iOSもAndroidも面白がります。

 教育とコンピュータという観点で考えると,市場はすっかりWindowsですがMacの影響力はそこかしこに見受けられます。

 操作スキルを中心とした世界観の中では,どうしてもOfficeが必要だとか,Macは使い方が分からんとかの話になりがちで,極端に多様性が排除された景色になってしまうのですが,私は教育の場にいろんな機種やタイプの端末が偏在するようになるといいなと思っています。そうした観点で従来まではMacをもっと押していたし,ここ最近ではiPadなどのタブレット端末も注目したいよねと主張しているわけです。いまあるWindows以外の選択肢をもっとプッシュしたいわけです。

 これから1人1台ではなく1人複数台の世界が,時間はかかれど当然のようにやって来る時代に向けて,どんな教育を構想すればいいのか。さらに面白いカリキュラムや指導方法といったものが,ますます模索可能になってくるのだと思います。

 そうした未来に向けてのわくわくするような気持ちを抱きつつ,しかし一方で,はやくも30年や40年という時間を過ごしてきてしまった私たちの足どりを,いま忘れないうちに捉え直しておくことが,現在の私の課題です。

 Mac 30周年の今年は,この分野ますます面白いことになりそうです。