2012年11月13日に松阪市立三雲中学校にて,フューチャースクール推進事業・学びのイノベーション事業公開研究会(中間発表会)が行なわれたので参加してきました。
中学校のフューチャースクール推進事業実証校は8校ですが,小学校とは違い,それぞれが独自の環境を構築して事業に臨んでいます。そのうち2校がiPadを学習者用端末として導入しています。三雲中学校はそのうちの一校です(もう一つは岡山県新見市立哲西中学校です)。
小学校FSと違い、中学校FSは一年ずれてスタートしたこともあり、私たちがイメージしているタブレット端末を利用している学校もあるのです。ちなみに三雲中と哲西中はそれぞれiPad2を導入しています。
開会式では,当日の公開授業の内容を紹介するスライドで,担当する先生達のユーモラスな意気込み写真が映し出され、大変ながらも楽しんで取り組んでいる空気が伝わってきました。授業の方も生徒達との日頃の関係づくりが出来ているおかげもあってか,特に進行に不安な授業もなく,無理のないICT活用でしっかりと進められていたのが印象的です。
特に,iPadだけでなく,紙のワークシートやミニホワイトボード,ポストイットなどのアナログ(?)学習ツールも積極的に組み合わせて使われており、(突っ込まれることを予想してか)研究会でもそのような取り合わせにした理由を発表されて,しっかり準備した様子が窺われました。
ちなみに,三雲中学校のアドバイザーは,奈良教育大学の小柳先生と金城学院大学の長谷川先生というお二方。安易なICT機器活用に陥るような指導をしているわけなど,あり得ない布陣です。大変勉強になりました。
—
iPadを導入して実践しているのは三雲中学校と哲西中学校ですが,どちらの学校でも授業支援システム「BeeDance」をもとにしたシステムが導入されています。
小学校が十校十色であるように,この2つの中学校も同じiPadを導入していても活用の様子は異なっています。たとえば哲西中学校はDropboxとPDFアノテーションアプリを使い倒すような活用方法ですが、三雲中学校では授業支援システムを積極的に活用しています。
アプリ探しはどちらも大変そうで、三雲中学校ではアプリに出会う苦労に触れていたのが印象的です。こうした点は,ICT支援員さんの活躍が欠かせない部分かも知れません。
こうした2校の取組みを踏まえて,iPadの教育利用について私なりの見解を積み上げているところですが,端的にiPadは「不易流行」の流行部分を担うことはできても,不易部分を支える端末にはなり得ないだろうという見解に至っています。
フューチャースクール推進事業の成果の一部として、iPad(iOS)プラットフォームに対して提言すべきことがあるとすれば,「iPad Classic」的なアプローチの製品とサービスの構築を模索すべきであるということです。
それについては,機会を改めて論じたいと思います。
月: 2012年11月
20121111 3時間インタビュー@東京大学
日曜日の東京大学・福武ホールにお邪魔して「教育の情報化」に関するインタビューを受けました。「Beating」というメールマガジンの取材としてです。
実は出身研究室の後輩達がインタビューアだったので、先輩後輩のご対面という感じで始まり、「教育の情報化」の世界の入門講座のような調子でお話しをしました。
インタビューのテーマは「いまどきのミレニアムキッズ」というものなので,本題はフューチャースクールな推進事業における児童生徒や先生達の様子をご紹介することでした。
しかし,そういった取組みの様子が,どのような積み重ねの上にあり、今後どうなっていくのかを理解するには,歴史的なお話しも不可欠です。
あらかじめ,先日公表した「教育情報化年表」を準備していたので、要所要所で歴史的な事項を踏まえながらお話をして,まあ,いかに日本の教育の情報化が不連続で積み上がっていないかを語ることにもなりました。
とにかく,縦横無尽に語り続けていたら,同席のメールマガジン責任者のTさんが次のスケジュールのため時間切れ。3時間しゃべっても終わる気配がありませんでしたが,とにかく一区切りつけることになりました。
それまでも教育の情報化には関心を向けて関わっていたものの、フューチュースクール推進事業に関わってからの3年弱の間に知ったことや経験したことは本当にたくさんありましたから、3時間でもまだ足りないくらい。
とにもかくにも,見聞きして知ったことをなるべく共有できればと思っているところですが,はやく何もかも吐き出してのんびり資料漁りをしたいものです。
—
インタビュー後は,古巣の研究室にお邪魔して雑談しながら延長戦。あらためて後輩達を夕食に誘って,昔話やそれぞれ取り組んでいる研究のことなど楽しくおしゃべりしました。時間というのは本当に過ぎるのが速いですね。
20121110 デジタル教科書展示会@東京学芸大学
葛飾区立本田小学校の参観を終えて、午後は東京学芸大学へ移動しました。いろいろ教育関係の催し物をやっているので,ふらっと寄ってみようと思ったからです。
「教育フォーラム2012」は,大学と地域の連携事業の一環として、2008年から始まった催し物。私も一度参加したことがあって,久し振りに覗いてみることにしました。
今回も,海外からのゲスト発表者の興味深い発表がなされていました。やはり海外の事例は探究活用学習的なものが多く,たとえば,Androidタブレットとアプリを使ってモノの高さを三角測量しながら数学の知識を確認していく活動や自作問題作成と配布のシステムなどの紹介をしていました。
—
当日は他に「学校図書館げんきフォーラム」という催し物があり、その傍で「デジタル教科書展示会」が行なわれていました。
教科書会社10社(東京書籍、大日本図書、学校図書、教育出版、光村図書出版、帝国書院、新興出版社啓林館、第一学習社、実教出版、数研出版)がブースを構えて指導者用デジタル教科書を展示説明してくれるのですが、他の学会や展示会と違って大変ゆったりとしたスペースでした。
普段だと,他社のブースと隙間なく並んでいることもあって,あるブースで話を聞いている様子を隣りのブースの人に聞かれているような気もして,順に隣りのブースで似たような話を聞くのが恥ずかしくなってしまうのです。
今回は,少し距離にも余裕があるので,同じく聞かれているとしても,気持ち的には同じ話や質問を繰り返しやすい環境でした。
なので,今回改めてじっくりと各社の指導者用デジタル教科書を見ることが出来ました。あらためて各社のシステムの違いを見て、これが混在したら先生方大変だなぁと思った次第。
共通のUI規格を策定するという考え方もあれど、丁寧に設計を進めないと使えるものにならないとも思いました。そういうことに専念して取り組む研究者が音頭を取らないと難しいかも知れません。
—
じっくりと話を聞いて回っていたら,いつの間にか催しの終了時刻。すっかり日も暮れた学芸大を後にしました。
[FS東京] 20121110 東京都葛飾区立本田小学校公開授業
11月10日に東京のFS実証校である本田小学校で公開授業が開催されたので参加しました。
フューチャースクール推進事業は当初、小学校10校でスタートし、翌年に中学校8校、特別支援学校2校で始まりました。
実証校は全国に散らばっていますが、たとえば、在京のマスコミや有識者が手軽に視察したいとなると、当然のことながら一番近い学校を取材したいということになります。
その一番の候補になるのが、葛飾区にある本田小学校です。本田小学校は他の学校の分も代わりに代表になって視察を受け入れてくれており、関係者の私たちからすれば、そのご苦労や心労など慮らずにはいられません。(ちなみに、西では広島県にある藤の木小学校だとか、佐賀県の西与賀小学校がよく取り上げられます)
しかし一方で、フューチャースクール実証校の印象を特定の小学校だけを視察して断定されてしまうのではないかと懸念する気持ちもあり、代表になってくれる小学校に対しては複雑な思いもなくはないのです。実証校は十校十色。そのことを視察したり紹介したりする人には肝に銘じて欲しいと思う次第です。
—
この日の本田小学校は午前中の三時間を使って授業公開をしました。当日は保護者の授業参観の日でもあったため、多くのクラスが公開モードでした。
本田小学校では、単にIWBを使っているだけではICT活用とは呼ばず、タブレットPCを使って初めてICT活用をしていると考える方針です。
ですので、フューチャースクールとしての公開授業では必ずタブレットPCを活用しているのですが、その他の授業においてもIWBは普段使いしていましたし、すっかり機器が学校の日常に根付いている様子を見ることができます。これは他の多くの実証校でも同様です。
今回はタブレット上でのネット調べ活動や学習まとめや説明書づくりといった作業ももちろんありましたし、コマ撮りアニメの制作,ディベートの論点整理などにも活用していました。タブレットPCを普段遣いしている雰囲気がよく伝わってくる風景でした。
子ども達の文字入力の方法についてはいろいろ議論が展開されていますが、本田小学校では,低学年の児童は手書き文字をそのまま書き込むことや中学年に向けて手書き文字入力機能を使う場面も見えて、高学年はキーボード入力していくといった様子が見えました。
当日は,6年生の皆さんが体育館で朗読劇を披露しており,体育館までの階段に置かれたタブレットPCが案内表示をしていました。こういう風に利用しているのも,タブレットPCが身近な学用品に近づいている一例なのかなと感じました。
20121107 上勝町立上勝中学校出前授業
徳島県の事業として行なっているデジタルコンテンツ人材育成のための出前授業で、上勝中学校にお邪魔しました。
今回は動画編集の方法の2回目で、iMovie for iPad の操作方法を実演しながら解説するといった内容。実際に2年生達が沖縄に修学旅行へ行った時の動画や写真を使ってやってせます。
小規模校なので、全学年あわせても5つのグループができるだけですが、残念ながら動画編集できるiPad 2以降の機種は3台だけ。あとは初代が10台程なので、すべてのグループが試しながらというわけにはいかない状況です。
こういう道具環境が統一的に揃わないというのは、授業者として一番面倒な問題でもあります。使う素材が異なるのは如何様にも味付けできますが、動画編集したいのに動画編集ツールが動かせないのは、ちょっと次元の違う問題ですね。
仕方ないので、今回はみんなに実演を見てもらうことにしました。その代わり、私がやって見せても注意は集められないので、2年生の中からアシスタントを急遽募集。みんなの推薦もあってひとり男子生徒が手伝ってくれることになりました。
これは効果覿面で、やっぱり仲間の生徒が操作して出来上がる作品に興味津々ですし、あれこれ指示(「あっちの写真使えば?」とか)も飛んできて、教室前だけの実演でしたがみんなで編集作業している感じで進められました。
さすがに次回からは自分たちでも編集したいでしょうから、足りないiPadを用意しないと…と思いますが、とりあえず動画編集の概要は伝わった感じなので、これからどんどん進めていってもらえそうです。
—
iPad用のiMovieは、シンプルさを追求したため、Mac用のような凝った編集機能がありません。特にタイトルや字幕を付ける機能は貧弱で、その辺は別に自作のタイトル写真を用意するなど工夫で乗り切るしかありません。
iPad用の動画アプリ自体も種類は少なく、iMovieとPinnacle Studioという有料アプリか、vimeoなど動画投稿サイト向けのアプリなどくらいです。また、初代で動作するものはほとんど無いと考えてよいです(ゼロではないんですが…)。
某社がユニークな動画アプリを開発中という情報もありますが、まだ時間も掛かりそうです。
iPadにおける動画編集は、まだ課題の多い分野とも言えそうです。