平成27年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果

 平成27年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の最終集計結果が出たようです。毎年,速報値が流れて,しばらくしてから確定値が公表されます。何かしら結果集計の最終確認をしているようで,たまに数値が変わります。それに泣かされたこともあります ^_^; 。

 今回の調査結果公表について,例年と違うことが行なわれたとして話題になっています。一つは,速報値公表段階で市町村別の結果を公表したこと。もう一つは,確定値公表の概要資料に市町村別版のものを加えたことです。

 「市区町村別 学校における主なICT環境の整備状況(全校種)」という資料は,市区町村をずらっと順位付けしたもので,文部科学省の資料としては大胆な試みかも知れません。

 ただ,速報値段階での市区町村結果の前倒し公表や,確定値における順位づけリスト公表にしても,文部科学省的にはインパクトのある出来事かも知れませんが,受け手にしてみれば,大した変化を感じません。これまでも確定値で市区町村レベルの調査結果は確認できましたし,それをもとに日経BP社は毎年「全国市区町村 公立学校情報化ランキン」を特集していました。

 唯一,今回の取り組みで役立ちそうなのは,新たに加えられた「平成27年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(市区町村別)」[(1)北海道〜愛知県(2)三重県〜沖縄県]が都道府県別に作成されていて,地方自治体で参照する資料として使いやすいという点でしょう。市区町村の多い都道府県はグラフの字が小さくて大変ですが…。

 見える化したことで,表だけでは掴みづらかった整備状況の格差がわかりやすくなったという意味で,見る人によっては衝撃なのかも知れません。

 りん研究室では「教育情報化実態調査結果_経年データ(コンピュータ・周辺機器整備編)」を以前から公表していますが,これは全都道府県の合算値であり,都道府県レベルの経年データを作成するに至っていません。

 統計局のサイトは,データ登録の仕方次第で経年比較等ができる機能(データベース機能)を持っているはずですが,残念ながら「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」は,独自作成したエクセルファイルを保管する仕方で登録されているため,経年データ作成は手作業にならざるを得ません。

 文部科学省には,(人手が足りないのは承知ではあるけれども)過去の調査結果も含めて,統計局のデータベースに登録するよう期待したいと思います。また,調査結果だけでなく,質問紙内容(エクセルファイル)と生データも合わせて公表して欲しいところです。

 ただ,実態調査については,そもそも調査デザイン自体が実態を把握するにふさわしいのかどうか疑問が提示されています。整備状況値は,ICT活用状況値ではないことからも,実態調査そのものの見直しが必要になっていることは確かです。

 今回の市区町村レベルの数値公表の姿勢変化が,実態調査に対する見直しの手始めであることを期待したいところです。

タブレット端末画面は広い方がよい

 学校への導入や生徒が購入するタブレット端末の話題もひと頃に比べると議論もだいぶ収まってきたように思います。というのも,メーカー側で「文教向けタブレット端末」というカテゴリーの商品が各社出揃って,従来のように入札によって淡々と導入されていくというフェーズに入ったからです。

 最初こそ,iPadがよい,Windowsタブレットがよい,Androidタブレットがよい,といった基本OS比較論争も賑やかでしたが,これもいまやAndroidタブレットは圏外へ消え,検討会議や入札条件の都合でiPadが候補から外されることも珍しくなくなって,とりあえずの選択で丸く収まるなら,それでいいんじゃない的な雰囲気に落ち着いています。

 タブレット端末には…

  • カメラとビューア
  • PDFビューア
  • PDFアノテーション
  • Webブラウザ
  • 地図アプリ
  • スライド作成アプリ
  • ファイル転送機能
  • 画面外部出力
  • ペン入力機能

 …くらいが備わって快適に動作すれば,あとは利用サービスや導入アプリと活用法次第といったところでしょうか。

 キーボード入力練習がしたいというニーズにまで応えるなら外付けキーボードも必要といったことになりますが,そこまでいくなら素直にタブレットPCかノートパソコンを選択すべきだと私は思います。コンピュータ/プログラミング学習のための活用もタブレット端末で可能な水準は限定的に考えてるべきです。

 その上で私は,タブレット端末を導入なり入手なりするなら,なるべく広い画面のものがよいというアドバイスをあらためて強調したいと思います。

 もちろん広い画面は筐体が大きくなることを意味し,重量が増すということにもつながります。持ち運びをするといった場面を想定すると,大画面タブレット端末を推す意見に同意し難いかも知れません。

 それでも私は,最低でも12インチ以上のもの,具体的にはSurface Pro 4(12.3インチ)やiPad Pro(12.9インチ)程度の画面の端末を利用すべきであると主張したいと思います。

 作業領域の広さは,作業内容の把握具合に直接影響します。

 個人的な感覚でも,iPad Pro 12.9インチモデルを使用していたときと,iPad Pro 9.7インチモデルを使用しているときを比較すると,当然ながら12.9インチ画面の方が情報量が多く,たとえば図表作成をする作業も12.9インチの方が全体を把握しながら作業を進められるます。

 ノートアプリにペン入力で記録をとるときも,画面の書き込みを継続するための移動や拡大縮小操作において大画面の方が快適でした。

 文教向けタブレットについては,学校の机サイズとの関係を根拠にして,あまり大きな端末はそぐわないといった知見が固まりつつありますが,それは「タブレットPC」の実績から導き出された感が強く,確かにタブレットPCのような分厚さや存在感のある端末であれば机にフィットするため小さめである必要があるかも知れません。

 しかし,昨今のタブレット端末は十分に薄く,大きな画面のタブレット端末と教科書やノートが重なり合うことにも違和感がなくなっています。

 もちろんまだ実証的な結果が得られている意見ではありませんが,むしろどのような先入観も一旦保留して,広い画面のタブレット端末を試してみることも同等に評価する必要があるのではないかと思います。その上で,また適合性を判断すればよいのだと思います。