高等学校のGIGA端末整備の準備はお早めに

2021年12月27日付で「GIGAスクール構想における高等学校の学習者用コンピュータ端末の整備の促進について(通知)」が発出されました。

20211227(通知)GIGAスクール構想における高等学校の学習者用コンピュータ端末の整備の促進について
https://www.mext.go.jp/content/20211228-mxt_shuukyo01-000003278_001.pdf

小中学校段階と高等学校段階の違い

義務教育(小中学校)段階のGIGAスクール端末整備は,幾度かの国の補正予算によって「公立学校情報機器整備費補助金」として以下のような事業に補助金が交付されてきました。

  1. 公立学校情報機器購入事業
  2. 公立学校情報機器リース事業
  3. 都道府県事務費
  4. 家庭学習のための通信機器整備支援事業
  5. 学校からの遠隔学習機能の強化事業
  6. GIGAスクールサポーター配置促進事業
  7. 公立学校入出力支援装置購入事業
  8. GIGAスクール運営支援センター整備事業
  9. 学校のICTを活用した授業環境高度化推進事業

一方の高等学校段階は,学校設置者である都道府県等の取り組みを尊重する仕組みのため,自治体の整備進捗は様々となっています(上記の補助金の中には高等学校対象もあります)。2021年1月〜2月に調査実施した「高等学校における学習者用コンピュータの整備について」では,47都道府県中5自治体は整備自体の検討段階であること,整備に取り組むとした自治体でもその具体は様々でした。(資料

通常,学校に対して何か予算を確保するとなると「学校設置者」が予算を工面することになります。

小中学校(義務教育)段階は,市町村区立であることが多いですから,市町村レベル(基礎自治体と呼ぶこともある)で予算確保することになります。一方,高等学校段階は,県立であることが多いことから,都道府県レベルで予算確保をします。

しかし,ご存知の通り,自治体財政はどこも厳しいものがあり,それぞれの地方税収だけでは成り立ちません。ほとんどの自治体が地方交付税という国からの分配金に頼っているというのが現状です。

特に小中学校の設置者である基礎自治体は,規模から考えても大きな予算を自由に確保することはできませんから,国の方針に従うための諸々の予算を地方交付税の中に含ませて交付してもらう必要があります。この交付金と自分たちの税収をまるっと合わせたものが「一般財源」というものになり,自治体ごとに使い道を独自に決めていきます。

高等学校の設置者である都道府県も基本的には似たような仕組みで予算を確保していますが,市町村レベルよりは財政規模が大きくなるので,国から面倒見てもらえる範囲が狭くなります。

たとえば,小中学校は学校整備の補助が直接的で分かりやすく整備費補助金として交付されたりしますが,高等学校における整備の補助は直接的に面倒見てもらえず,教育予算とは銘打っていない補助金を上手に理由付して利用しなければならないことが多くなります。

今回も高等学校段階のICT環境整備の費用負担について…

・設置者負担で進める場合には,一般財源とともに,新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金や国の補助制度を活用することも含めて検討すること。

を留意するように当初から通知されています。

なお,従来から同時に走っていた「学校のICT環境整備に係る地方財政措置(教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度))」は高等学校も対象となっています。

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

2020(令和2)年度の補正予算から経済対策として「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」が創設され,私たちも報道などで見聞きする様々な補助金が交付されてきました。

「新型コロナウイルス感染症対応」とか「地方創生」とか銘打たれているため,学校教育の環境整備のために使えるなんて想像できないのが一般人の感覚ですが,実際には,コロナ禍の学校教育を何とかするための事業であれば,補助対象となりうることが(そもそも)想定されています。

公開されている活用事例集には,各省庁から示されたであろう様々なジャンルや事業が掲載されています。その中には,環境整備やGIGAスクール構想支援の予算も堂々と例示されています。

つまり,高等学校にGIGAスクール端末(と呼ぶかどうかに関わらず)整備することも,事業趣旨を臨時交付金の趣旨に寄せて申請すれば,十分対象になるということになります。

また,こちらのWebページの「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用が可能な事業(例)」では,

◆新たな暮らしのスタイルの確立
(新たな時代に相応しい教育の実現)
・オンライン・遠隔教育のための人材育成、教材、機材、通信費等支援
・高等学校等におけるPC・タブレット端末、LTE通信機器等の導入支援
・教員等の追加配置や人材マッチング支援
(後略)

と明確に端末の導入やその支援に交付金を活用してよいと例示しています。

冒頭でご紹介した通知も,このコロナ臨時交付金が柔軟に活用できることを周知しようとしています。実施計画書など関係書類の提出期限は「2022年1月31日(月)12:00【厳守】」となっています。

臨時交付金が活用されない問題

ところが,国の意向とは裏腹に「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」(コロナ臨時交付金) があまり活用されていないようです。

自治体の担当者がコロナ臨時交付金について,十分な情報を得られていないため,申請に至らないという場合もあります。知らなければ活用もできないというわけです。

また,臨時交付金の存在は分かってはいるが,自治体組織の仕組み上,学校教育関係部署の人間が勝手に地方創生の交付金に申請できないルール(関係部局長の稟議承認が必要など)となっている自治体もあるのではないかと思います。

同じ都道府県とはいえ部局がまたがるような事務手続きが必要な場合だと迅速に事を進められず,担当者によっては,しり込みしてしまって申請に至らないケースもあるのかも知れません。

こうした状況に陥っている場合,当人に対して発破をかけるよりも,全体を統括する立場の人間に働き掛けて,縦割りを越境しやすくする配慮を効かせてもらうなどが必要かも知れません。

端末は義務教育より上を選定する

文部科学省は,高等学校に導入するGIGAスクール端末について,小中学校の導入の際に示された「GIGAスクール構想の実現標準仕様書」などを参考にするよう言及しています。

しかし,高等学校の生徒用に導入する学習者用端末を選定する際には,金額ベースで言うならば小中学校の補助金額の2倍を想定すべきです。(小中が4.5万円であれば,高等学校は9万円を想定したい)

性能的には,動画編集がストレスなく作業できるもの(動画視聴ではありません)が望ましいことになります。

そのような端末を9万円程度で購入すること自体が困難であるのは承知していますが,金額に関しては時間とともに安価になるものですので,できるだけ性能の高いものを選定したいものです。

昨今では,省電力技術が進んだパソコンも増えてきており,バッテリー駆動時間が長くなったり,高負荷でも発熱が抑えられたものも登場しています。こうしたものを選定できれば使用にストレスを感じず日常の活用頻度も高まります。

文部科学省は「標準仕様書を参考に」しましょうと言いますが,文部科学省のICT活用教育アドバイザー(3月まで)の私はあえて「標準仕様書は無視」しましょうと申し上げます。