携帯電話やスマートフォンを常時持ち歩くようになって,いろんなものを代替するようになりました。
たとえば小額決済や交通機関への支払はおサイフケータイで済ますことも出来るようになりましたし,デジタルカメラを別途持ち歩く必要もなくなりました。スケジュール管理やメモのための手帳も持つことが少なくなりました。
デジタル情報として扱える物事をスマートフォンに集約して,これ一つを持ち歩けば事足りてしまうという便利さが生まれたわけです。もちろん善し悪しや使い勝手の問題には個別の議論がありますので,あくまでも重宝な選択肢の一つとして考えることが必要なのでしょうけれども,その上で便利に使えるのであれば,こうした変化は歓迎すべきことと思います。
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昨年あたりから注目が高まっているのは「スマートロック」市場です。
スマートフォンに「鍵」の機能を持たせ,物理的な鍵を持ち歩かなくてすむようになります。すでに自動車には「キーレスシステム」が普及して,一般にも馴染みが出てきているところですが,それは鍵の変わりのキーレスリモコンが用意されているというのはご存知のこと。これをスマートフォンに代替して,家庭やオフィスのドアロックにも使おうというのがスマートロックです。
今年から国内でも2つの商品が販売を始めました。「Akerun」と「Qrio」という後付け式のドア用スマートロック機器です。
どちらもこの新たな市場に向けて意欲的な商品を開発し販売しようと立ち上げられたスタートアップ企業(ベンチャー企業)です。海外にも似たような商品が出てきていますが,物理的なものづくりに長けた日本からこのような商品が登場してきたのは頼もしい限りです。
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学校において鍵といえば,それぞれの教室用の鍵がズラッとかけられたキーボックスの光景を思い浮かべる人は多いと思います。つまり「鍵」も学校教育とは無縁ではないのです。
そして,特別教室やパソコン教室を利用する毎に,職員室まで鍵を取りに行くなんてことが今日でも続けられているわけですが,誰かが鍵を返し忘れたりすると次使う人が大変困ったりすることもよくある出来事です。
また,休日に催し物で学校施設を使うとなると,責任上,誰か先生が出勤して付き合わなければならないことは当然ありますが,たとえば鍵だけ渡せばいいときでもわざわざ出勤しなければならないとか,鍵の返却が面倒くさいとか,そういう問題が今でも常に付きまとっています。
学校のキーボックスを思い出すと,いかに鍵というものが大事なもので,その管理に気を遣わなければならないものなのかを,浮かび上がる印象から学ぶことが出来ますが,一方で,学校施設をもっと柔軟に利活用したいさせたい側の人間からすると,物理的な鍵一つひとつに気を遣わなければならないのは面倒です。
実際,大学には学生カードをかざすことで解錠できる電子ロックドアが設置され,学内関係者であれば自由に利用できるスペースに備わっていることも少なくありません。こうした利便性にも配慮した鍵システムの導入は決して非現実的なものではないのです。
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ちなみにりん研究室にQrioがやってきました。
ゼミ生達とデジタル鍵の共有をすることで,資料を閲覧したいときやゼミの研究をしたいときに研究室への入室が出来るようにしたいと思って,実験的に導入してみた次第。
AkerunとQrioは,基本的には同じような機能を持ちますが,デザインコンセプトの違いから使い勝手が異なっています。それからAkerunは事業者向けの製品も登場して,法人市場への拡大も目指しているようです。Qrioはまだ登場したばかりですが,ドアに2つロックがある場合に2台のQrioを連携させられる機能を持っていたり,家庭用としての使い勝手をこれからブラッシュアップさせていくのだと思います。
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ところで,学校の場合はこんな洒落たものが取り付けられるドアさえない,スライド扉で南京錠がロックだというところもあると思います。
そんな場合は,スマート南京錠という選択肢でしょうか。「246PADLOCK」や「Noke」といったものがありますので,これはこれで検討してみると面白いかも知れません。
そして,今は電子工作が注目を集めているご時世ですので,こんな大げさな商品を購入するのではなく,子供達に自作の電子鍵システムを開発してもらうという課題に取り組んでもらうのも面白い勉強になるかも知れません。その場合は,以前取り上げたRaspberry PiやPaSoRiを組み合わせて,生活の中に紛れ込んでいる非接触型ICカードを鍵代わりにするようなシステムを作ってみるのも面白いところです。
そんなことに学校教育を開いていくことが未来への鍵になるかも知れません。