20151030 島根県邑智郡美郷町ICT活用推進会議

 文部科学省「ICTを活用した教育推進自治体応援事業(ICTを活用した学びの推進プロジェクト)」の「ICT活用実践コース」に採択された自治体の一つ,島根県邑智郡美郷町のICT活用推進会議に外部識者として出席してきました。

 先日,岡山県新見市にお邪魔したのと同じ文部科学省の事業です。

 ちなみに応援事業には「指導力パワーアップコース」「ICT活用実践コース」という2つのコースで構成される(ICTを活用した学びの推進プロジェクト)と文部科学省から自治体へアドバイザーを派遣する(ICT活用教育アドバイザー派遣事業)があります。前者は個別に外部識者を呼びますが,後者はアドバイザーをマッチングの上で文科省が派遣します。今回は,美郷町教育委員会から直接ご依頼いただいたものです。

 徳島から岡山経由,やくも号に乗って出雲市駅へ。移動時間がかかることと,今回は初めての訪問ということもあったので,前泊と後泊をしてゆっくり滞在しながら訪問しました。

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 島根県邑智郡美郷町は「定住子育てライフ5つ星の町」を目指されていて,子育て家族に対する支援はとても厚い地域です。たとえば「若者定住住宅」というものがあって,小学生までの子どもをもつ保護者が40歳以下の世帯のために,新築木造平屋一戸建てが月額家賃3万円で提供され,20年住み続ければ住宅を,25年住み続ければ宅地を無償譲渡してくれます。そうした定住プランの上に充実した子育て教育支援プランが組まれていて,小中学校へのタブレット端末導入も地域の学校教育を充実させるプランとして取り組まれているのです。

 美郷町には小学校2校,中学校2校の計4校あり,今回はそのうちの一つ,大和小学校というところで公開授業が行なわれたので,それを参観しつつ,協議会の場でICT活用推進についてお話が持たれました。

 授業は小学6年生の算数。画用紙の枚数を数えるのではなく重さから計算して用意したいという問題設定のもと,比例の考え方を表と式に表して児童同士で交換しようという活動でした。そこで各児童がタブレット端末(iPad)を使い,MetaMoJi Note Liteを使って表と式を書き,Dropboxにアップロードした後,教室の電子黒板で提示をしながら考え方を交換共有するという感じです。

 iPadの操作自体は子どもたちは慣れているようなので,ICT機器操作の面では特に大きな課題があるわけではありませんでした。学級規模が小さいことや,事前に参観者には手持ちのスマートフォン等のWi-Fiは切っておくように念押しされたこともあってか,無線LAN等のネットワークも不安になる要素はありませんでした。

 あとは,授業に相応しいICT活用を引き出す準備や段取りの仕方,そもそもの授業の目標に立ち返ることなどがICT利活用に振り回されることなくできるかどうかといったところ。より望ましいアプリを探して用意するということを継続する必要があるし,一方で,実際の授業におけるファシリテートのスキルも探究していく必要もあります。

 従来は黒板ベースで長らく蓄積してきた授業技法などのノウハウ蓄積を,ICT機器を加えたところでリニューアルしていく長い道のりに足を踏み入れたと考えて,腰を据えて取り組んでいく必要があるのだろうと思います。

 私がもう少し上手にお話しできる人間だとよかったのですが,課題について単刀直入に語ってしまう癖があり,今回も暖かくフォローする部分が足りなかったかなと思います。ただ,単発でしか訪れない外部の人間ですから,その機会に言うべきことを言って考える材料にしてもらうことの方が大事と思って,今回もいろいろ指摘をしていました。

 その後は,美郷町の教育長先生や各校の校長先生の皆さんと情報交換をして,一日を終えました。

 翌日は徳島へと帰る移動日でした。

 当初は行きのときのように車で送ってもらって,出雲市駅から着た道を帰る予定でした。しかし,この美郷町にはJR三江線という有名なローカル線が通っており,広島経由で帰ることが出来るので,せっかくなのでローカル線の旅を堪能することにしました。

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 紅葉の一歩手前という時期だったのですが,江の川沿いを走る汽車の車窓からの眺めはなかなか素敵でした。また違う季節の車窓も見てみたいと思いました。

 こうした地方の学校にとってのICT環境整備と,都市部のICT環境整備とでは,その意味合いが違ってくるところがあるとは思います。私自身はどこに住んでいても,根無し草のように宙ぶらりんな人間なので,その地域に住むということの世界観を理解することが上手ではないのですが,こうやって地域を取り巻く環境に触れながら,少しでもお役に立てればと思います。

 次回は2月にお邪魔する予定です。