今年度最初の有識者会議が東京で行なわれるというので出席してきました。
西日本地域の実証校を担当する研究者が集まって,各校の様子を報告することと,フューチャースクール推進事業と今年度から開始した学びのイノベーション事業に関する説明を受けるという内容でした。
もっとも今回は珍しく,総務省と文部科学省から担当者の方々が会議に出席したくださったので,両省の担当者から直接いろいろな話を聴く機会となりました。
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西日本地域の各校の様子は,昨年度の流れを継続しつつ,それぞれの実証校の先生方が地道に取り組んでいらっしゃる感じです。年度替わりに先生たちの異動もあって,新しいメンバーを交えて取組み直しているという学校も少なくありません。
それぞれの学校には,もともと取り組んでいた教育実践があったりしますので,それに乗せてICT利活用を進めているところもあります。また,都道府県自体がICT機器の導入活用に積極的で,県下の他の学校でも様々な事業を展開しているところでは,事業横断的な取組みも進められています。
正直なところ,5校で歩調を合わせて…という展開を考えるのはなかなか難しい側面もあるようですが,今後は学校間交流にICTを活用することも計画には盛り込まれているので,何かしら実践をする機会もあるでしょう。
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総務省と文部科学省の担当者の方が出席されていたので,両事業に関して直接の説明を受けた後,ざっくばらんに質疑応答となりました。
本当なら事業推進自体の問題などについて,細かく聞くべきこともあっただろうし,評価のためのアンケートについても細かく検討すべきでした。
しかし,今回は事業に対する「考え方」について率直に両省の立場を聞いてみたかったので,私はこういう質問をしてみたのです。
「現在,整備されているハードウェアとICT環境は決して理想的ではない。理想的ではないのは仕方ないとしても,本来できると謳われていることを実行するにも,場合によっては時間がかかったり,不具合で不可能になったりすることすらある。
そのような環境を前提とするならば,どうしても機器がうまく動作しない場合のB案のようなものが必然となる。
学びのイノベーション事業は指導方法の在り方を検討するということになっているが,率直に言って,そのようなB案を前提とするような指導方法の開発を文部科学省(特に初中局の教科調査官のような教科教育の番人)はよしと考えているのかどうか。」
授業というものが一分一秒を大事にしているものである以上,新しい道具の未熟さに引っ張られて時間をロスすることは,教授側として極力避けたい事態である。
あまく動けばよろしいが,うまく動かないこともあるかもね,というのでは学用品として極めて低品質だ。そこを敬遠してICT導入を拒む人々も少なくない。文部科学省的にはこの現状をどう捉えているのか,素朴に質問してみたかったのだ。
あくまで担当者の見解であることを断った上で,そこで得られた回答は「この事業で,そのB案が必要であるといなら,まさにそれを明らかにしたい」という素朴なものだった。
それに教科調査官たちも,すでに教育の情報化ビジョンなどの作成過程でいろいろと手を貸し作業に加わっているので,ICT利活用に関しては前向きであるようなことも話されていた。
話を聞いていると文部科学省として,考え方はニュートラル,かつ積極的にやっていきたいと言う雰囲気が伝わってきて,悪い響きは感じられない。とはいえ,よくよく考えてみると「2011年に至って,そこから?」という気がしないでもない。
とはいえ,その他にも個人的な考えもぶつけてみたりして,私の誤解や過度な解釈について考え直す機会を得られたのはよかった。
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その席で話題に上がったのは,教育の情報化のための地方財政措置として確保されている予算が十分に消化されていないということだった。
皆さんはフューチャースクールに10億円だとか,学びのイノベーションに3億円とかの予算が付いたことに対して多い少ないを議論されるかも知れないが,この国は何年も前から「教育の情報化対策に関する地方財政措置」として1,500億円規模の予算枠が確保され続けている。
この1,500億円もの予算確保がありながら,うち500億円は他のことに使われてしまい,教育の情報化のためには使われずに終わっているのである(地方交付金として確保されているから他への転用は自治体判断で可能)。
願わくはフューチャースクール推進事業や学びのイノベーション事業が良いモデルを生み出す機会となって,もっと地方自治体側がモデルを参考に予算を使ってくれることを狙っている。
まぁ,とにかく国としては計画通りやってますのでご協力を…ということなのだが,そうはいっても細かなところでいろいろなことが大変。一研究者として,できる事はがんばるつもりだけれど,先が思いやられるなぁという感想も同居した複雑な気持ちになった会議であった。