2011年12月11日にNHK教育放送企画検討会に出席しました。国の教育情報化事業に関わっている立場で今後の教育放送(NHK for School)について意見を求められたからです。
検討会は,大学の研究者と幼保小中高校の先生方などが出席するもので、専門家や現場の先生の声をNHKの制作関係者の方がダイレクトに聞くことで,番組作りに反映させようという趣旨で行なわれています。
NHK放送センターには見学やアルバイトで訪れたことはありますが、正式なお仕事を直接依頼されて訪問するのは初めてでした。これも総務省FS推進事業や文部科学省LI事業に末端で関わっている後光のおかげといったところです。
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私なりに教育放送について考えていたことを述べたりしましたが、むしろ学校の先生方のナマの意見を聞けたのは,私にとっても勉強になりました。
全体会が行なわれた後で,幼保,小学校,中高校と3つの部会に別れたのですが、私は中高校部会に出席することになり、普段なかなか聞けない中等教育段階の学校の様子を伺うことになりました。
そこでお聞きした学校の機器設備の環境は,なんとなく知っていたとはいえ、改めて実情を聞いて,悲しい気持ちになりました。
日本の中学校・高等学校はメディア環境がかなり貧しい。
もちろん,私が関わっている事業のように児童生徒一人一台のパソコンとか,各教室に電子黒板が必ずあるというのは普通ではありません。
けれども,テレビくらいはわりと置いてあるのではないか。
地上デジタル放送に移行したため、その地デジ化が進んでいないということは別の問題としてあるのかも知れないが、それにしたってアナログテレビくらいは残り物としてありそうな気もします。
しかし,そのテレビすら教室に無いというのが現実です。
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そこで文部科学省が行なっている「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を再確認してみることにしました。
いったいテレビは学校にどれだけ設置されているのか。以下が平成23年3月時点のデータをグラフ化したものです。
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これがこの国の学校に設置されている「テレビ」の実態です。
普通教室の部分だけを注目すれば、設置されているテレビのパーセンテージは,小学校で95%,中学校で56%,高等学校で7%,特別支援学校で43%となっています。
小学校はともかく、中学校と高等学校がこのような環境下で、教育番組や映像教材をフル活用できるとは到底考えられません。
日本の教育について考える際、中学校と高等学校(これらを合わせて中等教育段階と呼びます)は,難しい実情が多いばかりに、ちゃんと取り組まれないまま問題が先送りされやすかったともいえます。
そうしたことが,教育環境の整備に関しても表れてきてしまったのが,このような調査結果なのかなとも思います。
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このような貧しいメディア環境の実態があるために、様々なアイデアと努力によって制作されている教育放送番組がなかなか届けられずに苦心している現実があります。
そして、魅力的な映像素材を学校の授業で使いたいと考えている学校の先生方がいるにも関わらず、それがなかなか出来ないことで,何より生徒達から学びの可能性を奪っているということを,もっと多くの人々が知らなければならないと思います。
それぞれの地方自治体でしっかりと教育環境のために予算をつけていくことが必要です。そのような動きになるべきだと訴えたいです。
“メディアプアな日本の中等教育” への4件のフィードバック
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小中学校でも、職員室や宿直室は教育目的ではないのでやはり受信料を支払う必要があるのはご存知の方はご存知です。
でも高校の普通教室にテレビを設置するとNHKの受信料を支払う義務が生じることは、あまりご存じないようです。
>高校の普通教室にテレビを設置するとNHKの受信料を支払う義務が生じることは、あまりご存じないようです。
なるほど,受信料負担があるとなると確かに設置をためらう理由になりますね。すると放送法レベルで配慮してもらうべきかどうか等の議論も必要ですね。考えてくれる政治家はいないかな。
受信料について調べてみましたら,放送法ではなく「日本放送協会放送受信料免除基準」という文書に免除の記載があるのですね。学校については「学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校のうち、小学校、中学校、中等教育学校(前期課程に係るものに限る。)、特別支援学校および幼稚園」とあります。
http://pid.nhk.or.jp/jushinryo/exemption_1.html
高等学校は「中等教育学校・後期課程」にあたるので,上記の括弧書きが引っかかって免除とはならないということが分かります。ちなみに放送法によると「協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。」とあります。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO132.html#1000000000003000000006000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
貴重な情報をありがとうございました。
デジタル化対応など おくれていること明白ですね