[FS佐賀] 20120125 佐賀市立西与賀小学校公開授業

 フューチャースクール推進事業の佐賀県実証校である西与賀小学校で公開授業が行なわれましたので参観してきました。
 西与賀小学校のある佐賀県は,教育の情報化に関して積極的な県として有名です。FS推進事業以外にも絆プロジェクトや県独自の情報化モデル事業を展開するなどしています。
 というわけで,西与賀小学校に行く前に,佐賀県庁の佐賀県教育委員会に寄って,県の教育情報化の取り組みについて教えてもらうことにしました。

 小学校の事であれば学校設置者は市町村になるので、本来は佐賀市教育委員会に出かけるべきですが、佐賀県全体が元気な理由を探りに県庁にある佐賀県教育委員会へ。教育情報化推進室の部屋を見つけて飛び込みしてみました。
 お昼時直前のお忙しい時の「佐賀県の取り組みを教えて欲しい」という唐突なお願いにもかかわらず、担当主事の先生が資料を用意してくださりいろいろ教えてくださいました。
 現在、佐賀県としては県独自の情報化事業を進めている最中で、そのロードマップは次のような感じとなっています。
 ・実証研究(H22〜23)
 ・実践、展開(H24〜)
 ・全国発信(H25〜)
 現在は実証研究段階ということで、県教委として中高の協力候補指定し、平行して国の事業であるフューチャースクール推進事業や絆プロジェクトと連携していく形で進めているようです。
 H24からは県下の県立学校全体に展開し、市町村立の小中学校についても各市町の教育委員会と連携して事業促進しようとしているので、結構テキパキと物事が進められている感じがします。
 少し前に佐賀の県立高校の全生徒にタブレット端末を配布するというニュースがありましたが、これは展開フェーズの一環というわけです(報道では2013年度とあり、当初計画でいうところの全国発信の時期でもありますが…)。
 こうしたアグレッシブな教育情報化の推進の契機はどこにあるのかを率直にお聞きしたところ、やはり現在の首長さんが情報化に対して積極的であることと教育長さんの理解というところにあるようです。
 そんな県としての積極的な雰囲気と一緒になって、県下の市町も密接に連携しながら情報化に取り組んでいるというのが佐賀県の現状のようです。
 当然、市町村レベルになるとそれぞれ体力が異なるのでしょう。そこで国の事業などに積極的に参画することでこれを補おうとしているようです。

 さて、話をFS実証校の参観に戻しましょう。
 西与賀小学校の公開授業は、1年生の算数、4年生のコース別の算数、6年生の総合的な学習の時間が公開されました。
 今年度の研究主題が「ICTを利活用した算数科学習」というところにあり、そのための授業デザインの構築をしていることがポイントでした。
 授業を「(課題を)つかむ」→「見通す」→「さぐる」→「まとめる」という流れとして見立てて、ここにICT機器をどのように活用していくのかをデザインしていこうとしたようです。特に「さぐる」の部分にこそ協働学習が活かされることになるので、ここを「学びタイム」と名付けて大事にしようとしています。
 学びタイムでは、自分自身で作業する活動もあれば、子ども達同士が伝え合い学び合う活動もあり、それらを通して思考力や判断力、表現力の育成も狙っているようです。
 実際の算数の授業だと、1年生では20よりおおきなかずについて学習する際に、タブレット上に現れたたくさんのペンギンのイラストを数えるやり方を子ども達一人一人が考えたり、隣りの子とペアになって考え合ったりする学びタイムが確保されていました。
 4年生は習熟度別のコースに分かれた分数の授業が行なわれてました。「どんどん」と「こつこつ」と「じっくり」コースの3つです。レディネス別とのことなので、分数という学習の難所を子ども達の実態に合わせて適切に指導するための配慮となります。
 やはりここでもそれぞれ学習タイムが確保され、コース毎の違いはあれど、それぞれ個別的な学習と協働的な学習が展開していました。
 こうした授業の最後には、まとめの時間として子ども達が各自のタブレットPC上で振り返りをノートしていくようになっています。
 ちなみに6年生は総合的な学習の時間で、学校で過ごした6年間を振り返ってまとめた「西与賀っ子の伝統」というプレゼンをつくってきたようです。今回は、つくったスライドに合わせて発表リハーサル。グループごとにIWBを操作して発表を行ない、他のグループがアドバイスするという活動をしていました。

 実は、西与賀小学校で特徴的に思ったのは、タブレットPCを積極的に電子ノートとして使っていこうという取り組みでした。
 授業中に配布されるワークシートは学習者用デジタル教科書とともに導入された電子ノートを使ったもの。これにどんどん書き込んだものは、最後に書き出されてOneNoteというソフトに貼り込むようにしています。そして振り返りもOneNote上に書き込んで、毎時間の成果がどんどん蓄積されるというわけです。
 こうすれば過去の学習をさかのぼって参照することができますし、授業で扱われた友達のワークシートも一緒に貼り込まれたりするので振り返って比較もできるようです。
 残念ながら家にタブレットを持ち帰ることもできず、家から参照できるような状態にネットワークが開かれていないので、家庭学習に役立てることができていないようですが、これもプリンタを各クラスに導入するなどして、電子ノートをプリントアウトして持ち帰っても見られるようにする計画があるそうです。

 佐賀県の情報化の賑やかさとは打って変わって、むしろ堅実にICTを利活用している印象でしたし、かと思えば電子ノートというかなり野心的な取り組みを積み重ねているというところに、やはり佐賀の底力を感じた参観でした。