3月12日に文部科学省で「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」の第4回会合が行なわれました。
ちょうど翌日の催事のために東京出張があったので、よい機会と思い傍聴を申し込んで出席してきました。(当日配布資料)
—
この検討会は、2020年頃の改訂を予定している学習指導要領のための準備として、文部科学省の初等中等教育局のもとで開催されるものです。
学校教育で教える内容が変わるということがニュースになるのは、学習指導要領がほぼ決まったことをマスコミが取り上げる頃に流れるため,一般の人々には「知らないうちに誰かが決めている…」と受け取られる事が多いかも知れません。
では、いつ議論して決めているのかといえば,今からです。
この検討会は、いろんな有識者を招いて、現状で考えなければならない事柄を報告してもらい、情報を集約し検討課題を整理する事を目標としています。
つまり、「教育目標・内容・評価」について、新しい学習指導要領での「在り方」を決めるのは、この検討会で出てきた課題に左右されるといっても過言ではありません。
—
ところで、この検討会では、ICT関係はどの程度取り上げられているのでしょうか。
検討会はまだ始まったばかりですので、ICTに限らず、まだまだ多くの事柄について情報を収集している最中というのが現状です。次期学習指導要領がどのような方向性のものになるのかは、まだほとんど決まっていないと思います。
ただ、傍聴してみて改めて確認できたことは、検討会において「教育方法」の扱いにまだ議論を広げる事は慎重を期しているという事です。
学習指導要領は、教育目標と内容、および評価が中心となるもので、教育方法については規定をしていません。教育の目標と内容と評価に基準性を設ける事は、平等な学習機会確保のためにも必要な事ですが,教育の方法まで縛りつける事はむしろ避けるべきと考えられているからです。
そのため、「ICT活用」といった教え方に関する話は、この検討会ではほとんど関心を示されていません。
—
では、「情報教育」や「情報活用能力の育成」といった事柄はどうでしょうか。これらは教育方法ではなく,教育目標・内容・評価に十分関わりがあるものです。
これについても真正面からの議論はまだ始まっていません。
ただし、第4回の検討会でも「スキル」という言葉に関して検討しなければならない事がクローズアップされたのではないかと思います。
報告の中では「21世紀型スキル」という言葉も登場し,これについて強調する意見も披露されましたが,その言葉自体よりもむしろ、この語中の「スキル」という言葉がこれまでの「技能」と同じものなのかどうなのかといった資質・能力観全体における位置関係に関心が集まりました。
育成すべき資質と能力を考えるにあたって,「知識」と「スキル(技能)」の2つが取り上げられるわけですが、この2つの関係は上下関係か並走関係か螺旋関係かといったこともコンセンサスが得られているわけではないため,何かしら語の定義についても議論すべきではないかという提起もありました。
そんなわけで、現代社会や将来社会において必要なスキルというものを明らかにする中で、ICTスキルようなものも吟味されていくのではないかと思われます。
—
しかし、この検討会は初等中等教育局が主催するもので,その初中局といえば情報やICT関係は得意とは言えない面もあります。
召喚される報告者から適切で十分な情報提供がなされないと、こうした話題が教育内容としては捉えられず,教育方法(あるいは学習方法)としてあまり積極的な議論もされずに置かれてしまう懸念も残ります。
気をつけるべきは,何でもかんでも学習指導要領に盛り込めば良いというわけではないため,この検討会や議論の中で扱うべきかどうかの見極めについても、一歩引いた目線で動向を注視しなければならないという事です。
そのうえで、次代の学校教育に必要とされる教育目標・内容・評価について、私たち自身も考えていく事が大切です。