平成29年学習指導要領に合わせた教科書の検定結果が発表された。
各紙が「主体的・対話的で深い学び」に対応したことや,「脱ゆとり」の踏襲による増ページ,2度目の「道徳」,小学校の「外国語」と「プログラミング体験」に関して報道。いつものように社会科の領土記述も話題になった。
知識偏重から学び方や資質・能力にも軸足を置く大きな転換を遂げた学習指導要領を受けて教科書が作られたことから,これに戸惑う教師を想像する論調も多い。曰く「問われる指導力」だとか,「使いこなす指導力を磨きたい」とか。
朝日新聞は「「先生に親切」競う教科書 手取り足取りでいいのか」(朝日新聞)という記事を配信して,若手教員の割合が増した学校現場の現状に即して記述が至れり尽くせりになった点について触れている。
今回の検定教科書を生かすも殺すも教員の指導力と言いたげだ。
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実際,全体的な雰囲気としてお尻に火がついたように,教員養成や教員研修を変革させなければならないという動きが加速している。
一方で,「働き方改革」の取り組みで教職員の勤務時間を短縮する傾向が強まっている。校務はもちろんのこと,授業準備にかける時間も可能な限り効率化することが求められる。
私たちはますます「うまくやること」を強要されるというか,そう言われるわけではなくとも,自己内規範としてより理想的な教師を目指すよう仕向けられているようにも思う。
もちろん,うまくやれた方がいい。でもそれだけでは息苦しいような気もするのだ。
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これほど大掛かりな転換を踏まえた教科書検定の結果だというのに,検定結果の公開に関しては従来規模を踏襲してしまっている。
本来なら,もっと期間を長くしたり,全国的に行脚して,広く国民に見てもらうべきであろう。
家族にでも児童生徒がいない限り,国民が教科書を直接見る機会は多くない。今回のような報道だけで検定教科書の内容を把握するのは誤解も多い。
もっと教科書検定結果を広く知ってもらうということにも力を入れるべきだ。