バタバタしていたためブログも滞っていました。学会などあって大変でしたが,無事に山を越えて,少し穏やかな時期を過ごしています。来週からまたバタバタです。
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実は先日,9月26日にiPadアプリ「Note Anytime」が誕生日を迎えました。
正確にはリリース1周年記念日といったところですが,このアプリとは特別な出会いをしたこともあって,やはり感慨深いです。
昨年は徳島県の事業に関わって,小中学校のiPad活用出前授業をしていたのですが(残念ながら今年はないのですけれど…),そのとき小学校で利用するアプリを探していた私たちのもとに降臨してきたのが「Note Anytime」だったのです。
発表日の翌日には小学生達にNote Anytimeを操作してもらい,好感触を得たことはブログでも紹介した次第です。
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当時,私たちが探していたのは,子ども達が新聞やポスターを作成するためのアプリでした。なので,通常この手の課題用にはワープロアプリか,レイアウト編集アプリが選択肢として挙がります。
しかし実際のところ,タブレットアプリの多くはタブレット独特の使い勝手が使い難さに裏返ってしまっている部分も多く,iPadアプリにおいてもそれは例外ではありません。
ワープロアプリやらノートアプリ,ドローアプリも試してみましたが,帯に短し襷に長し…。実際,子ども達がApple純正アプリのPagesを試してみた感想は芳しいものではありませんでした。
Note Anytimeには,そうした状況で出会いました。
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子ども達に使ってもらうために,アプリ画面は一瞥して親しみがなくてはなりませんし,単純で使いやすくなければなりません。これまで紙の上で作ってきた作品をデジタルを使って作るので,A4やA3といった用紙サイズの概念もちゃんと扱えて欲しい。
Note Anytimeは手書きノートアプリとしてリリースされましたが,これらの要件を満たした上で,さらに高度な機能と自由度,初代iPadでも快適に動作する軽快さを備え,単なる手書きノートアプリを超えるものがありました。
何より,MetaMoJi社が誇るmazecという手書き入力機能と手書き文字をテキスト文字と同等に扱える文字枠機能が使えるというのが,Note Anytimeの未来への可能性を表わしています。これはノートアプリとして極めて重要なことだと思います。
もちろん,文字枠以外のところへの手書き図や文字の書きやすさを追究した高倍率の拡大縮小機能はNote Anytimeの売りですし,こだわりの線描画処理,PDFなど多様な出力もサポート,他のノートアプリが備えている機能を一通り実装など,リリース直後にして最高のノートアプリと評されたほどです。
掘り下げれば,Note Anytimeのもつポテンシャルをいくらも探すことが出来ますが,とにかくこれが無料で提供されたことは驚きでしたし,その後,Windows版,Android版とマルチプラットフォーム展開したことは利用者にとって朗報です。
出前授業に使うアプリにPagesがダメだと分かったとき,前日にリリースされたばかりのNote Anytimeを初代iPadに急遽インストールしたのは正解でした。
こうして,(たぶん)日本で一番最初にNote Anytimeを小学生が使った授業事例が生まれ,その後縁に恵まれて,上勝小学校の皆さんと私がMetaMoJi社の事例紹介ページに載ったのです。
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同時期に,仕事の関係で私は「デジタル教科書」なるものについて考え続けていて,今に至っています。
デジタル教科書というのは,教科書あるいは参考書などの教材がデジタル化されたもので,大画面に映し出し,授業進行に合わせて内容を拡大縮小して見せたり,書込み機能で線やマーカーを引けたり,マルチメディアによる豊富な教材を取り出して見せたりできるものをイメージしてもらえるとよいと思います。
これは先生が教室の前で使う場合のイメージですが,一方で,児童生徒学生など学習者が手持ちのタブレット端末に表示させて,紙の教科書以上の活用が出来るようにしたバージョンもあります。先生が使うものを「指導者用デジタル教科書」,学習者が使うものを「学習者用デジタル教科書」と呼んだりします。
いま指導者用デジタル教科書は各地で導入が進められているのですが,残念ながら学習者用は端末の普及問題と定義や仕様の議論もあってまだ試行段階にあります。
これがNote Anytimeというノートアプリと何の関係があるのかとお思いかも知れませんが,私はデジタル教科書の鍵を握っているのはデジタルノートではないかと思っているのです。多くの人々も似たように感じているのではないでしょうか。
タブレット端末は常々,消費のためのデバイスだと論じられ,たとえばキーボードの無いタブレット端末を用いて生産活動することは難しいとされています。それに関する導入現場の実態報告も聞こえてきます。
一方でまた,キーボードで情報を入力する行為だけでは学習や記憶の定着には不向きであると主張する立場もあります。曰く「手で書かなきゃダメだよ」と。
あるべき入力手段や行為が何かは議論を深めるべきテーマですが,事ほど斯様に,教育において情報の入力手段は重視されていることがわかります。ならば,入力を受け止める記録手段,たとえばノートアプリについても大いに議論が起こりそうです。
残念ながら,試行段階にあるデジタル教科書に付随している情報の記録機能は極めて限定的なもので,思考を記録するための柔軟性を有しているとは言えません。使いやすいように特化した機能が逆に情報を他へ持ち出す汎用性を阻害してしまってもいます。
書くにせよ,打ち込むにせよ,私たちが入力し記録したものが私たち自身の学習を反映したものとするならば,それを留めておくべき媒体が柔軟性を欠いては学習を押し広げて高めていくことはままなりません。
おそらく現在のデジタル教科書が酷評されるのも,こうした記録機能の部分が貧弱過ぎることに大きな原因があるのではないかと私は考えています。
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Note Anytimeも万能ではありません。
基本的にNote Anytimeは線画ノートアプリであり,今のところ空間を塗りつぶすといったお絵描きアプリのような機能はありません。写真やイラスト,Webページを張り込めるとはいっても,いまはマルチメディア対応していないので動画や音声を張り込むことも出来ていません。
それでも,私たちが手書きの世界で行なってきたことを,かなり高いレベルでデジタルの世界に引き継ごうとしています。
そして,デジタルだからこそ,線画データをベースにしているからこそ,紙では出来なかったことができる可能性を秘めていると感じます。
私たちは紙のノートを捨てるべきだという意味ではなく,紙のノートの延長線上に素敵な可能性を持った新しいノートが続いたのだと思うべきではないでしょうか。
他のノートアプリにはそのような可能性を感じなかったにも関わらず,Note Anytimeはそう思える出来であるということが,私がこのアプリを好きな理由です。
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本当はこういう部分はもうちょっと色気出してこうなって欲しいという要望はたくさんあるのですが,MetaMoJi社のコンピュータ技術職人さん達がつくる質実剛健アプリのため,その辺はまだまだ時間はかかりそうです。
とにかく,Note Anytimeリリース1周年おめでとうございます。
まだ1歳なのだから,これからどんどん成長していくのだろうと思います。