洗濯してても教育データ標準のことを考えたりする今日この頃です。(#教育データ)
先日(11/14)「教育データの利活用に関する有識者会議(第14回)」が開催されていました。
仕事もしていないのに会議資料に自分の名前がチラッと出てくるのは気まずいものです。
「【資料1-2】教育データの標準化に関する事業状況報告」ですが,ここでもご紹介した「活動情報」をどうデータ形式化するのかが検討されています。私もこれ見て初めて知りました ^_^;
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教育データの「活動情報」とは何なのか?
同スライド資料でも再度引用されているように…
多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、個別最適化された学びの実現や、学校現場での「主体的・対話的で深い学び」に向かうためのデータ活用
において学習履歴情報がデジタルデータ化されたものを指します。
そこで今回の資料では学校での「活動」を明らかにする手だてとして,ジャーニーマップなる行動タイムスケジュールをいくつかの典型的な人物モデルを想定して作成しています。
もちろん学校で過ごさない人達もいますから,そういうモデルケースも想定して,いろいろ検討していくわけです。いろんな距離感はあれど学校教育に関わるという緩やかな範疇において,まずは私たちが掴みたい「活動」がいくつか浮かび上がってくることになります。教職員についても,使う材料は(ジャーニーマップとは)違うけれども,校務等を分類整理しています。
さて,そうした作業をして次のようなことが得られたようです。
ふむ,なるほど。
学習履歴を記録する国際データ標準規格である「Experience API」(xAPI)を考えてみると…
1.「主体」と「活動」は「actor」と「verb」で分離できるので,汎用的にっていうのは納得できます。
2. 「活動」は「行動」と「状態」に区分できるというのも,行動を「verb」「context」で表現し,状態は「result」で表わすと解釈すればよそさうです。
3. 「行動」を「生活」「学習」「指導」「運営」とするのは…
かなり大ざっぱな区分ですが,学校でやっていることはそんなことぐらいなのでしょう。具体的な活動のキーワードをジャーニーマップから抽出することが必要になりますから,いまはこのくらいで。
4. 「状態」は,多様なデータセットとして整理される…?
ん〜,確かに,活動の「結果」として様々な指標が出てくるというのは確かにそうですが,xAPI等ではこうした指標データや評価データは別のプラットフォームが管理することを前提にしていて,「活動情報」の範疇としてはあまり考えていないように見えます。
xAPIでは,result項目において記載される例として「passed」「failed」とか「success: true」とか,そういう達成未達成ぐらいの粒度の情報であり,実際の成績データは評価データを管理しているシステムに問い合わせるという連携を想定しているようです。
ここで「状態」として扱おうとしているものは,データセットを管理する別システムとのエンドポイント的に捉えておくのがよいのではないかと思われます。
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ちなみに「状態」とか「結果」と聞くと日本人の私たちは,どうしてもそこで何かが区切られて止まってしまうようなニュアンスを感じ取ってしまいますが,私たちとしてはあらゆる活動とその結果は長い軌跡の途中のものであることを忘れないようにしなければなりません。
ラーニング・トラジェクトリーズ(Learning Trajectories)という考え方があり,子どもたちの学びを軌跡(trajectory)として捉えて,子どもたちの概念や思考の発達軌跡に応じた学習の支援や環境をアレンジしたり調整していくことを重視するものです。
教育データ全般に言えることですが,ある時点のスナップショットデータから描き出された様々な指標にもとづいた局所的な対応を考えるだけでなく,ロングスパンの学習軌跡としてデザインすることがまず先にあって,データはその旅路の進捗(progressions)を知るナビゲーションとして捉え,もっと先の目標を見据えた対応が肝要になります。
たまに旅路を振り返り,「ああ,あんなことしたな,こんなことしたな」と思い出を振り返りながら,「さあ,目的地に向かって頑張ろう」と勇気をもらえる。そんな「活動情報」であって欲しいと思います。
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ところでスライドには「内容情報」についてこんな風な記述もあります。
「内容情報」を「活動情報の対象となる内容」として整理…
なかなか興味深い記述です。
内容情報といえば「学習指導要領コード」(Course of Study Code: CSコード)が先行公開されてます。
このCSコードについて,「学習指導要領コードの利活用に関する調査研究事業」というものが走っているらしく,いくらか調査研究してきているようです。
xAPIで記録される「活動情報」の中に日本独自で「CSコード」を埋め込んで,活動情報がやりとりされることによって自動的にCSコードが付与されたり,関係する情報同士をCSコードで引き寄せてくることができるようになるかも知れません。
教育データ標準で定められた情報形式やコードは,それぞれを単独で動かそうとしてもあんまり役に立たないのです。ひとりじゃ寂しい。
以前もご紹介した通り,「学校コード」は「位置情報」と仲良くすることで様々な可能性が拓けます。「学習指導要領コード」は「活動情報」やSNSなどでの「共有活動」が組み合わさることで面白い展開を描けます。
教育データ全般は,個人情報などセンシティブな情報を扱うにあたって難題も多いのですが,そここそはテクノロジーの力を活かして解決できる事柄も多いはず。官僚的な対応ばかりしていては乗り越えられるものも乗り越え難くなってしまいます。
長い旅路は始まったばかり。そして,旅は楽しむものでなくては。是非ご一緒に。