語り合いを重ねるということ

 9月に始めたネット上にある教育とICTの語り合いの場「スナック・ネル」が続いています。毎週月曜22時に開店するお店に見立てたYouTube配信です。

 スナック・ネル http://snacknel.edufolder.jp

 開店の経緯については,スナックの「マスター」役を引き受けてくださっている田中康平さんのブログ記事に書かれています(「スナック・ネル」[教育ICTデザイナー 田中康平のブログ])ので参照してください。

 実はもともとマスターの書いたブログ記事に私が懸念を表明したのがきっかけだったのですが,結局コメント欄で継続的にオープンに議論する場の必要性で意気投合?したことになります。

 どうしてそんな場の必要性が感じたのか。

 「教育フォルダTwitter」のニュースリンク集を眺めていただければ分かるように,日々,教育に関するニュースは絶え間なく流れきますし,その中で教育とICT関連項目も網羅できないほどです。それを各人各様にキャッチしているわけですが,つまりは同じ関心を持つ者同士でも受け止め方がバラバラという事でもあります。

 どこか定点観測的にこうした状況を眺めつつ議論する場を作って,継続的に多くの人々が互いの考えを交わらせることも一方には必要なのではないか。そういう場があってこそバラバラである事にも意味が増すのではないかと思われたのです。

 それにこの分野は新しいものが大好きだから,常に前へ進む傾向にありますが,そうして走り続けていると,少し前の事も忘れがちなのです。リセットの繰り返しは,ゼロスタートの気持ち良さもありますが,過去に学ぶ事をおろそかにしてしまう状況も生んでしまいます。

 だから「定点観測的」「継続的」であることを優先した場を作って,模索を始めてみたかったのです。

 そのため私たちは仮想の飲み屋スタイルを採用しました。いつもの時間にいつもの場所へ行く事を気楽に続けられるスタイルといえば,飲み屋通いだろうと,そんなざっくばらんな発想を大事したいと考えたからです。

 幸い,スナック・ネルは少しずつではありますが,教育とICTを語っている場として認知されつつあるようです。

 もちろん否定的な意見も聞きましたし,良くない点はいくつも思い付きます。

 男3人だらだらしゃべって何の意味があるのか…とか,毎回テーマも分からず視聴するモチベーションに繋がらない…とか,特定の人たちだけでやっていて入り難い…とか,お酒を飲んで好きに発言する事は問題ないのか…とか,話長い!夜遅い!つまらない!…とか,そもそも誰に向けて,何のためにやっているのか?…とか。他にも諸々。

 そうした指摘や意見は的を射ている部分もあると思いますし,私たちも認識はしています。改善の余地もたくさんあると思います。

 ただ,それもこれも「定点観測的」「継続的」な場を作る事を優先する上で妥協せざるを得ないと割り切っています。

 毎回テーマも定まらず行方知らずの雑談を聞かされるのはウンザリかも知れませんし,だんだん話がマンネリになっていくことに面白みを感じなくなることもあるでしょう。

 けれども,そのことに対処する事にエネルギーを使うなら,定点観測的に継続的に語りを重ねていく事を優先しよう。マンネリ化するなら徹底的にマンネリ化してみて,その先に何かあるのかないのか確かめてみよう。そんな挑戦が幾度かあってもいいじゃないかというのが「スナック・ネル」なのです。

 幸せな事に,私たちは距離を超えて語り合うためのツール(私たちが使っているのはGoogle ハングアウトというビデオ会議サービス)を手にしています。かつてなら考えられなかった事です。しかもYouTubeという巨大な動画配信プラットフォームでリアルタイムに会話を届けられます。録画を残して時間を超えて見てもらう事さえ可能です。

 また,Podcastという手段を使えば,私たちの会話を聞きやすく編集して音声コンテンツとして届ける事も可能です(SnackNEL Podcast)。より多くの皆さんに語り合いを聞いてもらう事にもつながります。

 私たちがこの場を楽しめる限り,スナック・ネルを通していろんな語りを交わらせたいと考えていますし,そのことを通してその他の事に対する見え方も変わってくるのではないかと思ったりしています。もちろんそれは淡い期待の範疇にとどめておいて,私たちはただ場を楽しむ事に徹していますが。

 洒落から生まれる何かがあれば,それはそれで嬉しい事。洒落が洒落で終わったなら,それはそれで楽しい事。洒落が洒落にならなかったとしても,それはそれで恥じるだけの事。何もしないよりは,面白いツールがあるこのご時世なりの何かをやってみたかったというのが素朴な本心なのです。

 興味を持った皆様はぜひご来店を。常連としてお待ちしています。