遅すぎた撤退

卯月初日にでも書けば少しは洒落た話にでもなるのかも知れない。

けれども、遅すぎた撤退を告白するのに時期や日時を気にしたところで大した得になるわけでもない。いくらかの恩義さえ、もうすでに裏切っているのだから、なおさらだ。

林向達は次なるフェーズに移ることにした。

そのための撤退戦を開始することとなった。

それは文字通りのことではあるけれども、細かなことは始まってみないことにはわからない。

いまは端的にそれが始まることだけ記しておきたい。

遡れば、私はもっと早くそうするつもりだった。

そう考えていた矢先に学会大会の開催をお願いされて引き受けてしまった。

なんとか無事に学会大会を開催し終えて息ついたらコロナ禍がやってきた。

世間が動きを止める中、東京目黒へ出稼ぎする機会を得て楽しくは過した。

それらがようやく終わり、気がつけば私も歳をとり、田舎の孤独に疲れた。

次なるフェーズへの撤退を開始しよう。あとは任せた。