20110625講演スライド

講演「わたしたちの知識を伝える教育分野の情報化」
(於:えひめITフェア2011 2011年6月25日)

講演音声
http://twitcasting.tv/kotatsurin/movie/1895986

シルバー向け無料iPad教室(インターリンク)
http://www.genki.pro/
『地域・学校の特色を活かしたICT環境活用先進事例に関する調査研究』(JAPET)
http://www2.japet.or.jp/senshin/
『第7回 「教育用コンピュータ等に関するアンケート調査」 報告書』(JAPET)
http://www.japet.or.jp/jo693c65a-47/#_47
Research Points(米国教育研究学会)
http://www.aera.net/publications/?id=314

[徳島]新年度の初打合せ

 4月5日に徳島県東みよし町立足代小学校で平成23年度の総務省フューチャースクール推進事業に関する打ち合せを行ないました。
 足代小学校は全国で10校あるフューチャースクール推進事業の中の1校です。平成22年度から事業が始まり、今年度は2年目にあたります。
 年度替わりの慌ただしさもさることながら、3月にあった東北地方沖大震災の影響も大きく、あれこれの準備も遅れがある状態でスタート。依然として状況は流動的ではあるものの、とりあえず平成23年度も事業継続して試みを続けられることにはなりました。

 今年度はフューチャースクール推進事業だけでなく、昨年度の予備費で始まった「地域雇用創造ICT絆プロジェクト(教育情報化事業)」も動き出し、世間的には似たような教育情報化事業がたくさん存在することになります。
 この2つの事業に見た目の違いを見つけるのは難しく、どちらも子どもたちに情報端末を使った学習を展開してもらうような報道のされ方をするので、ほとんど見分けがつかないと思います。
 大雑把に性格付けすると、フューチャースクール推進事業は、あらかじめ大掛かりに計画を立てて始まった分だけ小回りが利かないという風。一方、ICT絆プロジェクトは、まずは機器と人材を入れて、市町村(と協力者)を中心に地域で様々な取組みができる小回り利きやすい風と思っていただければ、規模感としてはいいのではないかと思います。
 ICT絆プロジェクトの方が後から始まったり、いろんな地域と企業が関わっているので、機器が新しかったり、試みが斬新だったりすることがあります。ただし、地域にとっては負担もあるかも知れません。

 足代小学校では、春の異動で校長先生も教頭先生も新しい方に変わったこともあり、また少しずつご理解を深めていただき、これまでの実践を活かして今後の実践を展開してもらえることが期待されます。
 実は、昨年度は校長先生も教頭先生も女性の先生だったのですが、今年度は2人とも男性の先生。一番驚いていたのは子ども達だったみたいです。

 新しいことといえば、今年度は総務省のフューチャースクール推進事業に乗っかる形で、文部科学省の学びのイノベーション事業が合わさることです。
 私、総務省の仕事に接しただけでも気持ちが萎えたこともあるのに、加えて文部科学省の仕事にも接しなくてはならないのかと思うと少しクラッときますが、関わる機会をいただいた以上は末端の研究者に出来ることは限られますが頑張りたいと思います。
 もっとも学びのイノベーション事業の詳細はまだ十分煮詰まっているわけでもなく、これも大震災の影響ということにしておきたいと思いますが、デジタル教科書に関して仕上げに時間がかかっているようです。
 この時期に…と察していただける皆さんには裏方の慌ただしさも想像していただけるとは思いますが、これもちゃんと記録しなくては。

 あんまり物事が流動的過ぎるので、実証現場の人間は状況が定まるのを待つしかないのです。でも、待っているばかりも面白くないので、やっぱり出かけることにします。
 何かの会議の告知があったら、また傍聴しに出かけてみようと思います。
 東京から出張してきた事業者の人によれば、東京は(計画停電や節電のせいで)すっかり明かりの落ち着いた街になっているという話。数週間ぶりに訪れてみてもいいかなと思っています。

公開授業の参観や研究会の傍聴や…

 3月に入りました。
 先週は出張ウィークでした。大阪と東京はバス移動,広島は電車移動で,公開授業の参観や研究会の傍聴をしていました。すべてフューチャースクール絡みです。
 それぞれ詳しく書かねばならないと思いつつ,ツイートしたあとは,しばらく寝かせている感じです。公私含めて考え事がいろいろあって,後手になっているところもあります。
 手短に…。

 公開授業はそれぞれの実証校の取組みに励まされました。
 今年度における私のまなざしは機器環境の導入と受容という部分に重点化されているので,年度途中から短期間のうちにかなり環境適応していることは感心します。
 かなり無理もされているのだろうと思いますが,現場の先生方も子ども達も新しい道具や環境と上手くつき合うことが出来ているように思いました。
 参観させていただいた実証校はどちらも教育効果や学習効果にも強い関心を抱かれており,ICTを活用した授業づくりという点でも従来までの蓄積を踏まえたものを目指していたのが印象的でした。
 その部分は,何を目指すかによって議論も変るので後日考えることにします。

 研究会の傍聴は,複雑な思いを抱くことになりました。
 期待が満たされなかったということではありません。素人とはいえ,審議会行政や有識者会議のようなものに対して囁かれている問題などは知っていますから,過度な期待はしていません。
 むしろ,期待できないだろうと想像していたようなことが淡々と進行していくのを確認することは,やはり気持ちを萎えさせるということです。
 しかし,他にやりようがあるのかという問いに,私はまともな代替案を持っていません。そのことも私の気持ちを萎えさせているのかも知れません。少なくとも,いまはこの仕組みの中でしか動けません。
 私自身は,物事の両面について言及し,批判的であると同時に肯定的にものごとを進めていくように振る舞わなければならないと考えます。
 一方で,嘆いても,一方では,能天気に進まないと…。

 さて,任された仕事を頑張ることにします。
 

[徳島]公開授業&研究協議

 2011年2月3日に徳島県の東みよし町立足代小学校で、フューチャースクール推進事業(初年度)公開授業&研究協議が行なわれました。
 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 足代小学校では「2年生の算数」「4年生の音楽」「5年生の理科」の授業をご覧いただきました。学校の先生方も子ども達も、さすがに公開を意識して準備してきたわけですが、変な背伸びはしない普段の姿も見せられたのではないかと思います。
 私自身がカウントしたわけではありませんが、関係者も含めて180名もの参加数だったとのこと。児童数120名規模の学校ですから、この日は大人の数の方が上回り、子ども達も緊張したのではないかと思います。

 2年生の算数では「三角形と四角形」の単元の最後で、基本の図形の組み合わせで繰り返しのタイル模様をつくるという取組みでした。
 まずは、電子黒板で表示されている様々な模様を、図形の名前を意識して説明するという活動から入ります。やがて児童達が自身のタブレットPCの上で、単位となる図形を用いて模様をつくる作業に取り組むという流れでした。この授業はICT支援員さんが入ってくれた授業なので、先生と子どもたちだけでなく、ICT支援員さんが授業の中でどう動いているのかを見ていただくこともできました。
 4年生の音楽では、音楽室にタブレットPCを持ち込み、冬のメロディをつくってみる授業を展開しました。
 先生から、今日の取組みに関する説明と作曲ソフトの説明が一通り行なわれたところで、児童達がタブレットPC上で作曲作業を試みるという活動です。この日のために、文字キーを鍵盤に見立てられるようPCのキーボード上に載せる特製シートを手作りで用意したりもしました。その後グループでお互いのメロディを聴き合ったりして、グループで発表する予定だったようですが、時間の関係上発表は先送りだったようです。
 5年生の理科では電磁石の働きを知るために、様々なコイルの巻き方の電磁石が用意されて、みんなで実験できる環境が用意されました。
 様々なコイルの巻き方の電磁石を紹介し、その強さ弱さを調べる方法として持ち上げられる釘の重さを比べることが押さえられたあと、実験をします。教室の真ん中に用意された実験コーナーで各自が実験した結果をそれぞれのタブレットPCのワークシートに手書きでまとめていきます。そしてコラボノート上に用意された座標に、各自の結果を書き込んで結果を共有するという使い方がされました。
 3つの授業を周りながらでしたので、細部は違ってたかも知れませんが、こんな感じでそれぞれの授業が展開しました。
 ICT環境を使っている様子に限って切り出すと、多少の違和感を感じるところもあるかも知れませんが、小学校で日々積み重ねられている実践の文脈を想像していただき、その文脈の中で見ていただければ、ICTの溶け込み具合も悪くはないなと感じていただけると思います。
 あと、子ども達はやっぱり緊張してしまって、いつもより静か〜になってたみたい。

 私も担当研究者として研究協議のモデレーター役をいただきました。十分役目を果たせたのか自信はありませんが、学校の先生と事業者の方にも登壇していただき、お二人のお話の聞き役として頑張りました。
 正直なところ、どの方向でお話したりお話を聞き出すべきか悩みました。ご参加の多くは教育関係の方々ですから、当日の授業を振り返った教育的な議論をすべきかとも考えました。
 ただ、次の理由でそれをあえて退けました。

  • これは総務省管轄の事業なので、その色合いを前面に出すべきではないか。
  • 教育関係者は、教育の議論についてはよくご存知なので、あえて違った側面の話題提供をして、視野を拡げていただいた方がよいのではないか。
  • 本年度は3年継続事業の初年度であり、位置づけとしてICT環境の導入構築という初期の問題をメインに扱うべきタイミングではないか。(教育への効果の議論は次年度でも可能だが、初期環境構築の議論はこのタイミング以外ないと考えるので…)

 というわけで、初年度の事業推進や環境構築に関わる論点を私の方からお話をして、お二人の発表を聞くことにしました。
 そのとき私が使ったスライドはこちらです。→「教育の情報化とフューチャースクール推進事業」

 スライドをご覧いただくだけだと、さっぱり分からないと思います。
 しかも、順送りしていただいて分かるように、スライドに含まれているのに使ってない情報もあります。当日も10分だけだったので、お話できていません。
 当日は、なぜ教育の情報化が必要なのか、情報教育やICT活用が必要になる社会背景や世界情勢のようなものとの繋がりを「グローバル」という言葉からたぐり寄せて考えてみました。
 つまり今日では、ICT抜きでは考えられない世界の動きが起こっているわけですが、この出来事を理解するためにも関わっていくためにも、ICTとは何かを理解すること、必要なら使えるだけの準備を整えておくべき時代になっているということです。
 ICT機器を使える使えないは実のところ本質ではありません。もちろん使えた方がいいからこそ機器の導入もするわけですが、機器利用のスキルの必要性だけで「教育の情報化」を肯定することはできないことも事実です。
 けれど、ICTを基盤にした世界が動いていることは、無視できない事実です。これを知らぬままにすることはできません。まして私たちは世界から注目を集めるエレクトロニクス企業を複数有している国の人間です。その歴史からいっても、私たちの国の教育が情報化しない理由は、世界の人々にとっても考え難いと言わざるを得ません。
 そうした世界の人々と渡り合っていくためにも、教育の情報化は必要なのではないか。と考えてみたわけです。

 その他にも、このスライドにはいろいろ面白ネタが詰まっていて、これを解説するだけでも90分くらいの講演ができてしまいます。
 私が言いたいのは、問題の本質のことも、過去の取組みのことも、現在の困難も、いろいろ耳を傾ける姿勢を持って、今回のフューチャースクールを取り組んでいます、という事です。
 逆にいえば、そうした様々な事柄が分かっていても、思うように進められていないとしたら、皆様にはこの試みを世論として支援して欲しいというお願いです。
 今わかっていることは、仮に順調に議論や計画が進んだとしても、教育現場に本当の変化が訪れるのは2020年よりも、もっと後だということです。
 もしここで、政治的不安定や国民の皆さんの理解を得られずに議論や計画が長引けば、学校教育の変化は、もっともっと先の未来へとずれるということです。
 次代の人達に宿題をそのまま残すだけに終わらせないためにも、できる事を進めていきたいと思います。
 そうすれば、何かのイノベーションも起こって、思いの他早くに変化が訪れる可能性だって、無いわけではないのです。

[徳島]フューチャースクール公開授業迫る

 今年度から始まった総務省「フューチャースクール推進事業」は、初年度の追い込みに入っています。
 あらためて、フューチャースクール推進事業とは何でしょうか?
 総務省のWebサイトには次のような説明が掲載されています。

 学校現場でICTを利活用し、児童がお互いに学び合い、教え合う「協働教育」を推進するため、公立小学校を対象に、タブレットPC(全児童1人1台)やインタラクティブ・ホワイト・ボード(全普通教室1台)、校内無線LANの整備、協働教育プラットフォーム(教育クラウド)の構築等のICT環境を構築し、「協働教育」の実現のために必要な情報通信技術面を中心とした課題を抽出・分析する実証研究。

 つまり、
 ・児童1人1台のタブレットPC
 ・各教室に1台ずつIWB
 ・校内無線LAN完備
 ・教育クラウドも用意
 という環境が、教育を行なうにあたって直面する課題を調べる事業です。

 全国で10校の小学校が、この事業の実証校として選ばれました。(→リンク
 全国を東日本と西日本に分けて、2つの事業者が推進事業を請け負っています。
 事業の進め方はそれぞれの事業者で異なるため、事業推進や環境導入の方法などの差違も今回の調査研究における興味深い主題の一つです。
 つまり、10年後に全国の学校で情報環境を導入することが成功するように、今のうちに問題となる事柄を洗い出して解決の糸口を明らかにしましょうということです。
 そのためにも10校で起こる出来事や問題が多様であることに意味があるのです。

 私は、徳島県・足代小学校の担当研究者です。
 今回の事業では、各校に担当の研究者が割り当てられています。
 また、総務省にも研究会が設置され、現場の研究者とは別の研究者が構成メンバーとして組織されています。
 いろいろな壁もあって、すべての研究者のコミュニケーションが密であるとは言い難いですが、可能な範囲で連携しているといったところでしょうか。
 個人的には、総務省付の研究会がもっとメッセージを発してもよいと思いますが、事業者へ委託した以上、口出しは最小にというスタンスのようです。
 こういう萎縮した動きになってしまうのは、表面的なクレームを恐れているところもあるようですが、最近は少し緩和されてきたようです。

 実証校では公開授業を催すことになっています。
 ただ、残念ながら一般の人々に公開されるものではなく、対象は教育関係者(現場の先生方や教育委員会)や関連事業者などです。
・石狩市立紅南小学校(北海道)  2010年12月8日(水)
・寒河江市立高松小学校(山形県) 2011年1月28日(金)
・葛飾区立本田小学校(東京都) 2011年1月26日(水)
・長野市立塩崎小学校(長野県) 2011年2月9日(水)
・内灘町立大根布小学校(石川県) 2011年2月1日(火)
・大府市立東山小学校(愛知県) 2011年2月9日(水)
・箕面市立萱野小学校(大阪府) 2011年2月21日(月)
・広島市立藤の木小学校(広島県) 2011年2月25日(金)
・東みよし町立足代小学校(徳島県) 2011年2月3日(木)
・佐賀市立西与賀小学校(佐賀県) 2011年1月27日(木)
 いくらか公開授業の感想も公開されていたりして、いろいろな意見を見ることができるので楽しみです。指摘をどう成果に盛り込むべきか、悩ましいところもありますけれど。
 とにかく公開授業があちこちで実施されています。