次期Nexus7への期待

 Nexus7については,発売とともに購入して試していますが,タブレットに特化したアプリの少なさもあって満足できるものとは言えませんでした。
 その辺の事情が少しずつ改善されれば,安価で汎用性のあるデバイスという点は評価できます。残る問題は背面カメラを備えないことと,バッテリーの消耗が激しいことくらい。

 幸い,手書きノートアプリ「Note Anytime」のAndroid版が登場し,アプリに対する不満は収まりつつあります。手書き入力のmazecは,他のアプリでも活躍してくれるので,全体的な使用感を底上げしてくれます。
 そして,ようやく次期Nexus7の声も聞こえてきました。
 次のNexus7は待望の背面カメラ(500万画素と予想されている)を備えるとか。もしもこれが実現すれば,ちょっとした記録デバイスとして可能性が大きく広がります。
 iPad miniとNexus7とを比較して,Nexus7が負けているとすれば,背面カメラがないことだけです。(まぁ,バッテリーの持ちとかOSの快適さとかは目をつぶるとして。)
 なので,背面カメラ付のNexus7は,実用面でも大きく前進すると思われます。学校に導入するデバイスとしての最低限の条件をようやくクリアするわけです。
 背面カメラ付Nexus7 + Dropbox + Note Anytime +ミラーリング外部出力
 これがそろえばデジタル記録ツールとして学校にお勧めします。

人生と電子情報

 ドラマ「リッチマン、プアウーマン」には「パーソナルファイル」という物語上の開発物が登場します。個人情報を一括管理するシステムとして新興開発会社がイノベーションを起こそうと取り組もうとするものです。
 現実世界は「マイナンバー」という社会番号を付けるか付けないかだけで大変な議論が炸裂していますが,個人情報が電子的に管理されている事実はどんどん加速しています。

 クレジットカード会社や保険会社,どこかの図書館の採用で有名となったポイントカード会社にも,個人情報なるものが山のように保管されています。
 最近は買い物履歴の活用が表立ってきて,amazonはもとより,楽天やヨドバシカメラといった通販はどんどん個人情報を紡ぎ出して記録しています。最近では書店のポイントカードにも店頭で買った書籍や雑誌の記録がしっかりと活用され始めて,乱読派の私としては少し恥ずかしい気分になりました。
 また,モバイルデバイスにつきもののアプリの購入も履歴は欠かせないものです。履歴のおかげで同じアプリを別のデバイスにインストールする際に買い直す必要がありません。とはいえ,これも興味本位で試したアプリまで履歴に残ってしまうため,とても恥ずかしい気分がたまにやって来るものです。

 それでも私たちは,個々のサービスにいくばくかの不安を抱きつつも,個人情報が電子記録されていること自体に文句をつけることを普段はしません。
 問題が発生して被害を被らないかぎりは,そういうもの一つ一つにいちいち構ってられない現実もありますし,利便性が不安を上回っているかぎりにおいて成立する構図なのだと解説する人々もいます。
 おそらく,個々のサービスに個人情報の記録や蓄積を許可するにあたっては,個々人が自主的にサービスに申し込む手続きがあったわけで,それゆえ利用を開始した以上は文句も言いづらいということもあるのかも知れません(専門家がそういう人々の心性をおかしいと指摘するのはあるでしょうが,日本の消費者にはそういう傾向があるのも確かと思います)。
 そして,個々のサービスが独立していて,自分の個人情報がそれぞれの会員番号か何かで別個に管理され,バラバラに散逸しているという認識が,加速しつつある個人情報の電子化という事実に対する免罪符というか,寛容を担保しているのかも知れません。
 つまり,マイナンバーなりパーソナルファイルなり,情報が一元管理されると,個人情報の漏えいや被害に際限がなくなってしまうという理解が懸念の背後にあるのだと思います。
 実際,これまでいくつもの企業で個人情報やアカウント情報へのハッキングや漏えいが起こりニュースとなってきましたが,それらはあくまでも一企業が管理する範囲のものであり,該当するサービスに登録していなければ一安心するのが私たちの心理だからです。
 しかし,これもちょっと考えると分かることですし,事件の度に言及されることですが,それらのハッキングされた企業に登録している個人情報とやらに,もしもクレジットカード情報が含まれていると,被害が限定的とは言えません。
 むしろ,自分に関する情報の何をどのサービスに登録していたのかがバラバラであったり,多すぎて忘れてしまうことによって,自分が被る被害に見当がつかなくなるデメリットさえあり得ます。

 個人情報が悪意によって盗み取られる問題は,多くの人々の関心を集めるテーマですが,もう一つ,個人情報の寿命については,まだそれほど関心は高くないかも知れません。
 4月12日(米国)にGoogleが新しい機能の提供を発表しました。
 「Inactive Account Manager」という機能は,自分のアカウントの利用が一定期間休止していた場合に,Googleに記録していた情報をどのように処理するかを設定できるオプションです。
 つまり,自分が何か不慮の事由で世を去ったときに,Googleの利用がなくなるわけですが,その期間が半年や一年間続けば,それは何かの理由でGoogleの利用が今後一切出来なくなったこととみなし,データを削除してくれたり,あらかじめ登録した信用できる相手に譲渡できるというわけです。
 今までは,どれだけ便利に自分のデジタル個人情報(デジタルアセットという言葉が使われています)を生み出したり記録して活用するかがサービスに求められていたわけですが,今後はデジタルアセットをどのように最終処分するのかということも管理できるようにしなければならないわけです。

 もっともこうしたサービスは何もGoogleが初めて取り組んだわけではありません。
 海外では「Legacy Locker」が自分のデジタルアセットを家族などに相続できるサービスとして話題になっていました。他にも似たようなサービスがいろいろ存在しています。
 日本ではYahoo!ボックスが自動削除機能を予定しているなどのニュースが過去にありました(まだ実装していないようですが…)。
 また,インターネットと死についてライターの古田雄介氏が興味深い記事を書いていますので,これも大変勉強になります。「古田雄介の死とインターネット
 ローカルのハードディスクの情報を死後に処分するためのソフトもいくつか登場してます。(「」「僕が死んだら…」「暗号化ハードディスク」)
 こうして見ていくと,電子化された個人情報が散逸しているという事態は,電子情報を処分するところまで管理しようとする場合,大変面倒な事態ともいえます。いろんなサービスに登録し散らかしたものを遺族にすべて処分を任せるとしたら…考えると非常に酷な話です。
 ゆえに,現実的に個人の情報を膨大に扱っているGoogleが,この手の機能に着手したことは,ある意味で歓迎すべきニュースかも知れません。

 さて,人生と電子情報(デジタルアセット)という非常に範囲の広い問題を考えると同時に,学校教育における電子情報の扱いについても考えていく必要が当然あります。
 ドラマの「パーソナルファイル」は,その後「パーソナルストレージ」機能も付け加えたオープンソースに発展していきました。
 もしもそういうものが存在すれば,学校教育で紡ぎ出した個人情報や学習活動の成果(たとえば活動の記録写真やノートの電子記録など)を自分のパーソナルストレージにどんどん溜め込めばよくなり,情報の保管を学校が背負わなくてよくなります。
 しかし,現実的には,学校教育でのICT活用の際に使われる記録保管場所は,校内サーバー(あるいは校内NAS)であり,どんどん溜まっていく電子情報をどのように整理し,処分するかは,公的に決まったルールも,全国の学校の共通理解も,存在しません。
 私はよく「これからの時代,卒業記念品は大容量USBメモリになって,卒業式の日には校内サーバから自分のデータをコピーする儀式が行なわれるようになるでしょう」という冗談を人に言ったりします。
 学校教育で生み出される電子情報の在り方を考えるにあたって,それらを単にディスクスペース確保のためだけに容易に消去してよいのか,やはりデータは個人の元に手渡されるべきではないのか,といったことも,もっと真剣に考えられるべきなのです。

 少しずつ,こうした問題意識に届きつつあるサービスや開発の話を聞くようになっています。学校教育現場に関わる者は,こうしたテーマについても関心を持つべき時代になったのです。
 

Edmodo導入記 その3

 授業が始まって一週間が過ぎ,担当する授業も一通りガイダンスを終えたことになります。そして,Edmodoへの学生登録も完了しました。
 Edmodoは教育用SNSという分類をされたり、教育版のFacebookだとたとえられたりします。何年か前には教室向けのTwitterだと紹介されました。
 しかし,mixiやFacebook,Twitterと異なるのは,先生アカウントと児童生徒アカウントは対等ではなく、また児童生徒アカウント同士はフォローし合うとか友達になるといった複雑な関係を紡ぐようには設計されていないことです。
 つまり,会員制掲示板を管理する管理者と掲示板利用する会員という前時代的なシステムにSNS風の要素を付け足したに過ぎません。
 学校内に掲示板システムを立ち上げていた事例は過去にもあったでしょうし、教室にあるパソコンの上に学級日誌的に記録を残して交流するソフトもありました。
 Edmodoは,インターネット・SNS時代におけるそれらの進化版と考えられます。

 ならば,Facebookを活用した方が本当に意味でソーシャルメディアを活用することになるのではないか。その方が,世間一般とのコネクションも得やすいわけですから,学習活動に広がりが得られるのではないか。
 そのように考える向きもあるかも知れません。
 教師の統制の中でお膳立てされたICT活用を実践しても,それはお仕着せであって,普段から児童生徒に端末を持たせて文具的に利活用させなければ,本質は学べないとかいう理想論からすれば、SNSの真似っこEdmodoよりも本格的なSNSであるFacebookを活用させるべきという主張も聞こえてきそうです。
 もちろん本物を触れていくことには意義がありますが、最初からそうでなければならないということは必ずしもいえないのが現実です。そもそも段階によって目標が異なるのですから、目標に沿うかたちで道具立てや利活用方法を整えることは教育的営為の重要な使命なのです。
 今回,どちらかといえば週一回の講義とその周辺の学習活動をフォローすることがシステムの導入目的でしたから、外部との接続可能性を抑えたかった面があります。(もしこれが毎日顔を合わせるゼミ生や児童生徒ならば前提が違うことになります。)
 こうした目的にはEdmodoは大変使いやすいシステムです。

 ようやく学生たちの登録が済み、これから授業過程で活用していくつもりです。様々な機能を使いこなすには繰り返して試してみる必要があります。
 Edmodoと同じようなサービスは,韓国のClasstingもあり,こちらも急成長しています。韓国らしくさらに細かな機能を付け加えています。
 日本でEdmodoに関心のある人は少なくないようですが、やはり英語に抵抗があるようで,なかなか本格利用に至らないようです。また,学習サポートSNSはいくつかサービスが出てきていようですが、授業をサポートするようなものはビジネスモデル的に旨味がないためか登場していません。
 願わくは日本の会社が作ってくれるきめ細かなサービスを利用したいところですが、しばらくはEdmodoを日本語で活用することに挑戦していきたいと思います。

Edmodo導入記 その2

 Edmodoを授業で使い始めるためには,学生達向けの説明が必要ですので,そのためのプリントをつくってみました。

教育SNS「Edmodo」の使い方 (1)
http://dl.dropbox.com/u/6195338/Edmodo/edmodo01.pdf

 十分な見直しなど出来ていませんし、使い始めの部分しか扱えていないので,まだまだ続きをつくる必要がありそうです。

 大学の授業での利用を想定しているので堅い感じですが,中学生や高校生にも理解してもらえるように改善をしていきたいと思います。

 自由に使ってもらってかまいませんので,感想やアドバイスなどフィードバックしていただけると助かります。

 Edmodo上に,Edmodoを日本語利用するための意見交換グループ「Edmodo Japanese Users Club」をつくりました。 Group Codeは「duvgnf」です。こちらのURLからも参加登録できます。

 児童生徒用アカウントでも,教師用アカウントでも,どちらでも参加できます。よろしければご参加ください。

Edmodo導入記 その1

edmodo_main.jpg
 Edmodoを本格的に触り始めています。
 これまでも,ちょこちょこと試していましたが、まじめに操作していたわけではありませんでした。先生アカウントからの長めを見ていただけで,児童生徒アカウントは未設定でしたので,実際に相互やり取りが起こった場合にどうなるのかも見えていませんでした。
 今回、ようやく自分の授業に本格導入するため,導入作業とリハーサルをしているところです。あと日本語利用で問題が起こるかどうかのチェックも兼ねて。
 端的に言えば,なかなか興味深いシステムですし,いくつか注意すれば日本語利用でも問題はなさそうです。Facebookの要領が分かった皆さんなら、操作のクセをつかめば便利に活用できるはずです。

 Edmodoが想定しているユーザーは4種類。
 ・教師
 ・児童生徒
 ・保護者
 ・学校又は学区担当者
 このうちの教師と児童生徒だけでEdmodoを使い始めることが出来ます。もちろん教師だけ先に登録するところから始まります。
 最初の登録でクリックする入り口は4つに分かれていますが、アカウントを取得すれば共通のログイン画面を使います。
 先に登録した先生が,授業で使うためのグループを設定しておきます。グループには個別の「グループ・コード」が自動生成されるので,それを児童生徒に伝え,登録の際に入力させるのです。
 すでに児童生徒が登録してあった場合は,グループコードを使って,グループ参加だけを追加していくわけです。
 なお,児童生徒がEdmodoに登録する際には,グループコードさえあればよく、電子メールアドレスの入力は任意です。この点は,アドレスの割当てがない小中学校の利用に便利と思います。
 ちなみに携帯電話のアドレスを登録する際には,メール受信制限の設定で「edmodo.com」を受信許可してあげないと通知が届きません(ちなみにnotify@edmodo.comから届きます)。

 基本的に英語ベースのサービスです。
 英語表記が苦手な人には辛いのかも知れませんが、Facebookと雰囲気がよく似ていますし、システムで使う英語は限られていてアイコンも付いていますので、慣れてしまえば気になりません。
 教師アカウント登録の際,学校名を登録するときやアップロードするファイル名には日本語文字が使えないことを除けば,ほとんど問題なく日本語文字を使って書込みをすることが出来ます。
 各個人の書込みは基本的に外部から参照できませんので、宛先指定を間違えなければ各グループ内でのみ閲覧するようになります。またダイレクトのメッセージは先生宛のみ送れるので、児童生徒同士のダイレクトメッセージは出来ません。
 各児童生徒がグループの画面を参照している中に「parent 保護者」用のグループコードが表示されています。これを使うと保護者もグループに参加することが出来ます。

 EdmodoにはiOSとAndroid用アプリが用意されています。
 児童生徒の家庭でEdmodoにアクセスする際には便利ですし、アプリの通知機能を使って連絡などを確認できます。
 先生にとっては,アプリの上で児童生徒からの質問やコメントを返せたり、宿題の評価をすることも可能です。やはり通知機能で迅速な対応が出来るというわけです。

 なかなか面白そうでしょ?
 これを実際に大学の授業で導入しようというわけです。
 昨年度はFacebookを試験的に利用しましたが、個人アカウントとの兼ね合いをどうしようかとか、Facebookのつながり尊重主義が逆に教育的には使い難かったところもあり、思い切った活用には至りませんでした。
 今回,Edmodoという教育SNSを使うことで,その辺をクリアできるのではないかと期待しています。
 
 ちなみにEdmodod上に,Edmodoの日本語利用について意見交換するグループ「Edmodo Japanese Users Club」をつくりました。 Group Codeは「vgct79」です。よろしければご参加ください。児童生徒用アカウントでも,教師用アカウントでも,どちらでも参加できます。