学校に1台くらいはMacパソコンを

 教育や学習にタブレットPC端末を…という掛け声や売り込むが賑やかです。

 デジタル教材やデジタル教科書といった新しめの学習材に注目が集められているといった動きもあります。

 なにより政府の国家戦略の一つとしてIT人材教育が取り上げられ、情報教育やプログラミング教育などの関連界隈も賑わいを見せ始めています。

 私自身もiPadなどのタブレット端末を学校でどのように利活用すべきか…という文脈でお仕事をしていたりします。

 ただ、事情を知る方々や街の電器量販店のパソコンコーナーなどを気にしている皆さんはご承知の通り、いわゆるパソコン市場やタブレット端末市場は変化の荒波の真っ最中にあります。

 たとえば、パソコンかタブレットか…多種多様なWindows8端末。

 たとえば、iPadやKindleやArrowsTabなど百花繚乱のタブレット端末。

 たとえば、特定銘柄とセキュリティソフトしか置かれなくなった青息吐息のソフトウェア売り場。

 たとえば、取り換えインクばかりが目立つ主客転倒のプリンタ機器や七転八倒する周辺機器市場。

 買いたいものを買えば良いという法則は、いまも有効ではあっても、何を買えば安心できるのかという問いに答えを見つけることは一段と難しくなっている時期なのです。

 そんな状況下で、たとえばパソコン操作を教えてほしいとか、iPadを導入しようとしているので研修講師にきてほしいという依頼をお引き受けしていて感じたことは、ぼちぼち各学校の職員室に1台くらいはMacを導入しても良いのではないかということです。

 Macが導入されていると、

 ・管理用アプリがあるので、iPadなどと連携しやすい。

 ・写真管理、音楽編集、動画編集ソフトが標準でついている。

 ・別途ソフトだけ購入するとWindowsパソコンになる。

 これだけでも職員室に何かパソコンを1台買う場合の良い選択肢足り得るのですが、入札方式の機器備品購入だと、どうしてもパソコン教室の機器との互換性や統一性の観点から仕様が決まり、購入が難しいようです。

 その他にも

 ・Mac用のワード、エクセル、パワーポイントがある。

 ・無料有料の様々なソフト(App)がネットから入手できる。

 ・画面表示がキレイである。

 ・今までのパソコンの使い方で使える。

 Windows8がパソコンとタブレットを混ぜ始めたために分かり難くなったのに対し、Macの場合はパソコンとして一本筋を通して、タブレットはiPadなどに任せる形になっているのは、混乱が少なくてよいと思います。

 というわけで、今後パソコン教室の端末がどのような変化を辿るのか、また職員室の先生方に用意された教職員用端末がどのように更新されていくのか、様々な変化は続いていくと思います。

 しかし、そういう大量導入部分の荒波とは別に、職員室に教育研究用のパソコンを置くという取り組みがあってよいと思いますし、多様性を確保するという意味でも、その中の1台くらいはMacが導入されると、今後変化の激しいパソコン界隈へも柔軟に対応できるのではないかと思います。  

New Education Expo 2013 in 東京

 教育関連のセミナー展示会として長い歴史を誇るNew Education Expoが今年も開催されています。6月6日〜8日に東京で行なわれ、21日〜22日に大阪で行なわれます。

 フューチャースクールに関わったので、大阪会場のセッションに登壇する依頼をいただきました。なので、予習の意味を込めて、東京会場の偵察に出かけた次第です。

 好評なものは定番セミナーとなって可能であれば毎年行なわれるものもあります。その中では、筑波大学附属小学校の児童・先生方による公開授業があります。

 「フューチャークラスルーム」の公開授業、筑波大学附属小学校ではタブレットが”普通”の光景(ITpro) http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130608/483382/

 今年度は筑波大学附属小学校で「未来の教室」環境が構築され共同の実証研究が行なわれることも発表されたようです。

 子ども達はタブレット端末を使い始めて間もない時期とのことでしたが、タブレット端末独特の敷居の低さゆえでしょうか、操作の手順はともかく、操作自体に対する違和感はないようです。

 そういう状況で、国語と算数の授業が行なわれました。授業自体はシンプルなもので、タブレット端末と電子黒板の活用が浮かび上がりやすいものだったと思います。

 授業の善し悪しは置いといて、主にICT機器などに関して思いついてメモしたことを挙げておきます。

 ・授業支援システムで児童のタブレット端末の画面を出した時、児童のタブレット端末の制御権(表示の拡大縮小やスクロール操作など)も渡すことができたらいいな。
 ・デジタル教科書の書き込みペンのペン種類や太さなどの選択メニューが画面を覆い隠してしまうUIなのはどうか?
 ・学習者用デジタル教科書への書込みなどの履歴を残し、教師側から遡る操作が出来ると、作業や思考の変化を見せることができるのに。
 ・電子黒板の小ささを(とりあえず)補えているのは、デジタル教科書の固定レイアウトによる忠実な位置関係の再現によるものだろう。
 ・タブレット端末はマルチタッチ対応だが、学習者デジタル教科書アプリはシングルタッチ(マウス操作前提)しか対応していないため、グループ作業で複数の児童が同時に作業できない。
 ・タブレット端末での操作のしやすさも考えると、画面上で移動できる表示部品は大きくせざるを得ないが、そうすると端末画面自体が狭いため多数の表示部品が画面でいっぱいになって大変。さまざまなオブジェクトの拡大縮小がもっと自在にできる設計が必要かも知れない。
 ・適度に黒板への板書もしているので、タブレット端末操作が一段落した児童は、ノートへの記録作業によって時間を持て余す率も減る。
 ・児童のタブレット端末で見せたいと思った画面があっても、見せるタイミングのときに消されていたり、変化していたりすることがある。履歴、もしくは見せたいと思った時点でスナップショットが取れる機能も必要か。  ・教師用のパソコンの画面と児童のタブレット端末の画面を同時に表示したい場合があると電子黒板一台だけでは厳しい。地上波デジタルテレビがあれば併用することを奨励すべきか。

 あとは、こうしたICT機器をたくさん扱う展示会では、展示機器が使うための無線LAN機器だけでなく、多数の来場者が持っているスマートフォンの無線LAN機能がお互いに干渉し合って、深刻な通信不安定状況を生み出している。そのため、公開授業でも通信の不安定さによる画面転送機能の不具合が見られたりもした。

 スマートフォンには電波を停止する機能もあるが、飛行機に乗る機会が多い人は別として、多くの人たちがそういう操作に疎いので、なかなか問題は解決しない。

 そこそこ無線LANは電波であることの様々なメリットデメリットがあり、特に身体への影響に関しては、様々な見解がある。

 正直なところ、私は無線LANについて可能性は理解しているが、基本的に使わない時には電気を切っておける機構が必要と考えているので、無線LANアクセスポイントを作っている企業には、電灯のON/OFFと同じようなスイッチを教育向けには本気で検討して欲しいと思っている。

 パソコンの場合は、無線LAN機能をオフにする方法があるので、そのような操作方法をしっかり学ばせることが大事かなと思う。

 公開授業を見て、改めて考えなければならないものが多いなと思った。その他のセミナーでは、自治体の取り組みなども勉強できて、なかなか興味深かった。

 いろんな人たちの顔も見れたが、失礼ながら省略させていただいたり、軽いご挨拶などで代えさせていただいた。

 多くの人たちが「再び追い風が吹きつつある」という感想を述べていたのは、少し印象的だった。確かに風も大事だと思う。

 もっとも風向きはまだまだ乱れ気味であることも確かなので、もう少し現状を見つめながら先を見通してみたいと思う。

その後の財務省

 学校教育に予算が必要だと主張するとなると、その相手は財務省になるわけで、これがまた昔から文教にとって手ごわい相手であるのはご承知の通り。
 それはいまも変わらないようで、先日(2013年5月27日)に財政制度等審議会が出した「財政健全化に向けた基本的考え方」には文教についてこうまとめられていた。
=====
5.文教
(1)文教予算について
 平成25年度から始まる第二期教育振興計画の策定に向けて、公財政教育支出について、将来的に恒久的な財源を確保してOECD諸国並みに引き上げることを目指すべきとの議論がある。これは国民に約8.5兆円の負担を求めること(公財政支出は16.8兆円から25.2兆円となる)(*17)を意味するものである。
 過去20年間少子化が進むほど教員数をはじめ公財政支出は低下しておらず、在学者一人当たりの支出額は増加傾向にある中で、教育・教員の質は上がったのか、どのような成果があったのか具体的な検証を行い、国民に示すべきである(*18)。
 教育予算については、このように徒に予算増に走るのではなく、国民の最大の関心事である教育の質向上に向けた施策の明確な成果目標とロードマップを定め、改善サイクルが働くようにすることが重要であり、成果につながる質・手法の改善とあわせて資源を投入する仕組みを構築していく必要がある。
 財政面から見ても、我が国の教育に係る公財政支出(対GDP比)が低いのはこどもの数(在学者の人口に占める割合)が少ないからであり、こども一人当たりでみればOECD諸国と比べて遜色はない。また、そもそも少子化が進行すれば教育に係る公財政支出の総額は減少する構造にあることが考慮されていない[資料II-5-1、2、3参照]。
 現在の我が国の教育に対する財政支出については、他の歳出と同様、国の一般会計ベースで見れば約5割が赤字国債で賄われており、今後、継続的な財政健全化の取組が必要となることを踏まえれば、将来的にも増税による税収増を教育予算の量的拡大に振り向けられる状況にない。
(2)高校無償化について
 平成22年度から実施されている高校無償化制度は、全額国庫負担により、公立高校の授業料は不徴収、私立学校の生徒に対する就学支援金の交付が行われている[資料II-5-4参照]。
 そもそも学校の設置者はその経費負担を含めて学校を管理するのが原則とされている。また、私立学校は大学等を除き都道府県が所管している。こうした原則等を踏まえ、幼稚園から高等学校までの運営費は主として地方が負担し、就学者に対する経済支援も義務教育の授業料不徴収等を除き、地方が支援内容を決める仕組みとなっていた。全額国庫負担の高校無償化制度は高等学校の運営に国はほぼ関与しない中での措置であり、全ての生徒を対象としているとは言え、国・地方の役割分担の観点から再検討の余地がある。
 今後所得制限の導入を含め、見直しの検討が行われることとなっている。しかし、もともと地方がそれぞれの所得の状況等も踏まえ授業料減免措置を講じていた中に国が無償化制度を導入した経緯に鑑みると、所得制限を導入するということであれば、個々の実情に応じたきめ細かい支援を可能とする観点から、国の関与を極力減らし、地方の役割を高める方向で検討するのが大原則である[資料II-5-5参照]。
 すなわち、所得制限の導入は、高所得世帯の授業料を軽減する必要性は相対的に低く効率的な制度とする観点から適切であるが、その際、都道府県毎に所得水準は大きく異なることも踏まえ、都道府県の判断で所得制限の水準等を決める制度とすることを検討すべきである。これに関し、高校無償化は政策目的・効果が明らかでなく、本来廃止すべきであるとの意見もあった[資料II-5-6参照]。
 私立高校等の授業料に対しては、高校無償化(就学支援金)及びその加算措置に加え、地方事業である私学助成の一般補助及び授業料減免支援という4本立ての支援となっている。私学助成における支援手法は全ての生徒を対象とした一般補助を重視するか所得に応じた授業料減免支援を重視するか都道府県に裁量がある現状も踏まえ、高校無償化の加算措置は地方事業である私学助成の授業料減免支援に一本化することを検討すべきである。
 国が基準を定める現行制度を前提に所得制限を導入すると県や学校現場の事務負担や事務コストが膨大になることが懸念される。無駄を排し、効率的な制度とする上でも、地方事業とすることを検討する必要がある[資料II-5-7参照]。
 給付型奨学金を導入し、低所得世帯の高校生に対する支援を強化すべきとの議論があるが、高等学校の進学率は98%となり、経済的理由による中退者は全国の高校生の0.03%(335万人中945人)に留まっている。また、地方が一般財源で無利子奨学金を実施しており、29県で高校卒業後一定の所得を得るまで返済を猶予する所得連動返済型の導入を行うなど、支援の充実が図られている。こうしたデータを前提とすると、地方による現行の無利子奨学金とは別に国として新たな奨学金支援を行う必要性は見出し難い[資料II-5-8、9参照]。
 高校中退事由の多くは学業不適応等によるものであることを踏まえると、所得制限により節減される財源を就学支援に振り向けるのではなく、その一部を活用し、低所得世帯のこどもの小中学校段階からの学力向上をはじめ、国として教育の質向上に真に資する施策への支援を検討すべきである。

*17 2009年の教育機関への公財政支出及びGDPを前提とした数字。
*18 例えば、OECDは、「PISAの結果を見れば、成績が良い国は学級規模よりも教育の質を優先している。日本では教育への追加投資の多くが学級規模の縮小に充てられていることが問題の本質である」「これまで、日本は教員の質への投資よりも学級規模の縮小を優先する傾向があった。この優先順位は修正される必要があり、この報告書はそのための実例を多く提供している」と指摘している(OECD2012 “Lessons from PISA for Japan”)。
=====
 前段の「将来的にも増税による税収増を教育予算の量的拡大に振り向けられる状況にない」と高らかに宣言するあたり清々しさも漂うが、他国と同水準でよいのかという判断については国民のコンセンサス形成をしなければならないと思う。
 後段も財政的な眺めからはそのように見えるのだなと妙に感心する。
 ただ、「教育の質向上に向けた施策」ならば議論する余地があるといった調子の内容なので、ビタ一文出すつもりはないということではないところが用意された逃げ道か。
 とはいえ、この教育の質向上ほど確信的なものを出しづらいテーマはないわけで、財務省は相変わらず手ごわい相手なのだと分かる文書であった。

その後の総務省

 総務省のフューチャースクール推進事業は、小学校分と中学校・特別支援学校分があります。一年先行した小学校分は3年間の事業を終えて終了しました。残る中学校・特別支援学校分も今年度で終わりを迎えます。
 教育の管轄は文部科学省なのに、なにゆえ総務省が関わるのか。その点、散々論難されてきました。社会全体のことを考える中で教育のICTを総務省が考えることは不自然なことではないはずですが、体制不信の立場からすれば厳しい目を向けないわけにはいかないのも必要なことだと思います。
 中学校・特別支援学校分が残っているとはいっても、すでに最終年度ということもあり、フューチャースクール推進事業自体は各地で粛々と進展しているという感じです。

 先日やっと平成24年度予算が成立したということもあり,各省庁の仕事もようやく本格始動といった感じのようです。
 総務省は何やっているのかというと、安倍政権のもとで「ICT成長戦略会議」を設置して議論を進めようとしています。
 ただ、今回の会議には「教育」の文字は入っていません。
 事業仕分けなどで叩かれた記憶も新しいですから,総務省としては「教育」の文字をあえて除外したと見るのが妥当なのでしょう。
 それでも会議の議事論には小宮山委員の発言として、教育についても触れた方が良いという発言がなされています。

 現政権は、口を開けばアベノミクスだ、経済成長だということに関心が向いており,もろもろの施策もそちらの文脈に絡めてざるを得なくなっているようです。
 こういう場合,教育界に向けては「人材育成」という言葉で様々な要求が高まるわけで,「人間形成」を矜持とする立場にとっては苦々しい。かといって、一方でいじめ問題を契機として「道徳教育」の教科化要求が教育再生実行会議などから飛んでくるのも、矢継ぎ早で不穏な空気を感じます。
 この辺は目的や内容の明確化といった丁寧に手続きが必要な話で,乱暴に「経済成長の手段として教育を扱うな」とだけ吐き捨てることは、主張としてはともかく、現実的な学校教育においてできません。
 であるとすれば、むしろ成長戦略の中に「教育」をちゃんと位置づけてもらった上で,議論を積み重ねて目標と手段を明確化すべきなのですが、そういう風になっていないというのが、少々残念なことでもあります。

タブレット時代の教育向けアプリ

 タブレット端末を導入する学校も出てきています。
 どんなタブレット端末を導入するにしろ,授業で活用できるアプリの存在は重要です。

 私の一押しは,手書きノートアプリ「Note Anytime」です。
 5月14日に待望のAndroid版が正式リリースされました。これでiOS版,Windows 8版とラインナップが揃いました。
 データ形式に互換性があり,クラウド上のデジタルキャビネットサービスに登録すれば,複数の端末上にあるノートを同期させることが出来ます。
 どんなタブレット端末だろうとNote Anytimeを使えば同じ操作性で手書きノート作成が出来ますし,好きなタイミングでメインの端末を引っ越すことも出来ます。PDF形式などのデータに書き出すことも簡単にできるので,データ資産を残すことも難しくありません。学習記録を残すにもピッタリだと思います。
 無料提供であることも有り難い点です。

 先日,新たなキラーアプリを発見しました。
 こちらはWindows 8用で発売前ですが,「ピッケのつくるプレゼンテーション」というアプリです。
 タブレット端末を教育や学習に活用する際に欲しくなるアプリは,プレゼンテーションアプリ。iPadだと「Keynote」という有名なアプリがあります。最近では「QBプレゼン」とか「ロイロノート」といったアプリも登場しています。
 Windows 8ならばPower Pointがありますが,シンプルな操作性で小学生にも分かりやすいプレゼンテーションソフトとして「ピッケのつくるプレゼンテーション」がEDIXで新たに公開されていました。
 iPad版の「ピッケのつくるえほん」から派生して開発がスタートしましたが,Windows 8タブレットの良さが活かせるように,プレゼンテーションをテーマとした形へと発展したようです。
 開発版を試用した学校での評判も良さそうで,発売時にはこのアプリを利用したプレゼンテーションコンテストを開催するなど大々的にプロモーションする予定のようです。

 1人1台タブレット端末環境はまだまだ早いとは思いますが,1グループ1台タブレット端末や先生用として導入するタブレット端末には,「Note Anytime」と「ピッケのつくるプレゼンテーション」のようなアプリが必ず入っているというのが当たり前,という風になるでしょう。