20121102-03 全日本教育工学研究協議会2012金沢大会

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 11月初めに日本教育工学協会(JAET)主催の全日本教育工学研究協議会が金沢で開催されたので参加してきました。
 日本教育工学協会とか,全日本教育工学研究協議会とか,これと似たような名称の組織に日本教育工学会(JSET)とか,日本教育工学振興会(JAPET)とかありますし,教育と情報分野にかかわる学会は他にもたくさんあります。
 教育の情報化界隈に関心を持つ人間としてそれぞれを気にはしていますが,正直なところバラバラ過ぎて把握し切れません。^_^;
 教育情報化や情報教育のトピックスは,似ているようで違いますし,それぞれ論者によってこだわり,主義主張がありますから,正直なところコンセンサスのようなものがあるようでなく,一般の人々にはあらゆるバラバラなメッセージが届いているというのが実際のところです。健全といえば健全ですが,議論の土台さえバラバラなので意思決定に結びつくのが難しいというわけです。
 日本教育工学研究協議会という場は,「実践者」「研究者」「事業者」が集って研究や取組みの成果を発表し会い,教育工学分野から教育を向上させていこうとする会です。主催団体である日本教育工学協会の略称を取ってJAET大会と呼称することがあります。
 そういう意味でJAETは間口の広い会ですし,全国の都道府県毎にある先生達を中心とした教育工学関係の研究会との関係を持っている点もユニークです。必ずしも学会ではないので性格付けが難しいところもありますが,同じ土台で異業種が交われるのは大事な機会と思いますので,もっと多くを巻き込んで一般の方にもメッセージが伝わるような場になることが大事かなと思います。
 つまり「実践者」「研究者」「事業者」の輪に「生活者」も入るように向かっていけたらいいなと思います。

 さて,そんな日本教育工学協会には,たくさんの理事がいらっしゃいますが,今年度から私もその末席に入れていただくことになりました。
 初めて「理事会」なるものに出席し,ものすごい緊張…。
 ずらっと並ぶ先生方の顔を見ることも出来ず,もじもじしておりましたが,聞いてみたかったこともあるので,いつもの調子で質問したりと,これからたくさんご迷惑をおかけするにあたっての仁義は切ったみたいな感じになりました。
 まあ,何にも出来ないでしょうけど,賑やかしくらいには役立ちたいと思います。
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研究発表「日本の教育情報化の実態調査と歴史的変遷」

 徳島県FS実証校である東みよし町立足代小学校の公開授業の翌日に岡山大学へ移動して,JSET(日本教育工学会)研究会で研究発表しました。

20121027 日本教育工学会研究会@岡山大学
林向達「日本の教育情報化の実態調査と歴史的変遷
 日本教育工学会研究報告集, 12(4), pp139-146
発表原稿PDF
https://dl.dropbox.com/u/6195338/rin_jset20121027.pdf
(Googleドライブ:https://docs.google.com/open?id=0BxBSvLJGifj0S1RrZ3JRMWs4SGc)同一ファイル
発表スライド
http://www.slideshare.net/kotatsurin/jset20121027
(グラフ:編集利用可能)
コンピュータ整備台数内訳.ai
https://docs.google.com/open?id=0BxBSvLJGifj0SmRDZDJIQ1VON28
コンピュータの周辺機器台数.ai
https://docs.google.com/open?id=0BxBSvLJGifj0UTNubVhrcV9RTkE

 文部科学省が昭和62年度から継続して行なっている教育の情報化の実態等調査について,コンピュータと周辺機器の整備について過去のデータを整理しグラフ化したのと,1985年以降の教育情報化に関する歴史年表をまとめたものです。
 電子黒板や1人1台端末,デジタル教科書といったキーワードで人々の関心が高いはずの「教育の情報化」という領域ですが,実はその実態や歴史を知る手ごろで正確な情報はほとんどありませんでした。
 実態に関しては,毎年調査結果が更新され提示されていますが,文部科学省が出す資料のグラフをコピペするだけでは見えないものもあります。今回はコンピュータと周辺機器に絞って,経年的かつ視覚的にも実態が反映されるようにグラフ化しました。
 歴史に関しては,強いて挙げれば文部科学省「教育の情報化に関する手引」という文書が,教育の情報化の進展に関して解説していますが,それを除けば,年表を掲げて広い範囲を概観しているものは,ほとんど無いと思います。
 まあ,忘れたい過去もたくさんありますでしょうが,逆に,たくさんの取組みをちゃんと繋げて見る努力も必要で,今回作成した年表はそのための基礎資料となるはずです。

 この研究は,もうしばらく集中的に情報収集して,データを充実させていこうと思います。そのあとはライフワーク的に史的記述を進めていければと思っています。
 なお,年表作成にあたっては細心の注意を払って情報の確認をしているつもりですが,紙面スペースの関係上,言葉足らず情報が不足していたり,誤解を招く部分があったり,明らかな間違いもあるやも知れません。お気付きの点ありましたら,ぜひ情報お寄せください。

20120927 iPad出前授業−小学校編(ノートアプリNote Anytime)

 徳島県のデジタルコンテンツ事業に関連して,上勝町にある小中学校に出前授業に出かけ始めました。上勝町は映画「人生,いろどり」の舞台となった町です。

 小中学校にはiPadが10数台導入されていて、これを使って児童生徒がデジタルコンテンツ制作に触れることを通して、県としての人材育成を盛り上げていこうというのが事業の趣旨だときいています。

 というわけで,この日は昨日の中学校に続いて、小学校の出前授業です。

 小学校では,中学校が写真や動画を中心とした制作になるのとは少し雰囲気が違って、新聞やポスター,チラシ制作といった雰囲気になっています。いままでも紙など使ってやっていた取組みでもあります。

 今回はiPadを使って新聞,ポスターやチラシを作る事になったわけです。

 けれども,iPadを使っている皆さんはなんとなく想像できるかと思いますが、実はiPadで新聞やポスター,チラシづくりをするのは「できなくはないがたいへん」。

 いままで,紙の上に想像力をぶつけて自由に作品を作ってきた小学生に,iPadのアプリを使って同じようなものをつくれというのは,パソコンでつくること以上にハードルの高いことです。何故かというと,それほど柔軟性のあるアプリがないから…。

 AppleのPagesやKeynoteがあるじゃないか!

 CMを見るといとも簡単に作品を作れそうな雰囲気が伝わってきますよね。素晴らしいデザインのテンプレートもあるし、図形を動かすのも指一本で簡単そうです。

 けれども,新聞づくりはテンプレートでできるものじゃありませんし、図形だって異動や拡大縮小ができればいいってわけじゃありません。

 テキストボックスを頑張って組み合わせれば,それなりの作品を作ることはできないわけではありませんが、皆さんはPagesやKeynoteがシンプルさを追求するあまり,一つのボタンや階層にいろんなものを詰め込み過ぎていることから目をそらしているのです。

 しかもPagesもKeynoteも自由線を描くことができません。消しゴム機能もありません。手書きの文字を見出しに使いたい時にはどうすればよいのでしょう。

 準備段階から,この問題は私を大いに悩ませました。

 他にも選択肢は模索しました。ポスターづくりをするのだからドローアプリ(iDrawやTouchDraw)を使ったらどうだろうか、あるいはノートアプリの中から使いやすいものを探そうか。けれどもどれも一長一短。使っていると何かしら自由がきかない感覚に陥るものばかりです。(neu.シリーズのアプリは無料だし,いい線いっているのですが,デザイン等がアメリカン過ぎるのが残念)

 いろいろ提案してみたものの、結局は一番馴染みのあるのはワープロだから、ワープロアプリのPagesにしましょう,というのが前日までの予定だったのです。そのための研修も先生たちに向けてしてありました。

 ところが運命は,中学校で私たちが写真共有に苦労している間に,新しいアプリをもたらしてくれていました。それがNote Anytimeです。

 MetaMoji社がこの度リリースした新しいノートアプリ「Note Anytime」を知ったのは,中学校の出前授業から帰ってきて,バタンと倒れて起きてから見たニュースでした。

 さっそくダウンロードして試してみたところ鳥肌が立ちました。

 いままでのノートアプリが備えてきた機能をほとんどサポートし、しかもPDFなどの読み込み書き込みもでき,初代iPadでもストレスなく軽快に使え、操作も直感的です。それでいて無料でリリースされていたのです。

 これは使えるんじゃないかと思いました。

 けれども,いままでPagesを前提にお話してきたのに,出たばかりのアプリを当日になって持ち出して,子どもたちに使ってもらおうというのは,ちょっと躊躇いもありました。正直なところ、迷ったままで朝から小学校へ向かうことになりました。

 少し早く小学校に着いて,機器について若い男性の職員の方からの質問に答えていた時に相手から,どうも子どもたちはPagesの操作が大変みたいだということを聞きました。

 ああ,そうか,やっぱり大変なんだ。これはもう提案してみるしかない。

 そう思って職員さんに話を持ちかけて「これどう思いますか」と聞いたら,職員さんもNote Anytimeのニュースや噂を聞いていたようで,「確かによさそうですよね」となり,すっかり盛り上がったのをいいことに2人で学校のiPadにさっそくインストール。

 というわけで,突然「小学生向けNote Anytime講習」を行なうことになりました。たぶん,日本でも10番目内くらいには入る早さじゃないかな?(小学校の先生の中にもiPadファンはいるので,さすがに1番じゃないだろうと思います)

 結果は上々。

 初めてのアプリですが、アイコンも子どもが踊っている感じが探しやすくて良かったし(大人ユーザーには評判悪いみたいですが…)、自由度や柔軟性の高さのおかげで子どもたちがやりたいことの多くにちゃんと使えていましたし、ライブラリもイラストが用意されているという点が子どもたちには嬉しかったみたいです。

 ボタンは「ペン」「消しゴム」「投げ縄」「テキスト」のツールと,戻る進むボタン,写真アルバムからのボタン,そしてキャビネットに戻ることが分かれば,あとはいろいろ試して慣れていってくれます。

 多少,メニューの言葉遣いや表記が難しかったり(ユニット書式とかDoneとCancelとか)、投げ縄の直後の表示状態にちょっと戸惑ったり(点線の囲みがちょっと印象が強いかな),ポスターつくるためのA3サイズがなかったり(それでもA4とかちゃんと用紙設定できるのは素晴らしい),基本図形がなかったり(直線や丸三角,吹き出しなど)でもう一歩というところもありますが、初めてのリリースでここまで完成させていることに,まずは拍手を送りたい。

 先生たちも自由に創作している様子を見て,初めてのアプリだけど好感を持ってくれたような感じでした。Pagesでつくったものも,PDFにして転送すればNote Anytimeに背景として引き継げるので,連携して使ってもいいかも知れません。

 6年生と5年生に使ってもらいましたが、どちらの学年も上手に使いこなしていました。5年生は元気な子も多くて、ライブラリ機能のダウンロードを試してみたりと,ちょっと先生にとってはハラハラする感じではありましたが、無料ということもあってとりあえずやってみたらうまくいって楽しそうでした。

 そんな感じで,作品づくりへの可能性が少し広がったかなと思えた出前授業でした。新しいアプリに感謝感謝。

 Note Anytimeは,もしDropboxアプリと連携させれば、PDFファイルをダウンロード/アップロードすることも可能になります。つまり,PDFの学習ワークシートをDropboxで配布して、Note Anytimeで書き込ませてDropboxに送ってアップロードするという作業フローが実現します。どちらも無料アプリで。
 (※連携するアプリケーションの選択方法がiOS5とiOS6とで変わっています。iOS5ではリストに10個程度しか表示できないそうです。そのため,連携可能アプリが多いと順番次第で選択できないことがあります。iOS6だとアイコン形式で表示をフリックすることで多くの選択肢の中から選べるようです。)

 さらに有料の追加機能(アドオン)もあって,手書き変換アドオン(600円)は,手書きの文字をテキスト文字に変換してくれるという優れもの。「7notes」という先行アプリで提供されている機能として,高い評価を得ています。

 小学生が,手書き変換機能を使うべきかどうかは議論の分かれるところですが,一つの道具としては用意されていてもよいのではないかと思います。漢字学習への影響云々という問題指摘も出てくるとは思いますが、要するに別途ちゃんと学習指導しているかどうかはアプリの機能一つで左右される話ではないのですから、その辺はちゃんと議論を交通整理すれば解決する話と思います。

 私としては,デジタルポートフォリオの活用のためにも,検索可能性を確保できる点で手書き変換機能は積極的に利用してもよいのではないかと考えています。

 というわけで,昨日今日はiPadの教育利用について,慌ただしく実践をしていたわけですが、さらに今回リリースされたNote Anytimeの衝撃に興奮さめやらぬというところです。皆さんもぜひ試してみてはいかがでしょうか。

20120926 iPad出前授業−中学校編(写真アプリを使いこなす)

 徳島県上勝町の小中学校への出前授業が本格的にスタートしました。(参考リンク:徳島県商工労働部企業支援課「平成24年度 デジタルコンテンツ出前講座実施事業の支援校決定について」)

 ご縁があってiPadを活用したデジタルコンテンツ作成の授業を担当することになって、昨日今日と小中学校にお邪魔して児童生徒の前に立つことになりました。テーマは次のとおりです。

 中学校「iPadを利用した映像の撮影や編集、CMやポスターの制作について」

 小学校「iPadを利用したポスターや学級新聞の制作について」

 上勝町の小中学校には,それぞれ初代iPadが10台,iPad2が小学校に1台,中学校に3台という機器構成。電子黒板や液晶プロジェクタは数台という感じの設備です。

 本格的にスタートする前に、夏休み前から学校にはお邪魔して,先生たちにiPadの使い方講習もしました。慣れてない先生もいましたし、異動もあってゼロからのスタート。

 私も突然お邪魔する環境で何ができるのかといったところで悩んだりしましたが、改めてiPadの教育利用について整理していく中で,できそうなこともいろいろあることが分かってきました。幸い,有料アプリの購入を認めてくれるという教育委員会の寛大さもあって,準備に大きな苦労はありませんでした。

 26日に中学校を訪れてやったことは,デジタル写真のiPad上での扱いでした。

 作品づくりをするために写真が不可欠のことは多いですが、初代iPadで写真を扱うのにはどうしたらよいのでしょうか。

 まずiPad自体が,写真をどこに保存しているのかを紹介しました。標準アプリ「写真」です。意外とこのアプリ(?)は奥が深くて、写真や動画のしまわれ方をしっかりイメージしないと難しいのです。

 その奥深さの象徴が写真アプリ画面の上にある「タブ」です。条件によって「写真」「アルバム」と2つしかない場合もあれば、「写真」「フォトストリーム」「アルバム」「イベント」「撮影地」などと増えたりもします。

 まずiPadの中に保管されている写真をバラバラに閲覧する「写真」とそれをまとめて整理する「アルバム」があることを紹介しました。アルバムは自分で作ることもできます。

 そしてどうやって写真を取り込むのか…。

 iPad2にはカメラが付いていますから,カメラアプリを使って撮影すれば自動的に写真アプリに保管されますが、初代iPadは残念ながらカメラがありません。

 そこでコンパクトデジタルカメラと組み合わせるという方法をとることにしました。幸いデジカメは活動に十分な数が用意されていました(規模が小さい学校なので台数はそんなに必要ない)ので,デジカメで撮影した写真や動画をメモリカード経由で転送する方法を紹介したというわけです。これならアダプタを用意するだけでOK。

 メモリカードを初代iPadに繋げれば,写真の取り込み機能が自動的に動き始めますので、実際に目の前で撮影した写真を取り込んでもらいました。

 それが分かったら,さぁ実習!

 まだ中学校のことを知らない私に向けて,学校のことを伝えるための4コマ作品を写真で作ってくださいという課題を出しました。

 デジカメとiPad2を持ち出して,学校中に散らばって素材となる写真を撮影してくれました。そして物語っぽく4つの写真を並べて,いざ発表。いま撮ったばかりの自分たちや先生の写真を使った作品はやっぱり盛り上がりますね。物語になっていなくても,無理やり物語に仕立てる強引さもウケて楽しかったです。

 というわけで出前授業修了。

 え?という感じですが、まぁ,こんなところから興味をかき立てないとね。次回から本格的にやっていきます。

 写真アプリに関連して,先生方からの相談。

 パソコンに整理保管してある写真をiPadに転送するにはどうしたらよいか?

 この要求は,デジカメの写真を取り込むより難しいのです。

 一つはiTunesソフトを使って同期する方法。けれども,これは複数台に転送するには手間がかかるし、必要な写真がある毎に毎度同期するのが大変。

 そこでフォトストリームを活用するという方法がもう一つ。

 フォトストリーム機能を使えば,同じApple IDで使用している場合に限って,パソコンとiPad同士でフォトストリーム内の写真を共有できます。お互いが新たに保管した写真をネット経由で自動的に共有できるので手間がない。

 しかしこの方法は,フォトストリームという大きなフォルダにとにかく放り込んで共有するという感じなので、順番だとかフォルダごとの整理とかができない。しかもフォトストリームは1000枚(あるいは30日間)までの制限付きなので,溢れると古いものから消えていくのです。

 というわけで,すでに撮影してある写真を手間無く共有するって大変だなぁといった感じだったのですが、iOS6になってから新しく「共有フォトストリーム」というものが登場しました。

 これは何でもかんでも放り込むフォルダだった「フォトストリーム(自分のフォトストリーム)」と違って,目的別のフォトストリームを自分で作れるというものです。

 一般的には自分の写真をWebで公開する機能として宣伝されたり受け止められましたが、外部公開する機能だけでなく、公開しないで自分だけでいくつもフォトストリームがつくれちゃうという機能でもあるのです。

 たとえば,中学校なら「1年生フォトストリーム」「2年生フォトストリーム」「3年生フォトストリーム」という3つのフォトストリームをつくっておくと、希望するフォトストリームに写真を選択的に流す(保管する)ことができるのです。

 他にも教科別フォトストリームとか,班別フォトストリームとか,そういうふうに分けておくと,実際に使う時に写真が見つけやすいというわけです。

 しかも,フォトストリームはネットワーク経由で自動的に同期されますから、わざわざにiPadをパソコンに接続して作業する手間がいりません。パソコン上に整理保管された過去の写真から必要に応じて共有フォトストリームにコピーをしてあげれば,すぐに各iPadに届くというわけです。

 共有フォトストリームは,学校でiPadを使う場合には,かなり有用な機能ですが、残念ながらサポートしているのはiOS6から…。iOS5.1.1までしか対応しない初代iPadの場合は従来のフォトストリームのみです。

 そして,まだ調べ足りず不明なのですが、共有フォトストリームにも制限があるのではないかということです。もしかしたら従来のフォトストリームの1000枚制限の中に含まれるかも知れませんし、あるいは別の制限ルールがあるかも知れません。

 というわけで,長期に保管する場所として共有ストリームを使うことは難しそうなのですが、その点が不明なことを除けば,とても重宝する機能です。

 そんなこんなで,授業が終わった後も中学校にあるWindowsパソコンとiPadの接続について,あれこれお手伝いしてから、帰路につきました。次回は,修学旅行などの行事が挟まって,少し先になりそうです。

20120818 日本デジタル教科書学会 設立記念大会

 2012年8月18日に青山学院大学・青山キャンパスで日本デジタル教科書学会の設立大会が開かれました。
 その他にも東京への用事があったので,一般参加者として,いつものように「ふらっ」と寄る感じで参加してきました。
 実際に参加してみれば,それぞれの発表やシンポジウムは面白かったし,賑やかな感じは出だしとして良いなと思いました。

 私自身は「デジタル教科書」という言葉が曖昧さを抱えていて,何かしらの合意もないところで,この語を冠した学会が出来ることに否定的というか,不安視をしています。
 特に2009年末頃に発表された「原口ビジョン」に記され,年明けのiPad発表以降,「デジタル教科書」という言葉にまつわる様々な動きは目まぐるしく,私には狂騒曲のように思えてなりません。
 この言葉の曖昧さと周辺の騒がしさを強調する場合に〈デジタル教科書〉という山括弧で括った表記にして区別しようと考えているくらいです。
 本来「デジタル教科書」という言葉は,2009年末頃以前の動向も捉えて,議論を積み重ねなければならないと考えます。2009年末頃以降の騒動を捉えて,現象を追いかけるだけではいけないと考えます。
 果たして,日本デジタル教科書学会は〈デジタル教科書〉を括弧無しのデジタル教科書という語にし得るのか,あるいは特別な語でなくすることが出来るのか。
 単なるイベントではない,学会の大会ということもあって,気になり参加したところもありました。

 事前に抱いていた危惧のようなものは,参加してみて,もう少し学会の活動が積み重なってから判断してもよいかなという感想に変わりました。
 確かに当日は,デジタル教科書というキーワードをとっかかりに大変雑多な人々が集まっており,デジタル教科書について共通認識があったとは言えない感じでした。
 しかし,学会長がシンポジウムで語った「デジタル教科書・教材」の学問的ハブになるというコンセプトには合致するわけで,世代と研究領域を超えて知性を結集したいという考えのもと,デジタル教科書という言葉についても議論を通して明確にしていけるのではないかとも感じました。
 学会に集まる様々な知見を織りなすにしても,もう少し時間は必要でしょう。
 私自身は,その間も外部の立場から緊張感を持って議論に臨むことで,少しでもデジタル教科書という言葉の周辺を整理できたらと思います。

 さて,大会当日は様々な発表が平行していたため,残念ながら全ての発表を聞くことは叶いませんでしたが,上のような問題意識にもとで発表を選んで聞きました。
 発表を聞き始めて気になったは,発表要旨がA4サイズ1〜2ページと決められており,引用・参考文献を記載できなかった発表があるということです。
 願わくは,制限の中でも最低限の参考図書はリストアップすべきだと思いますし,逆に,デジタルなのだからページ数を1〜2ページにせず,6ページぐらいまで許してもよかったのではないかとも思います。
 学問領域をまたがるということは,領域による発表方法や要領違いが出てしまいがちにもなるので,この辺の学会文化はこれから育んでいくのかなという感じです。

 研究者や大学院生による学術的な発表と,現場の教育者による実践の報告発表とは,おのずと性格が異なるので,違いをうまくバランス出来るといいかなとも思いました。
 シンポジウムでも登壇者の赤堀先生が,研究も大事だが,実践をもっと集めるのが大事と指摘されていたように,様々な実践報告が積み上がるとよいと思います。
 ただし,気をつけなければならないのは,教育実践もデータや客観的な視点を盛り込んで報告されなければならないということです。そうしないと単に「やりました」と受け止められて「あっそう」で終わらされることにもなりかねないからです。
 だからといって実践報告は緻密なアンケートを取らなきゃいけないとか,学問的に難解な用語を使わなければならないとか,そういう話ではありません。
 赤の他人に伝えるために「形式に則って整理して簡潔に漏れなく語ろう」ということを心がけることが大事ということです。その方法がアンケートの場合もあるでしょうし,学問の言葉かもしれませんし,児童生徒の様子かも知れませんし,いろいろです。

 一方で,学術研究発表の方は少しでも厳しくすべきと思います。
 大学院生の皆さんの発表がいくつかありました。大学院生の皆さんは,こういう場を踏んで学会発表のやり方を学んだり,聴衆からの指摘や議論を通して発表内容について理解を深めるということがあります。
 それだけに,学会発表の場がある程度厳しくないと,悪いやり方を学ばせたり,逆に学会がなめられたり,発表しっぱなしで学びがなかったりしてしまいます。
 また〈デジタル教科書〉という曖昧さの中で議論をしようとしている分だけ,しっかりとした根拠にもとづいて発表や議論がなされなければなりません。
 今回,いくつかの発表を聞いて,私は質問をしました。
 一つは政策や言説に関する分析をしたという研究でした。私の関心事とも重なっていましたから期待もあったのかも知れません。どのように政策動向を捉えて,どのように言説を分析したのか,とても気になっていました。
 しかし,私にとっては少しもの足りず,何よりも分析対象の選択が曖昧だったので,調べた範囲と分析対象の設定基準を質問したのです。
 その返答は〈デジタル教科書〉という範疇にすっぽりはまり込んだものでした。
 それも一つの切り取り方かも知れませんが,まあ,ガクッとしてしまったのはご想像の通りです。
 もう一つは,デジタル教科書のための「学」を提案する発表。2009年末頃の「原口ビジョン」前後におけるデジタル教科書関連の文献数を示すことでその語が注目された変節点を押さえ,「教科書」と「デジタル」という語の整理から「デジタル教科書学」を提案するというものでした。
 それぞれの整理はよいとして,そこから何故「デジタル教科書学」が必要なのか,繋がりがよく分かりませんでしたので,質問しました。
 変節点以前から「デジタル教材・電子教材」関連の文献はそれなりにあったわけで,それらと「デジタル教科書」を分けて扱わなければならない理由(メリットやデメリットや具体例)などはあるのか聞きたかったわけです。
 その場ではすぐに納得する返答は得られなかったため,課題の残る印象でした。
 たぶん提案が早過ぎたのであろうし,それゆえ大ざっぱになったのだろうと思います。本当はもっと議論を重ねなければならないテーマでしょう。

 シンポジウムについて(後日)

 他いろいろな実践報告も興味深く聞くことになりました。それらは様々な学校段階や教科や取組みの次元があって面白かったです。
 いろんな切り口があることは良いことだと思いましたが,これはこまめに整理したりまとめていかないと,学会としても収拾がつかなくなるかも知れないなぁと勝手に考えたりしていました。
 それが可能性だといえば可能性ですし,こまめに整理し情報発信することが大事であることもその通りなので,今回の設立大会の成果を継続的に出力していただきたいなと思いました。
 残念ながら全ての方々と挨拶したり労うことは出来ませんでしたが,学会や大会を実現するために努力されている皆さんがいらっしゃることもいろいろ見えていました。素朴に学会設立と大会の開催をお祝いするとともに今後の継続に期待したいと思います。