国家からの情報あれこれ

 ひとり閉じこもって締め切りに追われたり,出張周りをしていると,大事な情報を見落としてしまうことも少なくありません。
 最近は,あちこちから情報が発信されているので,大事なことにも関わらず,たくさんの情報の中に埋もれて気が付かないということも起こります。

 7月10日付けで「平成23年度 学校における教育の情報化に関する調査」の速報値が公表されました。
 日本の教育の情報化を議論するための基礎資料ですので,大変重要です。しかし,以前にも指摘したことがありますが,この調査結果の提示の仕方にはいくらか問題があって,事態をちゃんと把握することに役立ってないように思われます。
 個人的には,この基礎資料をもっと分析して,噛み砕いた形で提示すべきだと感じましたので,次回のJSET研究会でその発表をしてみようかなと思っています。
 その一例として,「電子黒板の整備状況」について,速報値資料が描いているグラフに問題があることは,2012 PCカンファレンスなどでも,ネット上でも指摘しています。
 
 文部科学省の速報値資料では
monka23.jpg
 しかし,普通教室との比較で描くと同じデータでもこうなります。
 
jeris23.jpg
 
 空白に何の意味があるのか,と考えれば無駄な描き方ということになるでしょうが,それだけ整備されていないことを示すには,空白部分が大事になります。
 本来であれば,比較対象は学級数の方がより適切とは思いますが,文部科学省が用意しているデータを前提とするなら,こう描くことになります。

 7月31日には「日本再生戦略」が閣議決定されました。少しとはいえ教育とICTに関しても言及されています。
 工程表の「(2)II 我が国経済社会を支える人材の育成 〜人材育成戦略〜」には,2012年度に「ICTを活用した教育(特別支援教育を含む)に関する実証研究の改善等」と,2014年度までに「児童生徒1人1台の情報端末による教育の本格展開の検討・推進」に取りかかるといった文言があり,次のような項目が明記されています。

●協働型・双方向型の教育環境の実現、デジタル教材の開発、指導力の向上に関する実証研究
●実証研究などの状況を踏まえつつ、デジタル教科書に関する制度の在り方等について検討

 2020年までに「OECD生徒の学習到達度調査等で世界トップクラスの順位」が成果目標とされています。
 まさに国家戦略として出されたので無視できるものではありませんから,いろいろ確認して検討する必要があります。もちろん具体的な方策を考えるということもそうですし,「そもそも論」的な見直しも研究者側では試みなければなりません。

 宿題がいっぱいあってちょっと大変ですが,この辺を皆さんがどう考えているのか。いろいろ聞いてみたい気もします。

20120804 2012PCカンファレンス(CIEC)@京都大学

 東京での用事を終え,全国視聴覚放送大会の会場にちょっとだけお邪魔して,京都に移動しました。8月4日〜6日まで京都大学で2012PCカンファレンスが開催されており,そのシンポジウムに登壇するよう依頼されていたからです。
 国際シンポジウム「すぐそこまできた『未来の教室』を創造する」は,オーストラリアと日本からの登壇者で情報化について考えるものでした。
 日本はフューチャースクール推進事業を事例として考えるということで,北海道の紅南小学校の加藤先生と徳島県の私がシンポジアストとして参加。反骨精神たくましい京都大学に相応しく(?),事業の中でも一番ヤンチャな2人が選ばれました。
 シンポジウムの様子はWeb記事にもなっているので,まずはリンクしておきます。
 20120807「情報機器を活用した「未来の教室」の姿は? PCカンファレンスでオーストラリアや日本の現状と課題を紹介」(PC Online)
 記者の方が苦労してくださって,記事はかなりマイルドな仕上がりですが,当日の会場は早々とヒートアップした状態で,考えさせる投げ掛けをこれでもかとぶつけておりました。

 (つづく)

20120803 教育スクウェア×ICTフィールド連絡会

 愛知県から再び東京に戻って,NTTの研修センターのある場所へと向かいました。NTTグループを始めとした民間の企業が行っている教育情報化の実験事業「教育スクウェア×ICT」のフィールド連絡会に参加するためです。
 もちろん,教育スクウェア×ICTとは,もともと関係のない人間でしたが,ワークショップの司会を手伝って欲しいというご要望があったので,お引き受けした次第です。
 私自身も教育スクウェア×ICTに関しては関心があったので,いろいろ勉強したいと思っていたところでした。

 8月2日と3日の2日間,NTTの研修施設を会場に,教育スクウェア×ICTに関わっている学校や教育委員会の先生方が集まって,情報交換や交流をするのがフィールド連絡会です。
 今回は,事業2年目に入って,これまでの途中成果を確認しあったり,2学期からの取組みをいろいろと膨らますためにワークショップが企画されていました。
 私は初日は愛知県の要件があったので,2日目の個別のワークショップからの参加という形で依頼を受けました。

 NTTの皆さんは,終始とても丁寧な対応で会を進めていました。丁寧過ぎるといってもいいかも知れません。それが事業を円滑に進めるコツなのかなとも思えるくらいでした。
 私は要点を押さえたら,あとはフリーハンドで考える質なので,相手からすれば相当いい加減に見えたことでしょうし,実際,最後はかなりやらかしましたので,だいぶ扱い難い参加者だったと思います。
 とにかく,初日の夜に会場に着き,夜の部の途中から参加。幸い,フューチャースクールの公開授業に来てくださったことのある先生にお声掛けいただいて,なんとか紛れ込むことができてスタートした次第です。
 そうそう,そこで与論島のお酒にやられました。 ^_^;

 翌日は,さっそくスケジュール通りにワークショップ。3つのテーブルに分かれて,3人の司会者がそれぞれのテーマで進行していきます。正直なところ,初めての先生方をお相手に初めての場で上手に意見を引き出せるかは不安でしたが,その辺は参加している先生方の方が心得ているようでしたので,おかげさまで無事に進行することができました。
 ワークショップ自体は,わりと順調に進んで,お役目はそつなくこなしたと思います。これでいいのかなという,到達具合が分からない感は残りましたが,それは私が新参者だから仕方ないのだろうと思います。
 その後,テーブル毎の成果を発表するということで,成果共有の場が持たれて,いよいよ司会者3人が講評する場面になりました。
 先生方を励ますために,議論の中から何を言おうかと,いろいろ思案しながら二人の先生方の講評を聞いていました。ああ,あれも言われたし,これも言いたいことは同じだな。そんなことを思いながら,話すことが決まらないまま,とうとう自分の番。
 自己紹介していたら,同じことを話しても仕方ないというスイッチが入ってしまい,なぜか叱咤激励モードの話になっていきました。
 現場の先生方に対して,とうよりも,山のように集まっていらっしゃる企業関係者に向けて,もっと教育市場に真剣になっていただきたいだのなんだの,厳しい口調も織り交ぜながら語り出しちゃったから始末が悪い。
 いま思うに,ず〜っと溜まっていた鬱憤みたいなものが,その時のディスカッションで刺激されていたことと,NTT始めとした民間が主体でやっている教育情報化実験事業への大きな期待みたいなものも裏返しにあったせいだろうと想像するのですが…,まあ,やらかしましたね。^_^;

 この残火は,翌日のPCカンファレンスへのヒートアップへと繋がっていくわけですが,とにかく教育スクウェア×ICTの皆さんには,いろいろとご迷惑をおかけしながら参加したフィード連絡会となりました。

20120802 愛知県稲沢市稲沢西中学校研修会

 しばらく出張の日々でした。研究会に出席するために夜行バスを使って東京に出発したのを皮切りに,名古屋,東京,京都と移動していました。
 お声掛けをいただいて,愛知県にある稲沢西中学校の校内研修会で講師を務めました。今年度,稲沢市ではすべての中学校に全教科のデジタル教科書を導入したとのこと。研究の指定を受けているわけではないけれど,夏の研修期を機に勉強してみようということのようです。
 「フューチャースクールのような環境は全くありませんから…」という事前の説明を何度も念押しされて,だいぶ気を使わせてしまった様子。
 確かに最近私が接しているのは,一人1台PCのある学校や電子黒板ならわりと当たり前という雰囲気の学校ばかり。太陽を見過ぎて眩暈をしているのも事実ですから,念押しされても仕方ないのかも知れません。
 ICT機器の導入や整備の実情は地域によっても異なりますが,ほとんど無いという状態から少し機器があるという程度が「ごく普通」なのでしょう。
 教育の情報化がナンタラという話は,とにかく現場の先生方のウケが良くないので,あえて何も準備しないノープラン状態で臨むことにしました。
 ええ,ノープランが一番良いみたいです。
 稲沢西中学校には初めてお邪魔するのですが,連れられていった先は以前来たことのある場所でした。隣に名古屋文理大学。某セミナーでお邪魔した場所でした。
 とにかく,研修会が始まる前に,用意していただいたICT機器の内容をチェック。だいたいの構成を理解して,研修会がスタートしました。

 用意されていたICT機器は,移動式ワゴンにパソコン,液晶プロジェクタ,実物投影機,スピーカーなどがセットされたもの。
 これが各学年に2セットほど用意されているということで,必要があればワゴンとスクリーンを教室に持っていって使うというスタイルのようです。
 パソコンには,デジタル教科書やオフィスソフトが用意されており,教室の情報コンセントを利用してインターネットに接続することもできます。ただし,まだデジタル教科書をインストールしていない教科もあるようです。
 実物投影機もすでに接続されているので,電源を入れるだけで割り込んでプロジェクタから出力することができます。小型シンプルな機種なので,画面フリーズボタンと画像保存シャッターボタン,そして保存した画像を呼び出すだけ。
 シンプルですが,ICT整備としてはごくごく一般的な水準でしょう。

 事前にいくつかの質問をいただいていましたが,まずは目の前のワゴンセットを初めて使うところから説明することにしました。
 電気屋のお兄さんよろしく,ワゴンに乗っている機器を一通り説明し,どのボタンを押すとどんなことが起こるのか,目の前で実演してみせました。
 「やってみせる」は絶対的に強いのだと,改めて実感しました。
 実演が終わって,次は事前質問への回答。「準備の時間がかかって困る」「字が小さいのを回避する方法は?」「ICTと板書とのバランスが難しい」など,一筋縄ではいかない問題がいろいろ出ています。
 解決とまではいかなくとも,一つ一つ丁寧に考えてお話して,納得する方もいれば,やっぱり難しいのねとため息をつく方もいたかも知れません。
 電子黒板ユニットを導入することで,現在のワゴンセットを活かせるかも知れないですねという提案もあれば,スクリーンを用意しなくても黒板に直接写すという手もあることなどをパフォーマンスしたり。
 相変わらずノンストップで続け,無事90分のお仕事も終わりました。

 ノープランということもあって,ゼロから百まで縦横無尽に展開しました。
 最後に,まだインストールしていない教科の先生方に向け,この機会に全部の教科のデジタル教科書をまずインストールして,中身を見てみることから提案しました。
 それから,ICTと板書の使い分けやバランスには明確な答はないので,経験を積み重ねて探っていくしかない。実はそこにベテランの先生方の知見が役立つのだから,ぜひノウハウの伝達をして欲しいとお願いしました。

 研修会終わって,東京へ。短い愛知県滞在でした。

[FS徳島] 20120629足代小学校公開授業

 2012年6月29日金曜日に徳島県の足代小学校で公開授業と授業研究会,そしてフューチャースクール推進事業の担当研究者として私の講演がありました。
 今回の授業は1年生,3年生,5年生が授業公開。
 1年生 学級活動「はじめてのタブレットパソコン」
 2年生 算数「一億までの数」
 5年生 総合「アレンジ・チャレンジ・メッセージ 〜三好B級グルメ開発プロジェクト」
 それぞれ見どころは,
 1年生は,(本当に)初めてタブレットPCを使い始める機会
 3年生は,各桁に対応した端末を駆使して友達と協力して問題に挑戦
 5年生は,郷土料理について聞き取り調査した情報の整理と共有
 といった活動を行ないました。足代小学校らしい情報機器活用のチャレンジも織り交ぜながら,もちろん様々な課題も見えてきた実践となりました。

 今年度は授業研究会に授業者の先生方が登壇してくださるので,授業を振り返っての学習に込めたねらいなどお話しいただくことができました。
 会場からもオンライン付箋サービスの「linoit」を介して,様々な感想や質問をいただき,それに対して先生方からも真摯な回答をたくさんいただくことができました。それを見て,さらに質問や感想も増えたりと,よい循環も生まれました。

 そのまま講演を潰して質疑で盛り上がろうと思ったのですが,さすがに仕事を放棄すると怒られそうなので,最後は手短に私のお話をさせていただくことでお開きとなりました。

講演音声ダウンロード
 相変わらず早口なのだなと,我ながら恥ずかしく思いつつ…。