「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」には,テレビの設置台数についても質問項目があります。
タブレットパソコンや電子黒板の設置台数が少ないのは,比較的新しい機器ですから当然のこととして、テレビは放送開始60年の声を聞くほどの国民的メディアですから,教室に1台ずつあってもおかしくないとも思えます。
さて,実態はどうでしょうか。
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実は,すでに昨年のブログ記事「メディアプアな日本の中等教育」で平成22年度の設置台数について話題にして,こう書きました。
普通教室の部分だけを注目すれば、設置されているテレビのパーセンテージは,小学校で95%,中学校で56%,高等学校で7%,特別支援学校で43%となっています。
高校のテレビ設置台数の貧しさに驚愕したというわけですが、それについてコメント欄では「受信料免除がないためではないか」という解説をいただき,確かにそのような金銭的負担も設置に結びつかない遠因だと思われたのでした。
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では,平成23年度はどうなっているのか。
昨年と同様に「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」における「3 デジタルテレビ等の整備の実態」の「(2)デジタルテレビ等の設置場所別台数 – (3)デジタルテレビ整備学校数」の集計表を使ってグラフ化してみます。
まずは小学校…
次に中学校…
そして高等学校…
最後に特別支援学校…
今回はエクセルファイルも付けておきます。もとはe-statからのファイルですのでご自由に利用してください。
graph_h23jyouhouka003-2_3.xlsx
https://docs.google.com/open?id=0BxBSvLJGifj0SktTZWc1blRfQTQ
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平成23年度は,普通教室に注目すれば、設置されているテレビのパーセンテージは,小学校で80%,中学校で46%,高等学校で6%,特別支援学校で35%となっています。
ただし,アナログテレビの集計が省かれたので、昨年度との変化は,純粋にデジタル対応テレビだけのパーセンテージで考えなければなりません。平成22年度と平成23年度でデジタル対応テレビの設置率はどう変化したのか。次のような数字になります。
平成22 → 平成23
小学校 60% → 80%
中学校 34% → 46%
高等学校 4% → 6%
特別支援学校 28% → 35%
とりあえずデジタル対応テレビは順調に導入が進んでいるようですが、小学校を除いて設置台数が半数にも達していない現実は変わりません。
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この数値をどう解釈すべきなのでしょうか。
文部科学省が行なった「学校及び社会教育施設における情報通信機器・視聴覚教育設備等の状況調査」(平成22年度)には,視聴覚教育設備という角度からの抽出調査結果が記録されており,その中には「授業用情報通信機器・視聴覚教育設備等の活用頻度」という質問項目もあります。
幼稚園・小学校・中学校・高等学校という調査対象で,活用頻度が高かった(「ほぼ毎日」あるいは「週に数回程度」活用する)ものの順は「コンピュータ(84.66%)」、「CD プレーヤ(82.94%)」、「デジタルカメラ(53.32%)」、「地上デジタル対応テレビ(38.97%)」、「ビデオプロジェクター(37.85%)」でした。
これは「授業用情報通信機器・視聴覚教育設備等の保有台数」の上位順「コンピュータ(43.52台)」「CD プレーヤ(9.16台)」、「デジタルカメラ(7.13台)」、「地上デジタル対応テレビ(6.10台)」、「テレビ受像機(5.40台)」とほぼ似たような構成であることを考え合わせると、普及程度に応じた活用頻度になると推論されます。
活用の頻度が高いとは言いづらい調査結果ですが、だからといって「日本の教育にテレビは必要ない」とも言えない。過去の調査結果を比較する必要はありますが、保有台数が高まれば利用頻度も高まるかも知れません。
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それにしても,調査結果を眺めると「日本の学校にテレビがあることを前提出来ない」という解釈も成り立つかも知れません。
すでに英国BBCは,教育番組をテレビ電波放送と結びつけて考えることを止め,法律を改正してしまったと話に聞きました。つまり,教育番組の活用がリアルタイムの生視聴でなくなってきている現実を突き詰めれば、ネットで提供することの方がもっとも合理的だとする考え方です。
これまでデジタルデバイドを懸念して,ネットのようなメディアではなくテレビのような従来メディアで対応することを奨励する立場もありましたが、テレビがそもそも前提出来ないのであれば,アクセスのタイムラグを許しやすい(ネットにアクセスするための何かしらの手を講じる時間的余裕が持てる)ネットの方がまだマシだということにもなります。
そもそもデジタルテレビ時代においては録画さえアナログテレビと違って面倒がつきまといます。いま一度,教育でテレビ番組を活用するということの意味を根底から問い直す作業が必要な時期に入っているのだと思います。