20190215_Fri 大阪市学校教育ICT活用コーディネータ会

大阪へ出張。

大阪市の教育センターでは「学校教育ICT活用事業」が取り組まれてきた。

大阪はとても話題に事欠かない土地で,いろんな出来事で賑やか。この事業も始まってからずっと,いろいろなことに振り回されてきた。それに「大阪市」と「大阪府」とは全く別で動いているにもかかわらず,外からは同じと勘違いされやすいこともあって,関係者の皆さんはいろんな気苦労をされている。

私はコーディネータの一人として,市内の学校からの助言講演依頼に応えるという役目をしてきた。

今年度で事業も一区切りとなるので,現状報告とこれまでの振り返りを出席者で共有した。

その日はちょうど大阪市の予算に関する発表があって,この事業関連の次の展開についても盛り込まれた内容だった。産経新聞「大阪市予算案、虐待防止や防災体制も盛り込む」によると…

教育環境の充実・改善にも注力。小中学校でタブレット端末を活用した学習に一定の効果が見られる中、端末を自宅に持ち帰って学習する新モデル事業に3800万円を計上。

となっている。

学校に配備したタブレット端末が更新時期にきているため,新しい端末に置き換えられる予定。今後は持ち帰り利用も重視しながら,学力向上に繋げていきたいというのが首長部局や議会の意向のようだ。

ただし,新しい学習指導要領が目指そうとしている方向性を考えると,従前からの「学力」という考え方を更新していく必要もあり,学校だけでなく周囲の人びとの理解をアップデートすることが求められている。

まだ全体が変化するピークを迎える前の緩やかな充填期間にあるので,結果を早く見たい感じたい人たちには忍耐が求められるのであるが,大阪市はこれからもジリジリと充填を続けて,学校教育における学習の在り方や新しい時代の学力に向けた大きな変化を生み出すよう努力が求められると思う。

来年度もご縁があれば大阪市にお邪魔したい。

20190201_Fri 近江八幡市へ出張

滋賀県の近江八幡市へ。

ICT教育推進リーダー部会が開催されるので助言者として参加した。新年度から稼働する新しいICT環境・校務システムに関して慌ただしく準備が進む。

近江八幡市とのご縁は、文部科学省のICT教育アドバイザー事業にアドバイザーとして所属していたとき,担当を受け持ったことに始まる。その際、あまりに教育委員会事務の皆さんと意気投合したので、ほとんど駆け落ちみたいに国のアドバイザーを辞めて、近江八幡市に通い続けることになった。

あれから4年ほど過ぎて、この春から新しいICT環境が動き出す。

やけに時間がかかったと端からは見えるかも知れない。まぁアドバイザーに入った私に助言能力が無いからでは?という推察を,否定はしない。でも私からすると,近江八幡市の皆さんがより良い環境整備のために誠実・慎重に物事を見極めながら事を進め,また、そうした真剣な取り組みと並行して起こる地方政治の諸事情に向いながら、その結果として、ある意味かかるべくしてかかった時間だと思っている。

新年度からは校務と授業で利用できるシステムが整備され、児童生徒の部分はそれ以降の計画となった。一緒にできなかったのは残念な部分であるけれど、順番は悪くない。

その日は、年度末の慌ただしさの中で、各校のリーダー先生達によって、現在の学校サーバー内のデータを来年度の新環境でどう扱うのかが話し合われた。私は整備される環境の特徴をうまく使いこなして環境のお引っ越しを成功させて欲しいとお話しした。

それにしても校務システムのようなものを導入する際、「これから買って使い始めようとするものがどういうものなのかわからない」買い物が常態化しているのはいかがなものか。

展示会などに行ったり、お願いすると、デモが実演されて動作している様子を見ることができるが、あとから細かいところを知りたくなっても、その要望に応える情報提供の努力があまりに足りない。整備し終わっていざ使い始めて蓋を開けないと、実際の使い勝手が分からない、そんな理不尽な買い物が全国各地で当たり前に展開している。

本当は、そういう変な習慣こそ正すようなアドバイザー活動をすべきなのだが、そういうことを考える人間は相手にされなくなるので、気をつけたい。あなたが国のお仕事を担いたいと思うなら特に。

近江八幡市とのお仕事も今年度はこれでお終い。

来年度、お邪魔するかどうかは分からない。また、ご縁があれば呼ばれるし、そうでなければ心の片隅でエールを送るだけである。

この4年間、滋賀通いは楽しかった。

20190118_Fri Windowsな憂鬱

センター試験準備日のため全休講。

研究室仕事と会議など。

不調だったRaspberry Piのシステム環境も整ったので,同じく不調になっていたWindowsマシンを補修しようと取りかかった。いつもWindowsにネガティブな態度を取っているわけではなく,ちゃんと動いてくれる分にはWindows環境も悪くはないと思っている。そう思うためにもWindowsをちゃんと動かせるようにしたい。

どうせならしっかりとしたWindowsマシンを購入してはどうだろうとも考えた。

macOS上のエミュレーターで動作させて使えているとはいえ,それではWindowsの真価を発揮させていないともいえる。文句ないWindowsマシンを研究室に一台くらい配備してはどうか。

最初はマウスコンピュータが頭に浮かんだ。

なんだかんだいって,あのCMシリーズは好きだ。ノリでいいからCM公開記念の限定モデルを購入してみてはどうだろうと考えたことは何度もある。私のようなユーザーがWindowsマシン購入にお金を出すためには「ノリ」が必要なのだ。

しかし,よくよく吟味してみると,限定モデルの言葉ほどにはお得ではないかも知れない。

いや,お得なのかも知れないが,他の通常モデルと比べてみてもそれほど魅力的とは言えない気もする。そんなことを考え始めるとお安い買い物は期待しない方がいいってことにもなる。

だったら日本マイクロソフトのSurfaceシリーズを選んでみたらどうだろうか。

なんだかんだとOSを作っている会社のマシンである。リンゴに対抗するならこれくらいで攻めた方が言い訳する余地を与えなくてよいかも知れない。

と思ってSurfaceのWebサイトを眺めて検討をしていたが,しばらくして「ん?この方向性が欲しいならリンゴでよくない?」というちゃぶ台をひっくり返すような意識が芽生えて,Windowsマシンの新規購入気分はあえなく撃沈してしまったのであった。

それで,以前にノリでセット購入してしまった「一太郎発売記念 Keyboard PC Limited Edition」が,Windows10アップデートの不具合で動作不能になっていたのを補修しようということにしたわけである。

最初のうちは研究室唯一のリアルWindowsマシンとして動作していたのだが,度重なるWindowsの大型アップデートと,もともとひ弱な記憶容量が引き金となって,アップデート失敗と修復の失敗で沈黙。しかもWindowsの修復ディスクといった付属品もなく,マシン内部のライセンス情報も喪失して,メーカー修理しか道が無くなってしまった。

もともとテックウインド社の「キーボードPCII」をベースに企画されたものだが,限定モデルだからサポートもJustShopでまずは受け付けるかも知れない。その辺のことが明確に説明された文書がないので,結局放ったらかしになっていた。

修理問い合わせの前に,Windows10の再インストールを試みる。まずは8G以上のUSBメモリを確保して,Windows10ダウンロードサイトにアクセスする。

ところが,macOS等から開くとISOイメージダウンロードサイトが開いてしまう。最初はこの違いに気がつかずそのままISOイメージをダウンロードしてUSBメモリに書き込もうとした。しかし,それだとうまくいかなかった。

エミュレーターからWindows10を動かして,そこからダウンロードサイトを開くと,インストールのためのメディア作成ツールをダウンロードする手順が動き出す。今度こそUSBメモリにちゃんと書き込みをして,キーボードPCで起動を行う。

長い…。マシンが壊れているせいかと思うくらい時間がかかる。それだけ非力なハードか。

もう時間オーバー。導入のための設定も何もしないまま,放ったらかして真夜中帰宅した。

ライセンスを再購入するかどうかは,まだ決めてない。

20190117_Thu 金曜授業の木曜

センター試験準備のため金曜授業。

文献講読も終わった専門ゼミナールは,各自の卒業研究テーマ決めに本格的に取り組むことになった。個別にどの方向へと関心を絞り込んでいくのか対話しながら研究室の文献紹介などする。

今年度の4年生は「知育玩具」と「数学学習アプリ」というテーマで卒業研究を取り組んでいる。

知育玩具に関しては,その歴史を文献を読みながらまとめ,現代の知育玩具にも目を配り,整理した情報をホームページを使って発信するという取り組みをしている。知育玩具に関する文献を探して読むということもさることながら,Webサイトをつくるための無料サイト構築サービスへの挑戦など,初めての事柄をどのようにまとめていけばよいのか迷いながら作業を進めている。

数学学習アプリに関しては,2人の学生がペアを組んでいる。自分たちで数学の学習アプリを作れたら…という動機から始まっているが,アプリ開発そのものが2人とも初めて。前年度から模索は始めていたものの,海のものとも山のものとも分からぬ世界をかき分けて,プログラミングに関する情報収集やHTML5ベースのアプリに決めてからのそのノウハウの学習には長い時間がかかってしまった(アルバイトや実習などの事情があったにせよ)。アプリ自体はベース部分の開発で一区切りし,そこまでの悪戦苦闘を文字に落とし込んでいるところだ。

一方,これからテーマを決める3年生。

「交通安全教育」「ネット利用」「映画」「ダンス教育」といったキーワードを考えているようだ。

本研究室が「教育と情報の過去・現在・未来」といった看板を掲げていることからすると,だいぶ距離のありそうなテーマも含まれているように思える。

けれど,「教育」も「情報」もわりと間口の広い言葉や分野であるから,実際のところ,どんなテーマを持ってきても切り口として教育と情報を使えそうなら,なんとかなる研究室でもある。

春休みに意識的に過ごせるようにするためにも,来週の金曜日に卒業研究テーマを仮決めして発表することを課題にした。仮決めだからまだ変更はあり得るが,そのためにも仮決めはしたい。

来年の卒業研究指導のために何かよいツールはないかと日頃から気にしていたが,ふと見た「LINE WORKS」に無料プランが出来ていることを知った。

学生たちとのやりとりはほとんどがLINEになってきてしまっているので,よく似たアプリでグループウェアを使えれば便利かも知れない。導入してみることにしよう。

20190111_Fri LK 第6章「創造的な社会」

新年の初ゼミ。

文献講読中の『ライフロング・キンダーガーテン』は最終章(第6章)の「創造的な社会」に至った。これは私が発表担当しながら読むことになった。

第6章は,これまで4P(プロジェクト,パッション,ピア,プレイ)を通して創造的な思考者を育むことを描いてきたミッチェル・レズニック氏が,「創造的な社会」に向けた難しさを承知しつつも,取り組みへの意欲を再度宣言するような位置付けだ。平坦ではない道のりを歩んでいくために,学習者や,親と教師,デザイナーと開発者に向けたヒントも提供している。

せっかくなのでヒント部分だけ抜き出しておこう。

学習者のための10のヒント(272頁〜)

  1. シンプルに始めること
  2. 好きなものに取り組むこと
  3. 何をすべきかがわからないときは,とにかくいじりまわすこと
  4. 実験することを恐れないこと
  5. 共に働き,アイデアを分かち合う友人を見つけること
  6. (自分のアイデアを加えるために)他のものをコピーしてもOK
  7. あなたのアイデアをスケッチブックに残すこと
  8. 構築し,分解し,再構築すること
  9. こだわりすぎると,うまくいかないかもしれない
  10. 自分自身の学びのヒントを作ること!

親と教師のための10のヒント(282頁〜)

  1. 発想:アイデアを喚起する例を見せる
  2. 発想:突き回すことを推奨する
  3. 創作:幅広い種類の材料を提供する
  4. 創作:あらゆる種類の作り方を受け入れる
  5. 遊び:作品そのものではなくプロセスを強調する
  6. 遊び:プロジェクトの時間はたっぷりと
  7. 共有:マッチメイカーの役割を果たす
  8. 共有:コラボレーターとして参加する
  9. 振り返り:(本気の)質問をする
  10. 振り返り:あなた自身の振り返りを共有する

(おまけ)スパイラルを続ける

デザイナーと開発者のための10のヒント(293頁〜)

  1. デザイナーのためにデザインする
  2. 低い床と高い天井をサポートする
  3. 壁を広げる
  4. 関心とアイデアの両方につなげる
  5. シンプルであることを優先する
  6. デザインを使う人びとを(深く)理解する
  7. 自分自身が使いたいものを発明する
  8. 小さな学際的デザインチームをまとめる
  9. 大勢の意見を取り入れつつ,デザインを制御する
  10. 繰り返し,繰り返し,そしてさらに繰り返す

それぞれのヒントに解説が加えられているし,ここまで読んできた読者にはそれぞれが何を意味しているかはすぐに理解できるだろう。

この章には,レッジョ・エミリア・アプローチの話も登場する。

『ライフロング・キンダーガーテン』(生涯幼稚園)という書名は,筆者の所属している研究グループの名前であるとともに,個々人の創造力を最大限に伸ばすことができる学びのスタイルであるという考えを象徴するものだが,その具体的な姿をレッジョ・エミリア・アプローチに求めているわけだ。

レッジョ・エミリア・アプローチとは,ローリス・マグラッツィ氏たちがイタリアの小都市レッジョ・エミリアで始めた幼児教育の取り組みのことである。街と市民を巻き込んだ取り組みであることから,都市名が手法の名前として定着している。

モンテッソーリさんの教育アプローチがモンテッソーリ・アプローチであるのに倣えば,本当ならマグラッツィ・アプローチとでもなりそうであるが,そうでないところがレッジョ・エミリア・アプローチの特徴をよく表しているともいえる。つまり子供たちの育ちは社会そのものの営みと密接にかかわり合っているということだ。

こうしたアプローチの特徴的なこととして,本書でも取り上げられているのが「学びの可視化」であり,子供たちの取り組むプロセスをできる限り見える形で記録しアクセスできるようにすることである。

他と協働する際には,こうして可視化されたものを相互理解の材料として活用しつつ,クリエイティブ・ラーニング・スパイラルをぐるぐると回していくことが必要なのだろう。

著者も,さまざまな構造的障壁を打ち破る必要性と難しさについて考えを巡らしながら,創造的な社会に参加する子供たちを育むために時間と労力をかける価値がある取り組みだと締めくくっている。

マグラッツィ氏の詩「100の言葉」は,あちこちの翻訳書に登場している。

今回も一部が引用されているが,その翻訳は訳書ごとに細部が変わっている。日本語にしたときの詩的な表現をどのようにアレンジするかによって,言葉や翻訳の程度は変わり得るが,いまのところ,どの翻訳も一長一短がある。実際に詩的に音読しようとしたときには微妙に変えてしまいたくなることが多い。

こうやってあらためてゼミ講読をしてみて,Scrachやプログラミングに少々縁遠い学生たちでさえ,今回の本からいろいろ学べて面白かったと感想を述べている。本書『ライフロング・キンダーガーテン』はScratchに関心のある人びとがもっとたくさん読んで話題にしていてもよいように思う。