2015年が始まって,1月下旬に入りました。20日間ほどに公私いろんな出来事があって,数ヶ月経過したような感覚さえ覚えています。それだけ賑やかな年になりそうだということでしょうか。静かに文献資料整理しようとしていた一年の計は,早速危うくなっています。
今年の出張は,大阪市・学校教育ICT活用事業の公開授業参観からスタートでした。モデル校に置かれるコーディネーターとして小中一貫校・むくのき学園を担当しています。といってもお伺いする回数も限られたので,なかなかお役には立てていませんでしたが,断片的ながらもこの一年間の変化を見守らせていただきました。
小中一貫校になると同時に様々な取り組みをスタートさせたものですから,子供達も先生方も大変じゃないかなぁと心配や不安で関わりはじめたのですが,ほとんど杞憂に終わりました。もちろん子供達も先生方も一所懸命で日々ご苦労も絶えないと思いますが,ICT活用の関しては常駐支援員さんの助けも大いに借りながら順調に進めてこれたようです。
この日の公開授業も,見た目の場面に目新しさがあるというわけではないのですが,子供達にしても先生達にしてもICT機器に対する姿勢が少しずつ成長してきた成果が裏側に見えて,いよいよこれから本格的な試行錯誤にも乗り出せそうな感じです。
この日の講評は,学校教育ICT活用事業の全体アドバイザーである先生方がお越しになったこともあり,土台のお話はその方々にお任せをして,私はむくのき学園の一年間の成長と教育とICTの関係について俯瞰的な視野からのお話をしました。
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さて,実は当日,こんな発表とニュースがありました。
「【お詫び】「大阪市学校教育ICT活用事業タブレット端末等機器長期借入(リース)契約」にかかる入札を中止します」大阪市教育委員会(9:40発表)
[ネットニュース記事]
「職員が特定業者に情報漏洩 大阪市教委、タブレット入札を中止」産経ニュース(12:13)
「大阪市、タブレット端末の入札中止…業者に情報流出」スポニチ(12:41)
「【情報漏れ】授業用タブレット入札中止 大阪市教委」ABC WEBNEWS(12:46)
「教材タブレット端末の入札 情報漏えいで中止に」関西テレビ放送(15:22)
「【情報漏れ】「組織ぐるみ」認める タブレット入札中止」ABC WEBNEWS(16:43)
「タブレット入札中止 大阪市職員情報漏洩か」NNN(17:58)
「小中学校への「タブレット端末」導入延期」MBSニュース(18:47)
「大阪市が学校向けタブレットの入札中止、特定業者に情報漏洩」ITpro
発表やニュース自体は驚きですが,公開授業などモデル校での取り組みには直接影響するものではないので,私たちは淡々とその日の仕事を進めたのでした。
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大規模なタブレット端末導入の案件は,橋下大阪市長の肝いりともいえる取り組みだっただけに,この日の退庁ぶら下がり取材でも市長自身「残念です」を繰り返していました。
私は入札中止に関しては報道されている以上の情報は知りません。
関わっている教育センターの「学校教育ICT活用事業」は,入札の際の参考となる研究成果の報告を出すことにはなっていますが,入札は基本的に教育委員会や管財関係の部局が責任を持っています。
報道では,教育センターの職員が入札公表前に仕様書を渡してしまったことが問題となっていますので,たぶん教育委員会の人が教育センターに相談する時に仕様書案を見せてしまったためなのでしょう。それをまた相談するつもりで業者に見せてしまったんじゃないかと思います。結果的に巻き戻してみたら,漏えいに該当していたということなのかなとも思います。もちろん真実は知りません。うっかり八兵衛なのか,黒い陰謀なのか,どちらにしても不用意であったのだろうと思います。
去年の8月29日に大阪市教育委員会は「学校教育ICT活用事業の検討にかかる情報提供依頼(RFI)」というものを発して,外部から情報提供を受けるために仕様はこんなのを想定していますといった情報を公開していました(いまは終了したので削除されています)。
関係者が読めば,大阪市がどんな入札の仕様書を描こうとしているかくらいは,そこから推し量れてしまいますので,仕様の内容を秘匿できなかったことが問題なのではないと思います。入札公示で初めて公開される「仕様書」そのものが公示前に外部の手に渡ったという事務手続きの過誤が問題とされていると考えられます。
でもそれも正確には分かりません。正式な仕様書だったのか,情報提供を求め相談している最中に作った仕様書案なのか。発端となった「匿名の情報提供」者がどのように問題を指摘したのかも,報道からは何も分からないのです。分からないままに「組織ぐるみ」と表現する報道もあって,そりゃ組織ぐるみで情報提供を依頼していたのですから間違いではありませんが,記事の書きぶりはすっかり陰謀論です。少しでもこうした報道に対する批判的リテラシーを発揮しなければなりません。
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私は以前の職場でパソコン教室整備のための入札を進めた経験があります。あのときも普段お付き合いしている業者さんに情報を提供してもらいつつも,しかし入札に関わる正式な情報は公平を期して取り扱って事務を進めていました。とても気を遣う仕事で,もう終わった時はぐったり。それに開札後には,落札できた業者さんとできなかった業者さんと引き続き平等にお付き合いしなければならないので,結果についても責任を持たないと気まずくなります。そうでなくても向こうが凹んでいたりするので,こちらが励ましてあげたりすることもありました。普段から人間関係と仕事の緊張関係をきっちり分けつつ両立していないと,そういうシチュエーションになった時にすごく困るわけです。
そうやって気をつけても,何かしら疑いの目を向けられて,ありもしない問題をでっち上げられたら,すべてのことがストップしてしまうのは避けられません。特にネットによる情報の行き交いが激しくなった現代ならなおさらです。私たちは,とても難しい世の中を生きているのだなとあらためて思います。