Macintosh 30th

 米国時間1月24日はMacintoshというパソコンが初めて発売された日です。今年で30周年になります。

 パーソナルコンピュータ自体はそれ以前から様々なものが登場していましたが,今日のパソコンシーンに大きな影響を与え続けてきたのはMacというパソコンです。

 私自身が初めて直接触れたのは大学に置いてあったMacでした。それまではNECのパソコンのユーザーでしたが,大学のMacでインターネットとQuarkXpressを体験してからずっとMacユーザーです。30年のうち20年ほどのつきあいとなります。初めて購入したMacはPowerBook Duo 280cでした。

 私も仕事の場面ではWindowsマシンを使う機会が多いので,基本的に両刀遣いといったところですが,愛着が湧くのはMacの方であることは隠しません。その分,酸いも甘いも分かりますので,道具の選択について特別頑固なつもりはありません。私はWindowsも楽しむし,iOSもAndroidも面白がります。

 教育とコンピュータという観点で考えると,市場はすっかりWindowsですがMacの影響力はそこかしこに見受けられます。

 操作スキルを中心とした世界観の中では,どうしてもOfficeが必要だとか,Macは使い方が分からんとかの話になりがちで,極端に多様性が排除された景色になってしまうのですが,私は教育の場にいろんな機種やタイプの端末が偏在するようになるといいなと思っています。そうした観点で従来まではMacをもっと押していたし,ここ最近ではiPadなどのタブレット端末も注目したいよねと主張しているわけです。いまあるWindows以外の選択肢をもっとプッシュしたいわけです。

 これから1人1台ではなく1人複数台の世界が,時間はかかれど当然のようにやって来る時代に向けて,どんな教育を構想すればいいのか。さらに面白いカリキュラムや指導方法といったものが,ますます模索可能になってくるのだと思います。

 そうした未来に向けてのわくわくするような気持ちを抱きつつ,しかし一方で,はやくも30年や40年という時間を過ごしてきてしまった私たちの足どりを,いま忘れないうちに捉え直しておくことが,現在の私の課題です。

 Mac 30周年の今年は,この分野ますます面白いことになりそうです。

平成二十五年霜月一日

 沖縄・宮古島や仙台,岡山への出張などが続き,ようやく3連休で一休み。出張の報告を書きたいと思っているのだけれど,宿題や名刺整理など片付けたい事柄があって,まだ書き出せずにいる。

 iPad Airも発売され,その他にも欲しいものがいろいろあるが,可処分所得は全部旅代として出ていくので,もうしばらく我慢しなければならない。

 今月は和歌山と北海道にお出かけ。そして29日には徳島県の足代小学校で最後の公開授業と研究会である。ちょうど足代小学校の取り組みを取り上げたWeb記事が公開された。有り難いことに私の名前も出てきたりする。

 十校十色,実証校は20校あるから「二十校二十色」といったところ。あちこちお邪魔し,実際にその土地を歩いて感じた雰囲気を重ねて見ると,似たように見える実践の場面にも異なる想いが込められていることも見えてくる。

 せっかく文部科学省でアルバイトしているのに,そういう学校の日常のひとつひとつをちゃんと拾って仕事に盛り込めてない自分の力の無さにうな垂れがちになるけれど,出来る範囲で頑張るしかない。

無線LANアクセスポイント考

 学校設置用の無線LANアクセスポイントはマインドシェア的にはCiscoの独占状態なので面白みがないですが,家庭用の無線LANアクセスポイントは地味に興味深いです。

 ネット依存問題も賑やかになってきたのでフィルタリング機能が再度スポットライトを浴びそうなのと,多くのメーカーでスマートフォン設定アプリが登場していることなどです。

 たとえばフィルタリング(悪質サイトブロック)については「ファミリースマイル」というネットスター社のサービスをIOデータとNECの無線LANアクセスポイントが搭載しています。

 フィルタリングに関しては必要性がある一方で,機能的に十分でないとか使いにくいとか,対処方法として無理筋なところも無くはないのですが,サービス自体は地道に改良改善されているので,ニーズがあれば積極的に使っていくことが大事と思います。

 有料サービスであるということが,なかなか利用されづらい大きな理由なのかも知れませんが,何か妙案はないものでしょうか。

 また最近はモバイルデバイスに設定アプリをリリースしているメーカーも多く,たとえばIOデータ社は「こどもフィルター」というアプリをリリースしていますし,よく似たものとしてエレコム社も「こどもネットタイマー」というアプリを出しています。

 アプリから「WiFi接続のオン/オフ」ができるという機能があるのは面白いなぁと思いました。Bluetoothと組み合わせてWiFiの電波発信も停止してくれる機能があると,嬉しいなと思いのですが,さすがにそれはコスト的にも難しいでしょうか。

 正直,こんなに電波を浴びている生活は,あまりよろしくないと思うので,必要がなければ電波発報をやめる機能(スマホの機内モードみたいなもの)をアクセスポイントにも付けて欲しいと思う次第です。

 昨今は,近所で無線LANアクセスポイントを使う家庭が増え,しかも遠くへ届かせるためのハイパワーな製品も増えて,電波が混信状態。家の中なのに,突然繋がらなくなる事態も増えています。

 それと似たような状況になっているのが,情報機器などの展示会場。それぞれのブースでたくさんのモバイル機器を展示するため無線LANを使うので,展示会にもかかわらずネットワーク接続が不調となり,デモンストレーションできない事態が当たり前になりつつあります。

 そして,私たちの関心が向いている学校という場も,これからデバイスが増えてくると同じような問題を抱えることになります。

 電波・電磁波が健康に及ぼす影響を懸念している方々は,そのようなデバイスの利用や無線LANアクセスポイントが設置されることに不安と疑問を感じています。これは私自身も考えなければならない問題と捉えているのですが,利便性と安全性をどうバランスさせるべきかを常に考える必要があると思います。

 そのためにも,先ほど書いたように,必要な時に電波発信をオンにして,不必要な時は電波発信を停止できるスイッチ機能を付けるべきだと考えています。そうした選択可能性があって初めて,バランスをどうするかの議論も可能になるからです。

 いまのところは教室設置で常時電源オン方式ではなく,ワゴンに端末と無線LANアクセスポイントをセットにして,必要に応じて各教室のコンセントにLANケーブルと電源ケーブルを挿して使うのが妥当かなと個人的には考えています。

 また,一度にたくさんの台数のモバイル機器が無線LANを利用する場合の問題は,すでにそうした課題に対応した製品を開発している企業もありますので,なんでもかんでもCiscoではなくて,たとえばメルー・ネットワークの製品を使うといった他の選択肢を考慮できるようになることが大事なのだろうと思います。

 無線LANは確かに便利です。それだけでなく私たちは携帯電話のような広範囲な電波通信を日常的に便利に利用しています。

 これらの利便性と,また一方で抱える問題をよく理解して,必要に応じた選択が出来るようにすることが大事と思います。

覚書

・iPad2 日本発売 2011年4月28日
・iOS 6 リリース 2012年9月19日
・Windows 8 リリース 2012年10月26日
・Android 4.2 リリース 2012年10月29日
・Surfece RT 日本発売 2013年3月15日
・Surface Pro 日本発売 2013年6月7日 (Office付き)
・Windows 8.1 プレビュー版 2013年6月26日
 RTM8月下旬 搭載版 年内

文部科学省 事務次官
旧:森口 泰孝
新:山中 伸一

文部科学省 大臣官房 官房長
旧:前川 喜平
新:戸谷 一夫

文部科学省 生涯学習政策局 局長
旧:合田 隆史
新:清木 孝悦

廃止:文部科学省 生涯学習政策局 調査企画課

新設:文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課 文部科学省 大臣官房 審議官(生涯学習政策局担当)
旧:上月 正博
新:大木 高仁

文部科学省初等中等教育局 局長
旧:布村 幸彦
新:前川 喜平 上月 正博
旧:文部科学省 大臣官房

審議官 新:独立行政法人 国立高等専門学校機構 理事

知る
気づく
つなげる
聞く(聴く)
解く
深める
試す
調べる
つくる
残す
話し合う
考える
生み出す
表現する
広げる
発信する
まねる
活かす

学校指定学習者用端末の現在未来

 どっちに転んでも文句や懸念が山積みなのは分かり切っていたことでした。

 とはいえ、今回の結果に「あ〜あ」感が漂うのは、どうしてでしょうか。

 既存の考え方を切り捨てられなかった旧態依然の選択行動に対してでしょうか。不振品を一掃する姨捨山のごとき場として文教市場を見るまなざしに対してでしょうか。日も浅く実績の少ないものに付き合わされる高校生達の悲哀に対してでしょうか。

平成26年度に佐賀県立高校全校で導入する学習者用端末の機種をWindows8に決定しました」(佐賀県教育委員会)
佐賀県教委、全県立高校でWindows 8タブレット導入を決定 iPadと比較検討して選定、2014年度から約7000人の新入生が活用」(PC Online)

 ご覧のように、佐賀県の県立高校で2014年度入学者が購入することになる指定学習者用端末に「Windows 8」タブレットが選ばれました。

 制服ならぬ「制端末」といったところでしょうか。

 この件は、文教市場における日本マイクロソフト(陣営)とAppleの対決として、あちこちで話題にされていたものでした。そして、初戦の場ともいうべき佐賀県で、日本MSが先勝したことになります。

 特に驚きはありません。

 教育委員会という組織が持っている論理の特性を踏まえれば,自然と導き出される結果でしょう。むしろ、事前に比較検討する機会をつくったことを考えれば、佐賀県教育委員会は極力公平であろうと頑張った方だと思います。

 しかし、Windows8が一般市場で苦戦している日本MSは捨て身でしょうし、Appleに比べれば公官庁付き合いの経験も豊富でしょうから、自らのWindowsクラスルーム協議会メンバーと結託してかなり動いたのではないかと思います。

 一方のAppleは、きわめてフェアな戦い方を通したのだと思います。もともと、割り切りこそがAppleやiOS製品の特徴ですから、その特性を認めてもらえれば教育分野においても十分選択される余地があると信じているのです。

 この一勝が今後を左右することは両者とも十分承知していたこととは思いますが、そこで捨て身で一心不乱か、悠然と用行捨蔵かが、勝敗を分けたのかも知れません。

 むしろ、今回のニュースには、学習用端末をめぐる難しい状況が反映されている点が興味深いです。

・タブレット端末は成長段階の機器で選択が難しい
・Android端末は推してくれる守護者を持っていない 
・Apple端末は入札に不向き
・Windows8の選択の先には端末メーカーの選択が待っている 
・管理者目線の選択と使用者目線の選択は一致するとは限らない
・教職員向け校務用パソコンの選択によって囲い込まれる現実がある
・クラウドによる囲い込みについてはあまり意識が向いていない
・選定理由を説得的なものにすることは(どんな選択でも)難しい
・選定責任の所在に関して願わくは曖昧にしておきたい傾向がある etc..

 確かに学習者用端末に関する議論が、どの端末を選定するのかという議論にすり替わっている問題も由々しきことです。

 本来であれば,具体的な学習と活用内容が明確にされて,それに相応しいかどうかを議論するなり判定するなりすべきところです。しかし、そのような情報は残念ながら開示されていないため、一般の私たちは単なる機種選択の話で受け止めるしかないのです。

 また、クラウドや標準規格に基づくアプリ実行やコンテンツ・データ交換を条件として、その条件を満たすものを指定学習者用端末とすべきであるという指摘もあるでしょう。

 理想的にはそうであるべきで,韓国などはそのような議論へと進んでいることはよく知られていることです。しかし、これも現状では、標準規格ベースで実用できるアプリやコンテンツ・データを具体的に提示できておらず、そのようなものを満たすように端末が準備されていない問題もあり,実現に至っていません。

 いずれにしても学校へのタブレット端末導入については、まだまだタイミング的に難しい時期であり、取り組まれている関係者の皆さんは、ある意味で相当困難なチャレンジをしているといえます。

 導入後に取り組まなければならない運用保守の様々な事柄に対応することも含めて,応援していかなければならないと思います。そして、積極的にその知見を公開して欲しいと思います。

 もっとも、あと数年すれば、クラウドと標準規格ベースによる学習端末の具体的姿も見えてくることになるでしょう。

 そのときになれば、今回のニュースも「あの時代は、まだまだ黎明期で機種ベースで議論せざるを得なかったなぁ…ははは」みたいな思い出笑い話になります。

 つまり、こうしたニュースは「Windows8 vs iOS」という捉え方ではなく、「SkyDrive vs iCloud」の戦いであり,「Office vs iWork」の戦いといった視点で捉えるべきなのです。

 Apple側は、秋に「iWork for iCloud」という、Webベースのワープロ、表計算、プレゼンテーションのアプリをリリース予定です。これはAppleのiCloudと組み合わせてWebブラウザ上で実行されるのでWindowsでも動作します。

 Microsoft側は、すでに「Office 365 Education」というサービスを展開しており,「Office Web Apps」というWebベースのアプリでSkyDriveとOfficeソフトとの連携を仕込んでいます。

 このようにクラウドとWebベースのアプリケーションは、すでに様々用意されていますし,今後ますます増えていくことになります。日本勢がこの部分のサービスについて、まだほとんど表沙汰にできていないことが悩ましいかぎりです。

 公官庁がGoogleサービスを利用して情報非公開設定を忘れた事件などがニュースになりましたが、便利さにおいては圧倒的に海外勢が強い現実に対抗すべく,早く日本の企業から便利で安心なサービスが提供されることを望みます。

【注意】
 Windows8端末に関して、日本MSが出している「Surface」というマシンがあります。このマシンには「RT」と「Pro」の2種類があります。佐賀のニュースに関係するのは「Pro」の方です(もちろん佐賀がSurfaceを指定したというわけではありませんが)。

 これとは別の「RT」に関してネガティブなニュースが流れていますが,これは必ずしも「Pro」には当てはまらないので注意して読みましょう。