発表に使用したスライドです。
リンク
http://public.iwork.com/document/?d=rin_osaka20110515.key&a=p28839767
ドキュメンタリー映画「Into Eternity」
劇場邦題「100,000年後の安全」(公式サイト)
NHK番組邦題「地下深く 永遠(とわ)に ~核廃棄物 10万年の危険~」(番組ページ)
タグ: 教育
5/15「デジタル教科書から見える教育の未来」
2011年5月15日、内田洋行さんが大阪につくった「大阪ユビキタス協創広場 CANVAS」という場所でシンポジウム企画があります。
私はそのシンポジウム企画の前座企画(?)である「デジ教研 open meeting04 in Osaka」に発表者として参加することになりました。
みんなのデジタル教科書教育研究会はデジタル教科書に関心のある個人が集まっていますが、私も幽霊会員ながら名前を連ねていますので、お呼びがかかった次第です。
当日は20分間で、デジタル教科書を中心としながら教育の情報化に関する動向についてコメントする予定です。私の現在の心境や考えを率直にお話することになろうかと思います。
まぁ、しゃべらせればUstで6時間もしゃべっていた男ですので、20分間で何を言うべきなのか困ってしまいますが、次世代が未来をつくり出すための手助けが邪魔にならないようにすべきであるといったことを基調に、もう少しシンプルに教育の情報化を考えることの提案をしたいと思っています。
チラシはこちらです。(表紙、第一部、第二部)
NHK for SchoolとiPad2
【朗報】2013年8月31日頃からNHK for Schoolの動画がタブレット端末上で再生できるように対応が始まりました。iPadやiPhoneでも再生が可能です。
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この春から、NHKの学校放送とデジタル教材のサイトがリニューアルして「NHK for School」の名のもと公開されました。
日本における有力教育コンテンツサイトとして学校現場で活用されています。放送された番組の内容紹介だけではなく、動画や発展教材なども提供されていますから、初めて知る人達は驚くほどです。
今日、ポストを覗いたら、その「NHK for School」の利用ガイドが届いていました。全国の学校・教育機関に配布されているそうです。せっかくリニューアルされたわけですから、最大限活用してもらおうと宣伝に力を入れているようです。
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ここで、いよいよその真価を発揮するのはタブレット端末でしょう。
タブレット端末を使えば手軽にNHK for Schoolの動画を電子黒板に表示したり出来ます。なぜなら、ノートパソコンよりもタブレット端末の方が使い始めまでの操作が簡潔で、パッと接続、パッとアクセス、パッと表示が実現できるからです。
というわけで、タブレット端末の代表格といえば「iPad」。日本でも発売予定の「iPad2」は外部画面出力が可能になりましたから、様々なコンテンツを手軽に提示する道具として関心が高まりつつあります。
が… iPadの標準ブラウザはFlash未対応。
NHK for Schoolは、ばりばりのFlashサイトです。公開されている動画はほとんどがFlashビデオのため、iPad標準のブラウザでは見ることが出来ません。
あっちを立てればこちらが立たず…。
というわけで、ここはAndroidタブレット端末の出番となります。
NTT DOCOMOからは「Optimus Pad」という製品がすでに発売済み。
auからは「MOTOROLA XOOM」という製品が発売されています。
どちらもFlashを利用できますし、その他にWebやメール、YouTubeもGoogleマップも利用できますから、ネットから引き出せるコンテンツを利用する分には魅力的なタブレット端末です。
NHK for Schoolも、タブレット端末からの活用事例を紹介すれば、多くの関心を集められるのではないかと思います。
これから数年は、電子黒板がさらに普及する過程で、コンテンツを操作するデバイスとしてのタブレット端末が徐々に注目を高めていくと考えられます。
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さて、我らがiPad2は、Flashで固められた日本の教育コンテンツの前に為す術もないのでしょうか。
これに関しては2つほどトピックスがあります。
一つはiPadアプリ「Flash対応ブラウザ」。もう一つは、「予定されているFlash Media Serverの追加機能(HTTP Live Streaming機能)」です。
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iPadでFlashを利用したサイトを見たい場合、確かに標準ブラウザ(Safari)はFlashに非対応なので閲覧することが出来ません。
しかし、App Stpreには「Puffin」というFlash対応ブラウザが115円で発売されています。これを導入すると多くのFlashサイトを見ることが可能です。
ちなみにNHK for Schoolも閲覧可能。大型画面版でなければ、サイトのほとんどの動画を再生することも出来ます。ただし、映像はカクカクで、音声は普通に流れます。これはNHKニュースなどのページでも同様です。
Flashを利用したサイトを利用しなければならない場合に、ちょっと便利です。
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Flashを利用した動画は、基本的にはFlashに対応したブラウザでしか見ることが出来ません。しかし、ビデオ自体はFlash独自というわけではないので、技術的にはFlashの皮をはがして流すことが出来るようになっています。
先日、Flashを流す側(サーバー側)のソフトに追加が予定されている新機能として「HTTP Live Streaming機能」というものが発表されました。
これは、Flashの動画をFlash以外の方法で流すことが出来る技術。そしてこのHTTP Live Streamingは、iPadが標準で対応しているのです。つまりFlashの動画をiPadでも見ることが出来る可能性が生まれたわけです。
残念ながらFlashのアニメーションやインタラクティブな操作部分は関係がないため、Flashで作ったサイトがiPadで見られるわけではありません。
しかし、この技術を使えば、Flash版とHTML5版のサイトを同じ素材で作ることが出来るので、iPadにも対応しやすいというメリットがあるのです。
リニューアルしたばかりのNHK for SchoolがHTML5に対応するのは、まだ3年から5年くらいかかりそうですが、将来的にはNHK for SchoolもHTML5へ移行して、さらに利用を加速させるようになると思われます。個人的願いも込めて。
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それか、NHK for Schoolのアプリがリリースされるのが早いかも。
今取り掛かっているのが済んだら開発検討してみても面白そうだなと思います。
東京出張
東京に出張しました。
4月15日に文部科学省で「学校教育の情報化に関する懇談会(第12回)」が行なわれるというので、傍聴したのです。
今後の教育の情報化の行方を見通す「教育の情報化ビジョン」策定のための最後の懇談会です。昨年度のうちに終わるはずでしたが、東日本大震災の影響で今回まで延びてしまっていたのでした。
ネットによる動画配信が行なわれましたので、わざわざ東京に行かなくても内容を知ることはできましたが、私自身が現場の雰囲気を知ることを大事に思う質なので、傍聴申込をした次第です。
末端ながら総務省のフューチャースクール推進事業に関わっている人間としては、文部科学省の学びのイノベーション事業に強く影響を与えるだろうビジョンの策定現場について知っておきたいという動機もありました。
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先回の総務省・研究会への傍聴を経験して、過度な期待を抱かないことに決めたので、懇談会の内容に対しては、特別な感想はありません。あらためて、骨子作成の段階までが大事だったのだなということと世代のアンバランスを確認した程度です。
「教育の情報化ビジョン」は、座長と事務局がもう少し作業した後、正式版が公開されると思います。
私としてはご縁があって関わっているお仕事を通してビジョンをより良く運用していくことしか出来ないのかなと思います。
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短い滞在時間の間には、パナソニック教育財団を資料調査のために初めて訪れたり、5, 6年ぶりとなった教育関係の古書店であるヤマノヰ本店での古本探しなど、それなりに充実していました。
教育の情報化ビジョンの行方
もうすぐ平成22年度が終わり,平成23年度がやって来ます。
平成22年度中に策定される予定とされたものはあれこれありますが,教育と情報に関連して一番注目されているのは「教育の情報化ビジョン」でしょう。
学校教育の情報化に関する懇談会で検討され,3月16日に予定されていた第12回を最終機会としてビジョンが示されるはずでした。
しかし,ご存知の通り,3月11日の大震災の影響のため,この回は取り消され,構成員間でのメールのやり取りによって最終的な検討に代える 延期とされ,調整の上で4月中に開催される予定となり,その後にビジョンも発表するとされたようです。(追記:当初の記述は誤りでした。こちらの記事を参考に訂正します。)
ここ数日,従来は熟議カケアイのサイトに保存していたこれまでの議事概要を文部科学省サイトにも転載するなど,いよいよビジョン公開に向けて準備に入り始めた動きを見せています。
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すでに「教育の情報化ビジョン」の骨子と本文案は掲載されていますので,これまでの慣例からすれば部分的な修正を除き,素案内容が正式なビジョンとして策定されることになると思います。
ビジョンの章立ては次のようなものになっています。
- 第一章 21 世紀にふさわしい学びと学校の創造
- 第二章 情報活用能力の育成
- 第三章 学びの場における情報通信技術の活用
- 第四章 特別支援教育における情報通信技術の活用
- 第五章 校務の情報化の在り方
- 第六章 教員への支援の在り方
- 第七章 教育の情報化の着実な推進に向けて
懇談会構成委員はもちろん,4つのワーキンググループに集まった外部の方々を加えた有識者による議論が盛り込まれた内容です。
この教育の情報ビジョンが2020年に向けて日本が取り組むべき施策の方向性を指し示していると位置づけられるわけです。
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しかし残念ながら,学校教育の情報化に関する懇談会において,これら項目や工程に関する優先順位の議論は,最後の最後まで行なわれませんでした。
月並みな批判の言葉を使うなら,ビジョンの内容は総花的で,長期に及ぶ取組みの過程で早期に取り組むべきものと積み重ねた上で取り組むべきものといった計画を組むために必要な指針は明示されているとはいえません。
各項目はどれも重要であり,どれも可及的速やかに取り組むべきなのだという風に彩られています。
「これはビジョンだから…」
という指摘もあり得るでしょうが,個別項目のビジョンだけでなく,「教育の情報化」という総体的な取組みに対する展望を示す中に,2020年なりそれ以降への見通しを持った流れを描くことも含まれてよいはずです。
ところが,その部分について教育の情報化ビジョンが何をどうしたのかといえば,附属資料として高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が策定した「新たな情報通信技術戦略工程表」を添付した形で終わっているのです。
この工程表は懇談会の議論が反映されたものではありません。
工程表は2011年度をスタートラインとして,非常に多くの取組みを「よ〜いドン!」とスタートさせ,2020年に向けてどの取組みも期間がぼよ〜んと延び続けるように描かれています。工程表としての鮮明さを欠いています。
そのうえ,教育情報ナショナルセンターといった運用停止が決定したものについて,体制や機能強化に関する記述もそのまま。これを添付したものを新しいビジョンとして提示することに,実質的なプラス効果があるのか疑問です。
なぜこんなことになってしまっているのでしょうか。
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この問題には行政論理といった修正困難な要素が大きく関わっています。
けれども,もう少し別の角度から考えてみましょう。本当にそれは修正なり,もう少し妥当なものへと前進させることは出来なかったのでしょうか。
多少意地悪とは思いますが,懇談会構成員に目を向け,この懇談会がどのような人々によって進行されていたのかを確認してみることにしましょう。
以下が,構成員の名簿を生年順に並べたものです。
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【学校教育の情報化に関する懇談会・構成員22名】
生年 年齢
1945 66 村上 輝康 株式会社野村総合研究所シニア・フェロー
1946 65 安西祐一郎 慶應義塾大学理工学部教授
1949 62 三宅なほみ 東京大学大学院教育学研究科教授
1950 61 若井田正文 世田谷区教育委員会教育長
1951? 60 重木 昭信 株式会社NTTデータ顧問、社団法人日本経済団体連合会高度情報通信人材育成部会長
1953? 58 市川 寛 東京書籍株式会社編集局ソフトウェア制作部部長
1953 58 馬野 耕至 読売新聞東京本社メディア戦略局専門委員
1955 56 西野 和典 九州工業大学大学院情報工学研究院教授
1956? 55 大路 幹生 日本放送協会放送総局ライツ・アーカイブスセンター長
1956 55 玉置 崇 愛知県教育委員会海部教育事務所所長
1958 53 陰山 英男 立命館大学教育開発推進機構教授
1959 52 関口 和一 日本経済新聞社産業部編集委員兼論説委員
1960 51 野中 陽一 横浜国立大学教育人間科学部准教授
1961 50 天野 一 社団法人日本PTA全国協議会副会長
1961 50 小城 武彦 丸善株式会社代表取締役社長
1961 50 中村伊知哉 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
1962 49 新井 紀子 国立情報 学研究所社会共有知研究センター長
1964 47 堀田 龍也 玉川大学大学院教育学研究科教授
1972 39 國定 勇人 三条市長
? 五十嵐俊子 日野市立平山小学校校長
? 千葉 薫 仙北市立生保内小学校学校支援地域本部地域コーディネーター
? 宮澤賀津雄 早稲田大学IT教育研究所研究員(研究総括)
※公開されている情報を収集して生年を付させていただきました。「?」は推定または不明です。年齢は2011年から生年を単純に引いただけですので正しくないものもありますが,おおよその世代を知るのが目的なのでご容赦ください。
(計22名:30代 1名/40代 2名/50代 11名/60代 5名/不明 3名)
===
構成員のほとんどが50,60代であり,30,40代はごく限られた人数です。
上位世代が情報化を議論するのにふさわしいとかふさわしくないという議論をしたいわけではありません。しかし,このような極端にアンバランスな年齢構成は,本当に次代のための議論をするのに適していたのでしょうか。
確かにワーキンググループのメンバーの年齢構成も加味する必要があるかも知れません。もう少し多様性が確保されている可能性もあります。
しかし,肝心の親会の構成員がほとんど50,60代で,ネット世代との掛け橋となる30,40代が少数では,そもそも発言回数的にも不利であり,10,20,30,40代の問題意識をどれだけ議論に反映し得るのか,し得たといえるのか,はなはだ疑問です。
振り返れば,長年の専門的経験にもとづいて未来や新しい教育を見通して発言された多くの知見は,無意識のうちに上位世代が下位世代のために展望を指し示してあげているというような構図になっていないでしょうか。
本来ならば,この日本がガチガチと組み上げてきてしまった制度や条件のために,次の世代が取り組みたがっている新しい試みが思うようにできないといった問題を解決するのが重要ではないのか。
それを上位世代がいまだにメインを陣取って,自分たちの方がよく分かっているからと,代わりに新しい試みを描いてしまおうとしていないのか。
そうした善かれと思っているお節介を国家規模的にやってしまっていないかということを今一度考えてみなければなりません。
—
教育の情報化ビジョンは,確かに従来までの知見の集大成です。
この国はここに書かれた事柄に取り組んでいかなくてはなりません。
しかし,このビジョンには,余白がなさ過ぎる。
老婆心が集積され,粗削りな挑戦を後押ししているとは言えない。
優先順位を付けることさえ放棄したビジョンは,私たちがその先を見通すように導くどころか,今後いつも振り返って配慮しなければならない文書になっている。
ビジョンが公開された後,私たちは解釈を繰り返し,解説を繰り返し,2020年に至るまで,見通しの悪い議論を繰り返すことになるかも知れません。