20181201_Sat

古本オークションで『知的CAIシステム』を落札。

CAIといえば「Computer Assisted Instruction」の頭文字をとった語であり,コンピュータを利用した教授学習支援のシステムを指す。教育内容と演習問題を用意し,それらを機械的に提示していくことで,学習の進捗を促すものだ。その原型は,1950年代後半におけるスキナーのティーチングマシンであり,1960年代後半のコンピュータ登場でCAIを発展させていく。

単なる機械仕掛けといっても,学習者に合わせた支援動作をするように幾多もの工夫やシステムが組まれたが,1970年前後から,そこに人工知能の知見を取り込もうとしたものを知的CAIと呼ぶようになる。

知的CAIは「Intelligent Computer Assisted Instruction」(ICAI)と呼ばれた後,「Intelligent Tutoring System」(ITS)と呼ばれるようになった。一方,ただのCAIは伝統的CAIと呼び分けられたりもする。

伝統的なCAIが,シナリオを用意する方向性で高度化していったシステムとすれば,知的CAIは,(今回の本の表記に沿えば…)「ドメイン知識」「学習者モデル」「教育学的知識」「インターフェイス」の4つのコンポーネントから構成された複合的なシステムであるというところに特徴がある。

そんなわけで,本書の原著は1987年に刊行された知的CAIに関する理論書であり,関連諸原理を詳しく解説している。

正直なところ,翻訳文が堅くて,英語的に読まないと理解の遠回りが起こりがち。冒頭部分を読んでいるだけなので難しいことが書いてあるわけでもないのに,妙にチンプンカンプンである。とはいえ,いずれ翻訳向け人工知能がブラッシュアップされれば,過去に堅い文章で翻訳された古典を優しい文章の翻訳で読めるようになる時代もくるかも知れない。

1990年代(平成初頭)に入ると次第にCAIへの注目は薄れていくが,昨今は,EdTechという勢いに包まれながら,現代的な知的チュータリングシステムとして蘇っているかのよう。計算処理の高速化などによって,これまでの手法をハイブリッドしたものが登場しているように思う。

そんな時代だからこそ,ちょっと源流を訪ねてみたかった。

そういえば,この本の著者は「正統的周辺参加」論で知られるエティエンヌ・ウェンガー氏であった。なんとも幅の広い人である。

20181124_日本教育メディア学会

日本教育メディア学会年次大会初日。

鹿児島大学附属小学校での公開授業から始まった。4年生の総合的な学習の時間で「附属小学校の伝統を伝えよう」という単元。附小クイズを作成して,クイズに解答してもらう活動を通して学校の伝統を知ってもらうことを目指していた。

その際,選択クイズを出題するツールとしてScratchを利用し,そのプログラムの流れを考えるのが今回の授業であった。

選択問題のScratchプロジェクトを作成する際,回答に応じた処理が必要となり,「分岐」という考え方と「もし」ブロックの利用へとつなげていく。授業案で想定されていたのは,そのような展開である。

子どもたちは,前時よりペアになってクイズのプロジェクトを進めており,問題と回答に応じて表示する画面などはすでに作業が終わっているものの,回答に応じて表示するための処理は分かる子達以外は組み込めていないという状況だった。

伝統を低学年に伝えるためのクイズ作成という軸はぶらさずに,選択クイズをプログラミングしていくわけだが,ペアごとにブロックの組み立て方がバラバラなので,たとえばキー入力待ちの処理のしかたも,「ずっと」ブロックを使うペアあり,「○秒待つ」ブロック後に「もし」ブロックでキー判定するペアあり,そのまま「もし」ブロックを使っているペアあり…と動くものもあれば動かないものもあったりする。

今回の授業では,回答によって結果が変わることの必要性と「もし」ブロックの存在を知ることがひとつの目標だったが,限られた時間でプログラミング活動をする難しさみたいなものをあらためて感じた授業だった。

その後は一般発表と鼎談企画へ。

一般発表では「プログラミング」関連を聞いていたが,やはりまだまだ模索段階にあるなぁと感じた。その模索を否定したいわけではないのだけれど,ある程度厳しい問いに晒しながら進めないと,ごっちゃに受け止められてしまう懸念もある。

鼎談企画は「教育メディアのこれまでと展望」と題して,日本教育メディア学会と学会紀要の論文の歴史を振り返りながら語るもの。

教育と情報の歴史研究に携わっている私としては,興味津々のテーマと内容であった。携わっているといっても私自身は教育とコンピュータの領域から取りかかっているため,視聴覚教育の領域に関しては学ぶことばかりである。

学会前身の「視聴覚教育研究協議会」の第1回が1954年に行なわれた際,「わが国における視聴覚教育の現状」として「放送教育」「映画教育」「幻燈教育」「紙芝居教育」「視聴覚教育資料」「視聴覚教育の諸問題」「The Use of Audio-Visual Materials in the USA」といった立場からの発表があったという。こうしたキーワードから過去について,また今後の展望についていろいろな語りが出ていた。

その中ではかつての「西本・山下論争」を振り返って,昨今では「論争」があまりないこと,学会でもっと論争すべきといったご意見もあった。

ただ,論争がないというのは,多くの人々が注目をする論争のための場がないだけで,細々としたところでは異論を唱え合っているという事態は進行している。学会という場が論争の場になるためには,そうした言論空間の時代変化に対応していく必要があるだろう。

今回は学会史の序盤だけで終わった感じである。

そして,来年の年次大会で続編を企画しようかという話も出た。教育と情報の歴史研究会も再始動させて,徳島でも歴史を振り返る機会を持てるようにしたい。

20181110_Sat

ゼミ旅行の日だった。

そもそもゼミ生の1人が,東京のダンススタジオが主催するステージに立つことになり,その活躍を応援しに東京へ行くことをゼミ旅行として計画した。徳島から東京へ行くのは難しいことではないとしても,単に観光しにいくというのではゼミ旅行として理由が弱いので,今回はよいチャンスだった。

だったのだが,残念ながら都合がつかなくなってしまったゼミ生もいたため,今回は全員で旅行することはできなかった。というわけで「半ゼミ旅行」。

私は事前に東京入りしていたが,学生は夜行バスで当日朝に着く。

ホテルで身支度して連絡を待っていたら,なにやら新宿の人の多さと場所のわからなさに困って,カラオケに非難したとメッセージがきた。

とりあえず新宿に向い,カラオケ店から出てくる時間までApple新宿で新しいiPad Proなどをレビューしていた。

その後,迎えに行って,新宿駅周辺を観光。ランチを食べてから,新宿駅をぐるっと一周するように街を歩いた。せっかくなので東京都庁へ。展望室からの眺めを堪能してもらい,そこから新国立劇場へ。

ゼミ生が参加しているステージは新国立劇場・中劇場で上演される。

その分野は詳しくないが,ステージを主催する名倉ジャズダンススタジオの代表・名倉加代子さんは長いキャリアをお持ちの凄い方らしい。そして,今回は,歌手の森公美子さんと,元宝塚の湖月わたるさんといったスターがゲスト参加している。私は正直,森さんしか分からないのであるが,劇場の他のお客さんたちの雰囲気を感じ取るに,錚錚たる出演者たちなのだということは理解できた。

ダンスを踊るゼミ生は,自分が好きでやっていたこととはいえ,週末や休日を中心に東京へ通いつつも,ときに授業を欠席しなければならないことがあったりして,もしかしたらちょっとだけ後ろめたさも感じていたのではないか。

私たちにしても,その学生が時々いなくなりながら頑張っている事柄を直接は知らないまま,なんとなく様子を見守っているのは,少し中途半端な気もしていた。

だから,ゼミ仲間でその活躍を直接見に行くことは大事なことと思った。

ステージは圧巻だった。

用意してくれた座席はど真ん中の特等席で,森公美子さんを真正面にしながらその歌声を聴くことになった。さらに,ゼミ生がその肩越しにダイナミックに踊っている様子が観えた。素晴らしいショウだった。

終演後,ロビーでゼミ生と会って言葉を交わす。良かったと思う。

半ゼミ旅行は,その後,東京タワーと東京駅を駆け足でめぐり,最後は徳島へ戻る夜行バスに乗るため新宿バスタへ。たった一日だけだったけれども,なかなか楽しい旅行となった。

20181103_Sat

文化の日。

せっかくなのでお出かけをして映画を見ることにした。以前から話題となっていた「カメラを止めるな!」が未見だった。幸い,ネタバレに触れることもなく映画に関する事前知識はほぼ無い状態だったし,近場の映画館が毎夜1回上映を続けていたので,これはチャンスだった。

もちろん楽しんだ。

このブログもネタバレしては申し訳ないので内容について詳しくは語れない。ただ一つだけ言えるのは,どの映画でもそうではあるけど,「どんな映画か分からなかったのを観て楽しむ映画」だということ。

全然関係ないが「コンフィデンスマンJP」が観たくなってしまった。映画版楽しみ。

20181027_Sat

入試監督と面接。

緊張している受験生たちが余計な不安を抱かず力を発揮できるように,できるだけ違和感のなく行動することを心掛ける。なんとか無事終了。

徳島行きバスまで1時間半くらい猶予があった。

行くべきだとアドバイスされた餃子店の餃子を食すため「ひろめ市場」へ向った。帯屋町アーケードの西の端,高知城跡近くにある。人が多くとても活気があったので,雰囲気に押されてビールとともに焼餃子を2人前。小振りなのでペロッと平らげてしまった。

昨夜と打って変わって秋晴れの土曜の昼下がり。ステージでは仮装をした子どもたちが曲のリズムに合わせて踊っている。アーケードではハロウィーンのマーチングバンドが演奏行進している。

少し優雅な気分に浸りながら,バスの待つ駅へ向った。