egword Universal 2というワープロ

 最近は常用ワープロというものがなくなりました。 現在はテキスト情報はEvernoteに記録しておき,図形や画像系の情報はDropbox上のフォルダで管理して,必要に応じてそれらを取り出し組み合わせて使っています。

 原稿依頼の要望に応じて,Wordを使うことが多いですが,授業のハンドアウトはPagesにしてますし,結果がPDFでよければInDesignでやってしまいます。

 これまで長文作成の機会といえば2回の修士論文執筆ぐらいしかありませんが,その時に使ったワープロはNisus Writer 6.5とegword Universal 2でした。

 この2つが私にとっての常用ワープロでしたが,どちらも販売が終了し,サポートもされていません。 Nisus Writerは新しいバージョン(全く新たに作り直されたProというバージョン)に引き継がれているので,ワープロで何か書かなければならないのであればNisus Writer Proをチョイスするという感じですが,以前ほどではなくなっています。

egword Universal2.jpg

 egword Universalはグッドデザイン賞も受賞したMac用の日本語ワープロでした。 販売が終了してしまったのは,Macの売り上げが今ほど良くなかったためソフトウェア販売もとても難しい時期で,経営判断として会社が解散したためです。

 それにあの当時から日本語ワープロというのは商売にするには大変難しいジャンルでした。Microsoft Wordが絶対的な存在であり,その周辺を小さなソフトウェア達が取り囲んでいたため,ユーザーはそれぞれの選択に散らばってしまっていたからです。

 egwordはMac用の日本語ワープロとしては老舗のソフトで,歴史は長いし,技術力も十分で,常に前進していたソフトウェアでしたが,あなたも私もEGWORDという風にはシェアが拡がりませんでした。 MacがOS Xとなり,Intelプラットフォームに変わり,激変を続けても,egwordはそれにピタッと張り付き,最新技術を投入して進化していましたが,とうとう2008年に販売終了が決定されたのでした。

 egword Universal 2は最後のバージョンでした。 Mac用の日本語ワープロで,あそこまで機能や性能品質をバランスよく高めてデザインしたソフトは他にないと思います。

 幸い,Mac OS X Mavericksにegword Universal 2をインストールしてアップデータをかけると,正しく表示されない部分はあれど,まだ動作するようです。もうサポートもされていませんが,久し振りに引っ張り出して使い始めているところです。

教育・学習とShare Anytime

教育・学習でのShare Anytime活用を考える」シェアノート https://cabinet.7knowledge.com/gallery/saview/0f656e9b0a012349c75d0bd4aa9e57cc5.html

 2013年10月9日にNote Anytimeの姉妹アプリ「Share Anytime」がリリースされました。どのようなアプリかは,いろいろな記事になっていますのでそちらに譲るとして,りんラボではさっそく教育・学習での利用について考えてみました。

 上のリンクにShare Anytimeのシェアノートというファイルを公開しました。この中でどんどん情報を更新しようという試みです。

 私が編集しているタイミングで開いた時には,リアルタイムで編集過程を共有することが出来ますし,時間差でもその変更部分が転送されて最新の内容に更新されます。

 こういう情報伝達の方法も面白いですよね。皆さんもさっそく実験してみてはどうでしょうか。ただし,会議開催量にはお気をつけを。 ^_^)

Note Anytime一周年おめでと(9/26)

 バタバタしていたためブログも滞っていました。学会などあって大変でしたが,無事に山を越えて,少し穏やかな時期を過ごしています。来週からまたバタバタです。

 実は先日,9月26日にiPadアプリ「Note Anytime」が誕生日を迎えました。

 正確にはリリース1周年記念日といったところですが,このアプリとは特別な出会いをしたこともあって,やはり感慨深いです。

 昨年は徳島県の事業に関わって,小中学校のiPad活用出前授業をしていたのですが(残念ながら今年はないのですけれど…),そのとき小学校で利用するアプリを探していた私たちのもとに降臨してきたのが「Note Anytime」だったのです。

 発表日の翌日には小学生達にNote Anytimeを操作してもらい,好感触を得たことはブログでも紹介した次第です。

 当時,私たちが探していたのは,子ども達が新聞やポスターを作成するためのアプリでした。なので,通常この手の課題用にはワープロアプリか,レイアウト編集アプリが選択肢として挙がります。

 しかし実際のところ,タブレットアプリの多くはタブレット独特の使い勝手が使い難さに裏返ってしまっている部分も多く,iPadアプリにおいてもそれは例外ではありません。

 ワープロアプリやらノートアプリ,ドローアプリも試してみましたが,帯に短し襷に長し…。実際,子ども達がApple純正アプリのPagesを試してみた感想は芳しいものではありませんでした。

 Note Anytimeには,そうした状況で出会いました。

 子ども達に使ってもらうために,アプリ画面は一瞥して親しみがなくてはなりませんし,単純で使いやすくなければなりません。これまで紙の上で作ってきた作品をデジタルを使って作るので,A4やA3といった用紙サイズの概念もちゃんと扱えて欲しい。

 Note Anytimeは手書きノートアプリとしてリリースされましたが,これらの要件を満たした上で,さらに高度な機能と自由度,初代iPadでも快適に動作する軽快さを備え,単なる手書きノートアプリを超えるものがありました。

 何より,MetaMoJi社が誇るmazecという手書き入力機能と手書き文字をテキスト文字と同等に扱える文字枠機能が使えるというのが,Note Anytimeの未来への可能性を表わしています。これはノートアプリとして極めて重要なことだと思います。

 もちろん,文字枠以外のところへの手書き図や文字の書きやすさを追究した高倍率の拡大縮小機能はNote Anytimeの売りですし,こだわりの線描画処理,PDFなど多様な出力もサポート,他のノートアプリが備えている機能を一通り実装など,リリース直後にして最高のノートアプリと評されたほどです。

 掘り下げれば,Note Anytimeのもつポテンシャルをいくらも探すことが出来ますが,とにかくこれが無料で提供されたことは驚きでしたし,その後,Windows版,Android版とマルチプラットフォーム展開したことは利用者にとって朗報です。

 出前授業に使うアプリにPagesがダメだと分かったとき,前日にリリースされたばかりのNote Anytimeを初代iPadに急遽インストールしたのは正解でした。

 こうして,(たぶん)日本で一番最初にNote Anytimeを小学生が使った授業事例が生まれ,その後縁に恵まれて,上勝小学校の皆さんと私がMetaMoJi社の事例紹介ページに載ったのです。

 同時期に,仕事の関係で私は「デジタル教科書」なるものについて考え続けていて,今に至っています。

 デジタル教科書というのは,教科書あるいは参考書などの教材がデジタル化されたもので,大画面に映し出し,授業進行に合わせて内容を拡大縮小して見せたり,書込み機能で線やマーカーを引けたり,マルチメディアによる豊富な教材を取り出して見せたりできるものをイメージしてもらえるとよいと思います。

 これは先生が教室の前で使う場合のイメージですが,一方で,児童生徒学生など学習者が手持ちのタブレット端末に表示させて,紙の教科書以上の活用が出来るようにしたバージョンもあります。先生が使うものを「指導者用デジタル教科書」,学習者が使うものを「学習者用デジタル教科書」と呼んだりします。

 いま指導者用デジタル教科書は各地で導入が進められているのですが,残念ながら学習者用は端末の普及問題と定義や仕様の議論もあってまだ試行段階にあります。

 これがNote Anytimeというノートアプリと何の関係があるのかとお思いかも知れませんが,私はデジタル教科書の鍵を握っているのはデジタルノートではないかと思っているのです。多くの人々も似たように感じているのではないでしょうか。

 タブレット端末は常々,消費のためのデバイスだと論じられ,たとえばキーボードの無いタブレット端末を用いて生産活動することは難しいとされています。それに関する導入現場の実態報告も聞こえてきます。

 一方でまた,キーボードで情報を入力する行為だけでは学習や記憶の定着には不向きであると主張する立場もあります。曰く「手で書かなきゃダメだよ」と。

 あるべき入力手段や行為が何かは議論を深めるべきテーマですが,事ほど斯様に,教育において情報の入力手段は重視されていることがわかります。ならば,入力を受け止める記録手段,たとえばノートアプリについても大いに議論が起こりそうです。

 残念ながら,試行段階にあるデジタル教科書に付随している情報の記録機能は極めて限定的なもので,思考を記録するための柔軟性を有しているとは言えません。使いやすいように特化した機能が逆に情報を他へ持ち出す汎用性を阻害してしまってもいます。

 書くにせよ,打ち込むにせよ,私たちが入力し記録したものが私たち自身の学習を反映したものとするならば,それを留めておくべき媒体が柔軟性を欠いては学習を押し広げて高めていくことはままなりません。

 おそらく現在のデジタル教科書が酷評されるのも,こうした記録機能の部分が貧弱過ぎることに大きな原因があるのではないかと私は考えています。

 Note Anytimeも万能ではありません。

 基本的にNote Anytimeは線画ノートアプリであり,今のところ空間を塗りつぶすといったお絵描きアプリのような機能はありません。写真やイラスト,Webページを張り込めるとはいっても,いまはマルチメディア対応していないので動画や音声を張り込むことも出来ていません。

 それでも,私たちが手書きの世界で行なってきたことを,かなり高いレベルでデジタルの世界に引き継ごうとしています。

 そして,デジタルだからこそ,線画データをベースにしているからこそ,紙では出来なかったことができる可能性を秘めていると感じます。

 私たちは紙のノートを捨てるべきだという意味ではなく,紙のノートの延長線上に素敵な可能性を持った新しいノートが続いたのだと思うべきではないでしょうか。

 他のノートアプリにはそのような可能性を感じなかったにも関わらず,Note Anytimeはそう思える出来であるということが,私がこのアプリを好きな理由です。

 本当はこういう部分はもうちょっと色気出してこうなって欲しいという要望はたくさんあるのですが,MetaMoJi社のコンピュータ技術職人さん達がつくる質実剛健アプリのため,その辺はまだまだ時間はかかりそうです。

 とにかく,Note Anytimeリリース1周年おめでとうございます。

 まだ1歳なのだから,これからどんどん成長していくのだろうと思います。  

第29回 学習デジタル教材コンクール

 今年も学習ソフトウェア情報研究センター(学情研)主催の「学習デジタル教材コンクール」がありました。応募した皆様ありがとうございました。受賞した皆様おめでとうございました。

 本年度も審査業務に関わらせていただき、皆様の応募作品について、厳正な審査はもちろんのこと、作品に添えていただいた開発意図や実践事例について誠意を持って受け止めさせていただいたつもりです。

 ある分野を活性化したいときに、頑張った人々を奨励する「コンクール」や「コンテスト」「コンペティション」を催すという手段があります。

 教育と情報の分野に関わるものとしては「学習デジタル教材コンクール」(学習ソフトウェア情報研究センター)、「ICT夢コンテスト」(コンピュータ教育推進センター)、「全国自作視聴覚教材コンクール」(日本視聴覚教育協会)、「日本e-Learning大賞」(eラーニングアワード事務局)、「特別支援教育教材・教具展示会」(国立特別支援教育総合研究所)などがあります。その他にも様々な団体や自治体が開催しています。

 いずれも、優秀な作品・実践を奨励することを通して、それらを共有し、次なる優秀作品・実践の創造に繋げていきたいという趣旨は共通していると思います。

 昨今、自作の教育ソフトやアプリをつくる余裕がなくなっているようにも見受けられますし、逆に優秀なツールでお手軽に出来ちゃう(作り込んだものもありますが、作り込みの浅いものも少なくない)ため、こうしたコンクールも、なかなか悩ましい状況を迎えています。

 それでも、より良いものを目指した取り組みが賞賛されて、広く波及していくことは大事と思います。デジタル教材が注目を高めつつある昨今だからこそ、実践を踏まえたものが多く出てきて欲しいものです。  

タブレット時代の教育向けアプリ

 タブレット端末を導入する学校も出てきています。
 どんなタブレット端末を導入するにしろ,授業で活用できるアプリの存在は重要です。

 私の一押しは,手書きノートアプリ「Note Anytime」です。
 5月14日に待望のAndroid版が正式リリースされました。これでiOS版,Windows 8版とラインナップが揃いました。
 データ形式に互換性があり,クラウド上のデジタルキャビネットサービスに登録すれば,複数の端末上にあるノートを同期させることが出来ます。
 どんなタブレット端末だろうとNote Anytimeを使えば同じ操作性で手書きノート作成が出来ますし,好きなタイミングでメインの端末を引っ越すことも出来ます。PDF形式などのデータに書き出すことも簡単にできるので,データ資産を残すことも難しくありません。学習記録を残すにもピッタリだと思います。
 無料提供であることも有り難い点です。

 先日,新たなキラーアプリを発見しました。
 こちらはWindows 8用で発売前ですが,「ピッケのつくるプレゼンテーション」というアプリです。
 タブレット端末を教育や学習に活用する際に欲しくなるアプリは,プレゼンテーションアプリ。iPadだと「Keynote」という有名なアプリがあります。最近では「QBプレゼン」とか「ロイロノート」といったアプリも登場しています。
 Windows 8ならばPower Pointがありますが,シンプルな操作性で小学生にも分かりやすいプレゼンテーションソフトとして「ピッケのつくるプレゼンテーション」がEDIXで新たに公開されていました。
 iPad版の「ピッケのつくるえほん」から派生して開発がスタートしましたが,Windows 8タブレットの良さが活かせるように,プレゼンテーションをテーマとした形へと発展したようです。
 開発版を試用した学校での評判も良さそうで,発売時にはこのアプリを利用したプレゼンテーションコンテストを開催するなど大々的にプロモーションする予定のようです。

 1人1台タブレット端末環境はまだまだ早いとは思いますが,1グループ1台タブレット端末や先生用として導入するタブレット端末には,「Note Anytime」と「ピッケのつくるプレゼンテーション」のようなアプリが必ず入っているというのが当たり前,という風になるでしょう。