教育と情報の歴史関連催事

 教育と情報がかかわる周辺の歴史を広く振り返ろうと活動しています。気がつけばこの界隈にも積み重ねたものが多くなり,場合によっては既に散逸してしまっているものもあります。少しずつその痕跡でも残したいというのが個人的な思いです。

 こうした過去への振り返りは,たくさんの人々にも参加してもらうことで多角的に行なえます。そういう意味では,こうした関連の研究会や活動が増えるのは喜ばしいことです。この秋,2つの研究会がありますのでご紹介します。

【2014年10月26日】広島市(広島市まちづくり市民交流プラザ)
第1回 学校ホームページ成人式 IN 広島 20周年プチシンポジウム
http://kokucheese.com/event/index/224187/ 

【2014年11月24日】東京都(お茶の水女子大学)
第2回 教育と情報の歴史研究会
http://kokucheese.com/event/index/220323/ 

  前者は「学校ホームページ」の催事で,後者は「学校とインターネット」がテーマの回となっていて,合わせて参加すると深い話が聞けそうです。

 こうした催し物がさらに増えていき,教育と情報に関わる議論に深みが増すしていくことが期待されます。

『教職研修』2014年9月号

 学校管理職の先生方を対象とした雑誌『月刊教職研修』2014年9月号の第2特集「学校タブレット入門――授業は、学校はどう変わるの」の前座原稿を書きました。

 この特集は全くの初心者の方が昨今話題になっているタブレット端末の学校への導入について学ぶ手がかりを提供するためのもので,その最初の入り口原稿を依頼されたのでした。お題は「いま,タブレット授業はどれくらい広まっているのか」と「そもそもタブレットとは?」の2つでした。

 依頼文から依頼主の意図などを読み取ることが最初の難関です。

 入門記事であるので,自分的には正確に事態を書きたいと思うけれど,おそらく細かい話はほとんど理解されないでしょう。そういうことに関心がない人が対象だから。それに字数的にも詳しい話を書くには厳しいのもでした。

 他の執筆者が誰なのかは知らされていませんでしたから(聞けば教えてくれたとは思いますが…),誰の原稿が続いてもふさわしいようにはどうすればいいだろうと頭をひねります。詳細は誰とも知れぬ方々にお願いするつもりで取り掛かるしかありません。

 こういう場合,あえてモヤッとコレとコレとコレ以上…みたいな構成にした方が分かった気になるというものです。国が進めているということ,既に地方が動くフェーズだけど地域によって温度差があること,家庭はすでに渦の中,そして学習指導要領も教育方法に言及し始めてるといったところを盛り込みましたが,一つ一つはだいぶ大雑把です。

 

 タブレットとは?という解説コラムも,乱暴に「タブレット型情報端末」と「タブレット型PC」の2つだけに分けて,タブレット端末そのものは限定された用途のものだと印象づける記事にしました。

 もっと踏み込んで「タブレット端末とパソコンは違うものです」としてもよかったし,その認識の方が問題回避しやすいのではないかと思うのですが,まぁしかし現実にはパソコンの置き換えを狙う人も多いし,確かにタブレット型PCはパソコンだし,この辺は多種多様ですといって丸めることにしました。

 読み側の人間として,こういう原稿は好みませんが,書くにあたっては丸め方をどう工夫するのか試行錯誤する面白さがあるので,嫌いではありません。

 実際に発売されて,他の執筆者が誰であるのか知ると,いやはや私が前座で申し訳ありません…という恐縮した感じになってしまいます。とにかく,タブレットなるものが学校教育とどういう感じなのか知りたい方はご一読を。

20140819 教育免許状更新講習

 今年から職場で行なわれている教育免許状更新講習の担当をすることになりした。学外の仕事でパタパタしていたのが一段落ついた機会にようやく頼まれたという感じです。

 

 更新講習の受講者は170名でしたが,考えてみたらそれほどの規模の授業は長らく担当していなかったので,さて何をしようか悩みました。たった一回80分の授業でできる事は限られてはいますが,できるだけ考える材料を提供したいと思う気持ちが,悩む時間の延長につながります。そこをいつも諦めきれないのが悪い癖です。

 結果的には学ぶことの変化と学びのイノベーションで掲げた学習場面一覧のお話をベースに,最近の時事ネタと出版物の話を織り交ぜました。

 

 木田元というハイデガー研究の第一人者の先生が亡くなられたニュースを紹介し,私たち人間の存在意義のようなものは対話(コミュニケーション)によって探究されることに引っかけて,受講生同士の短いディスカッションをしてもらうことから始めました。

 2日間の更新講習で受講生同士の対話の時間もそれほど確保されていなかったようなので,2日目の一番手として,昨日の学びを周りの4人程度で振り返ってもらうことにしたのです。やはり一方的に話を聞くだけでなく,先生方は他の人たちと話したかったところもあったようで,かなり賑やかでした。一応,全体共有もしました。

 

 そのあとは,知識習得から知識解釈や構築といった学習観の変化について紹介したり,途中『嫌われる勇気』や『弱いつながり』といった最近話題の本についての紹介を通して,それぞれが扱っているテーマについて考え,「学びのイノベーション」でまとめた学習場面の類型をもとに授業づくりを考えたり,ICT活用を実際に見せたりしました。

 

 この時点で対話込みの80分はもう満杯といった感じなのですが,少々無理して詰め込んでしまいました。結果的には時間ピッタリか,数十秒過ぎた程度で終わりましたが,さすがに先生方はピッタリ最後までやるとは追っていなかったらしく,最後は辛そうでした。やはり学ぶ側に立つと時間は遅く過ぎるものなのかも知れません。

 

 講習には試験があるので,筆記の採点も担当しました。正直,それだけの170人分の答案を見るのは大変で,私は回答を思わずちゃんと読んじゃう人なので(普通なのかも知れませんが私は読んで考えちゃう人なので)時間がかかってしまうのも困りもの。多少厳し目に点付けしてしまったかなと,一応皆さん頑張って書いてくださっていました。

 来年も担当する時はもっとハードルを下げる必要があるかなと思うところの講習会担当でした。

教育用メッセージングサービス

 教育用SNS(教育向けのFacebookのようなもの)が様々登場し始めており,持続的な学習活動を支えるツールとして注目されています。

 文部科学省と総務省の新たな連携事業もクラウドサービスの教育利用を前面に出していますので,こうしたサービスがこれから数年の重要トピックスになるのは間違いありません。

 もう一つは,教育用IMサービスがそろそろ目立ってきそうだということ。

 「ClassDojo」という教育用SNSは「ClassDojo Messaging」という機能を今年3月ごろから開始しています。そして米国8月13日にiOS用とAndroid用のアプリをリリースして,スマートフォンから手軽にメッセージングできるようになったようです。

 ClassDojoでは保護者が教育に参加するツールとしてアピールしているようですが,こうしたメッセージング機能を学習者とのコミュニケーションに活用することも直に検討されるでしょう。コミュニケーションツールとしてのLINEの台頭を見ていると,そのことを無視するのは難しいからです。

 多くの教育用SNSが学習者同士のダイレクトメッセージ機能を採用していません。ダイレクトにやりとりできるのは先生とだけです。学習者同士の無用なトラブルを避けるためでもありますし,そもそも学習者のやりとりを共有するのが目的ですから,やりとりはSNS上の平場に書き込むことが基本という考え方です。

 しかし,先生や保護者から見えないところで友だちとコミュニケーションしたいという欲求は普遍的なものですし,教育用SNSを利用する一方でLINEを並走させて本音トークが展開するのも当然起こりえます。

 現状,メッセージングサービスに対して,完全に後手に回った学校教育は対応に苦慮しているといったところですが,今後は,SNSやメッセージングサービスをどう扱って,必要ならどう味方につけるかを考えなければならないのだと思います。

 もっとも,ただでさえ慌ただしい教師の仕事が,保護者とのコミュニケーションにおける「既読」呪縛でさらに悩ましくなるなんてことは避けたいところ。つまり,こうしたツールの利活用以前に私たちのコミュニケーション現況が如何に歪であるのかを認識することから始めなければならないかも知れません。

201408 集中講義「カリキュラム論」

 2014年8月5日〜8日の4日間,椙山女学園大学で集中講義「カリキュラム論」を担当しました。毎年恒例の集中講義は12年目に突入。

 生活科学部や看護学部など,教員養成ではない学生達が受講する科目なので,教育課程に関する基本知識から始まって授業づくりの作業を一通り学び,評価規準表と授業指導案をつくろうという,ぎゅ〜っと詰まった4日間です。

 12年も積み重ねていれば,授業準備はさぞ楽だろうと思われがちですが,受講生達は毎年違うため,どのように講義を進めるのかは模索を繰り返しながら決めていきます。こまめにコメント用紙を書いてもらうのでフィードバックもかけながらやっています。

 今回は,学生達が全員スマホ所有者だったことと,紹介したShare Anytime(最近名称変わってMetaMoJi Shareになったようですが…)をやってみたいというので,受講生30数名にシェアノートを配布してみんなでコラボレーション機能を体験しました。

 受講生達にとっては初めて使うアプリなので,興奮気味に書き込みや消去が繰り広げられていくので,ノート上の結果は散々なものでしたが,ネットを介したシェア機能には可能性を感じてくれたようでした。

 ちなみに先に担当した大学院の集中講義では講義の内容を記録するツールとして利用したり,情報整理の作業を展開してもらったりと,もう少しまともに活用していました。あらためてツールが有効に活用できるかどうかは,学習規律が醸成されているかどうかにも深く関わることを実感しました。

 今回も4日間があっという間に終わりました。コメントに書かれた感想は,好意的なものが多かったのですが,12年もやっていると自分の方に不満が募るもので,そろそろこちらは大幅リニューアルしてみたいと思う今日この頃。