iPad用文部科学省デジタル教科書の登場

 3月19日付けでAppleのApp Storeにて「文部科学省「学びのイノベーション事業」デジタル教科書」がリリースされました。

 「文部科学省デジタル教科書」なるものが初耳の方もいらっしゃるかも知れません。現在、文部科学省では「学びのイノベーション事業」で次の時代の教育学習の方法等をいろいろ試して明らかにしようとしています。その中で使う教材としてデジタル教科書が用意されたのです。

 指導者用と学習者用というデジタル教科書の種類もあり、指導者用は販売されているものが存在しますが,学習者用はいま開発の真っ最中。「文部科学省デジタル教科書」というのは現時点で開発中の学習者用デジタル教科書を指しているわけです。

 これがそのまま正式な教科書となることは言及されていませんので,あくまでも事業のための開発物だと理解するのが妥当です。

 今回リリースされたiPad用文部科学省デジタル教科書アプリは、国語教科書でおなじみの光村図書が開発した中学校向けのもの。

 学びのイノベーション事業の実証校になった中学校8校の中で、iPadを採用した学校向けに用意されたものと思われます。もちろんiPad以外を採用した学校もありますから,別のプラットフォーム向けもどこかで用意されているということになります。

 というわけで、文部科学省デジタル教科書と呼ばれているものは…

 (1) Windows用小学校向け国語・算数・英語デジタル教科書
 (2) iPad用中学校向け国語・数学・外国語デジタル教科書
 (3) Windows用中学校向け国語・数学・外国語デジタル教科書
 (4) Android用中学校向け国語・数学・外国語デジタル教科書

が開発されているということになります。(追記:さすがにAndroid用は無いらしい。採用校が無いから…)

 ただし、これらは開発中であることもあって、基本的に一般には非公開。実証校の公開授業や文部科学省の主催しているイベント以外でお披露目されることはありません。今回のiPad用デジタル教科書アプリの公開は、iPadアプリの配信方法に縛られた例外事例というわけです。

 さて、公開された光村図書のiPad用文部科学省デジタル教科書ですが、サイズは6.5Mbで含まれているコンテンツは国語のみ。

 下のスクリーンショットには数学と英語も用意されているように見えますが,ダウンロードしたものには含まれていません。実証校で使用する際に追加配信できるということだと思います。同様に、「カードを組み合わせて、文を三つ作ろう」という画面も含まれていません。

 教科書画面で使用できる機能は…

 ページ移動操作
 フリーハンドペン
 直線マーカー
 消しゴム
 書き込みリセット
 アンドゥ
 音声データ再生(一部ページ)
 拡大縮小ボタン
 カメラロールへの画面保存
 ツール位置変更
 書き込みレイヤー非表示

といったものです。現時点で使用することができないが付いている機能は…

 管理者メニュー
 道具箱
 共通コンテンツ
 ワークメニュー
 
といったものです。

 どのように教科書データを追加配信するのかは定かではありませんが,管理者メニューからいろいろセットアップすると「ダウンロード」ボタンが現われて追加できるのではないかと推察されます。またワークメニューに向けてワークシートやコンテンツを送信できるのではないかとも想像されます。

 アプリの完成度は70点くらいでしょうか(一部しか使用できないので正しい評価ではないとも思いますが…)。設計された範囲内での動作に問題はありませんがiPadアプリとしての挙動を詰めて欲しい部分がいくつかあります。

 iPadのAirPlay機能をつかえば、現在の画面を電子黒板に転送することは難しくないでしょう。また、ReflectionというMac用のアプリを使えば複数のiPad画面をMacの画面に表示できますので、複数の生徒のiPad画面を並列して表示させたいときにはこれを使えばよいと思います。

 いずれにしてもこれらはまだ開発中。今後は他の会社からも同様なアプリが登場することとなるでしょうが、前向きに議論が深まることを期待しています。

[FS徳島] 20120228 地域協議会04

 徳島県FS実証校である足代小学校で今年度最後の地域協議会が行なわれたので出席しました。省庁付研究会や協議会の内容報告と来年度に向けた諸々の事務連絡中心。
 フューチャースクール推進事業としては最終年度を迎えるので、今後のICT環境をどのような形に畳むのかが焦点となってきます。学びのイノベーション事業は1年ずれて残っていますので、そのことも踏まえなければなりません。
 ご存知の通り、日本の政治行政や公共事業のシステムは権限や責任が複雑に分散しては絡み合っていて、誰も確定的なことを言えない構造になっています。そのため、来年度や再来年度がどうなるのかを確定的に言える人はいませんし、確約できる人も存在しません。
 というわけで、あんまりピンと来ないまま「来年度も大変だ…」という気分だけ盛り上げて地域協議会はお開きとなりました。

 厳密に言えば来年度で、私の担当研究者としてのお仕事が終わります。
 来年度は、担当している実証校への助言活動はもちろんですが、中学校のフューチャースクール実証校にもお邪魔できたらなぁと考えています。3年目の浮気 ^_^
 それからどうなるのかは、わかりません。私の立場は確定的ではないので。
 むしろ、現在多大な貢献をしてくれているICT支援員さん達がどうなるのかがわからないことの方が、重大な問題となりつつあります。
 これについては、あらためて論じてみたいと思います。

[FS東京] 20120222 葛飾区立本田小学校公開授業

 いよいよ今年度最後のフューチャースクール実証校の公開授業となったのが東京都葛飾区立本田(ほんでん)小学校です。
 東京にあるということもあって、報道で取り上げられたり、偉い方々の視察を受け入れたりなど、実証校の代表として特別なご苦労をされている学校です。労いの気持ちも込めて、参観させていただこうと思いました。
 当日は全学年が授業公開されていました。西日本地域からちょこっとお邪魔するつもりでやって来ましたら、いきなり全体協議会で高学年の授業についてしゃべりなさいと依頼されて、気楽さが一気に吹き飛んだ状態で授業が始まりました。

[FS徳島] 20120217 東みよし町立足代小学校公開授業

 私自身が担当研究者をしている徳島県東みよし町立足代小学校の公開授業が行なわれましたので、もちろん参観し、全体協議会の場ではパネルディスカッションの登壇者として参加してきました。
 今回は東京から玉川大学の堀田龍也先生にお越しいただき、ご講演もいただきました。先生には当日の授業の講評やフューチャースクールの目的や位置づけと今後についてお話しいただきました。
 担当研究者は何もしてませんが、学校の先生方がいろいろ頑張ってくださり、とても興味深いICT活用の提案ができたのではないかと思います。

 

[FS大阪] 20120203 箕面市立萱野小学校公開授業

 フューチャースクール推進事業の大阪の実証校である箕面市の萱野小学校で公開授業がありましたので参加してきました。

 萱野小学校のある箕面市は、コンピュータ教育について取り組んできた歴史のある場所のため、萱野小学校にもそのような取り組みをした過去があります。
 それと同時に、萱野小学校では人権教育を軸とした教育研究活動が続いてきたこともあるため、ICT利活用も社会と繋がる自分を紡ぐためという形で取り組まれています。
 今回の公開授業は(今年度2回目ということもあって)ICT活用の授業は4年生の国語と6年生の算数となり、他の学年は人権総合学習で授業が行なわれていました。
 4年生では写真と言葉で自分の成長物語をつくり、友達に伝える活動をしました。この授業は、一学期から継続的に「調べたことや考えを整理する」ことや「自分を表現する」こと、「新聞を読む書く」といった活動を横断しながら螺旋的に展開してきた流れの上にあります。
 今回は自分の成長について周りの人にインタビューしたり、デジタルカメラやプレゼンテーションソフトを駆使して自分を伝えるスライドを作成したようです。そして今回はそれをグループになって友達に発表するという活動になります。
 6年生は、Future算数と題して、5年生で学んだ「三角形の面積」と6年生での「比例を詳しく調べよう」を組み合わせた発展学習にチャレンジするものでした。
 タブレットPC上に配布された図形問題のワークシートを個別に解く活動から始まり、グループで話し合った成果をIWBに映し出して説明共有する場面が見られました。
 とあるクラスの発表では、とてもとても詳しく長い説明の書き込みをサポートしている児童がスクロールしながら、IWBの前に立っている児童が一生懸命説明するという場面があり、その説明の長さにみんなが驚くなんて一幕もありました。スクロールも大変でした。

 今回タイミング的に他学年がICTをバリバリ活用という場面を見ることはできませんでしたが、昨年度は3年生や4年生でのコラボノートによる授業を見せていただいたこともありますから、学校としてICT活用に積極的なのは確かです。
 とはいえ、やはり学校の教育活動の軸ともいえる人権に根ざし、子ども達が自分自身を紡いでいく中でどのようにICTを活用するのかといった視点を強くもって取り組まれていることが印象的でありました。